【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
とんでもないことになったと思った。
自分がここにいることが場違いにも程がある。
少なくともナールは普通の人間だ。
こんな、神々の性宴のようなものに参加するような立場ではないのだ。
とにかく、目の前で起き続けていることが信じられない。
たったいま起きた一連のこともそうだ。
この浴場の豪華さそのものが、まさに神の御業という感じであるが、そこに飛び込んできたのは、あの冒険者ギルドのドワフ族のミランダだ。
外観こそ、ドワフ族の特徴として人間族の童女のような小柄な可愛らしさを示すが、ひと癖もふた癖もある冒険者の荒くれどもを束ねて統帥する、王都では知らぬ者のない女傑である。元は、
強くて、頼もしくて、実質的なギルド長として面倒看もいい。
さらに、顔は可愛いのだ。
ひそかに、王都の男たちの中で人気があるのをナールは知っている。
そのミランダがなんだか怒った様子でやって来て、軍人のナールでさえ、ちょっとぞっとした気持ちになったのに、天道様は愉しそうな笑みさえ浮かべてミランダをあしらい、いきなり縄を出して、ミランダを縛り始めたのである。
ミランダはミランダで、天道様の前に出ると怒りが突然に消失したように大人しくなり、諾々と天道様の縄を受けだした。
とにかく、その光景に、ナールは圧倒されてしまった。
縄掛けの途中も、ミランダは抵抗の素振りを示すときもあったが、天道様がミランダのお尻をぱんと叩くと、途端に大人しくなったりもした。
ナールは、ただただ唖然とし続けた。
そして、ちょっと前に、天道様とミランダは突然に目の前から消えた。
移動術なのかと思うのだが、移動術というのは、魔道遣いの中でもとんでもなく高位の魔道遣いでしかできない技であり、天道様が移動術の使い手とは知らなかった。
もちろん、スクルド様もおられるし、おそらく、エルフ女王のガドニエル陛下は、移動術は遣えるのだろう。
だが、このお二人が魔道を遣った感じはなかった。そもそも、おふたりとも残っている。移動術というのは、確か、術者も移動するというのが原則のはずだ。
それに、天道様は、二ノスという時間をどこかで過ごして、すぐに戻るということを口にされた。
意味がわからなかった。もしも、天道様が口にされたことを言葉通りとするのであれば、それはまさに神の行いなのだが、ナール以外に不審さを感じた雰囲気の女性はいない。
自分の聞き間違いか、なにかの勘違い、それとも、仲間内だけの符合のようなものかとも考えた。
それに、天道様そのとき口にされた言葉……。
ミランダを百回絶頂させると……。
耳を疑った。
そもそも、百回などあり得ないが、どの女もざわめきはしたが、不審がる様子はない。天道様が百回というのであれば、百回なのだと、言葉そのものは疑ってはいない感じで、しきりに、その試練を与えられることになったミランダに同情するだけだ。
本当に、天道様がミランダを相手に、百回の絶頂をお与えになるというのを信じている気配だった。
だが、百回……。
百回の絶頂などあり得ない。多分、ナールがその試練を与えられたら、途中で死ぬ。
絶対だ。
それを全員が平然としている?
おかしいだろう──。
そのナールの感覚の方がおかしいのか?
