【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「わ、わたしはこんなことまで要求しておらん。なんとかしなさい、ノルズ──」
寝台を椅子代わりにして座っているウルズが怒鳴った。
第一神殿の筆頭巫女であるウルズの私室だ。
ノルズはだんだんと冷静さを失っていく様子を見せるウルズの声を右から左に受け流しながら、卓の上にある葡萄酒を味わっていた。
筆頭巫女であるウルズの私物品だが、さすがに性質のいいものだ。濁りがなく、とても味が澄んでいて、なによりも香りがいい。貴族とは名ばかりの没落した実家からこんないいものを贈られるわけはないから、伯爵家が実家のベルズからの贈り物だろうか。それとも、王都三大神殿の筆頭巫女ともなれば、こんな最高級の葡萄酒の贈答も普通なのか?
いずれにしても、こんなにいいものを葡萄酒の味もわからないウルズにはもったいない。
「聞いているのか、ノルズ──? すぐにスクルズが王軍に逮捕されないように手を回すのだ。お前に命じたのは、スクルズではなく、このわたしがバルドランドの神殿長に選ばれるようにしろということだけだ──。スクルズを酷い目に遭わせろとは言わなかった。すぐになんとかせよ──」
ウルズが大きな声をあげた。
まったく、この馬鹿女は──。
ノルズは内心で舌打ちした。
私室とはいえ、まだ陽は高い昼間だ。
感情のまま言葉を走らせ、それが壁越しに誰かの耳に入ったらどうなるかということを考えないのだろうか。
まあ、考えないのだろう。
だから、ノルズという久しぶりに再会したかつての女友達の口車に乗って、スクルズとベルズを蹴落として、ウルズが女神官としての大きな出世の機会であるバルドランド市の神殿長に選ばれるための工作を行うなどということに、手を出してしまうのだ。
この女は昔から変わらない。
気位が高く、自分がなんでも一番であるべきだと思い込んでいる。それでいて、実力は大したことなく、そのために思わぬ失敗を繰り返す。
それを尻拭いして助けているのは、いつもベルズやスクルズという友人たちなのだが、本人は助けてもらっているなどとは考えず、女友達がウルズを助けるのは、当たり前くらいにしか思っていないのだ。
この女は、少女時代の百合の関係がいまでもずっと続いていると思い込んでいる。
だから、三人巫女の中で、ひとりだけに将来の出世が約束されている地方神殿長の椅子の機会が与えられるというときになったとき、それが自分ではなく、スクルズになりそうだったことに我慢ができなかったのだ。
図体の大きいだけの子供だ。
ノルズは改めて思った。
だからこそ、ノルズが、ウルズに取り入って、第一神殿だけでなく、スクルズのいる第三神殿やベルズのいる第二神殿にも、入り込む立場を手に入れることに成功したのだが……。
まだ、少女だった時代──。
ウルズ、ベルズ、スクルズ、そして、ノルズは、小さな地方都市にある神学校の生徒だったのだ。同窓であり、寮の部屋もずっと一緒だった。
ほんの幼い頃から修行を続けていた四人だったが、初潮を向かえ、身体が童女から大人の女にと変化し始めると、いつしか、四人はウルズを中心とした百合の性愛をする間柄になっていた。
神官の修行というのは、神官としての知識や仕来たりを学ぶほかに、魔力を駆使する魔道遣いとしての修行もある。
魔道は心の平静を伴わないと力を発揮できない。心を穏やかにするには、自分の欲望や感情をうまく統御するのが大切なこととされた。
特に、淫欲は、あらゆる人間の欲求の中で、魔道遣いがもっとも克服しなければならないもののひとつだ。
抑えるのではなく、必要なときに発散するのだ。
それが、魔道遣いとしての成長に繋がる……。
なぜ、性欲の発散が、魔力の上達に通じるのかについては、まだ解明されていないが、実際にそうなのだ。
