【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「スクルド、全員の伝言球を飛ばせ。集合だ──。あっ、いや、親衛隊はいい。隊長のブルイネンから、あとで説明してやってくれ。それと、集まってくる者については、服は脱ぐ必要はないとも伝えてくれ。そのまま、浴場に入ってこいとね」
しばらくのあいだ、アネルザの話を黙って聞いていたロウが顔をあげて、スクルドという女性に指示をした。
ついさっきまでの、悪戯小僧のようなにやつきはすっかりと顔から消え去り、とても険しい表情になっている。
エルザは、勧められて浴槽には向かっており、ロウたちが集まっている側とは距離をとった縁に腰をおろして膝から下だけを湯に浸けて、ロウとアネルザの会話に耳を傾けていた。だが、ちょっと前まで、周囲の女たちと卑猥な遊びをしてたロウの豹変に、少しばかり当惑してしまった。しかも、この瞬間は怖いほどに真剣な態度であり、この人はこんな顔もできるのかとも感嘆した。
「お任せください」
ブルイネンというのは、ガドニエル女王のそばにいた毅然とした感じのエルフ女性だ。最初に獣人少女に皆が群がっていたとき、ひとりだけ離れていた女性である。話の流れからすれば、女王親衛隊の隊長かなにかなのだろう。
そのブルイネンに、直接にロウが指示を出す関係についてはよくわからないが……。
いや、この集団の関係性には、まだ違和感しかない。
なぜ、ロウが王妃や女王、王太女までいる状況で完全に主導権を握っているのか……。
エルザには戸惑いしかない。
「わかりましたが、シャーラさんはどうしますか?」
一方で、豊かな乳房を持つ人間族の女性が訊ね返した。
あれがスクルドだろうか。
どこかで会った気もして、思い出そうとするのだが、なぜか考えると急に頭がぼんやりとした感じになり、彼女の顔がわからなくなる。
しかし、彼女に対する思考をやめると、柔和で優しげな笑みを浮かべる彼女の表情が知覚できるのだ。
変な感じだ。
それはともかく、そういえば、イザベラの護衛隊長のシャーラの姿が見えないと思った。あのふたりが一緒にいないというのは珍しい気がする。考えてみれば、港までわざわざイザベラが出迎えにやってきたとき、護衛のシャーラの姿はなかった。
「もちろん、シャーラもだ。大事な話だ」
ロウだ。
「了解ですわ」
スクルドが軽く手をあげると、透明の球体が数個出現して、すぐに宙に溶けるように消えた。
あれは、上級魔道遣いがよく通信に使う“伝言球”というものだろう。
「ああ、そういえば、シャーラがいないんだねえ。どうかしたのかい? あいつがイザベラのそばにいないなんて」
口を挟んだのはアネルザだ。
ロウと話をするために、いまはロウの側に寄って湯に半身を浸けている。
「たまには休暇だ。滅多にないことだからな」
イザベラが応じた。
そのとき、ロウのそばにいた小柄な女性、コゼがくすりと笑った。
「昨夜はシャーラもご主人様の当番だったんです、王妃様。だけど、朝方に始めたご主人様のフルコースとやらに耐えられなかったらしくて、今日は動けそうになかったんで、姫様が急遽、休みを言い渡したんですよ」
コゼはくすくすと思い出すように笑い続けている。
「珍しいねえ。あれがイザベラの護衛任務を放棄して、休暇を受け入れるなんて」
アネルザだ。
「いや、あれは受け入れたというのか……。わたしたちが呼ばれて部屋に入ったときには、口から泡を吹いて、失禁もして、意識がない状態だったな。休みを受け入れたというよりも、そうせざるを得なかったというところだろう」
コゼに続いて口を挟んだのは、凛とした雰囲気の人間族の美女である。彼女についてはなんとなく記憶がある。
確か、女騎士のシャングリアだ。
エルザがタリオに嫁ぐときには、すでにそこそこ王都でも有名な存在であり、そういえば、ノールの離宮でイザベラたちと合流してから、あのシャングリアも冒険者としてのロウのパーティー要員だと教えられた気もする。
「相変わらずだねえ」
アネルザが嘆息した。
「ご、ご主人様、先ほど話に出たフ、フルコースとはなんですか。わ、わたしは経験させてもらってないと思うのですが――」
すると、ガドニエル女王が突然に大声をあげた。よくわからないが、すごく切羽詰まった感じでもある。
「フルコースはフルコースだよ、ガド。まあ、そのうちな。それに、シャーラのはフルコースじゃないぞ。その半分で動かなくなって断念した。半コースだな」
ロウが笑った。
すると、怖そうだった顔が柔らかくなり、とても親しみやすそうな雰囲気に一瞬で変わる。
エルザは急に胸が締め付けられる気持ちになり、またもや、自分の変化に戸惑ってしまう。
「そ、そのうちとはいつでしょうか? こ、今夜でしょうか――。それとも、明日……」
しかし、女王がさらに詰め寄るような物言いになる。どうでもいいが、ガドニエル女王というのは思っていたよりもかなり、愉快な性質の方みたいだ。
「ガド、自重してください。そもそも、この話の流れで今夜ということはありません」
ロウのそばにいる乳首に金属片のあるエルフ美女がぴしゃりと言った。
「そうね。黙りなさい、陛下」
さらに、ケイラだ。
女王がしゅんとなる。
「さて、ところで、これからのことについて話し合いをする前に、申し訳ないが片付けなければならないことがある……。エルザさん――」
すると、突然にロウがエルザの名を呼んで、こっちに視線を向けた。
なぜか、エルザはその場でびくりとなってしまった。
「は、はい。なんでしょう?」
エルザは慌てて応じたが、恥ずかしくも声が少し裏返ってしまった。
どうして、こんなに動揺するのか……。
自分で自分が理解できない……。
「ここから先の話は申しわけありませんが、身内だけの話になります。大事な話になるんです。秘密事項ですから……」
すると、ロウが静かな口調でエルザに言った。
しかし、エルザはちょっとびっくりした。
「わたしが身内ではないとおっしゃるのですか。イザベラの姉であり、義理の関係とはいえ、そこにいる王妃アネルザ様の娘なのですが」
少しむっとした。
身内ではないと言われたのが、自分でも驚くほどに不本意だったのだ。
「そして、タリオ大公アーサー殿の妻でもある」
ロウが言った。エルザの身分を正確に知っていたのは意外だったが、まあ、誰かが教えたのだろう。
「わたしは、すでに離縁した出戻りです。そうでないのは手続きだけの話であり、わたしはハロンドール王室に戻ったのです。まさか、裏切りの懸念を?」
そもそも、この集まりの中で、ロウというのはどういう立場なのか?