しかし、それが嘘ではないことを示すように、姿を消す直前に、まばたきするほどの時間で、天道様はミランダを三回絶頂させられた。
それも、お尻を犯しながら……。
気がつくと、ナールは自分の股間にどろりとしたものが溢れていることに気がついた。
そっと見ると、ほかの女性もだが……。
いずれにしても、集まっている女が凄まじい顔ぶれだ。
エルフ女王ガドニエル陛下……。この美貌は、あの魔道で公開された映像の姿と一緒なので、彼女が女王陛下なのは間違いない。
その女王陛下に気さくに話しかけ、笑い合う女性たち……。
それだけで、ナールはここに自分がいてはいけない気持ちになる。
また、いまも、浴場の彫刻のことで話し込んでいる屋敷妖精と魔妖精……。
そもそも、ふたつとも存在が貴重のはずなのに、そのふたりが世間話のように会話している。
もう、考えたくない。
ナールの常識がおかしくなりそうだ。
さらに、アン王女……。妊娠をされているという噂だったが、それは本当だった。あまり表に姿を現さない王女殿下だったが、目の前に見たアン王女は、とてもお美しく、光り輝くようなオーラがあった。
しかも、とても温和で温かい気持ちにさせてくれる方だ。
ナールのような者に何度も話しかけてくれ、自分も客人だけど、遠慮しないでいい、好きにしていいと繰り返し、さっきから語りかけてくれもする。
本当に優しい……。
ほかにも、有名な第二神殿のベルズ様……。
彼女も有名人だ。
かつては、スクルズ、ベルズ、ウルズ様の三人美女の王都の三神殿の筆頭巫女で名を馳せ、ベルズ様は今では、神殿の巫女としての活動のみならず、魔道技術の開発や魔道研究のサロンを定期的に開いたりして、その正面では王都の第一人者である。彼女の魔道サロンに入会したくて、なんとか認められようと奮闘している若い研究家たちの話はよく耳にする。
ベルズ様に声をかけられるだけで、有頂天になる若者は多い。
こんな人たちと裸で過ごすなど……。
そして、女豪商のマア様もいる……。
マア様にしても、本当に本当に、ここにいるのは、あの女豪商のマア様なのだろうか。
もともとはタリオの方であり、ハロンドールの王都にやって来てから、それほどの月日があるわけじゃないが、すでに有名な交易商だ。
集めている富は、ハロンドール王国内のどんな王侯貴族を凌ぐとも言われていた。
とんでもない人なのだ。
だが、六十歳を超えた老女だと耳にしていた。
しかし、みんながマアと呼ぶ方は、とても若い方で美しく瑞々しい肌をしていた。
まだ二十歳のナールが気後れするほどにだ。
我慢できなくて、最初に集まって談笑しながら食事ということになったときに、思わず、年齢を訊ねてしまった。
マア様は、六十二だと笑って答えた。
だけど、天道様の起こした奇跡で若返ったのだという。
耳を疑ったが、どうやら本当らしかった。
だが、それをマア様が話したとき、ナール以外の誰も驚かないし、感動もしない。ただただ、当たり前のことを聞いたかのように平然としている。
しかし、人が若返るなど、魔道でもあり得ないはずだ。
確かに変身魔道というものはあるが、それと本当に若返るのとは別のことだ。
不思議がるのは、ナールが異常なのか?
とにかく、集まっている女という女の誰もが美しい。
こんなところに混ざりたくない。
肌質さえ、六十歳を超えたマアにかなわないのだ。
ほかの女たちは、それ以上である。
そこに自分も全裸になって参加する?
なんの拷問なのかと思った。
もっとも、天道様のお手つきになってから、まだ半日ほどだが、ナールの目に見える自分の肌は、ナールが知っている自分の肌よりもずっときれいになっていて、それだけはちょっと救われた。
だが、ここにナールがいるのは場違いという気持ちには変わりない。
そして、ランという女性……。
この人のことは知らなかったので、やっとナールの気持ちに共感をしてくれそうな人を見つけた感じで嬉しかった。
ランという女性も、自分は普通の庶民女性だと自己紹介した。
ナールはほっとしたのだ。
しかし、それは束の間だった。
少し話しただけで、とても頭のいい女性だとすぐにわかった。ただ遠慮深いだけだ。
それに、綺麗で可愛いし……。
やはり、ここはナールがいていい場所じゃない。
なによりも、スクルズ様……。
救世主様だ。
スクルド様と名乗っておられるようだが、間違いなくスクルズ様だった。
死んだと聞いていたスクルズ様……。
あの毒杯による処刑の映像は、何度も見た。
兇王ルードルフに責められ、めかけになるか、毒杯を呷るかと迫られ、躊躇なく毒を飲んで死なれたスクルズ様……。
死したそのスクルズ様を辱めるために、王都広場に死骸を裸体にして晒させたルードルフ王の悪業……。
幾度も、あのときのスクルズ様の無念、口惜しさ、悲痛そうな映録球内の表情に涙した。
そのスクルズ様が、こんなにも幸せそうに笑って……。
ナールは、その姿を見るだけで嬉し涙がこぼれて仕方なかった。
コゼは、あのスクルズ様の死そのものが茶番であり、もともと誰も死んでいないと幾度か言ったが、そんなことはどうでもいいのだ。
スクルズ様がここに存在するということがありがたいのである。
ありがたくて、ありがたくて、嬉しい……。
その御姿を見れたのはよかった。
だけど、もう帰りたい……。
コゼは食事のときにも、股に鈴をぶら下げている女のどこがありがたいのかと、諫言のような言葉を告げたが、ありがたいではないか……。
あの鈴の音を聞くと、和やかな気持ちにさえなりそうだ。
スクルズ様が腰を振る……。
ちりんちりん……。
乳房を動かす……。
ちりんちりん……。
なんて素晴らしい……。
コゼにその気持ちを話すと、心底小馬鹿にしたような顔をしたが、いいではないか……。
ちりんちりん……。
自分もひそかに、あの鈴を買ってやってみようかな……。
ちりんちりん……。
それにしても、どうやって股にぶら下げているのだろう……?
