【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ロ、ロウ、こんなものがギルドに届けられたの。誰が持ってきたかは不明よ。いつの間にかあったのよ。手紙とともに……」
蒼い顔をしたミランダが言った。
その手には、ベルズに変身していたはずのエリカが身につけていた巫女服と、コゼが着ていた服がずたずたに切り裂かれたものが抱かれていた。
しかも、コゼの服には明らかにコゼ自身のものを思われる血がべっとりとついている。
一郎は頭の血が沸騰するのを辛うじて抑えた。
エリカとコゼが捕らわれたのは明らかだろう。
おそらく、ノルズに違いない。
一郎は、ノルズというスクルズやベルズの幼馴染の女を少し甘く見ていたことを後悔した。
「ベルズ、スクルズ──。やっぱり、ここにいたの──? そ、それにしても、その恰好……」
ミランダの顔が驚きの表情に変化した。
その視線は、寝台に全裸で後手縛りで拘束されているベルズと、その横でやはり裸身のままのスクルズに注がれている。
寝台にあった敷布は、とっさに一郎が身体を覆うのに身体にまとったので、スクルズとベルズのふたりは、身を隠すものもなく、素裸で寝台に乗ったままだ。
「ミ、ミランダ殿──。これにはわけが……」
「あ、あの……わたしたちは……」
ベルズとスクルズが同時に狼狽えた声をあげた。
そして、スクルズが思い出したかのように、魔道でベルズを拘束している革紐を取り去る。
とりあえず、ベルズの拘束が解けた。
「ロウ、それよりも、エリカたちがさらわれたようだ。ふたりを殺されたくなければ、ロウがひとりで王都の郊外の中州に来るように書いてある。どうする──?」
シャングリアが一郎の前に割り込むように出てきた。
その手には手紙のようなものが握られている。
どうやら、それがノルズの書いた一郎にあてた脅迫状なのだろう。
しかし、一郎はとりあえず、目の前のミランダに立ち向かう必要があった。
……それにしても、舐められたものだ。
まあ、ノルズは、一郎に魔眼の能力があることは知らないのだ。
無理からぬこととは思うが……。
「ま、待て──。そ、それは、魔瘴石──。そ、そなたたち、魔瘴石を身体から抜くことができたのか?」
ミランダの声が上ずったようになった。
その視線がずっと、寝台の上に向けられていたのは気がついていた。
このミランダがやって来たのが、まさにスクルズとベルズのことを確かめるためであるのは、そのことからも明白だ。
「……スクルズ殿とベルズ殿がどういう状況なのかを確かめに来たのか、ウルズ? 洗脳されているとしても、俺は俺の大切な女を傷つけられて手加減するほど、お人好しじゃないぞ」
一郎はそう言った。
「なに?」
寝台の上に無造作に転がっていた魔瘴石に見入るようにしていたミランダの顔が一郎に振り向く。
しかし、そのときには、一郎の拳はミランダの腹に叩き込まれていた。
「あぐっ」
ミランダの身体が吹っ飛ぶ。
そして、その手から隠し持っていた魔道の杖が離れた。
「なにをするのだ、ロウ?」
壁に向かって身体を二転させたミランダの身体を見て、シャングリアが血相を変えた声をあげた。
「ミランダじゃない、シャングリア──。これがミランダなら、俺ごときの殴打でひっくり返ったりはせんよ。それに、ドワフ族のミランダは杖は遣わん」
一郎は叫んだ。
ミランダは、怪力無双で伝説的な名をあげた元冒険者だ。
一郎のパンチなど、虫が止まったくらいにしか感じないだろう。
殴られて、身体が跳ぶなどあり得ない。
一郎の言葉で、シャングリアがはっとした顔になった。
「何者だ──?」
シャングリアが腰の剣を抜く。
「そいつはウルズだ。おおかた、ノルズの指示で状況でも探りに来たんだろう」
一郎は短く言った。
そのときには、すでに立ちあがりかけた偽のミランダの頭を掴んで、膝を腹に食い込ませている。
「がっ」
ミランダに変身しているウルズががくりと膝を割った。
それにしても……。
“ウルズ
人間族、女
