【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
交渉相手のアーサーは、随分と機嫌がいいようだった。
いや、機嫌がいいというよりは、イザヤに対する優越感に浸っているのだろう。隠すことのないにやにや笑いがそれを物語っている。
逆に、イザヤには不愉快さがずっと心につきまとっている。だが、それはこの状況では押し殺すしかなかった。
「政策顧問団の派遣に対する謝金ということですね」
イザヤはアーサーを見た。
横長のテーブルに向かい合うように座っているイザヤとアーサーの横には、数名ずつの大臣級の随行者が座っている。
昨日の対面は、まだ大公同士の挨拶という側面が強かったので、一対一の応対だったが、今日の会合は最終的な交渉内容の確認が目的であるので、交渉内容の議論を補佐するそれぞれの専任者も同席しているのだ。
ただ、タリオ側については喋っているのは、大公のアーサーだけである。
そして、今日の交渉として、タリオ側が持ち出した新たな要求が、ひとつは政策顧問団という名目によって、デセオ公国の政治中枢に一定のタリオの重鎮を常駐させることと、それに対する謝礼金という名目による定期的な財貨の支払いだ。
政策顧問団というのは、名前はともかく、つまりは、デセオ公国の監視者の受け入れだ。
しかし、これについては、問題ない。
どんな人物が派遣されてこようとも、デセオの色責めで骨抜きにして、デセオに都合のいい存在に作り替えてしまえる。
房中術に精通しているデセオ人の土地に、なんの心得もないタリオ人がやってきたところで、あっという間に取り込める。
男であろうと、女であろうともだ。
あの手この手で快楽漬けにしてやろうと思う。
もうひとつの要求は、顧問団の派遣料ということにはなっているが、実際には朝貢品の献上だ。
昨日までの交渉で、朝貢という名目ではデセオからタリオへの金銭の支払いはないということになっている。
だから、顧問団派遣の謝礼金という名目になっているのだ。
デセオの
もともと、それくらいの要求は想定の範囲だ。
「いかにもだ。顧問団の派遣は、デセオの政策の充実発展に大きく寄与するのは間違いない。よくよく、派遣団に学ぶことだ」
アーサーが口角をあげながら言った。
そのにやにや笑いは、ずっと気味が悪くて仕方がないのだが、あれでもアーサーは随分と女にもてるのだそうだ。
まあ、確かに美男子ではある。
でも、正直、イザヤからすれば、女を小馬鹿にしている本音が隠れてもなくて、個人的には好きになれる相手ではない。
しかし、新たなローム帝国の初代帝だ。
デセオ国を守るためには、忠義を示さなければならない相手である。
だが、いまのアーサーの物言いは気に入らない。あまりにも失礼な言い方だ。
「わが公国が遅れていると申されますか?」
ちょっと釘を刺しておこう。
しかし、どうにも、今日は昨日とは打って変わって、上から目線だ。
だが、その理由がいま少し判然としない。
閨でのことは、アーサーの優越感を満足させて、うまく対応したと考えていたが、あまり花を持たせすぎたか?
あるいは、おかしな映録球がイザヤの執務室に置いてあり、その映像には驚いたものの、もしや、あれでなにかの恐喝でもしているつもりなのだろうか?
「そこまでは言わない。ただ、ほかにも、大公としての在り方とか色々だ。そもそも施政者には矜恃もあれば、保たなければならない格というものがある。品格とも言うな。それを学ばれよ」
「まあ、わたしに品格が欠けるというのですか? あらあら、これは恥じ入るばかりですね。申しわけありませんわ」
かっと頭に血が昇りそうになる。
もしかして、この男はイザヤに喧嘩を売りたいのか?
