【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
度肝を抜かれた。
ヴァージニアと三人の侍女たちの案内で浴場側に入ったエルザは湯煙の中に見える光景に唖然としてしまった。
なお、ヴァージニアと侍女たち、王妃アネルザにイザベラ、そして、ケイラは全裸であるが、エルザだけは乳房から腰までを隠す一枚の布を裸身に巻かせてもらった。やっぱり、初対面の男が待っている場所に、いきなり全裸で入る度胸はなかったのだ。
脱衣所の向こうにあったのは、地下をくり抜いて構築したにわか造りとは思えないような立派な大浴場だった。
広い床があり、その中心に三十人は問題なく浸かれるような大きな岩作りの浴槽があって、満々と温かそうな湯がたたえられている。
また、浴槽の真ん中には、三角の塔を二匹の蛇がとぐろを巻いているオブジェがあり、その上から絶え間なく温かそうな湯が流れ続けてもいる。
浴槽の深さは膝下くらいだが、その縁から溢れている湯が床に拡がり続けてもいて、それが浴室全体を温かい湯気で満たしているのだ。
これを魔道で簡単に作ったというのは、想像もできない。
とにかく立派な大浴場なのだ。
これほどのものは、タリオ公国の大公館はもちろん、ハロンドールの王宮にもなかった。
しかし、エルザが唖然したのは、この大浴場そのものに対してではない。それはもちろん驚愕したのだが、それよりも、こちらの入口側から見て、奥側に集まっている男女の集団の姿に驚いてしまったのた。
奥側の岩床には、浴槽から出て休めるような寝椅子が五脚ほど並べてあるのだが、湯船の縁ぎりぎりに置かれているひとつの寝椅子に、ひとりの小柄な獣人少女らしき者が寝かされていて、そこに五、六名ほどの裸身の男女が集まっているのである。
ただ集まっているのではない。
獣人娘は寝椅子に寝かされ、両側の手摺りに膝を乗せさせられ、大股開きを強要されている。
その開いている股間の前には、やはり裸の男がしゃがんでいて、なにか作業のようなことをしているのだ。
また、全裸の女たちは、よってたかって獣人娘を四方八方から手で押さえつけてみたいだ。
獣人娘は悲鳴をあげて逃れようとしているが、さすがにあれだけの人数に押さえられては逃げられないのか、股を開き、寝椅子に仰向けにされたまま動くことはできないようだ。
だが、なにをしているのか……?
「やっ、やっ、やだあっ、ご主人様、やだあ、やだってばああ。やあああ──」
「ははは、抵抗するな、イット。わざわざ剃毛するために、股間の毛を復活してやったんだから、これは剃らないわけにはいかないだろう。みんなやったんだ。イットも我慢しろ」
イットを呼ばれた獣人娘の前にしゃがんでいる男が愉しそうに笑った。
もしかして、あの男がロウ?
いや、そうなのだろう。
この中で男は彼だけだ。ほかは全員女である。
しかし、なにを……。
「最初は借りてきた猫みたいに大人しかったけど、最近はしっかりとご主人様にも刃向かうようになったわねえ。だけど、観念しなさい。ご主人様はイットの毛を剃りたいんですって」
「やったら、やです、コゼ様──。獣人にとって毛を剃られるなんて、首を斬られるのも同じです──。いやああ」
「ずっとなかった毛じゃないか。そんなに抵抗してどうする。まあ、抵抗したって、今日はやらせてもらうけどな」
「いつもながら、悪趣味だな、ロウ。だが、どうして、わたしたちに押さえつけさせるのだ。イットも奴隷なんだから、隷属の力で命令するか、いつもの粘性体の技を使えばどうなのだ」
「いや、こういうのは多少の抵抗を愉しむのが風情があるんだ、シャングリア。命令はしない。いやなら逃げることだ。まあ、逃がさないけどな。ほら、もっと押さえてくれ、みんな」
「命令じゃないなら、やです──。いやあああ」
「なら、あと五回ほど達するか? もう二十回を超えているのに、それだけ暴れられるのは、さすがの無敵の獣人戦士だが、そろそろ脱力してるだろう。ほら、尻尾を擦ってやる」
男……ロウがイットのお尻の下に手を伸ばすのが見えた。尻尾の付け根辺りだろうか。
とたんに、イットという獣人娘が身体を弓なりにして、がくがくと痙攣のような仕草をする。
「んひいいっ」
「エリカお姉ちゃんもなめなめしてあげるわね……。ふふふ、愉しいいい。スクルド、ブルイネン、もっと押さえつけて。コゼもよ──」
ロウの横から裸身を入れた白い肌のエルフ女性がイットの乳房のあたりに顔をつけた。
もしかして、舐めている?
