※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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878 スカートの中の異物

 一郎は、ラスカリーナの先導で奴隷宮の前庭に臨時に構築されている幕舎の中に入った。

 四周及び屋根を簡易な骨組みと布で組み立てた天幕であり、中は大きなひと繋がりの部屋になっていた。

 また、真ん中の大きなテーブルには、三人ほどの将校らしき者がいたが、ラスカリーナが異変があれば外にいるナールに報告するように告げて全員を退出させる。

 天幕の中が、ラスカリーナとベアトリーチェと一郎だけになった。

 

「ご主人さ……」

 

 ラスカリーナが椅子のひとつを一郎に示そうと振り向いたところで、一郎は無言で指を口に持っていき、「喋るな」という意味の仕草をした。

 

「えっ?」

 

 ラスカリーナが当惑した表情になる。

 構わず、一郎はベアトリーチェに耳打ちをして、天幕の布をはじめ、中にある色々な品物に触れてもらうことを頼んだ。

 一郎の魔眼は、生命のないものであっても、ある程度のことは情報を読み取れるが、やはり命ある者の方が読みやすい。

 特に、相手が女であれば、かなりの精度で情報を収集することができ、身につけているもの、装備しているものをほぼ完璧に認識することができるのだ。

 触っているだけでも同じであり、もしも、なんからの仕掛けがある場合でも、ベアトリーチェがそれに触ったら、その異物をベアトリーチェが持っているものとして詳細に認識することができるのである。

 しばらく、ベアトリーチェに色々なものに触ってもらい、いちいちステータスを読んで確かめていったが、特に天幕内には怪しいものはなかった。

 

 一郎は、奴隷宮の見取り図と手書きの室内図を描いた紙が広げてある大きなテーブルを囲む椅子のひとつに座る。

 ラスカリーナとベアトリーチェのふたりがテーブルを囲む椅子に座るのを待ち、一郎はさっきラスカリーナの軍装のスカートから回収したものをテーブルに載せた。

 透明の粘性体でしっかりと包んでいるが、中身は小指の爪先ほどの黒っぽい円盤状の異物だ。

 

「さっき、ラスカリーナのスカートをめくったとき、スカートの後ろ側の内側についていたものだ。“盗聴具”のようだ。気がついていなかったな、ラスカリーナ?」

 

「えっ、盗聴具?」

 

 ラスカリーナはびっくりしている。

 盗聴具という言葉の表示は、ラスカリーナを見て、すぐにステータスを確認したとき、ラスカリーナが「所持」としているものとして魔眼で読み取ることができた。

 だから、さらに細かく読み取り、その盗聴具がスカートに装着されていることがわかったところで、スカートめくりの悪戯に合わせるようにあちこちをまさぐって探り当てて外したのである。

 盗聴具という言葉から、おそらく、声を隠し聴く道具であると思う。

 だから、一郎はすぐに粘性体で包み、包んでいる粘性体を金属よりも固い硬度にした。

 音というのは空気の振動だ。

 金属で完全遮断してしまえば、外の音が中の盗聴具に伝わることはない。

 いまは、完全に音を遮断している状況だ。

 

 しかし、盗聴具そのものは作動したままだし、一郎がラスカリーナのスカートを触りまくっていたことは向こうにもわかっていると思うので、まだ、一郎がこれに気がついたとまでは判断はしていないと思う。

 突然に音が聞こえなくなったことについては、一郎の手が触れたことで調子が悪くなったのだろうとでも、勝手に判断してくれることを期待しよう。

 

 そのとき、天幕の外からカンカンと金属と金属がぶつかるような音が三回鳴った。

 ナールの合図だ。

 警備の兵や天幕の外に出た将校を天幕から一定距離を離させたという報せである。

 一郎は、亜空間に隠れていてもらっていたみんなを出した。

 すなわち、ガドニエル、スクルド、コゼ、ミランダ、ベルズである。

 

「えっ? えっ、ええっ?」

 

