【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ありがとうございました……。素晴らしかったですわ。さすがは、お噂通りのお方でした……」
イザヤが汗に濡れた額に前髪を張りつかせた美しい顔を微笑ませる。
アーサーは、寝台に横たわったまま、身体だけを横に向けて、肘を曲げた手に頭を載せた。
すると、イザヤが気怠そうに身体を起こした。
「腰が立たないのではないか? そのまま朝まで横になっていたらどうだ?」
アーサーは笑った。
結局、イザヤとの情交は一ノスほどの時間だった。そのあいだに、アーサーは三回精を放ったが、イザヤはその三倍は達しただろう。
腰がふらついているのが、アーサーにもわかる。
「まさか。アーサー閣下に、朝日のあがった時間に素顔をお見せするわけにはいきませんわ。きっと寝過ごしてしまうに決まってますもの。みっともない寝顔を見られたくもありません」
「あなたの寝顔がみっともないわけがない」
アーサーは言った。
我ながら、女をおだてるようなことを口にしたのはびっくりしたが、なんだかんだでイザヤとの性愛は気分がよかった。
だから、そんな軽口が思わず出たのかもしれない。
「ふふふ、四十女には譲れない矜持というのがあるのですよ……。いずれにしても、閣下は十分にわたしを屈服させました。お約束通りに、デセオはタリオに服従いたします」
イザヤは寝台の横にある椅子に、裸のまま身体を移した。
かすかに開いている脚のあいだから、ねっとりとしたイザヤの愛液が漏れ出て、椅子を濡らしたのがわかった。
イザヤはまだ息が荒く、かたちのいい乳房が前後に動いている。
それにしても、情交を終えたばかりの女というのは、こんなにも色っぽかったかな?
アーサーは改めて、そんなことを思った。
すると、扉にノックの音がした。
「失礼いたします」
扉の外から声がかけられたのは、イザヤの侍女のようだ。
イザヤが返事をすると、侍女が二人入ってきた。
アーサーとイザヤに頭をさげる。
すると、そのふたりがイザヤの腰かけている椅子の両側についた。左右から身体を支えるように、イザヤを立ちあがらせようとする。
アーサーは、それを制した。
「待ってくれ。ひとつだけ、言っておくことがある」
アーサーは言った。
「はい」
イザヤが視線を向けてくる。
「タリオの公都に戻り次第に、新たなローム帝国の立国を宣言する。三公国に分離していたタリオ、カロリック、デセオは再びひとつになる。それを告げておく」
「なるほど」
イザヤが侍女たちの手を借りて、その場に片脚を立てて跪いた。
右手を乳房のところで身体の前に横に置く。
「偉大なる皇帝陛下にデセオ公国の忠誠を……」
イザヤが首を落として、首の背をアーサーに見せた。
最大級の敬礼だ。
「忠誠を受ける」
アーサーは立ちあがった。
お互いに裸身なので、跪くイザヤの前に立つと、丁度怒張がイザヤの顔の前あたりに接近した感じになる。
アーサーは右手の人差し指と中指でイザヤの首の後ろのうなじの部分を軽く叩く。
剣がないので、これをもって忠誠の誓いとなる。
「顔をあげてくれ」
アーサーの言葉でイザヤが貌をあげた。
「これで、デセオ公国は新ローム帝国の支配に入ることになった。明日もまた会同となるが、明日からは皇帝と大公の関係で話し合うをすることになる。そのつもりでいてくれ」
「承知しました、皇帝陛下」
イザヤが静かに再び頭をさげる。
アーサーは頷く。
「ところで、イザヤ」
あえて呼び捨てにする。
「はい」
イザヤが顔をあげる。
「イザヤはまだ夫はいないかったな」
「えっ、はい」
イザヤはちょっと戸惑った感じで頷く。