「戻ったぞ」
天道様の声がした。
消失する前に縄でがんじがらめに縛られていたミランダと、これもまた神がかった性技の御業で彼女を責めていた天道様が戻ってきたのだ。
ほかの女たちに誘われるまま、食事の席に戻って、ちょっとばかり談笑しただけのほんの少しの時間でしかなかった。
戻ってきたミランダは、赤子のように泣きじゃくっていた。
すでに縄は解かれていて、胡坐になって苦笑のような表情の天道様に、正面から両手両脚で抱きついて号泣をしている。
ミランダの全身は火照りきって真っ赤であり、ものすごい量の汗をかいていた。汗だけじゃなく、股間から足首にかけての愛液と、涙と鼻水と涎もすさまじい……。
とにかく、体液という体液を頭からざぶざぶと被ったという感じだ。
それを天道様になすりつけるように抱きしめ、天道様も笑ってそれを受けとめている。
ほかの女たちが集まっていくので、自分もついていく。
「わあ、大変。本当に百回いったんですか?」
コゼが天道様に訊ねた。
「いや、六十回でやめた。それでこんな風になってしまってな。これでもちょっと落ち着いたんだぞ。六十回でやめたときはもっとすごかった」
天道様は笑った。
しかし、あのミランダがこんな風にもなってしまう修練……。
ナールはぞっとしてしまった。
「ほら、みんな見てるぞ。いい加減に泣き止め。中止してやっただろう、ミランダ」
ミランダを抱きしめている天道様が優しく彼女の頭を撫でている。
「だって、だって、だって。ひどい、ひどい、ひどいじゃないかい──。ひどいよ──、ひどい──。あああっ、ああああん──」
ミランダは毀れたかのようだった。
まるで童女のように、天道様に悪態をつき、抱きついている手で背中をこずいたりしている。
とにかく、こんなミランダの姿など、ちょっと想像もできなかった。
「ほら、ミランダ、洗浄魔道をかけてやろう。こっちに来て休め……。ロウ殿、もういいのだろう。折檻とやらは?」
「まあな」
「そら、ミランダ」
ベルズがミランダを抱きかかえるように引っ張った。
「さあ、ミランダ……」
スクルド様も一緒にミランダを抱いて寝椅子に連れて行こうとする。
「だって、こいつひどいんだ……。えぐっ、えぐっ、えぐっ……、ひどいんだよ……」
ミランダがふたりに抱えられて天道様から離されながら、泣きじゃくり続ける。
天道様のミランダへの行いは、ものすごく厳しいものだったみたいであり、凄まじいことだったらしいことがわかる。
だが、まだ未熟なナールにはわからないだけで、きっと意味のあることだったのだろう。
百回絶頂……。
だけど、無理……。
いつか、この試練に挑戦してみたいとも思わない。
「さて、じゃあ、みんなの相手をする前に、アンとノヴァ……。ちょっとだけいいか?」
ミランダが天道様から離れると、天道様がアン王女たちを呼んだ。
ノヴァというのは、アン王女と一緒にいる女性だ。
どういう関係なのかわからない。
はっきりと言って、恋人同士にしか見えないし、天道様を喜ばせるためだという装束では、アン王女の首につけた首輪の鎖をノヴァが持っている。
食事のときに接した雰囲気では、ノヴァがあれこれとアンに指図している感じであり、ふたりの主導権はノヴァにあるみたいだ。
それでいて、あまりノヴァは喋ったりもしない。