そのため、魔道力を学ぶ神官たちにおいては、自慰や仲間うちの性愛は黙認され、むしろ、奨励される部分がある。世間にはあまり知られてはいないが、幼い頃から神官修行している者は、物心ついたときから、そうやって厳しい修業と並行して、性欲を発散することを早くから覚えるのだ。それが魔道力を高めることになることが知られており、ひそかに高等クラスの神官修行には、仲間うちの淫行が修行に取り入れられている。
実際、高い魔道力を駆使する者は大抵は、幼い頃から解放的な性愛の習慣がある。
欲望や感情をコントロールするという点では、このウルズは四人の中でもっとも下手だった。 しかし、四人の中の性愛に関してはいつも中心的な立場にいた。
だが、そういう関係は、ノルズが神殿から追い出されて三人の前からいなくなり、また、ウルズたちが、三人揃って王都の三大神殿に務めることになったことで自然解消した。
しかし、ウルズだけは、その関係はずっと昔のままなのだ。
だから、深く考えもせずに、ノルズという闇の一味にどっぷりと心を染めている者を、ただ幼馴染だというだけで信用して神殿に招き入れてしまったのだ。
そして、今度のバルドランドの神殿長の人選で、スクルズとベルズが候補になっていて、ウルズは候補から外れていると教えると、それに怒り狂い、そして、彼女たちではなく、ウルズが選ばれるようにしてやるとノルズにささやかれると、深く考えることなしに、第一神殿だけではなく、第三神殿、第二神殿にも自由にノルズが出入りできるような立場をノルズに与えたりするのだ。
つまりは、この女は思慮のない馬鹿女でしかない。
「ノルズ、返事をなさいよ。どうするつもりなのよ──。スクルズは、男遊びをした罪で、今日か、明日にも王軍が身柄を拘束すると聞いているわ。その前になんとかしなさい──。いいから、すぐに動くのよ。別にスクルズを殺したいわけでも、神官身分を剥奪させて、王都から追い出したいわけじゃないの──。ただ、わたしが神殿長に選ばれるようになればいいだけなのだ。わかっている?」
ウルズが金切声をあげた。
ノルズはそろそろうんざりしてきた。
馬耳東風の然をとってきたノルズだったが、そろそろ潮時だ。ハロルドの神殿界に対する工作については、一歩先に進めるようにという指示も、「あのお方」から届いている。
馬鹿女には馬鹿女に相応しい処遇を与えることにしよう。
ウルズがノルズを利用しているのではなく、自分がとんでもない組織に悪用されている道具にすぎないということを思い知らせてやる時期だ。
ノルズは手にしていた飲みかけの葡萄酒のコップをテーブルに置いて、ウルズに真っ直ぐに顔を向けた。
これまでと少し違うノルズの強い視線に、ウルズが少しだけたじろいだ感じがした。
「はっきりとさせておこうと思うわ──。スクルズは助からない。スクルズは夜中に神殿を抜け出して、淫らな男遊びをしたことをとがめられているのではないわ。スクルズは禁忌の瘴気の淫具に手を出したのよ。それが彼女の罪なの。だから、王軍が捕縛をしようとしているのよ。巫女が男遊びをしたくらいで、王軍が逮捕するわけないじゃない。馬鹿じゃないの」
ノルズはせせら笑った。
ウルズがぎょっとした表情になった。
「瘴気の淫具? なんのこと?」
ウルズはわけがわからないという顔をした
当然だろう。
ノルズは、スクルズを出世争いから蹴落とすというのは約束したが、どういう手段を使うかは完全には説明しなかった。
また、ノルズがどういう組織に属するものかということも、ウルズは知らない。ノルズのことは、ただ、たまたま、ウルズという昔馴染みを訪ねてきて、女神官としての出世争いに遅れをとりそうな状況だった彼女に、それを覆す闇工作を持ち込んだ便利な女とくらいしか思っていないと思う。
