※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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913 女王たちの凱旋(1)

 久しぶりの王都だった。

 

 馬車の窓を開けさせると、遠くの城門付近に大勢の王都市民が集まっている気配を感じた。城門に近づく馬車内からでも聞こえる歓声が耳に入ってくるのだ。

 さらに外を覗いてみる。

 すると、城門の前に、王軍が隊列を作って整列を終えているのがわかった。

 

 ゆっくりと進む馬車の中にいるのは、イザベラのほかに、ロウ、ガドニエル女王、そして、エリカとコゼとシャーラだ。

 ほかの者たちは、続く馬車に分散して乗車しており、イザベラたち馬車列の右側をシャングリアとベアトリーチェの指揮する騎馬隊が並走し、左側をブルイネンの指揮する親衛隊が直接に警護している。

 隊列の先頭は、モーリア男爵の指揮する傭兵隊だ。

 彼らが隊形を作って前進をしていて、馬車の後ろ側に南方から連れてきた南方王軍の百名が続き、次いで、エルフ魔道師団のアーネスト隊、そして、外郭砦でイザベラの傘下として兵を連れてきた領主たちの諸隊が随行を許されている。

 

 名誉ある先頭隊を、どの領主隊でもなく傭兵隊に許したのは、ロウらしいと思った。

 それに対して、どの程度の悶着があったかは知らない。

 イザベラは、ロウたちから王都までの行進の手順と凱旋の要領について、決定事項として教えられただけだ。

 

 武装解除と城門の解放を拒否し続けたリン以下の首脳陣の処断が終わって二日ほどが経過していた。

 その処置の終わった昨日の昼に外郭砦を出立し、昨夜は王都に隣接するマイムに宿泊した。そして、今朝の早朝に王都に向けてこのように隊列を作って行進を開始し、王都にやっと戻ってきたというわけだ。

 今日は、このまま凱旋式のかたちで王都内を行進して、最後に王都広場である「儀式」を行うことになっている。

 凱旋はともかく、その儀式のことを考えると、気が重くないと言えば嘘になる。

 女王とはいえ人の子だ。だが、それに立会するのはイザベラの義務だろう。ロウは立会はしなくてもよいとは言ってくれたが、立ち合いすることはイザベラが決めた。

 すでに覚悟はしている。

 あとは女王として恥ずかしくない行いをするだけだ。

 

 それはともかく、結局のところ、あのリンが数日間にわたってイザベラ隊が外郭砦に入るのを阻止し続けたのはなんだったのか。

 宰相だったフォックス卿の関与の話もあったが、追い詰められたリンが一隊を率いて自殺的な突撃をしてきたことにより数日間にも及んだ対陣は終わり、そのときにリンは死んでしまったので、真意はやぶの中となった。

 リン以下が討ち取られて死んだことで、抵抗をせずに降伏をしたほかの外郭砦の将兵については、咎めをしないことに決めたからだ。リンが死に、それで終わりにすることにした。

 同じ王軍なのだ。

 無駄に処断するのはやめた。

 

 だから、リンの不可思議な行動の裏になにがあったのかの表立っての訊問もしなかったし、当然にフォックスが関与していたかどうかの証拠集めもやらなかった。

 ただ、裏では、ロウはなにかを仕掛けている気配でもあるし、フォックスに対しても、なんらかの手を回している感じはある。

 だが、それがなんなのかは、ロウははぐらかすだけで教えてくれない。

 イザベラには、それが不満であった。

 

「女王陛下、この先の城門の前に天幕を準備しております。そこで凱旋用の服装にお着替えしていただきます、凱旋式は凱旋馬車を準備しておりますので、ここにいる者はそのまま第一馬車に。第二馬車と第三馬車には、ハロンドールとナタル森林国の要人が分散して同行します。また、凱旋行進に先立って、王軍の儀仗を受けていただきます。指揮官はラスカリーナで……」

 

 ロウが恭しい態度で、淡々と説明を始める。

 イザベラは持っていた王笏(おうしゃく)を手でぱんと鳴らした。

 

「そのわざとらしい物言いをやめよ──。普通の態度でよい。どうせ、この馬車には、わたしたちしかいないのだし、余人がいても、そなたは、独裁官権限とか申して、勝手気ままにやっておるではないか。ロウ殿が慇懃丁寧な態度をすると、なにかを企んでいるようで気味が悪い」