なぜ、ロウからそんなことを言われないとならないのか。
さすがに、裏切る可能性のようなことを示唆されては、エルザも穏やかではいられない。
「そうではなくてですねえ……。なんというか、絶対にこれからの話を口外しない保証がないですよね。仲間じゃないですから……。必要な話は、あとで必ずお伝えすると約束します。ですから、おひとりにして悪いですが、ここから一度退出を」
「わ、わたしに出ていけと? だ、だって、彼女たちだって……」
思わず、三人の侍女に視線をやってしまう。
人払いしたいのは理解できるが、侍女たちすら同席を許される会合に、ハロンドールの第二王女である自分が許されないのか――。
不本意だ。
そうだ。
とても、不本意なのだ。
なによりも、ロウに仲間でないと断定されたのが、自分でも理解できないほどに腹がたった。
実際に会ったばかりであって、ロウがそう思うのは当たり前だとは、理性ではわかる。
しかし、不可思議にも、エルザはロウから阻害されようとしていることに、ものすごく動揺している。
「だったら、仲間になればいいさ……。それで裏切りはできない……。そもそも、そのつもりだったはずさ。そうだよね、エルザ?」
すると、アネルザが口を挟んできた。
アネルザだけでなく、この浴場にいる全員の視線がエルザに向いていることに気がつく。
「……それとも、仲間になりますか、エルザさん?」
ロウが口の端をあげて微笑んだ。
その瞬間、突然に魅了の術にでもかけられた気分になり、エルザはぐらりと倒れそうな錯覚に陥る。
これまでに、散々に言われてきたから、ロウの仲間になるというのが、どういう意味であるのかはわかっていた。
彼は多くの女と愛を交わす。
そして、愛を交わした女のことは大切にする。仲間になるということは、つまりそういうことなのだ。
少しばかりは、覚悟のようなものもしていたが、いきなり言われても……。
「な、仲間とは……?」
しかし、思わず、なにも知らない感じで訊ねていた。
口に溜まった唾液を飲み込む。
そもそも、なんなのだ。この男は……。
見られるだけで、身体が熱くなる?
ありえないが、どんどん圧倒される。落ち着かない気持ちになるのだ。
しかも、子宮の奥がじんじんと疼くような……。
見つめられて、話しかけられるだけで?
あり得ない――。
あり得ないはずなのに……。
「仲間というのは、この男の女になるということさ、エルザ」
アネルザだ。
にやりと微笑んで、さらに口を開く。
「……ここにいるのは、王妃もない。王太女もない……。多分、ガドニエル女王陛下もそうなんだろうさ。この集まり……ファミリーの中心はロウ……。そのロウに集まる女たちの一党だ。それに加わるか、あるいは、とりあえず、ここから退出するかだ……。覚悟しなよ。さあ、どうするんだい、エルザ?」
アネルザが白い歯を見せた。
わたしは……。
「なるほど……」
すると、突然にロウがその場に立ちあがって、ざぶざぶと湯の中をわたってこっちに近づいてきた。
「わっ、わっ」
思わず赤面して声を出す。
なにしろ、なにも隠すことなく近づくので、股間の性器も露わだ。
どうしていいかわからない。
「エルザさん……。いやなら、振りほどくことだ」
全裸のロウが微笑みながら、硬直して動けないエルザの目の前にきて、顎を持って、くいと軽く上を向かせた。
しかも、エルザの胸から下に巻いている布をもう一方の手で掴んでいる。
「えっ? えっ? えっ?」
「俺たちの一党に入るんだ……」
ロウがエルザの耳元でささやき、顔をエルザの顔に接近させてきた。
それだけでなく、布を握っている手に力を入れたのがはっきりとわかった。
「ひいっ」
さすがにエルザは、激しく抵抗しようとした。
ゆっくりで申しわけありません……。