ノルズがどういう狙いで、ウルズを出世させる手立てを与え、それにより、どんな利益がノルズにあるかということを考えもしないのだ。
ウルズを騙すための、二重三重の言い訳や工作も準備してあったのだが、この女は、ただ三人の中の出世競争に勝たせてやると仄めかしただけで、ノルズが三大神殿の全部に自由に出入りできる立場を与えてくれた。
本当におめでたい女だ。
「あんたが、なんのことかを知る必要もないわ──。ただ、あたしはあんたに、女神官として出世する機会を与えた。三人の中で一番魔力が低く、スクルズやベルズという能力の高い魔道遣いがいなければ、大して目立つこともなかっただろうあんたにね──。とにかく、ほかのことは気にしなくていい。あんたには、これからも競争相手をどんどんと蹴落として出世させてやる──。それだけじゃない。低かった魔力もどんどんと拡大するわ。魔道使いとして、途方もない力も得ることになる。ただ、その代わり、裏ではあたしたちの道具となってもらうけどね。それを代償として、表側では大きな栄華を約束してあげるわ」
「こ、これからも出世──? 魔力の拡大──? な、なんのことよ?」
ウルズが唖然としている。
ウルズ、スクルズ、ベルズの三人は、三人美人巫女として並び称されることが多いが、実は、ウルズは、ほかのふたりに比して魔道遣いとしての能力は遥かに劣る。
それが長いあいだのウルズの密かな劣等感だったことをノルズはよく知っていた。
それでいて、三人の中で一番出世欲が高く軽薄だ。
ウルズに目をつけたノルズの判断は正しかった。
この女は面白いくらいに呆気なく、ノルズたちの工作に乗ってくれた。
「聞いたままのことよ……。そろそろ知ってもいい頃だから、教えておくわ──。あんたの身体の中には封印された魔瘴石が埋まっているのよ。魔力の低いあんたにはわからなかっただろうけどね……。これから、少しだけ封印を解放してあげるわ。そうすれば、言葉で説明するよりも、自分の立場がよく理解できるというものだろうしね……」
ノルズは自分の妖力を遣って、封印しているウルズの体内の魔瘴石をほんの少しだけ活性化させた。
「こ、これは……」
ウルズが目を丸くしている。
魔瘴石を活性化したことで、ウルズは自分の体内にある魔瘴石の存在に、やっと気づくことができたのだ。
ウルズの顔が恐怖で真っ蒼になる。
「わかるわね──。スクルズとベルズの中にも同じものを仕掛けたわ。彼女たちがどんなに力の強い魔道遣いであろうとも、眠っているとき、自慰をしているとき、女同士の性愛に我を忘れているとき……。そういうときは必ず無防備になる。だから、近くに侍ることができさえすれば、そういう隙はいくらでも見つけることができたわ。おかげで、彼女たちに魔瘴石を仕掛けるのは難しいことじゃなかった──。ありがとう、ウルズ」
ノルズは笑った。
ウルズは恐怖でぶるぶると震えだした。
無理はないだろう。
魔瘴石というのは、異界に封印されている魔族の力そのものだ。それを身体に宿されたのだ。いつの間にか、魔族の力の源に侵されているというのは、戦慄するほどの怖さであることに間違いない。
「……スクルズとベルズにも仕掛けたけど、彼女たちには別のことを言ったわ。逆らえば、その魔瘴石で殺すと告げている。魔瘴石を一気に解放して、大量の瘴気で身体を充満させれば、そうなるしね……。だから、スクルズは言いなりになったのよ……。だけど、あんたには、いい目を見させてあげるわ。知らないと思うけど、魔道遣いの体内に魔瘴石を置いて、それを遣って、制御された瘴気を溢れさせると、実は体内の魔力が異常上昇するのよ。つまりは魔道遣いとしての能力が怖ろしく向上するということよ……。いまも、かなりの魔力があがったのが自分でもわかるでしょう?」