 一郎の亜空間能力のことをよく知らないラスカリーナがびっくりしている。

 移動術でも遣って跳躍してきたのかもしれないと思ったはずだが、まさか、一郎の亜空間に隠れて一緒に同行してきたとは考えてはいないに違いない。

 すでに、ラスカリーナは仮想空間で体験させた羞恥調教を経験済みだが、まだ絡繰りを教えてないので、あの体験はなにかの幻術くらいに考えているのではないかと思う。

 一方で、すぐに、スクルドが魔道を展開したのがわかった。

 

「ふう……。これで、この天幕の内側の声や人の気配が外に伝わることはありません。結界を張りました……。それと、わたしの魔道でも、とりあえずなにも見つかりません。なにもないと思います」

 

 スクルドが疲れたように息を吐きながら言った。

 一郎はくすりと笑ってしまった。

 スクルドが疲労困憊なのは、まあ、一郎のせいである。

 なにしろ、奴隷宮の異変が伝えられる直前まで、水飲み拷問をさせていたところであり、深夜に出ることになって慌てて回復させたのだが、まだ本調子には遙かに遠い。

 いつもにこやかに笑っている顔も、どことなく陰がある。

 それでも、重大戦力には違いないので、無理してついてきてもらった。

 ちょっと申し訳なかったかもしれない。

 だが、いつもは余裕ある態度を崩さないスクルドが完全に追い詰められるのはよかった。途中でやめざるを得なくなったのはちょっとばかり残念かもしれない。まあ、「中断」しただけで、しっかりと後で「懲罰」の続きは受けてもらうつもりではある。必ず、全員の前で本気の泣きべそをかかせてやる。

 

 そもそもの張本人がこいつなのだ。

 それに、アネルザとエリカを人質にたてこもっているらしい奴隷宮の連中は、一応はスクルドの言霊に染まっている者たちであり、スクルドに感化されて性修行に励んでいるのだという。

 だとすれば、もしかしたら、スクルドが説得するだけで話は終わるのかもしれないのだ。一郎としてはスクルドを置いてくるという選択肢は考えなかった。

 

「あ、あの、もしかして、スクルズ様? さ、まさか、こんなこと──」

 

 ラスカリーナがスクルドを見てびっくりしている。今夜のスクルドには、いつもの欺騙魔道はあえてかけさせてない。神官服でなくて、黒いローブをまとっている以外は王都広場で死体をさらされたはずの彼女だ。

 驚くのは無理もないだろう。

 

「後で詳しく説明してやるが、見たとおりだ。スクルズはスクルドと名を変えて生きている。それを受け入れろ」

 

「は、はい……」

 

 ラスカリーナが戸惑いながらも頷く。

 

「それにしても、驚いたねえ……。半信半疑だったけど、ロウの言ったとおり、さっきの盗聴具がこっちにも仕掛けられていたとはねえ……」

 

 そして、ミランダが感嘆したように言った。

 しかし、ラスカリーナは怪訝な顔に戻った。

 

「あ、あのう、どういうことなのでしょうか? さっきおっしゃいましたが、この透明の固いものに包まれていたものが“盗聴具”で、わたしのスカートに付けられていたのですか?」

 

 ラスカリーナはまじまじとテーブルの上に一郎が乗せた小さな物体を見ている。

 すると、ベルズが一郎たちが囲むテーブルに面する椅子のひとつに座りながら口を開いた。また、ほかの女たちも座ってくる。

 

「驚いたが、極めて精緻なもののようだ、こんなものでも小さな魔石が仕込んである。中の連中がどうやってこれを入手したのかはわからないけどねえ。同じものがイットにも仕掛けられていた。あんな距離でも、ぎりぎりちゃんと機能するものだ」

 

 ベルズは第二神殿の筆頭巫女でもあるが、王都で活躍する若い魔道研究者や魔道技術者を集めるサロンの中心人物という顔もある。

 魔道具技術については、それなりに蘊蓄(うんちく)を持っている。

 