ノヴァが見ているのは、アンだけだ。そして、ときどき、天道様……。そんな感じだ。
とにかく、そのふたりが天道様に呼ばれた。
次の瞬間、三人の姿が消えた。
しかし、すぐに現れた。
「えっ?」
ナールは思わず声をあげてしまった。
なにしろ、姿を現した天道様は、床に頭をつけてお尻を高く上げたノヴァを後ろから犯していて、アン王女はそんなノヴァを顔側から支えているという状態なのだ。
アン王女が辛うじて乳房の半分と下腹部をぎりぎり隠すだけの短い前掛け姿であるのと、ノヴァが腿から下だけの吊りズボン姿であることには変わりないのだが、ふたりが身にまとっている布の部分には、三人の体液と思われるものがあちこちに飛び散ってついている。
雰囲気からして、かなり長く三人で愛し合い続けているという感じだ。
拘束はない。
三人で固まって性愛をしている。
だが、三人が消えたのは、一瞬前なのだ。
「い、いくうっ、いきます、ロウ様──。ま、またいきます。いきます、お許しを──」
後背位で犯されているノヴァがいきむような声を出した。
「あ、ああっ、は、激しい──。ノヴァ、激しいです……。あああっ、あああっ」
だが、びっくりしたのは、ただ前からノヴァの顔側を抱えているだけのアン王女が、まるで一緒に天道様に犯されているような仕草であることだ。
ノヴァが天道様から与えられている快感を、一緒にいるアン王女も受けているという様子である。
「ふふふ、びっくりしている? あれは快感の共鳴なのよ」
すると、たまたま横にいたコゼがナールにささやいてきた。
「共鳴……ですか?」
意味がわからない。
「ご主人様はあのふたりを犯すときには、必ず、あの快感の共鳴をして犯すの。ノヴァを犯すときには、同じ快感をアン様にも与えるようにし、アン様を犯すときには、ノヴァも気持ちよくさせる……。ご主人様は絶対に、あのふたりを離さない。お優しいのよ……」
コゼが三人を見守りながら言った。
ナールは、そう語るコゼこそ、とても優しい目をしていると思った。
「快感の共鳴ですか? そのようなことが?」
すると、ガドニエル女王が不思議そうにコゼに声をかけてきた。
「できるわ。あたしだって、エリカやシャングリアの快感を繋げられて、何回、あいつらの快感を強制されたか……。あれはあれで、つらいのよ。他人の快感を無理矢理に与えられるんだからねえ……。あのふたり、感じやすくて、快感のあがりかたが強烈だし……。まあ、アン様とノヴァに限っては幸せそうだけどねえ」
コゼだ。
そのあいだも、天道様がノヴァを犯す場面が続き、やがて、ノヴァは身体を大きく震わせて背中を弓なりにして絶頂した。
「あああああっ、アン──。ロウ様ああ」
「ノヴァああああ」
ノヴァだけでなく、明らかにアン王女も絶頂した。
天道様がノヴァに精を注いでいるのがわかる。
それをノヴァとアンはふたりで受けている。確かに、ふたりは一緒に犯されている。
ナールは納得した。
快感の共鳴か……。
そして、天道様がノヴァから男根を抜く。
ノヴァとアンはその場にがくりと脱力した。
「ご主人様、お掃除しますね」
たったいまノヴァの中から抜け出た天道様の一物を口に咥えたのはコゼだ。
天道様が脚を拡げて立っていて、その前に跪いたコゼが口で天道様の股間を舐めている。
ちゃんと両手を背中に回して組み……。
それはいいのだが、いつの間に……?