ノルズは微笑んだ。
「た、確かに……」
ウルズが自分の胸の辺りを押さえた。
ウルズはいま急上昇した自分の魔力の存在を感じているはずだ。
その力でさらに魔力に対して鋭敏になり、瘴気の存在とともに、倍以上に拡大した魔力の凄さを体感していると思う。
これまでの人生において、ずっと密かに抱いていた魔道遣いとしてのウルズの劣等感を払拭するだけの魔力の向上だ。
それがいきなり与えられたのだ。
ウルズは魔瘴石の恐怖とともに、その魅力にも傾くと思う。
案の定、ウルズの表情は単純な恐怖心ではない、複雑なものに変化した。
「あたしたちに従いなさい、ウルズ……。そうすれば、望むものが手に入るわ。身体にある瘴気をもっと活性化してあげる。偉大な魔道遣いになれるわ。その力があれば、誰もがあなたが神官として頂点に立つのも当然と思うはずよ」
「で、でも、魔瘴石の存在など……」
ウルズが困惑した様子で言った。
やっぱり、この女は愚か者だ。
この魔瘴石のために、スクルズが処刑されかけているということを束の間忘れた感じだ。まずは、自分のことなのだ。
まあ、それもいいだろう。
ノルズは本当に、このウルズにこの王都一の女神官になってもらうつもりだ。体内に魔瘴石を持ち、いつでも活性化が可能な生きた特異点になってもらう代償としてだ。
あのお方が考えている、来たるべきときに、それを利用するために……。
「誰にもわかりはしないわ。隠しおおせるだけの魔道遣いになるんだから。世間から見れば、あなたが急に魔力が向上して、魔道遣いとしての能力に開眼したとしか考えないでしょうね。年齢を重ねて、魔道遣いとしての力があがることは珍しいことではないし」
「わ、わたしは能力の高い魔道遣いになれるのか……?」
ウルズが小さな声で言った。
ノルズはほくそ笑んだ。
「なれるわ……。あたしたちに従いなさい」
ノルズは言った。
ウルズは考え込む様子になった。
まあ、ウルズがどういう選択をしようとも、もはや関係ない。ノルズたち組織の「道具」になってもらうというウルズの運命は決まっている。ただ、それにウルズが進んでそうするか、無理矢理にさせられるかの違いだけだ。
ウルズが魔瘴石の力でどんなに偉大な魔道遣いになっても問題もない。
魔瘴石で向上した魔力では、その魔道がノルズたちには効かないのだ。そんな風に細工をしている。
だから、いくらでも魔力を活性化させて、魔道力を向上させても問題はない。
「そ、そうだ。スクルズ……。スクルズは──?」
ウルズが思い出したように言った。
「スクルズのことは大丈夫よ。まあ、神官として生きるのはもう無理でしょうけど、処刑にだけはならないように、あたしたちが処置するわ。奴隷送りくらいですむように工作する。無論、あんたが、あたしたちに従えばだけどね。いずれにしても、あいつは邪魔よ。魔道遣いとして優秀すぎるのよ」
「もしも、わたしが従わなければ……?」
「スクルズは放っておくわ。惨たらしく王都の広場で磔にされて殺されるんでしょうね……。だけど、あんたがわたしたちに加わると誓えば、あたしたちの能力を駆使して、犯罪奴隷送りにとどめてやるわ。神官でなくなり、魔道力も封印されれば、あんな女友達ひとり、どうということもないしね。なんだったら、奴隷になったスクルズをあげようか? あんた、神学校時代からあの女をいじめるのが好きだったものね」
ノルズはけらけらと笑った。
スクルズのことは、いまのいままで放っておくつもりだったが、なんとなく、スクルズを助けてやると言った方が、早くウルズが堕ちる気がしたのだ。
処刑でなく、奴隷化処分に変えさせることも、手を回せばできないこともなさそうだ。
まあ、ノルズとしても、スクルズはむかしは百合遊びの仲間でもあったわけだし……。