「えっ? イットさんに?」

 

 ラスカリーナがテーブルの上の盗聴具から、ベルズに視線を向けた。

 

「あれに仕掛けられていた炸裂環については、起爆装置がなく爆破能力のないものだった。だが、炸裂環の環の裏に、豆粒のような盗聴具が紛れ込まされていたのだ。ロウ殿が指摘しなければ、絶対に気がつかなかった」

 

 ベルズが説明した。

 あのとき、浴場にイットが駆け込んできて、こっちの事情を説明したとき、一郎はイットの状態を確認するためにステータスに触れたのだ。

 その結果、炸裂環の中に隠されている盗聴具の存在を発見した。

 全員で、目の前のラスカリーナのように唖然としてしまった。

 

 最終的には、いまやっているように、一時的に粘性体で包んで音を遮断してから調べて、再び元に戻した。

 いま、イットはまだ屋敷に残しているが、一郎とベアトリーチェとナール以外の女が全員向こうに残っているような偽物の声を、シルキーに頼んでずっと盗聴具に聴かせている。

 うまくいけば、盗聴具を傍受している者たちは、一郎がふたりの女軍人だけを連れて、王宮にやって来たと判断してくれるはずだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。そんなものを誰が……」

 

 ラスカリーナだ。呆然としている。

 

「誰だろうも、なにもないでしょう。奴隷宮の女たちに決まっているわ。それ以外にどんな可能性があるのよ」

 

 コゼだ。

 

「い、いえ、もしかしたら、まだ彼女たちを監禁していた者たちが残っているのかも。それを完全に確認せずに、王妃様たちだけで話し合いに行かせてしまったのは、わたしの失敗です」

 

「奴隷宮から、女たちを見張るような者たちが完全にいなくなっているのは、あんたが確認させたんじゃないの? 昨日の夕方までに」

 

 コゼがラスカリーナに言った。

 昨日、ラスカリーナを支配した後、ラスカリーナには、とりあえず直属の近衛兵を使って、王宮内の全調査は実施させていた。

 奴隷宮のその一部だ。

 また、一郎自身も魔眼を駆使して、妖魔の残党の有無を確認したし、同じことをガドニエルにもさせた。

 直接に赴いたわけではないが、ラポルタを捕えた以降からは、一切の妖魔の存在は王宮内からは確認できなかった。

 だから、アネルザとエリカたちだけに、奴隷宮の解放を託したのである。

 

「いえ、奴隷宮の中まで入らせたわけじゃないのです。ただ、外から確認しただけで……。女兵でも使って、ちゃんと探索すべきだったかもしれません」

 

「残党なんていないわよ。それに、彼女たちは完全に自由になっていたとイットは証言したわ。それに、まだそいつらが残っているとしても、あんたも会ってないし、イットも会ってない。イットの盗聴具入りの炸裂環を巻いたのは、間違いなくフラントワーズという女だったそうだし、あんたと交渉したのもそいつなんでしょう? だったら、そいつらが仕掛けたのよ」

 

「でも、どうして……」

 

「王妃様の言葉が気に入らなかったんじゃない? そして激怒した。だから、盗聴具なんて仕掛けたのよ。敵対することにしたこっちの動きを探るためにね」

 

 コゼがさらに言った。

 しかし、ラスカリーナはいまだに、信じられないという顔をしている。

 ただ、一郎はほぼ確信をしている。

 コゼの主張のとおり、奴隷宮に集められていた者たちは、アネルザに開放を言い渡されて怒ったのだと思う。

 だから、突然に王妃を人質にとるという蛮行に打って出たのだと思う。

 

 また、あの連中を監禁していたリリスの眷属たちはもういないはずだというのは、リリスも主張している。

 もともとはサキ、つまりはリリスの眷属たちなのだが、サキがラポルタに支配されると、全員がサキを裏切って眷属の主人をラポルタに変えたそうだ。そういう状況でラポルタが囚われ、サキが解放されたことを知ったのだから間違いなく、妖魔たちは逃げ散るとリリスは断言していた。そもそも、一郎たちの襲撃でラポルタは次々に妖魔兵を投入していたし、あのときに殺した妖魔の数と、リリスがサキとして集めた妖魔の数は概ね一致する感じだった。