イザヤに品格が欠けるとか、なんという物言いだ──。
怒りが込みあがるが、もちろん、それを表に出すことはない。
しなを作るように優美に身体をかすかにくねさせる。
アーサーだけでなく、ほかのタリオの男たちが顔を赤らめるのがわかった。
ちょろいものだ。
「まあいい。いずれにしても、顧問派遣の代替えは、百日ごとの魔石の支払いを要求する。量は……」
アーサーがデセオが支払うべき魔石の数を口にした。
イザヤは眉をひそめた。
一連の交渉の中で、タリオがデセオに定量の魔石の引き渡しを要求してくるというのは想定していた。
だが、アーサーが要求してきたのは、イザヤたちが推測していた量の十倍ほどの数量だった。
デセオとしては、定量の魔石をタリオに引き渡す一方で、さらに交易によって利益を得ようと思っていた。今回の交渉の中で、関税額の引き下げなどの具体的な詰めもする予定だったのだ。
しかし、アーサーが要求してきた量を全部渡すとなれば、交易によって売る予定の量がなくなってしまう。
「そこまでは……。相場というものがありましょう。桁をお間違えではないですか。わたしたちは、そこまでの代価を支払って、顧問団を受け入れることはできませんわ。遅れた国であっても、所詮は小国ですから、そこまでの物を準備できませんの」
イザヤはできるだけ優美に見えるように、小さく首を横に振る。
魔石というのは、クリスタル石とも呼ばれ、さまざまな魔道具の魔力の動力源としてや、魔道紋を刻み込んでの魔道具の効果発揮の手段として使われる。
いまや、魔石は社会生活に不可欠のものとして位置づけられるが、その魔石が生産できるのは、ナタル森林のみなのだ。
どうして、そうなのかは、いまだにわかっていないが、おそらく、人類発祥の地である森林に、潤沢な魔力が埋蔵されているからではないかと推測されている。
この大陸で唯一安定的に、魔石を生産できるナタル森林国を支配するエルフ族王家は、人類発祥の地の守備者という尊敬とともに、全大陸に強い影響力を持っている。
だが、実は、魔石を入手する方法としては、ナタル森林のエルフ族が生産するというもののほか、魔獣の体内にあるものを採集するという手段があるのだ。
もともと、魔獣というのは、かつての冥王戦争において異界に追放した魔族たちの世界から、瘴気ともに異界との綻びから侵入してきた異世界の生き物であるのだが、その体内には大小さまざまな魔石があるのが一般だ。
これもまた、理由ははっきりとはわかってない。
人類にとっては毒素に過ぎない瘴気が魔獣の体内で結晶化し、それが魔石になるのだと考えられ、ナタル森林で生産できるクリスタル石とは、似て非なるものであると唱える者も少なくないものの、現実的には、クリスタル石も、魔獣から採れる魔獣魔石も質は変わらない。
巨大化し、凶暴性の強い魔獣から採れる魔石は、むしろ、クリスタル石よりも大きさも、純度も、魔力の濃さも良質であるものも多い。
実際、鎖国をしてナタル森林国との国交のない北方のエルニア王国や、さらに北方の諸種族の拡がる北方地域では、魔獣からの採集が唯一の魔石入手方法だと思う。
そして、ローム三公国のうち、デセオ公国については、ナタル森林から地形的な距離があるため、魔石入手をナタル森林に頼ることが難しかいという背景があり、エルニア王国や北方諸国と同様に、歴史的に、魔獣魔石が専らの魔石の確保方法なのだ。
大量の魔獣がはびこるルルドの森に接しているということも、魔石の入手ができる環境を整えているといえる。
ただ、魔獣の採集は危険であり、命を落とすことが多い命がけの仕事ではある。
いずれにしても、ローム三公国の中で、デセオは魔石を他国に輸出できるほどの状況であり、主幹産業となり得るものの乏しいデセオとしては、これを国の繁栄に使えないかと、イザヤも期待しているところである。
だから、その余分のすべてを朝貢としてタリオに引き渡すなど、甘受できるものではない。
まあ、アーサーがハロンドールの新たな権力者のロウ=ボルグに対立しているという情報は握っていて、そのロウと、エルフ族女王のがドニエルが恋仲であるのはすでに世間で知られているので、タリオが今後、魔石入手の安定的な確保をナタル森林のクリスタル石以外に早急に求めるだろうというのは予想していた。
デセオはそれができる場所だ。
しかし、まさか、なにからなにまで、争奪しようというのは……。
「一対一で話せないか。その件で話し合おう」
すると、アーサーがにやりと笑った。
「話し合っても同じですよ。受け入れられる条件と、受け入れられない条件があります。もしかして、タリオ公国は、今回の交渉を破綻させたいのですか? 偉大なる皇帝陛下?」
イザヤは冷たい微笑みで返した。
笑っているような外観でありながら、実際には相手に悪意を感じさせるという笑みだ。
アーサーがむっとしたのがわかった。
「……よいのか? そなたと侍女の醜態が世間に暴露されるかもしれないぞ。一対一で別室で話そうか……」
すると、アーサーがぼそりと小さな声で言った。
イザヤは耳を疑った。
もしかして、本当に脅迫?