 

「ははは、これは容赦ないな。まあ、企みはともかく、女王の凱旋だ。今日の凱旋式で王国が変わったということを印象づける。段取りはいいか? まあ、凱旋式そのものは、ただにこにこして手を振っていればいいからよろしくな。とにかく、俺に任せてくれ。見物人の心のに残る凱旋式にするつもりだ。王都市民の潜在意識にイザベラの美しくも艶やかな姿を焼き付けてみせよう」

 

 ロウがにこにこしながら言った。

 

「言われた通りにする。どうせ、わたしはお前の傀儡だからな」

 

 イザベラは吐き捨てた。

 はっきり言って、愉快ではない。

 結局のところ、今日の凱旋式の段取りについても、イザベラには特段の相談も、伺いもなかった。

 このロウと王都に残っていたアネルザが話し合って、細かいところまで決めてきたみたいだ。

 ふたりだけでなく、マア、スクルドなど、王都に残っていた女たちも総掛かりで準備したとは耳にしている。

 だが、イザベラには決まってから教わっただけで、話し合いには関与してない。女王というのは、些末は人に任せよということだった。

 まあ、イザベラに相談されたところで、意見らしいことは言えないのはわかっているが、蚊帳の外に置かれるのは面白くない。

 イザベラは女王なのだ。

 

「まあ、そうへそを曲げるな。愉しんで欲しくて、趣向を凝らしているだけさ……。それと、ガドも頼むぞ。今日は、お忍びじゃない。女王としてイザベラの横に並んでくれ。ハロンドール王家に、エルフ族とナタル森林国がついたことを印象付けたいんだ」

 

「任せてください、ご主人様。ガドはなんでもやりますわ。ご主人様の性奴隷ですもの──」

 

 ガドニエル女王が満面の笑みを浮かべて言った。

 慣れてきたが、この女王の天真爛漫さには苦笑しかない。エリカたちも、完全に同等の友人扱いだし、それだけ今回の旅で親睦を深めてきたのだろう。少し羨ましくある。

 

「頼もしいなあ。俺のためになんでもするというのは忘れないでくれよ。凱旋パレードの前には、ガドもイザベラと一緒に着替えてもらう。エリカもな。ほかはそのままでいいが、凱旋馬車には同乗だ」

 

「ちょっとお待ちください、ロウ様──。どうして、わたしもなのです。そもそも、なにに着替えるのですか?」

 

 すると、エリカが胡散臭そうな表情になって、ロウに訊ねた。

 それで、イザベラも不審なものを感じた。

 凱旋式ともなれば、それなりの正装にならなければならないことは当然で、着替えそのものにはなにも思わなかったが、考えてみれば、どうして、さっきからロウは着替えのことを繰り返し念を押しているのだろう?

 いやな予感がしてきた。

 

「そりゃあ、あんたが一番奴隷だからからじゃないの? なんたって、正妻様だし。きっと、ご主人様が特別なものを準備してくれているのよ」

 

 すると、コゼが横から口を挟んできた。

 

「特別なものって、なによ……?」

 

「まあ、いいから、いいから」

 

 ロウが笑った。

 イザベラははっとした。

 

「ちょっと待て、なにがいいからなのだ──。そなた、やっぱりおかしなことを……」

 

「ロウ様、一体全体、なにをさせるつもりなのですか──?」

 

 エリカも大声をあげた。

 

「話は終わりだ。さあ、着いたようだ」

 

 しかし、ロウが惚けたまま、馬車の窓に視線を動かす。

 気がつくと、すでに、城門のすぐ前に到着していて、待ち受けていた王軍の隊列のど真ん中に馬車は停止した。

 わっという歓声があがり、外から馬車の扉が開かれる。

 正面に近衛隊が整列しており、その近衛隊の両側に王軍の各隊が並んでいた。馬車の横には、大きなハロンドールの旗を掲げるマーズがいる。

 旗手としてロウが命じたのであり、派手な軍装をしたマーズの姿は戦いの女神の姿を彷彿させ、実に絵になると思った。

 イザベラが到着したことで、大歓声があがる、

 

「すごい歓声……」

 

 シャーラがぼそりと呟くのが耳に入った。

 