 いまでも、一郎はすでに奴隷宮には妖魔はおらず、女たちだけになっているだろうということを確信している。

 まさか、その奴隷宮に囚われていた女たち自身が反乱のようなことを起こすとは思わなかったが……。

 

「いや、しかし、彼女たちはとても気の毒な格好をしていて……。身につける服もなかったのですよ。そんな彼女たちが、そんな特殊な魔道具を入手できるとは思えないのですが……」

 

 ラスカリーナだ。

 どうやら、王妃を人質にしている奴隷宮の女たちを前にしても、奴隷宮の女性たちに対して、ひどく同情的にみたいだ。

 イットによれば、腰に小さな布を巻いただけのほとんど全裸に近い格好だったというし、首輪を装着し、乳首にも鈴をぶら下げたりしていて、まるで遊び女用の奴隷女そのものだったという。

 立派な上級貴族の令夫人や令嬢がそんな格好をさせられているのを見たとしたら、ラスカリーナもどうしても同情を感じてしまったのかもしれない。

 

「アネルザやエリカを監禁して人質にとった連中に同情はするな。俺たちの敵だ」

 

 一郎は断言した。

 ラスカリーナははっとしたように口をつぐんだ。

 すると、ミランダが口を開いた。

 

「盗聴具とやらは、奴隷宮がもともと王妃宮だったから、そこにあったものかもしれないし、連中が手を回して、自分たちで入手したものかもしれないようよ」

 

「自分たちで入手?」

 

 ラスカリーナは怪訝そうだ。

 すると、ミランダが続けた。

 

「向こうでわかったことだけど、奴隷宮に監禁されている令夫人や令嬢たちは、ただ監禁されていただけじゃないらしいわね。国王の印璽を使い放題に利用して、かなりのものを外から届けさせていたようよ。代金も国庫のものを使ってね……。連中は書類を動かして、結構好き勝手に色々なものを入手していたらしいわね」

 

「まさか」

 

「本当だ」

 

 一郎ははっきりと言った。

 ラポルタがリリスに成り代わって奴隷宮の支配をした最後の一時期を除いて、昼間に性調教に励む以外には、かなりの自由が奴隷宮内にあったというのは、リリスから掌握した。

 また、集められている令夫人たちは、書類仕事や行政業務に長けている者も少なくないらしく、国璽を勝手に利用できることをいいことに、決裁済の書類を偽造して、好き放題に奴隷宮に届けさせていたようだ。

 もしかしたら、この盗聴具のような精密魔道具も、外で作らせて運ばせた可能性もある。

 ただ、わかっているのは、リリスたち妖魔が準備したものでは絶対にないということだ。こんなものは見たこともないと、リリスははっきり言っていた。

 

「ちょっと信じられません……。まあ、これが盗聴具というものなのであれば、接触したときに、彼女たちに仕掛けられたものなのだと思いますが、彼女たちは今朝まで囚われていたのに……」

 

 ラスカリーナがちょっと呆然としている。

 一郎は肩を竦めた

 

「確かに普通では考えにくい。だけど、それが事実の可能性は極めて高い。いずれにしても、いま、アネルザとエリカは、目の前の奴隷宮に囚われているということだ。あいつらを助け出す。話はそれからだ──」

 

「わかりました」

 

 ラスカリーナが頷く。

 

「そして、あいつらを人質にしているのは、これほどの精緻な魔道具を準備し、エリカやイットほどの猛者を捕らえることのできる実力があるということだ。そして、それが本当に奴隷宮の女たちがしたことと考えるなら、極めて周到に準備されていたと思うのが妥当だ。目の前の盗聴具一個とっても、一日や二日で準備できるものじゃない」