第1神殿筆頭巫女
年齢25歳
ジョブ
魔道遣い(レベル60)
生命力:50
攻撃力:20
魔力:500↑(魔瘴石)
経験人数:男3、女3
淫乱レベル:S
快感値:100
状態
魔瘴石の憑依
洗脳状態”
一郎が見ることのできるウルズのステータスに示されている魔道遣いとしてのレベルの高さはなんとしたことだろう。
これほどの魔道遣いのレベルの持ち主など、一郎はあのアスカ以外には会ったことはない。
すると、不意にふわりと身体が浮いたと思った。
次の瞬間、ものすごい勢いで、天井に背中を叩きつけられていた。
ウルズの魔道だ──。
見えない力で天井に身体を押しつけられている。
その力の大きさに、一郎は悲鳴をあげることもできないでいた。
「ロウ──」
シャングリアが叫んで、ウルズに剣で飛びかかった。
ウルズが腕を振る。
部屋に暴風のようなものが吹き、シャングリアを吹き飛ばした。
そのあいだも、一郎は天井に身体を押し付けられたままだ。
「暴れるのをやめなさい」
スクルズだ。
寝台の上で杖を構えているスクルズからミランダの身体のウルズに向かって光線が飛ぶ。
しかし、ミランダの身体のウルズは、それを腕で光線を跳ね返す。
「きゃあああ──」
自分の放った電撃を返されたスクルズが身体を弓なりにして寝台から転げ落ちた。
「あ、あんた、本当にウルズ? だったら、どういうことなのだ?」
ベルズがスクルズを助け起こすために、寝台から飛び降りながら叫んだ。
「それはこっちの言葉よ、ベルズ──。まさかとは思うけど、その冒険者にすっかりと寝取られちゃったんじゃないでしょうね。とにかく、この男は殺すわ」
ミランダの身体のウルズが指にある変身リングに触れる。
すると、魔道が解けて、ウルズそのものの姿が現れた。
そのウルズが手を前にかざした。
いかん──。
一郎は天井に当たっている背中に冷たい汗が流れるのがわかった。
それにしても、どうして、こんなに凄まじい魔道遣いとしての力をウルズは振るえるのか?
一郎たちの調査では、魔道遣いとしての能力は、ウルズは、スクルズやベルズに劣るという評判のはずだった。
しかし、目の前にいるウルズは、明らかに魔道遣いとして、スクルズたちとの格の違いのようなものを示している。
「わたくしめの屋敷で好き勝手は許しません」
しかし、そのとき、突然にシルキーの声がした。
同時に一郎を天井に張りつかせていた力が緩む。
「ロウ──」
天井から落ちてくる一郎をシャングリアが下から抱えるように掴んだ。
一郎はシャングリアとともに、床に転がる。
「屋敷妖精か──。人間様に逆らうとは身の程知らずよ。分をわきまえなさい」
ウルズが怒りの声をあげる。
部屋にシルキーが出現する。
すかさず、ウルズが両手を広げて、シルキーに暴風のようなものを叩き込んだ。
だが、シルキーは両手を顔の前にやって、辛うじてそれを耐える。
「ウルズ、どうしたのよ、あんた?」
今度はベルズから光線が飛んだ。
だが、ウルズはそれもなんなく腕で跳ね返す。
返ってきた光線をスクルズが魔道でなんとか弾く。
跳ねたエネルギーの塊のようなものが壁に跳ぶ。
「シルキー、この部屋にある魔力を消滅させろ──。完全に魔力の空洞を作るんだ。できるか?」
一郎は叫んだ。
魔道遣いの力の源は、魔力と称される気だ。
魔力は大地や植物、風の中や川や水という自然の中から発散し、大気に溶け込むようにあふれているものらしい。
魔道遣いたちは、それを自分の身体に取り込んで、「魔道」と呼ばれる不思議な力を遣うのだ。
だが、この屋敷内に限り、屋敷妖精のシルキーは屋敷を「管理」するためのあらゆる力を発揮することができる。
だから、屋敷の中から魔力を消失させることはできると思った。
魔力がまったくなくなれば、どんなに力の強い魔道遣いであろうとも、魔道を起こすことはできない。
「はい、旦那様──」
シルキーが手をあげた。
「な、なに?」
ウルズがぎょっとした表情になるのがわかった。
一郎にはわからないが、シルキーによって、この部屋の魔力が一時的に消失したに違いない。