「わたしたちって……。あ、あんたって、なにかの組織のひとりなの? もしかして、わたしをなにかの組織に加えようとしているの?」
ウルズは言った。
ノルズは爆笑してしまった。
「あたしが、なにかに属する組織のひとりではないかと、やっと疑問に思ったの? そうね。なにかの組織のひとりに違いないわね」
ノルズは、椅子から立ちあがって、ウルズの座っている寝台に向かった。
ウルズがぎょっとした顔になる。
「な、なにを……?」
大声をあげる気配を示したウルズを、ノルズは魔力で黙らせた。
瘴気で活性化した「似非魔道遣い」は、瘴気を駆使するノルズのような魔獣遣いに対して、魔道の効果がないだけでなく、こちら側からの力を簡単にかけることができる。
「んんん──?」
声が出なくなったウルズが目を白黒している。
ついでにウルズの身体全体を金縛りにしてやった。そのまま仰向けに寝台に突き飛ばす。
「んんっ」
ウルズはみっともなく寝台に仰向けになった。ウルズの閉じられた口から強い呻き声が鳴る。
「……だけど、あたしたちが何者かだなんて、あんたが気にする必要はないわ。あんたはあたしたちの奴隷……。それだけを知っていればいい……。その代わりに、あんたをあたしたちは力の強い魔道遣いに変身させて、そして、全力で出世させる……。それでいいでしょう?」
ノルズは巫女のスカートを腰の上まで完全にたくしあげると、手を伸ばして下着を引き下ろした。
そのとき、部屋の扉が決められた合図で規則的に叩かれた。
「……ちょうどいいタイミングで来たわね」
ノルズはほくそ笑んだ。
術で封印していた扉を解放する。
そこから入ってきたのは、この神殿の神官のひとりであるリーナスだ。
もちろん以前から入り込んでいたノルズの属する組織の男である。
「んふううっ」
ウルズが悲鳴をあげた。
口を封印していてよかった。
この女は大きな声を出すと殺すと脅したところで、こういう状況では、ついつい感情的になって大きな声をあげる──。
そういう女だ。
「始まってますね、ノルズ殿」
リーナスが下半身剥き出しの格好で寝台に横になっているウルズを一瞥してにやりと笑った。
「……ちょうど引導を渡そうと思っていたところよ。これからはあんたがこの女を管理しなさい。ウルズ、あんたはこのリーナスを知っていると思うけど、この男は実はあたしの息のかかった部下でもあるわ。これからは、お前への命令はリーナスがする。リーナスには絶対服従。いいわね──」
ノルズは言った。
リーナスが相好を崩した。
「ほう……。私がウルズ様を?」
「ただ、ちょっとばかり、おつむが弱いからね。躾けるのは手間がかかるかもよ」
「承知しました」
リーナスが嬉しそうに微笑んだ。
一方でウルズは、眼を見開いて驚いている。そして、必死になって、ノルズの金縛りから逃れようと身体を悶えさせ始めた。
だが、無駄なことだ。
もうすでに完全に術がかかっている。
ノルズが解かない限り、ウルズは寝台の上から逃げることもできないし、手足を自由にできない。
「……ところで、第三神殿のスクルズですが……」
リーナスが急に真面目な顔になり、ノルズに耳打ちした。
「スクルズが?」
話を聞いて、ノルズは驚いてしまった。
リーナスが報告したのは、スクルズが行方不明になったという情報だった。
未確認だが、今日の午前中に、スクルズを捕縛に来た王軍にやつした何者かによって、さらわれたらしいのだ。
いま、王軍と神殿が血眼になって、スクルズを探しているが、まだ捕えていないらしい。
スクルズを連れて行ったのが、誰であるかもわかっていないようだ。
「……へえ、おかしなこともあるものね。まあいいわ……。魔瘴石を入れたままいなくなったのは惜しいけど、まあ、もうふたりいるし、ひとりくらい行方不明になってもどうということはない……。それよりも、ちょうどいいから、早速、この女を犯しなさい。この女に自分があたしたちの奴隷であることを思い知らせるのよ」