「さっき、明日は皇帝と大公との関係で話し合うと申したが、お前が望めば、皇帝と皇后の関係にしてもいい。第二妃の格で迎えよう。大公としての統治があるから、皇帝府となるいまの大公府のアナクレオンに来る必要はない。形式婚だ。だが、イザヤは俺の妃と名乗ることができる。そして、年に数回になると思うが、妃として抱いてやろう。俺の子を成すのだ」
「えっ?」
イザヤが目を丸くしたのがわかった。
「不服か?」
アーサーは笑った。
不服などあるはずもない。
第一妃である正妃には、エルフ族王家のガドニエルか女王の姉のラザニエルあたりを考えているので、大公でしかないイザヤをその地位に当てるわけにはいかないが、第二妃なら、イザヤとしては望外の地位のはずだ。
だが、イザヤとの性愛は、なかなかに充実していた。
イザヤであれば、アーサーの妻のひとりとして数えてもいいだろうと思ったのだ。
それはともかく、いまのところ、エルフ族王家との正妃交渉は難航している。打診はしているが、返事らしい返事を受け取ることができないのだ。
忌々しいことに、女王ガドニエルが、あのロウ=ボルグを恋人にするという戯言を宣言し、そのため、現段階でタリオからの申し出はほとんど検討もされていない気配なのはわかっている。
しかし、ガドニエルがロウを恋人宣言をするなど、限られた期間の遊びでしかないのは明白だ。
所詮は遊びだ。
ガドニエル女王もそのつもりだろう。
まあ、その気になっているロウが喜劇ではあるが……。
ハロンドール女王となったイザベラとともに、ガドニエルがロウと婚姻を結ぶという情報も入ってきているが、アーサーは信用はしていない。
それよりも、アーサーが皇帝となることで、改めてエルフ国に申し出れば、今度は真面目な検討に入るはずだ。
歴史上、ローム皇帝とナタル森林王国のエルフ女王との形式婚は数例の前例があるのだ。
皇帝アーサーであれば、いくらなんでも、エルフ王家も無下にできない。
「不満など。嬉しゅうございます、皇帝陛下」
イザヤが満面の笑みを浮かべた。
「さもあろう」
アーサーは頷いた。
だが、イザヤが残念そうに目を伏せた。
「でも、申し訳ありません、陛下。デセオの風習で、デセオの大公となったわたしは、どの殿方とも婚姻は結べないのです。それはデセオの掟に反します。陛下の申し出は心の底から嬉しいのですが、歴代の大公で婚姻を結んだ者はおりません」
イザヤが悲しそうに言った。
アーサーは唖然とした。
まさか、断られるとは思わなかったのだ。
「妃にはならんというのか──」
アーサーはむっとして言った。
「申し訳ございません、皇帝陛下……。それでは御前を失礼させていただきます」
イザヤは侍女に両肩を抱えさせて立ちあがり、まだふらついた感じの脚で部屋を出ていった。
アーサーは憮然としてしまった。
*
アーサーとの交合の終わった寝室から出ると、イザヤは支えさせていた侍女たちから身体を離して、すたすたとあてがわれている自室に向かった。
そして、防音の処置のある部屋に入るなり、裸身をソファに沈めさせた。
「惚けんじゃないわ。わたしを妃にしてやるって? あの下手糞な性技しかできないのに──? はっ」
イザヤは鼻を鳴らした。
「お下品ですわ、大公閣下」
侍女がくすりと笑った。
「下品で結構よ。だけど、ああ、驚いた。結婚? 第二妃? 頭に、
「実際のところ、タリオ公の性交はどうだったんですか? 聞き耳を立てている限り、それなりに気持ちよさそうでしたけど?」
「あんなのは演技よ。それも接待のうちね。まあ、実際のところと言われれば、八点くらいはあげてもいいわね。正直、持久力はあったわ。それと、ここぞというときに、いいところを刺激してくれるとこは加点かも。そうねえ、下手糞は訂正するわ。ちょっとはよかったかも。さすがはタリオ公よ」
「あら、八点は結構いい点ですね。十点満点ですか?」
「百点満点でよ」
イザヤは大笑いした。