「わかりやすい人気取りもしたからな。とにかく大変だったぞ。まあ、俺じゃなくて、マアやアネルザだが。スクルドにも、三徹させた。あれには色々と罰もあるしな。その分だ」

 

 ロウが笑った。

 人気取りというのは、イザベラの女王就任に合わせて鋳造させた「イザベラ金貨」のことだ。表面にイザベラの肖像があり、それを王都市民の数だけ生産して、王都の全市民に一枚ずつ配ったのだそうだ。

 元になる金貨を提供したのはマアであり、膨大な数の金貨を新しく鋳造したのはスクルドらしい。数日でそれを成し遂げたのは、スクルドの魔道があったからからこそみたいだ。どうやら、三日間も徹夜で魔道を使わせたらしい。

 そして、それらの手配をしたのがアネルザである。

 

 ほかにも、ルードルフ王がやった重税政策の対処として、イザベラの女王就任後一年は王都市民の人頭税を無税にすると通告してあるし、イザベラの名を使った貧民への炊き出しなど、ロウの言葉ではないが、ほんの短期間でわかりやすい人気取り政策をしてくれたみたいだ。

 ロウによれば、イザベラの名は、ルードルフ王の娘であるという以外には、ほとんど市民には浸透してないので、あらゆることをして女王イザベラを市民に売り込まねばならないそうだ。

 そんなことの必要性は考えたこともなかったが、言われてみれば、キシダインが生存しているあいだは、生き残るのが精一杯で、イザベラは政務にはまったく関与してないし、王太女になってからの実績も、今回の遠征くらいしかない。

 まずは王都市民の支持を得なければならないというロウの言葉に、イザベラも大いに納得した。

 父であるルードルフ王の蛮行により、王家への信頼は地に落ちている。それをイザベラが取り戻さねばならないのだ。

 

 馬車の扉の外に踏み台が置かれる。

 ロウが最初に降りて、イザベラをエスコートのために待ち受けの体勢をとった。イザベラはロウの手を借りて、馬車の外に降りたつ。

 歓声がさらに大きくなり、拍手がそれに重なった。

 整列している王軍の周りや、城門の内側にすごい数の王都市民が集まっていた。

 

「待っててくれ、イザベラ」

 

 ロウが一度手を離し、今度はガドニエル女王に手を貸して馬車をおろす。

 忌々しいほどの洗練された仕草だ。

 まるで生まれながらの貴族かのように完璧な貴公子ぶりである。

 イザベラは苦笑した。

 

「さあ、女王様方……。よろしくお願いします」

 

 ロウがお道化て両手の肘を左右に出す。

 イザベラは右側、ガドニエル女王は左側に手を取り、正面に整列している近衛隊と王軍の方向に進み出る。

 そこには観閲台が作られていて、その台の反対側に整列する軍の先頭にひとりの女性将校が立っていた。

 荘厳な音楽が一斉に鳴り響く。隊列の向かって左端に並ぶ音楽隊だ。

 ロウとともに、ガドニエル女王と並んで観閲台にあがる。

 

「王軍臨時総司令官ラスカリーナ以下、近衛軍及び王軍が、忠誠を誓う女王陛下に対して敬礼を行ううう──。総員、抜刀──」

 

 号令は先頭の女性将校だ。彼女がラスカリーナなのだと思った。

 残念ながら、イザベラには面識はない。いや、近衛隊だったということなので、どこかで面識があったのかもしれないが、残念ながら記憶にはなかった。

 しかし、今回のことでロウが愛人として性奴隷に加えたということだ。

 かなりの美人である。

 彼女がそうか……。

 いずれ、親しく接することもあるのだろう。

 同じロウという男に調教される者同士だ。

 「(さお)姉妹」だったか……?

 

 改めて、各隊を眺める。

 整列の近衛隊と王軍を併せて千人はいるだろうかと思った。

 もちろん、整列している王軍は、王都に駐留している王軍のほんの一部でしかない。

 整列の全将兵が一斉に剣を抜く。

 

「女王陛下に、ささげえええええ──とおおお──」

 

 ラスカリーナ以下の全将兵が抜いた剣を顔の前にかざす。また、ラスカリーナの後ろに並ぶ各隊の軍旗も一斉に傾き、イザベラに向かって棹の頭を向けた。

 イザベラはロウの肘から左手を離し、右手に持っていた王笏をすっと顔の横まであげる。

 答礼の仕草だ。

 一方で、ロウとガドニエルはそのままの姿勢だ。

 すると、正面のラスカリーナがぐらりと視線を崩した。

 

 いや、崩さない。

 姿勢を保っている。

 

 だが、苦しそうか?