 

「そうですね」

 

「状況を整理する。ラスカリーナは、ボールギャグをされていたイットと会話する機会がなかったと思うが、実はイットも奥の奥までは入っていない。奴隷宮からの解放を伝えに行ったアネルザはエリカだけを連れて、話し合いの部屋に向かったそうだ。イットはいつの間にか離されたと語っていた」

 

 一郎はイットの説明を思い出しながら説明した。

 ほかの女も頷いている。

 

「はい」

 

「それから、別室に連れて行かれてひとりで待たされ、かなり長い時間が経ってから、怒っている様子のフラントワーズから、アネルザとエリカが炸裂環を嵌められて拘束されている映録球を見せられたそうだ。そして、イットも拘束されて、炸裂環を装着された後、俺のへの伝言を聞かされたと言っていた。制圧しようと思えばできたけど、ただならぬ気配を察して抵抗はしなかったと言っていたよ」

 

「ただならぬ気配ですか?」

 

「色々とイットは言っていたけど、要約すれば、“狂信者”の気配だ。イットが刃向かえば、エリカたちはもちろん、自分たちも目の前で自殺すると言ったそうだ。その覚悟が嘘ではない証拠に、ふたりほど本当に自刃しようとして、イットも慌てて自分で炸裂環を装着したと話していた。あの目は絶対にはったりじゃないそうだ。イット以外に止め立てもする様子もなかったともね」

 

「そんなことが……」

 

 ラスカリーナは驚いている。

 

「それからは、ラスカリーナも知っている通りだと思う。奴隷宮の入口まで連れて行かれて、俺に伝言を渡すように言われて、ラスカリーナに引き渡された。ボールギャグをされていたイットは、なにも伝えずに、王宮から俺のところにやって来たと思うけど、イットの証言はこんな感じだ」

 

「なるほど……。わたし側の話は、先ほど説明しましたとおりですが、わたしは、イットさんに王軍の者が触れば、人質を殺して自分たちも死ぬと、そのグリムーン夫人……、いえ、フラントワーズ殿から言い渡されました。イットさんをご主人様のところに向かわせるようにと……。だから、とりあえず、逆らうことはやめました。ご主人様のご連絡を待った方がいいと思って……」

 

「わかった。ほかに気がついたことはあるか?」

 

 一郎は訊ねた。

 ラスカリーナは首を捻った。

 

「そうですねえ……。わたしが会ったのは、フラントワーズ夫人のほかにふたりの比較的年配の夫人のみで……。三人とも裸に近い格好を……。ああ、そうだ。大勢の女性の声だけは確認しました。近くの部屋まで集まっていた感じです」

 

「声?」

 

「歌うような声です。こんな夜に合唱の練習をしているのが奇異に感じたのでちょっと気になりました。それくらいです」

 

「歌なあ……」

 

「それで、奴隷宮の者たちの要求はなんだったのですか? 幾度か交渉のようなことは試みましたけど、いまのところ反応は皆無なのです」

 

「要求は、俺との話し合いだ。俺ひとりで交渉に出向くように要求している。俺は話し合いには応じようと思う。とにかく、内部の状況がわからない。なにかを判断するのは情報が不足しているのは間違いないが、俺が赴けば間違いなく情報は入る」

 

 一郎は言った。

 ラスカリーナは驚いたように首を横に振った。

 

「い、いけません。危険です──。王妃様だけではなく、ご主人様まで人質になったら、本当になにもできなくなります。絶対にだめです」

 

 そして、ラスカリーナは怒鳴った。

 一郎は微笑んだ。

 

「心配するな。ベアトリーチェを連れていく。俺ひとりで来ることを要求している連中のようだが、同じ仲間だったベアトリーチェならだめだとは言うまい。応じないなら、俺も奴隷宮には入らない」

 

「し、しかし、それだけでは……」

 

「もちろん、それだけじゃない。当代一の魔道遣い様を隠して同行させる。第二神殿の筆頭巫女殿もね」

 