ウルズは明らかに動揺した様子になっている。
「こいつ──」
シャングリアがウルズを飛びついて倒す。
「い、痛い──」
ウルズが床に抑え込まれる。
一郎は部屋の壁から魔道封じの首輪を取り出して、シャングリアが押さえているウルズに取りついた。
ウルズの細い首に首輪をかける。
「ち、畜生──」
ウルズが筆頭巫女には似つかわしくない悪態をついた。
「ス、スクルズ、ベルズ、助けておくれ──。わたしは冒険者にさらわれたあんたたちを助けに来たのよ。この冒険者たちをなんとかしてちょうだい」
シャングリアにうつ伏せに押さえられているウルズが声をあげる。
しかし、スクルズとベルズは当惑したように、一郎に顔を向けるだけだ。
おそらく、どうして、ここにウルズがやってきて、しかも、ミランダに変身していたりしたのか、さっぱりとわからないのだろう。
しかし一郎には、ウルズがやってきた理由は、はっきりとはわからないものの、だいたいの見当をつけることはできる。
ウルズのステータスには、「洗脳状態」という言葉がある。
つまりは、ウルズの心は、すでにノルズの操り状態にあるということだ。
エリカとコゼの身柄がノルズの手にあるのは間違いないだろう。
そして、ノルズは、スクルズたち三巫女の支配を邪魔しようとしている一郎が目障りに違いなく、エリカたちを人質にして、一郎を捕らえるか、殺すかしたいと考えていると思う。
だが、同時に、ノルズには、一郎が連れていったスクルズとベルズがどういう状態にあるのか皆目見当がつかなかったのだとも思う。
だから、エリカから奪った変身の魔道具で、ウルズをミランダに変身させて、ついでに状況を探ろうとしたに違いない。
あわよくば、そのまま、ウルズにミランダのふりをして、一郎を手紙に示している場所まで誘導して騙し討ちにさせるか、あるいは、ウルズだけで一郎を捕らえて、面倒な騙し討ちなどなしに、屋敷であっさりと一郎を捕らえるということも考えていたかもしれない。
しかし、魔眼を駆使できる一郎に呆気なく見破られ、行動を起こす前に、逆に捕らえられたということだ。
「わ、わたしに手を出すと、あんたの仲間がひどい目に遭うわよ。わたしが戻らなければ、ノルズは、手紙に示す場所にはやってこない。エリカとコゼは、あんたの知らない場所で殺す。そういうことになっているのよ」
ウルズが早口で言った。
「まあ、ウルズ、なんてことを──」
「ウルズ、あんた、自分がなにを喋っているのかわかっているのかい──。神に仕える巫女ともあろう者が、無辜の民を殺すというの? 不殺の誓いを忘れたか──?」
素裸のままのスクルズとベルズのふたりが、ウルズの言葉に目を丸くしている。
「な、なにが無辜の民よ──。こいつらは、ノルズの仕事を邪魔する厄介者よ。どうしても排除をしなければならない相手なのよ──」
ウルズは言った。
そして、一郎をにらむ。
「いずれにしても、お前、わたしの言ったことは本当よ──。わたしを解放しなさい。そうすれば、あの女ふたりが捕らえられている場所に連れていくわ。ノルズも別に、殺す必要があるとまでは考えていないわ。ただ、二度と、手を出すことができなくして、放逐するだけよ」
ウルズが言った。
一郎は嘆息した。
「……ゆっくりと、洗脳を解いてから支配してやりたいが、そんな時間はないようだ。悪いが手っ取り早く処置させてもらうよ」
一郎はベルズの後ろに回った。
そして、ウルズのスカートを腰まで一気にまくり上げた。
「きゃああ──。な、なにをするのよ──」
ウルズがびっくりして悲鳴をあげた。
「大人しくしろ──。ロウがお前を女にしてくれるのだ。感謝するんだな」
暴れようとするウルズをシャングリアがしっかりと押さえつけた。
「わたくしめも手伝います。部屋の魔力は少しずつ回復しています。この女の身体を拘束することくらいはできます、旦那様」
シルキーが言った。
魔道封じの首輪でウルズを無力化したので、魔力の消失をやめたのだろう。
「だったら、四つん這いにさせてくれ」