「でも、本当にいいんですか?」
リーナスがにんまりと笑った。
「いいのよ。あたしも忙しくなりそうだしね……。いつまでも、この馬鹿女に関わっていられないのよ。それに、頭はともかく、この美貌と身体だもの。興味はあるでしょう?」
ノルズはうそぶいた。
「そりゃあ、もちろん……。ウルズ様……いや、ウルズの美しさは、この王都でも有名ですからね。それを犯すことができるというのは光栄です」
「犯すだけじゃないわ……。しっかりと躾けるのよ……。あたしたちの言いなりになる奴隷としてね。自分があたしたちの奴隷だと、身体に染みつくまでしっかりと調教するのよ──。媚薬でも、淫具でもなんでも使いなさい。身体が壊れない限り、なにをしてもいいわ。とにかく、まずは、お前のいいなりになるように、徹底的に調教しなさい」
ノルズは言った。
「ありがたき……」
リーナスはすぐに、下半身を剥き出しにして、ウルズのいる寝台にあがった。
一方で、ノルズはスクルズをさらったという何者かについて考えていた。なんとなく、昨日、第二神殿でベルズの唇を突然襲った頭のおかしな黒髪の若者のことを思い出した。そういえば、ベルズやスクルズのことを助けると叫んでいた気がする。
あのときは、たかが冒険者と気にも留めていなかったが……。
「んふう、んんっ、んん──」
言葉を封じられているウルズが泣き声のようなものをあげた。
リーナスがウルズの股間に指を伸ばして刺激し始めたのだ。
ノルズはそれ以上の興味を失い、テーブルに戻って葡萄酒を味わう態勢に戻った。
しばらくは、眼を閉じて、その葡萄酒を味わった。
本当にいい味だ。
やがて、ウルズの鼻息に甘い声が混じり始めた。
顔をあげた。
ウルズの女陰にリーナスが怒張をめり込ませようとしている。
「んおっ」
ウルズが泣くような声をあげた。
「さすがは、筆頭巫女の高級おまんこですね。締まりが随分といいですよ」
リーナスが下品な言葉を口にしながら、本格的な抽送を開始する。
ノルズは立ちあがると、部屋の隅に置いていた荷から革製の貞操帯を取り出した。
内側には大小の二本の男根をかたどった張形が着いていて、鍵で閉じ合せるようになっている。
「犯し終ったら、これでこいつの股間を塞いでしまいなさい。たっぷりと媚薬を張形に塗ってからね。そうやって、こいつの性欲を管理するのよ。それから、大便も小便も必ず見ている前でさせるの──。数日もすれば、それで身も心も奴隷に成り下がるわ」
ノルズは、ウルズとリーナスが乗っている寝台に、その貞操帯を放り投げた。
リーナスは、ノルズの言葉が聞こえなかったのか、夢中になってウルズを犯し続けている。
ノルズは苦笑して、空になった杯に葡萄酒を注ぎ足した。
しばらくすると、リーナスがまるでサルのような奇声をあげた。
ウルズの股に精でも放ったのだろう。
ただ、リーナスによるウルズへの淫行は終わる気配がない、それどころか、身体を動かせないウルズから、さらに上衣を剥ぎ取って服を脱がそうとしている。
まだ、夕方には時間があるが、リーナスのことだから、夜までウルズを犯し続けるかもしれない。
この男に目をつけたのは、神官でありながらの、女に対する素行の悪さだ。それを利用して工作したら、たちまちに弱味を握ることに成功し、あっという間にノルズたちの飼い犬になった。神殿や宮廷に、リーナスのような者を何人か作ったが、まだまだ、増やせそうだ。
いまのところ、バロンドール工作も順調だ。
ノルズは大きく背伸びをして、長丁場になりそうな、ふたりの性交を見守る態勢になった。
(第15話『女神の娘たち』終わり、第16話『冥王のしもべ』に続く)