 一郎はにやりと笑った。

 そして、改めて、ラスカリーナに一郎の亜空間能力のことを説明していった。

 生きている者を亜空間収容できるという一郎の説明に、ラスカリーナは唖然としていた。

 

「お、驚きました……。ご主人様にそんな力が……。それでは、そのガドニエル陛下とベルズ殿がご主人様の亜空間に隠れて同行し、ベアトリーチェは普通に一緒に行き、奴隷宮の者たちとの交渉に臨まれるということなのですね」

 

「それだけじゃない。別働隊として、スクルドとコゼとミランダを移動術で転送させて、奴隷宮内に送り込む。俺が交渉とやらで時間を稼いでるうちに、アネルザとエリカを救出できてしまえば、この騒動は終了だ。あとはどうとでもできる」

 

 一郎はさらに策を説明していった。

 奴隷宮内に入れば、さらに三人は二組に分かれ、スクルドは可能な限り、指導者のような立場らしいフラントワーズたちではなく、大勢の令嬢たちに接触する。

 そして、説得するのだ。

 スクルドが作りあげてしまったらしい狂信者たちの中では、スクルドは救世主様ということになっているのだ。

 そのスクルドが説得すれば、人質をとるなどという荒事に躊躇い始める者たちも出てくるかもしれない。

 

 一方で、コゼとミランダは、純粋な救出組の役割だ。

 中の状況はさっぱりとわからないが、このふたりであれば、エリカとアネルザを探し出して、救出に成功してくれると思う。

 

「念のためにお伺いしますが、奴隷宮のみならず、王宮内の敷地内には移動術を封じる結界が刻まれているはずですが、それについては大丈夫なのですね」

 

 ひと通り説明を聞き終わってラスカリーナが首を傾げた。

 あまりにも、移動術を使い放題して、王宮内に出入りしているので、あまり実感はないが、王宮内には移動術では侵入できないことになっているそうだ。

 そうでなければ、簡単に暗殺者が王宮に入ってきてしまう。

 まあ、実際には、一郎などほぼ毎日のようにスクルドを使って、移動術でイザベラのところに夜這いに行っていたわけであるが……。

 

「問題ない」

 

「わかりました。わたしからはなにも……。その策であれば、わたしの出番はないのですね。皆さまのご武運を祈るだけです」

 

 ラスカリーナは納得したようだ。

 ほかの女たちも改めて一郎の策を確認し、それぞれに頷いた。

 

「頑張りますわ」

 

 特にガドニエルが陽気に返事をする。

 一郎は苦笑してしまった。

 実際のところ、ガドニエルは屋敷において行こうと思ったのだ。

 今回の策でガドニエル級の大魔道が必要とは思わないし、ラポルタ戦のときのように感情に任せて、大衝撃波などを奴隷宮者のたちにぶっ放されても困る。

 しかし、留守番を指示しようとしたとき、涙目で抵抗したので、隠し球という役割を与えて、亜空間に待機させることにしたのだ。

 

「……では、行きましょう。ベルズとガド様は、ご主人様の亜空間に入ってください……。その後、この天幕を包んでいる防音結界を解くと同時に、わたしたち三人が移動術で奴隷宮内に入ります」

 

 スクルドが立ちあがった。

 コゼとミランダもそれに倣う。

 

「ベルズとベアトリーチェは、しっかりとご主人様を守るのよ」

 

 そして、コゼが言った。

 屋敷で策について事前に説明したとき、ガドニエルに次いで、不満を口にしたのが、実はコゼだった。

 コゼは、策がなんであれ、自分が一郎と離れることが気に入らなかったのだ。

 しかし、潜入任務ということであれば、コゼよりも長ける者はいない。なんとか説得して、やっと承知してもらった。

 

「お任せください。命にかけてもご主人様を守りますから」

 

 すると、ガドニエルがにこにこと微笑みながら応じた。

 

「あんたには言ってないけど、まあよろしくね」

 