あの映録球は、やっぱりそういう意味だったの?
イザヤは唖然とした。
みんなで首を捻って、それも可能性のひとつという意見もあったが……。
それにしても、まさか、これから皇帝を僭称しようという男が、そんな下衆なことをするとは……。
だが、イザヤの表情の変化を、イザヤが衝撃を受けたと勘違いしたのか、アーサーの顔がまた、あの優越感に浸された。
「いや、なんでもない。いまのは独り言だ。記録をするな」
アーサーが椅子の背もたれに身体を預け、記録官に軽く手を振る。
タリオ側は、ほぼ全員がにやにやと笑っている。例外は端に座る双子の男だろう。
とにかく、どうやら、そういう意味か……。
デセオを恐喝するとは……。
自分の頭の中の線がぶちぶちと千切れる感覚がした。
イザヤは立ちあがった。
もちろん、表立っての怒りは微塵にも見せない。
しかし、内心でははらわたは煮え返っている。
「コーラを呼んでまいれ」
侍女だちも護衛も壁一枚隔てた隣室に詰めさせている。
呼べばすぐに来る。
「イザヤ大公? どうした?」
アーサーが怪訝な声を出した。
「ちょっとした余興だ。そこで見ておれ」
アーサーに媚びるのはやめだ。
口調も改めた。
享受できるものと、できないものがある。
ここまで馬鹿にされて、怒らないではいられない。
デセオ大公のイザヤをまさか、あんな映録球の映像ごときで追い詰められると思ったとは──。
「陛下、参りました」
扉が開いて、大公侍女としての装束を整えているコーラが恭しい仕草でやってきた。
イザヤは、コーラに寄っていく。
「陛下?」
コーラが戸惑いの声を出す。
「両手を背中で組め。命令だ」
「えっ? えっ?」
コーラは困惑顔だ。
しかし、大人しく両手を背中に持ってはいった。
イザヤは、コーラのスカートをまくりあげ、股間に手を入れる。
「わっ、なに、イザヤ──」
コーラが叫んだ。
突然すぎて、言葉を繕うのにも失敗したみたいだ。
「これは戯れではない──。いいから、動かないで……、コーラ。黙って受け入れて」
耳元で言葉をささやきながら、コーラのスカートの中で股間を愛撫する。
下着の隙間から指を入れて、コーラの感じる部分を刺激していく。
コーラの股間はあっという間に潤沢な蜜を漏らし始める。
「あっ、へ、陛下……。お、お戯れを……」
「戯れではないと言っておるだろう」
イザヤは片手でコーラの腰を掴んで離されないように支えるとともに、右手による愛撫を続ける。
コーラも抵抗はしない。
両手は背中側に回したままだ。
「イ、イザヤ公──。なにをしている──。気でも触れたか──」
アーサーが怒鳴った。
ほかの者も騒然となる。
「なに、アーサー殿たちには、デセオの風習について誤解があるようでな。だから、あんな映録球がなにかの交渉の材料にでもなると考えてしまうのだろう。しかし、デセオは享楽と快楽の国だ。退廃こそ正義よ」
イザヤはコーラの股間の愛撫の手を激しくするとともに、コーラに口づけをする。
繰り返し、舌を舐めしゃぶる。
コーラがいよいよ喘ぎ始めた。