※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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882 したたかに狂って

 フラントワーズに案内をされたのは、絨毯の敷き詰められている広い部屋だった。

 先ほどまでいた入口のホールからそれほど離れていない場所だ。

 案内は、フラントワーズひとりである。それに対して、一郎たちは、一郎のほかに、ガドニエル、ベルズ、ベアトリーチェの四人だ。

 部屋の中の壁も天井も白く、また、調度品のようなものはなにもない。唯一あるのは、部屋の中心に存在する下半身が埋まってしまいそうな大きくて長い座布団だ。そして、部屋の中は完璧に磨きあげるほどに掃除がしてあった。

 

「天道様は、恵月国(エツキ)のような風習がお好きと伺いましたので、そういう場所を準備しました。どうぞ、天道様はお真ん中に……。ほかのお方は天道様のお横でよろしいですか?」

 

 フラントワーズがその長い座布団を指し示した。

 また、恵月国というのは、ハロンドールの北に位置するエルニア国のことである。

 魔道王国と呼ばれるほどに、魔道に長けた者たちが支配する国だというが、長く鎖国政策をとっていて、ハロンドールやローム三公国とはほとんど交流がないらしい。

 そして、“エルニア国”というのも、実はハロンドール側からの呼称であり、その地域がまだローム帝国の開拓地だった時代に、エルニアと呼ばれていたかららしい。つまりは古い呼び方なのだ。

 しかし、そこを現在支配している者たちは、自国を“恵月国(エツキ)”と名乗っており、統治者は“王”ではなく、“皇王”というそうだ。

 伝えられているところによれば、風習や文化は、一郎の感覚でいう「日本」のものに近似しているらしい。もともと、最初の統治者が大陸の外からの者らしく、そっちの影響を大きく受けていると教えられた。

 つまり、床に直接に座る風習は、ここで表現すると、恵月流、あるいは、エルニア流ということになるのである。どこで調べたのかは知らないが、一郎がよく女たちと床で座って接することを知っているようだ。

 それでこんな場所を準備したのだろうか。

 

「ああ」

 

 一郎はひと言だけ言って、一個だけある座布団に胡座で腰をおろした。

 部屋の隅には香が焚かれており、落ち着いた気分にさせてくれる。一郎は右横に座ってきたベルズに視線を向けた。

 また、左隣にはガドニエルがしゃがんできて、ベアトリーチェについては、一郎たちの後ろに立つ。

 

「問題ない。ただの香のようだ。わたしのわかる範囲だけどね」

 

 そのベルズが応じる。

 一郎は頷いた。

 

「ベアトリーチェもどうぞ座って」

 

 フラントワーズが声をかけた。

 

「いや、わたしは立っております。天道様の護衛ですので。フラントワーズ様たちがまた怪しいことをすれば、斬らねばなりません」

 

 ベアトリーチェがはっきりと言った。

 口調にけんがある。

 ホールにおける一郎とフラントワーズのやり取りに、どうやら思うところがあったみたいだ。

 

「ほほほ、あなたにわたしが斬れるのですか? あんなに、一緒に苦労してきた仲間のわたしを……?」

 

 フラントワーズが一郎たちに向かい合うように、直接に絨毯の上に腰をおろす。腰に小さな布を巻いただけのフラントワーズなので、ああやって座ればほとんど股間の付け根が見えそうになる。フラントワーズは手でそっと股間を隠すように腿に手を乗せた

 そのとき、突然にベアトリーチェが動いたことがわかったのは、一瞬にしてフラントワーズに距離を詰めたベアトリーチェが剣を抜き、刃先をフラントワーズの喉に突きつけたときだった。

 

「ひっ」

 

 フラントワーズが蒼白になって身体を硬直させた。

 その喉にすっと赤い線ができる。

 

「どうでしょう。問題はないようです……。もしも、次に天道様に手を出そうとしたら、護衛として容赦なく行動しますよ、フラントワーズ様」

 

 ベアトリーチェが剣を収めて、こっちに戻ってくる。

 一郎はくすりと笑った。

 放尿調教でからかってばかりで弱々しいベアトリーチェしか接してなかったが、こういう苛烈さもベアトリーチェの性質のひとつなのに違いない。

 そういえば、もともと、女騎士の中ではかなりの正義感の持ち主とミランダにちょっと前に教えられていた。

 