というか……自分はなにを眺めさせられているのか……。
エルザは我に返りかけた。
「いつもと違ってのりのりねえ、エリカ。スクルド、そのでか乳を使うのよ。イットの顔にかぶせて。そうすれば、ちょっとは弱るわ。さすがに、なにもなしじゃあ、押さえられない。こいつ、本当に力が強くって」
「まあ、ではご主人様とコゼさんのご命令ですから、堪忍してくださいね、イットさん。ほらっ」
「んふううっ」
顔を横から乳房を覆い被さるようにされて、イットは脚をばたばたさせだした。
しかし、その脚がぴんと突っ張って、やがて全身が脱力したようになった。
だが、イットに対する大勢の責めは、変わらずに続いている。
でも、もしかして、いま達した?
本当?
そのとき、エルザは知らず、太腿を擦り合わせていることに気がついた。
慌てて、姿勢を直す。
だが、ちょっと子宮の奥が熱いような……。
「ご、ご主人様、ガドにもご命令を──。命令してください──」
「じゃあ、ガドはイットの足の指を舐めてやれ。そこもしっかりとした性感帯に育てている」
「はいっ、すぐに──。では、ブルイネン──。やりますよ──。あなたはイットさんの右足をお舐めなさい──。わたしは左足を担当します」
黄金色の長い髪をしたエルフ女性が嬉しそうにざぶんと湯にとびこむ。
イットを載せている寝椅子が浴槽の縁に寄せられているので、足側にまわるには湯に入るしかないのだろう。
「わ、わたしは……ちょっと……」
一方で、ブルイネンと呼ばれた女性らしきエルフ女性が、ちょっと離れた位置で躊躇するように立っている。
とにかく、なんだこれ?
いずれにしても、とんでもない光景だ。
「ロウ、いい加減にせよ。王妃殿下をつれてきたぞ。お客人も一緒だ」
呆れたような声をあげたのは、王太女のイザベラである。
そして、イザベラはすっと湯に入って、何事もないように湯船の中に身体を横たえる。
「お取り込み中のところ、申しわけありません。王妃殿下、ケイラ様、並びに、エルザ様をご案内してまいりました」
ヴァージニアだ。
いつの間にか、ロウたちの近くにいる。
「お兄ちゃん──。ただいま──」
すると、ケイラ=ハイエルは、ロウに向かって石床を駆け寄っていく。そして、座ったままこっちを振り返ったロウに抱きついた。
「おっ、享ちゃん。いま戻ったのか。早かったな」
「言われたことは調べたわ。だけど、王妃から直接に話を聞いてもらった方がいいかと思って、一緒に連れてきたの」
ケイラに抱きつかれたロウが彼女を膝の上に載せ、抱き返してケイラの頭を撫でた。
すると、これがケイラ=ハイエルかと思えないような、彼女は甘えた表情になる。
「やれやれ……。ロウ、久しぶりだ。とにかく、話を聞いておくれ……」
アネルザはイザベラ同様に湯の中に入った。
ざぶざぶとロウに近寄っていく。
いつの間にか、エルザだけが取り残された感じになってしまった。
いや、侍女たちはいる。三人の侍女については、まだエルザの後ろにいる。
「ほう、アネルザ……。よく、顔を見せられたな……。会いたかったぞ」
ケイラを抱いたままのロウがちょっとすごむような表情になって、アネルザを睨んだ。
これもまた驚くことに、それだけでアネルザはびくりと怯えたように身体を硬直させて、湯船の中で立ちすくんだようになってしまった。
あのアネルザが──?
エルザは、これにも呆気にとられた。
「ご主人様、あがります──」
「あっ、待って──」
「わっ、しまったわ──」
脱兎のごとく駆けだしたのは、さっき全員から悪戯をされていた獣人娘のイットだ。
あっという間に、エルザの横を駆け抜けて脱衣場側に駆け去ってしまった。
一方で、イットの逃亡に声をあげたのは、多分、さっきコゼと呼ばれていた女性とエリカと呼ばれていた女性だと思う。
改めて見ると、ふたりともとんでもない美貌である。コゼについては、まあ美人というよりは可愛いという感じだが、いずれにしてもとても美しい。そして、同性のエルザから見ても色っぽい。
また、エリカというエルフ族の美女の胸には、きらきらと光る金属片のようなものがあるように思った。
あれはなんだろう。
「あん、逃げちゃいました。ご主人様──。申しわけありませんわ。不甲斐ないガドに、どうかご折檻を……」
そして、浴槽側でイットの足の指を舐めていたエルフ美女もまた残念そうに声を出す。
「いや、それよりもお客さんだ、ガド。そういえば、第二王女のエルザさんが一緒に来る予定だと伝えられてたっけな。忘れていた。ロウ=ボルグ・サヴァ……なんちゃら、サタルスです。こんな格好で失礼しますね、エルザさん」
ロウが白い歯を見せた。
なぜか、どきりとしてしまう。
圧倒されるのだ。
その理由はわからない。
さっきまで破廉恥行動をしていた男に、畏怖のようなものを感じるのは違和感しかないが、なぜかエルザは、向こうにいるロウに声をかけられて、ちょっとたじろぎのようなものを覚えてしまったのだ。
どうして……?