 かすかに脚が震えだしたような……。

 なにか変だ。

 

「……くくく、あいつの股間にはディルド付きの貞操帯を嵌めさせている……。いま、前を強振動させてやったところだ……。見ていろ。次の号令のときには、アナルのディルドも動かしてやるから……」

 

 そのとき、ロウがすっとイザベラの耳元に口を寄せてささやいた。

 貞操帯のディルド──? 強振動?

 なんという悪趣味な──。

 イザベラは、知らず自分の身体がかっと熱くなるのを感じた。

 

「た、たてえええ──とおおおお──。いひゃっ」

 

 ラスカリーナが敬礼を終わる号令を出す。

 明らかに声が裏返っているが、この大歓声の中だ。不自然さを覚える者はいないみたいだ。

 ただ、ロウが悪戯を追加したのだろう。

 号令の終わりとともに、ラスカリーナががくりと膝を割って腰を落とした。

 しかし、すぐに姿勢を戻す。

 でも、ラスカリーナの顔は真っ赤だし、汗が一斉に噴き出してもいる。

 

「が、凱旋式の指揮をと、とらせていただきます──」

 

 ラスカリーナが直立不動の姿勢に戻り、イザベラに向かって叫んだ。

 

「よろしく頼む」

 

 とりあえず、イザベラは言ったが、ラスカリーナの身体の震えはますます大きくなる。

 おそらく、姿勢を保つのがやっとで、動くこともできないのかもしれない。

 

「ロウ様──」

 

 そのとき、背後に立っていたエリカが小さく叱咤の声をあげた。

 

「わかったよ」

 

 ロウがかすかに肩を竦めた。

 すると、ラスカリーナがわずかに脱力するような仕草をするとともに、顔が安堵の表情に変わるのがわかった。

 ロウが悪戯をやめたのだろう。

 

 その後、整列の王軍の儀礼を受け、王都凱旋のための隊列を取り直すことになった。

 凱旋式用の馬車も運ばれてくる。

 二階建ての大きな馬車であり、上面にイザベラたちが立つ屋上がある。それが三台並んでいく。

 

 一方で、ロウが言っていたとおり、イザベラたちだけは横に作られている天幕の着替え所に入った。

 着替え所は十数個ある。

 イザベラは指示のとおりの天幕のひとつに入った。ガドニエル女王とエリカとは別々だ。

 

「姫様──」

 

「ああ、姫様、ご無事で──」

 

「姫様──」

 

 中で待っていたのは、侍女たちのうち、南方に同行させなかった者のうちの三人だ。

 クアッタ、ユニク、デセルだった。

 

「おお、お前たちか。わたしたちは無事だ。心配かけたな。ほかの者も元気か?」

 

「はい、この十日ほどのあいだは、王妃様から死ぬほどに書類を作らされて鍛えられましたけど、なんとか生きてます。姫様もご無事でよかったです。御子も大丈夫ですか?」

 

 三人とも涙ぐんでいる。

 話しかけてきたのは、クアッタだ。

 ほかの二人もしきりに頷いている。

 

「元気だな。優秀な魔道遣いに囲まれているのだ。なにも起きようもない」

 

 治療術の遣える魔道遣いは、医師と同じだ。いや、医師以上に医師としての役割を果たす。

 ミウ、ガドニエル女王は天下一の白魔道遣いでもある。

 母体はしっかりと守ってくれていた。

 順調だそうだ。

 イザベラは気がつくと、やっと膨らんできたお腹に手をやっていた。

 

「よかったですう……。ところでえ、ロウ様には、身に着けているものを全部脱いでもらって、これに着替えさせろと命令されているのですけど……。よろしいですかあ?」

 

 そのとき、ユニクがいつもの舌足らずのような口調とともに、かごを差し出した。

 

「はああ?」

 

 その中にあるものを見て、イザベラは思わず声をあげてしまった。

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