「こ、怖いですね……。肝に銘じますわ……。あなたが見張っていることを……」

 

 やっと顔に笑みを浮かべ直したフラントワーズが言った。

 だが、剥き出しの膝はまだ震えている。

 本当は怖かったのだろう。

 一郎もちょっとびびったし……。

 

「天道様、勝手な真似をしてすみません。罰はいかようにも……」

 

「そうか? だったら、遠慮なく」

 

 別に罰を与えることなど微塵にも思わなかったが、わざわざそう言ってくれるのだから、一郎は半分振り返って、ベアトリーチェのスカートの中に手を入れた。鍛えられている太腿を撫でる。

 

「あっ、天道様……。ぬ、濡れてますから」

 

 ベアトリーチェが膝を折って、慌てたように内腿を閉じる。さっきおむつに放尿させたので気にしているのだろう。

 

「気にするな、ベアトリーチェ。濡れているのはおしっこのことか? それとも、愛液のことか?」

 

 一郎は淫魔術でベアトリーチェの股間の「ツボ」のような場所を見つけて、ぎゅっと押してやる。それだけでなく、一瞬にして全身の性感帯をそこに集中した。

 この状態で刺激を受けると、全身の性感帯という性感帯を同時に愛撫されるのを同じ状況になるのである。

 

「ひいいいいっ」

 

 ベアトリーチェが全身を硬直させて完全に膝を折る。

 上から一郎の頭を両手を掴んで身体を支える感じになった。

 

「あ、あああっ、だめええ」

 

 そして、ぶるぶると身体を震わせた。

 どうやら失禁したみたいだ。

 本当に面白い身体だ。

 

「あ、ああ……、は、恥ずかしい……。て、天道様……、し、してしまいました……。お、おしっこを……」

 

 放尿は許すが失禁のたびに、最優先で報告しろと告げていたので、わざわざそう言ったのだろう。

 一郎は悪戯をやめて、ベアトリーチェを解放した。

 

「ふ、ふう……」

 

 ベアトリーチェがやっと一郎から手を離した立ちあがった。

 だが、距離が近いのでベアトリーチェのおしっこの匂いがしっかりと漂ってくる。

 一郎はほくそ笑んだ。

 

「ほほほ、可愛がっていただけているようで感謝しますわ」

 

 するとフラントワーズが笑い声をあげた。

 ふと見るとさっきまで震えていた膝は落ち着いている。緊張はとれたみたいだ。

 

「あなたに感謝されることではないな。俺の女だ……。ところで、ガド、治療してやれ」

 

 一郎は横のガドニエルに声をかけた。

 

「はい」

 

 一瞬にしてフラントワーズの喉にできていた傷が消滅する。ついていた血までなくなっている。

 

「ありがとうございます、陛下」

 

 それに気がついたフラントワーズは、傷口のあった場所あたりに手をやりながら、ガドニエルに頭をさげた。

 

「それで、話をしたいんだったな、フラントワーズ」

 

 一郎は改めて言った。

 本当は問答無用で引きあげるつもりだったが、考えを変えたのは、スクルドに次いで、ミランダまで捕らえたらしいということがわかったからだ。

 これで、コゼまで囚われるということになれば、一郎も考えを改めなければならないだろう。

 かなりの組織集団だ。

 簡単にどうにかできる相手ではないかもしれないということだ。

 ここは引かない方がいいと、一郎の勘が告げている。

 

 フラントワーズたちの望みは、一郎と話をすることだ。つまりは、話をしている限り、フラントワーズの要求は満たされるのだろう。それを無理矢理に断って追い詰めるべきではない。

 もしも、ぎりぎりまで追い詰めれば、フラントワーズは本当に全員を道連れに自殺することを選ぶかもしれない。

 それが狂信者というものだろう。

 

「もちろんです。その前に、お飲み物でもお持ちしましょう」

 