ついさっきの瞬間まで一緒に、ナールとともに、女たちの後ろ側にいたと思っていたのに……。
「あんっ、また先を越されましたわ」
横でガドニエル女王が心の底から口惜しそうな声を出した。
「しかし、大丈夫なのか、ロウ殿? アン様は妊娠しておられるのだろう」
ベルズが荒い息をして、しゃがみこんでいるアン様たちを介抱しながら天道様に言った。
「問題ない。ちゃんと見極めてる。それに、お母さんが気持ちよくなって、胎教に悪いわけがない。そもそも、俺の精はお母さんも子供も元気にする。そういう念を込めている」
天道様が微笑んだ。
ならば、間違いはないのだろう。ナールは安心した。
天道様の言葉に、誤りがあるわけがない。
「……ところで、みんなに報告がある。ふたりの許可をもらったので話すが、アンのお腹にいる子供は、アンとノヴァのあいだに生まれた子供だ。対外的には俺の子ということにするが、実はふたりのあいだにできた子なんだ。それをせめて、みんなにだけには知っておいて欲しいということになった」
天道様がコゼの奉仕を受けながら言った。
アン王女とノヴァのあいだの子?
女同士で生まれた子供ということ?
どういう意味?
ナールは首を傾げた。
「あのう、どういう意味ですか? おふたりの子というのは?」
スクルド様だ。
「文字通りの意味だ。実は今回の出発前に、ふたりにある淫具を与えた。ふたなりの淫具といって、それを嵌めるとどちらかの股間に男根ができて、相手の膣に精を放つまで男根が消えないという淫具だ。そのときに、ちょっと、俺が余計なことを喋ったみたいでな。もしかしたら、それで子ができるかもなあ……。みたいなことを……。その結果、本当にできたんだ。淫魔術で確認したから間違いない。アンのお腹にいるのは、そのときに、ノヴァの精を受けてできた子だ」
天道様が頭を掻いた。
えっ?
男根ができる淫具?
それで子供ができる?
なにそれ?
それって、奇跡の魔道具じゃないのか?
世の中には、愛し合っている女性同士の恋人はたくさんいる。天道様にお手つきになる前の昨日までのナールがそうだった。
いま天道様が語ったような奇跡の淫具があるなら、どんな大金を出しても手に入れたいと思う女はいくらでもいるのではないだろうか。
魔道であっても、そんなことが可能だとは耳にしたことはない。
可能ならば、もっと話題になっている。
女同士で子を作るなど絶対に不可能事だ。
しかし、天道様はその不可能事をいとも簡単になされたのだ。
まさに、神様……。
もはや、信じる信じないの話ではない。
神はここにおられる……。
天道様……。
「うわっ、つまり、アン様とノヴァの子供? おめでとう──。だけど、ご主人様の淫魔術を介した子なんだから、三人の子よ。とにかく、おめでとうございます──。よかったああ──。あんたたち苦労したふたりだから、あたしも嬉しい。あっ、ごめんなさい。アン様に生意気な口を……」
跳びあがって喚声をあげたのはコゼだ。
しかも、天道様の奉仕を中断してしまっている。
「いえ、嬉しいです、コゼさん」
アン様がにっこりと微笑んだ。
「あっ、ごめんなさい、ご主人様も。途中でやめちゃいました」
また、コゼはすぐに奉仕の体勢に戻ろうとしたが、天道様はコゼの頭を優しく撫でてそれを制した。
「ありがとう、十分だ」
天道様が言った。
「あっ、ならば、わたくしが……」
ガドニエル女王が進み出ようとした。
だが、天道様がそれも手で制した。
ガドニエル女王ががっかりとした感じで肩を落とした。
それにしても、本当にこの女王陛下は気さくで陽気で、そして、天道様に対して赤裸々に淫乱だ。
だが、面白いと思うのは、天道様は嗜虐的に女を愛する傾向があるので、どの女も被虐の快感、いわゆる「マゾ」的な傾向が強いのだが、ガドニエル女王に限っては、決して受け身ではなく、積極的で貪欲なマゾであることだ。
まだ接したのは短いが、言葉の端々、行動のひとつひとつにそれが垣間見える。
まあ、ある意味、やはり女王なのだ。