 コゼがくすりと笑った。

 

「よし。じゃあ、粘性体で包んでいた盗聴具をラスカリーナのスカートに戻す。それが合図だ。それぞれに行動を開始するぞ。スカートに戻してからは、こっちの会話は向こうに傍受されていると思ってくれ。だが、気がついていない振りをするんだ」

 

 一郎はテーブルの盗聴具を手に取る。

 まだ、粘性体で包んでいるが、それを取り除けば、機能は生きているはずだ。

 とりあえず、ガドニエルとベルズに声をかけて、ふたりを亜空間に収容する。

 そして、ラスカリーナを立たせ、両手をテーブルに置かせて、一郎に向かって背を向けるようにさせた。一郎はラスカリーナの背後に立つ位置だ。

 

「あ、あのう……。スカートに、その盗聴具を付け直すだけでは?」

 

 一郎の指示に従いながらも、ラスカリーナが怪訝そうな口調で質問してきた。

 

「ああ、奴隷宮に向かう前にセックスしてから入るからな。心配するな。どうせすぐに終わる。ラスカリーナが達したら、すぐに射精してやる。ここでずっとなにか意味のある話し合うをしていたと思われたくない。突然にセックスの声が聞こえれば、天幕でふしだらなことでもしていて、偶然に盗聴機能が復活したとでも判断するだろうさ」

 

 一郎はラスカリーナの腰を引いて、立姿の後背位で突く体勢を作らせながら言った。

 ラスカリーナが驚愕して身体をテーブルから離そうとした。

 

「ま、まさか──。だ、だって、その盗聴具は傍受されているんですよねえ? き、聴かれてしまいます──」

 

「それが狙いだろう──。ぐずぐず言うな。ほら、スカートに盗聴具を戻すぞ。じゃあ、スクルド、コゼ、ミランダ、頼むぞ」

 

「はい」

 

「では、行きます。ご主人様も気をつけて」

 

「行ってくるよ」

 

 三人が返事をしてから姿が消える。奴隷宮内に潜入していったのだ。

 天幕を包んでいた防音結界も消滅したのがわかった。

 一郎は盗聴具をスカートにつけ直すと、粘性体の包みを消滅させた。

 すぐにラスカリーナのスカートを後ろからまくり、指をお尻側から伸ばして、ラスカリーナの股間を愛撫をする。

 

「あっ、いやっ、や、やっぱり……」

 

 だが、ラスカリーナが無駄な抵抗をしようとする。

 一郎は一度手を離して、スカートを戻すと、思い切りスカートの上からラスカリーナの尻を叩いた。

 スカートを戻したのは、もしも傍受していれば、盗聴具を真上から叩かれた衝撃音で相手を驚かしてやろうと思ってだ。

 つまりは、いやがらせだ。

 

「ひゃんっ」

 

 一方で尻を叩かれたラスカリーナは、身体を伸ばして全身を硬直させる。

 

「動くな──。しっかりと脚を開いて俺の怒張を受け入れろ──。命令だ。復唱しろ──」

 

 もう一度叩く。

 

「きゃん──。ふ、復唱します。ラ、ラスカリーナはご主人様の怒張を受け入れるために脚を開きます──」

 

 ラスカリーナが再び一郎に向かって腰を突き出す格好になり、両脚を開いた。

 一郎は笑って、ズボンを下ろすと、勃起させた怒張の先でラスカリーナの股間を愛撫していく。

 

「あっ、んんっ、んくうっ」

 

 すぐにラスカリーナはよがり始めた。

 

「精を放ったら、ベアトリーチェには掃除フェラをさせるからな。準備しておけよ」

 

 一郎は笑いながら、横で真っ赤な顔になって固まっている女騎士に声をかける。

 これもまた、半分は盗聴者に聴かせるためであり、もう半分は単純な揶揄(からか)いだ。

 

「ひゃ、ひゃい」

 

 すると、ベアトリーチェが声を裏返させて返事をした。

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