 フラントワーズが軽く手を叩いた。

 すると、奥の扉が開き、赤い布を腰に巻いた少女たちが盆を持って入ってきた。

 全部で五人いて、さっきのアドリーヌとエリザベスもいる。また、フラントワーズは乳房に鈴をぶら下げただけの剥き出しの胸だが、少女たちはさっきのアドリーヌたちと同じで胸だけを覆う薄物を身につけていた。

 しかし、布地は乳房を透けて見せているので、剥き出しの胸よりもむしろ扇情的のように一郎は感じた。

 

 そんな肌を露わにした少女たちが、一郎たちの前に飲み物や菓子、果物などを並べてくる。

 いずれも、手で摘まめるように小さく切ってあり、揃えられているものも、どこで調べてきたのか、一郎がこの世界で美味しいと感じたものばかりである。飲み物にしてもそうだ。

 一郎自身はそんなに食べ物に執着する方ではないので、女たちにさえ、あまり好き嫌いを教えたことがない。一郎の好みを調べるのは、かなり大変だっただろう。

 ちょっとばかり、フラントワーズの調査能力が怖くなってきた。

 フラントワーズが五人の少女を一郎の前に並べさせた。

 

「赤組の中でも選りすぐりの五人です。アドリーヌとエリザベスにはもう会っておられますよね。敏感な身体ということであれは、この二人以上はないと思います。その横は、エミールとカミールの姉妹です。アドリーヌと三人でとても仲良しですのよ。百合遊びの仲間でありますわ。姉妹比べなどいかがですか。そして、一番左のアメリアは。楽器が得意ですので、天道様さえよければ演奏でもてなしたいと申しております。もちろん、身体が楽器以上によい音で鳴りますけど」

 

 フラントワーズが妖艶な仕草で笑った。

 五人の少女が真っ赤になって、恥ずかしそうな仕草をする。

 だが、淫魔術や魔眼を駆使するまでもなく、五人が五人とも、一郎に対して強い思慕の念を向けているのはわかる。どんな朴念仁でもわかるほどに、わかりやすく五人は一郎に性的期待を込めた視線を向けていた。

 その表情は純粋そのものの一郎への恋愛感情だ。

 一郎は嘆息した。

 

「……天道様、この五人のうち誰でも……あるいは、全員でも、好きなようにお扱いください。どこをどう触っても、どんな風に扱っても問題ありません。さあ、どうぞ。この五人がお気に召さないということはないと思いますが、あわせて七十三人の性奴隷候補の娘たちがおります。全員が天道様のお手つきを待っております」

 

 フラントワーズが脚を正座に直して、静かに両手を床に付けて頭を床につけた。

 目の前の五人の少女も立ったままだが一斉に頭をさげる。

 

「まずは、フラントワーズと話をしたい。五人はさがってくれ」

 

 一郎は毅然として言った。

 フラントワーズが五人に声をかけて、さがらせる。

 

「お気に召しませんでしたか? 天道様は好色なお方と耳にしましたのですが……? 先ほどのベアトリーチェにしたような振る舞いを、是非、彼女たちにしてあげてくださいな。どれほどに、あの娘たちが天道様の前に出るのを愉しみにしてたか……」

 

「俺に気に入られようと努力してくれたのは嬉しいけどね……。ところで、気になっていることがあるんだけど、質問していいか? さっき、フラントワーズは、俺とアネルザが彼女たちを性奴隷にするつもりはないと話したことに絶望したと言ったと思う。アネルザがそう言ったことに絶望したじゃなくてね。俺とアネルザの会話をいつ、どうやって聴いていた?」

 

 さっきの玄関ホールでの話のことだ。

 フラントワーズは、思わずという感じで、“一郎とアネルザの会話に絶望した”という趣旨の言葉を吐いたのだ。

 ずっと不思議に思っていた。

 

「後宮側の地下牢でそう話しているのを聞いておりました」

 

 フラントワーズはあっさりと言った。

 やっぱりか……。

 

「えっ、どういうこと?」

 

 ベルズが怪訝そうな声を出した。

 

「盗聴具だ。おそらく、ルードルフ王が囚われていた地下牢に仕掛けてあったのだろう」

 