そんなガドニエル女王をしっかりと受けとめ、ときにはいなし、宥めて、みんなと融和するように天道様は導いている。
やっぱり、天道様はすごいと感じる。
とにかく、天道様はガドニエル女王に限らず、女たちをよく見てる気がする。
いまも、天道様はほぼ食事も飲み物も口にされてない。
女たちには食事をさせるのに、自分はひたすらに、女たちに愛と快楽を与えることに徹して、愛の行為を繰り返している。
一見するだけだと、女たちがひとりの天道様に尽くして、奉仕をしているような感じだが、実際には違う。
与えられているのは女側であり、与えるのは天道様──。
貰う側は女──。奉仕するのは天道様──。
慈悲を向けられるのが女であり、見守られるのも女……。
やはり、天道様は素晴らしい……。
天道様に見られる……。
それだけで、ナールは幸福感でいっぱいになる。
「とにかく、よかったですね、おふたりとも」
マアだ。
「おめでとうございます」
ラン……。
ほかの女たちも次々に祝福の言葉をかけ始める。
ナールも慌てて、お祝いの言葉を口にする。
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
アン王女とノヴァが絶頂の余韻で身体をしゃがみ込ませたままの姿で嬉し涙を流しつつ頭をさげた。
事情はわからないのだが、なぜか心が温かくなる光景だ。
ナールは、またもや、天道様が奇跡を起こされたのだと理解した。
「俺からもありがとう。そして、もうひとつ報告だが、アンは今回の婚姻式で俺の妻のひとりになることを受け入れてくれた。多分、イザベラの戴冠式の直前になると思うが、この王都で合同結婚式を行う。しかし、婚姻式では便宜的に俺が夫で、アンが妻になるけど、本当のアンの夫はノヴァだ。そのつもりで俺はアンと婚姻の絆を結びたい」
天道様が嬉しそうに言った。
「ご主人様、光栄です」
「本当にありがとうございます」
アン様とノヴァが天道様に頭をさげる。
天道様は、それを笑って制した。
「とりあえず、妻として、イザベラとガドとアン、エリカとコゼとシャングリア、さらに、イットとマーズが式典に参加する。あとはミランダだな。ほかに妻として婚姻式に出たい者がいれば、追加するぞ。妻だろうと、そうでなかろうと、俺たちの関係に変化はないけどね」
天道様が半分お
二か国の女王ふたりを含めた合同婚姻式?
そんな国家行事の計画をナールが聞いていいのだろうか?
ちょっと戸惑ってしまう。
「あれっ、ちょっと待っておくれ。もしかして、聞き間違いかもしれないけど、いま、あたしの名前を婚姻式ときの嫁として口にしたに思ったんだけど……」
口を挟んだのは、いつの間にか復活した気配のミランダだ。
ただ、まだぐったりとした感じで、寝椅子のひとつに横になっていた。しかし、いまは慌てて身体を起こした感じだ。
「口にしたな……。ミランダは同意したぞ。さっき六十回絶頂したときの、四十回目くらいのときと思うけどね」
天道様が笑った。
「そ、そんなの覚えてないさ──。だって、女王たちが妻になる式典に、あたしが──? 無理──。無理、無理、無理、無理だよ──。そもそも、あたしはこう見えても、おマアとほぼ同じ歳なんだ。かなりの歳なんだよ──。もう結婚なんて、とうに諦めているし……」
「いいじゃないか。妻だろうが、愛人だろうが──。今回の婚姻式では、国境どころか人種も越えてハロンドール国とナタル国が多くの者たちと融合するという意味を持たせるんだ。エルフ族の女王、人間族の女王──。それに冒険者も、貴族も、庶民も、元奴隷も、貴賤の隔てなくひとつになる。獣人もドワフもだ。残念ながら、ドワフ族の女の知己は、俺にはミランダしかいない。いやだと言っても、結婚してもらうからな」
天道様が笑った。
「いやだ──」
ミランダが叫んだ。
その瞬間、天道様とミランダの姿がその場から消えた。
*
ナール視点の描写は、一話にするつもりでしたが、一万字を超えたところで断念し、ふたつに割ります。このナール視点の続きは、明日投稿になります。