わからない。
「ガド、お前も挨拶だ。女王モードだ」
ロウが浴槽側でしゃがみ込んでいたエルフ美女に声をかけた。
すると、相好を崩していた顔が急に真顔になり、彼女がその場にすっと立ちあがった。
「ナタル森林王国の女王ガドニエルだ。見知りおいてもらいたい……。ところで、誰ですか?」
こっちが畏怖するような目線でエルフ美女がこっちを見る。だが、すぐに表情を崩して首を傾げた。
「この国の王妃よ。もうひとりはわからないけど……。相変わらず、ポンコツねえ」
呆れたような声をあげたのはコゼだと思う。
随分と気安そうだが、もしかして、このエルフ女性が女王がガドニエル陛下?
「あ、あのう、エ、エルザでございます。そこのイザベラの姉になります」
エルザは硬直してしまったたが、慌ててその場で膝を曲げて頭をさげる。
「減点ね、ガド」
ロウの膝の上のケイラがぼそりと言った。
「そんなあ、大叔母様」
すると、ガドニエル女王(?)が切なそうな顔になる。
「まあいいや……。とにかく、楽にしてください、エルザさん。ところで、アネルザからの話はともかく、さっそく南方統治を任せることができる人材を連れてきてくれたのか、アネルザ。お説教の前に、それについては礼を言わせてくれ。うん、確かにいい人材だ。素晴らしい統治能力を持ってそうだ」
ロウが口を挟んできて、エルザに目をやりながら微笑んだ。
じっと見られて、エルザは布の上から押さえる手に力を込めてしまった。
だが、それはともかく、南方統治を任せるって……?
人材?
「いや、ロウ、王妃殿下にそれを依頼した手紙は送ったばかりだ。アネルザ様がいまここにいるということは、多分、わたしの手紙は入れ違いになっていると思う。エルザ姉上がここに来たのは偶然だ」
イザベラは口を挟んだ。
しかし、エルザにはなにを話しているのか、どうにもぴんとこない。
「そうなのか、イザベラ。まあいいか。とにかく、このエルザを俺にくれ、アネルザ。この荒れた南方統治を任せたい。いいだろう、イザベラ? 独裁官からのお願いだ」
ロウが湯に浸かるイザベラに顔を向ける。
「また、勝手に……。まあ、好きにせよ。姉上が承知すればのことだが……」
「じゃあ、決まりだ。エルザさん、今日から、このクロイツ領を中心とする南方地方を任せます。官職名はなにがいいですか。“総督”、“地方長官”。“代理王”とか、“副王”でもいいですよ。好きなのを選んでください」
「ま、待ってください。一体全体、なにを言われているのか……」
エルザは途方にくれてしまった。
「ロウ、それはいいが、その前にわたしの話を聞いて欲しいんだ。お願いだ――。それと、ガドニエル陛下、ご挨拶があとになることをお許し願いたい。この国の王妃のアネルザです」
すると、アネルザが声をあげた。
そして、湯の真ん中で立ったままだった裸身を跪かせ、その場で頭をさげる。
エルザは目を疑った。
「わかっているよ。多少は話を聞いている。お前らが始めた騒動で、サキが臍を曲げて、王宮を閉鎖して閉じこもっているんだろう。王都に戻ったら、あれの尻をぺんぺんしてやる。それで一連の騒ぎは終わりだ」
ロウが笑った。
だが、アネルザは湯の上で頭をさげたまま、首を横に振った。
「ち、違うんだ。多分、サキは捕らわれていると思う。殺されてるかも。ミランダも、ベルズもだ。もうわたしにはどうしていいかわからない……。頼む……。王家を……この王国を救ってくれ。お前がなんとかできるかわからないが、もう、お前にしか頼れない」
アネルザが悲痛な口調で言葉を続ける。
ロウが顔色を変えたのがわかった。
「……サキが殺されているかも……? 詳しく話せ、アネルザ」
そして、ロウがアネルザを睨んだまま、静かに言った。
【副王】
第一帝政の初代帝であるロウ=サタルスが統治地域を配下の女性たちに分割統治させる際に、女王たちに与えた官職名であり称号。皇帝代理、地方長官の意味を持つ。
……(中略)……。
副王制度が正式なものになった際に、公的に最初に副王に任命されたのは、「ハロンドール副王イザベラ」「ナタル森林大王国副王ガドニエル」「デセオ副王イザヤ」「タリオ=カロリック統一国副王ロクサーヌ」及び「エルニア国副王スイギョク」である。
この際、ハロンドール国については、西部地方にあったリィナ=ワイズの治める「列州同盟」と南部地域のエルザ総督の管理地域も事実上の独立地域であったため、この両地方のそれぞれの統治者も副王に数えることもあるが、このふたりについては、女王会議の構成員ではあるものの、正式に副王に任命されたわけではなく……(中略)。
……。
……。
そして、第二帝の時代になると、副王制度の性質も変化をし……。
ボルティモア著『万世大辞典』より(ここに再録した引用文はすべてスクルズ記念国際図書館から許可を受けて初版本から抜粋して採録したものである。)