 一郎は言った。

 アネルザとの会話といえば、そこ以外にはあり得ない。

 貴族を集めた大会議をする前までは、あそこを拠点にしていた。いや、いまもそうだ。

 もともと、明日になって王宮内に、独裁官になった一郎の執務室のような場所を作るまでは、あのままあそこを拠点にする予定だったのだ。

 侍女たちもそこに残してきていた。一郎たちが屋敷を出るまでに連絡をとり、一度引きあげさせたが……。

 

「盗聴具を? 地下牢に?」

 

 ベアトリーチェも声をあげた。

 驚いたみたいだ。

 

「ごめんなさい、ベアトリーチェ。あなたがあそこで惨い目に遭っているのはわかっていたわ。だけど、どうしようもなかったの。警備兵に見張られているわたしたちは、ここから出ることはできないし、だけど、ラポルタがほかの部下に話をしているのを聞いて、天道様がそっちに向かうだろうということは予想できたの。だったら、そのまま託した方がいいと思ったのよ。その通りになったわ。でも、それを言い訳にはできないわね。なにもしなくてごめんなさい」

 

 フラントワーズは早口で言った。

 その口調には、心からの謝罪がこもっているようには思えた。

 だが、いまの物言いによれば、つまりは、一郎たちに仕掛けた盗聴具はずっと以前からフラントワーズたちは使っていて、どうやったか知らないが、それを奴隷宮や後宮のあちこちに仕掛けていた雰囲気だ。

 それをずっと知られることのないように隠していたようだ。

 

「どうやって仕掛けたと訊ねたら教えてくれるか?」

 

「天道様にはなにも隠すつもりはありません。わたしたちを調教していた調教師の方々を使いました。あの方々はとっても素直でしたので。ちょっと真摯にお願いすれば、願いは叶えてくれました。できないのは、調教を拒否することと、この奴隷宮から勝手に離れることです。でも、それ以外はかなり融通をきかせてくれるのです」

 

「真摯な願いなあ……。それは魅了術によるものなのか?」

 

「実は、魅了術というのがなんなのか、わたしにはわからないのですが、教典の力です。ある教典を持って、相応しい言葉を使えば、大抵の者は心を開きます。それを利用しました。歌もそうです。節回しをつけていますが、話している言葉は教典に書かれている言葉です」

 

「教典?」

 

「救世主様の言葉を綴った本です。奇跡の本です。世界のひとつしかない宝物です」

 

 フラントワーズは言った。

 一郎は、それこそ、スクルドの言霊が強く染まったものだと確信した。それが、こいつらの得体のしれない力の拠り所であり、狂信者を作りあげた原因になるものだ。

 この集団を作っているのが、その教典だ──。

 だったら、それをとりあげるか、処分すれば、こいつらの全員が我に返るのではないだろうか……?

 いずれにしても、彼女はそうやって、教典の力を使って自分たちの管理者たちを魅了術を駆使しながら懐柔し、また、令嬢たちの心を守り、したたかに生き抜かせてきたのだろう。フラントワーズのその努力にだけには敬意を感じる。

 

「その教典を見せてくれ。そうすれば、ある程度の話を受け入れてもいい。もともと、俺は性奴隷を受け入れないと言っているわけじゃない。実をいえば、後宮を持つ気はないと言っているだけだ。まずはこの集団を解散しろ。そのうえで、本当に俺の女になりたいと望む者については、受け入れてもいい」

 

 一郎ははっきりと明言した。

 まあ、この辺が落とし所だろう。

 おかしな宗教もどきを解散させ、ここの女や少女たちを我に返させる。

 そのうえで家族や夫のもとに帰る者は帰させるが、破廉恥な映録球が出回ったりして居場所を失ったり世間に出たくなくなった者もいるだろう。

 そういう者たちは受け入れる。

 しかし、得体のしれない洗脳状態にあるような少女たちを、このまま性奴隷として受け入れることだけはあり得ない。

 

「申しわけありません。教典はお渡しできません。だって、見せれば取りあげなさるでしょう?」

 

 フラントワーズは不敵に微笑んだ。

 

「天道様の命令だと言ってもか?」

 

「誰の命令であってもです……。あれは、この奴隷宮の狂気を作っているものです。この狂気はわたしたちにも、娘たちにも絶対に必要なものですから」

 

 フラントワーズははっきりと言った。

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