一郎は言った。
すると、ウルズの身体が起きて、四つん這いの姿勢になる。
「う、うわっ、な、なにを……」
ウルズがぎょっとしている。
「スクルズ殿、ベルズ殿、申しわけありませんが、ウルズはこのまま犯さないとなりません。ゆっくりと時間をかけている暇がないのです。どうやら、俺のエリカとコゼは、このウルズとノルズによって、捕らえられているようなのです。ウルズは死にはしません。でも、どうなるかは……」
一郎はまくり上げているウルズの腰から下着をおろしながら言った。
「し、仕方ありません……」
「そ、そうだな……」
スクルズとベルズがそれぞれに言った。
ただ、ウルズはふたりの親友でもある。
魔瘴石を強引に剥がすという行為は、ウルズの心に傷をつける可能性があるというのは、再三説明している。
一郎の淫魔術に支配もされているふたりは、一郎の言葉に逆らうつもりはないと思うが、一方で、ウルズのことを思って悲痛な表情になっている。
「な、なにをするのだ──。や、やめよ──。やめてくれ──。う、うわっ──ス、スクルズ、ベルズ、助けてくれ──。この男はわたしを犯そうとしている」
ウルズが叫んだ。
そのあいだ、一郎の指はウルズの股間をまさぐり、ウルズの股間に灯りだした性感帯のもやを刺激し続けている。
あっという間に、ウルズの息に甘い声が混じりだす。
スクルズによれば、ウルズは三人の中では一番嗜虐側の傾向の強い責め役だったということだが、身動きのできない状態で、好き勝手に股間をいじられるという行為に、かなりの興奮を示している。
ウルズの股間が一郎を受け入れられる状態になるのに、そんなに時間はかからなかった。
「や、やめて……やめてよ……やめて……」
ウルズはいまや半泣きの声になっている。
一郎は身につけているズボンと下着を膝まで落とす。
勃起させた肉棒があらわになった。
十分に濡れているウルズの股間に、一郎は一気に怒張を貫かせた。
「くうっ」
ウルズが身体をのけぞらせて声をあげた。
「力を抜くんだ、ウルズ……。すぐに終わる」
一郎は言った。
その言葉の通り、一郎は、二、三回律動しただけで、すぐにウルズの中に射精をした。
そして、淫魔術の力でウルズの心を鷲掴みする。
ウルズの心にまるで蔦が絡まっているような異物のまとわりを感じた。
一郎はそれを強引に引き離した。
「あああああああ──」
ウルズが吠えるような絶叫をした。
「俺の性奴隷になってもらいますよ、ウルズ」
一郎はウルズの尻に腰を押しつけながら、静かな口調で言った。
*
「ああっ、もうやめて──」
エリカは思わず悲鳴をあげてしまった。
粘性生物のウーズによって、直立不動状態に真っ直ぐに固定された身体が、斜めに回転し始めたのだ。
王都の城壁からかなり離れた人里に遠い河の中州だった。
中洲の地面からは、水生の樹木が数本立っていて、その中の一本の樹木の下で、エリカは素裸のまま、球体に変形した粘性生物の内側に拘束されている。
少し離れた場所の樹木の枝に、頭を下にしてぶら下げられているコゼは、まるでみのむしのような姿だ。ぶらさげているのは一本の縄だが、やはり、その身体を粘性体が包んでいるのだ。
コゼの裸身を包むウーズの透明の体を通じて、全身から滴る真っ赤な血が見えている。
全身の肌を刻まれたことによって流れている血を治療されることなく、逆さ吊りされているコゼは、ずっと意識のない状態だ。
一方でエリカは、内部が空洞になっている球体状に変化した粘性体のウーズのより膝から下と肘から上の部分だけを上下に包まれて、球体自体を繰り返し回転させるという責め苦を受けていた。
嗜虐好きのノルズの退屈凌ぎだということだが、不安定な姿勢のまま不規則に高速回転させられるというのは、想像以上の苦痛だ。
「も、もういやああっ──。やめて──やめて──」
エリカは斜めから逆さまになり、元に戻ったかと思えば、今度は逆向きになったりという中州から見える風景を見ながら、いやでも疲弊しきった四肢に力を入れないわけにはいかなかった。
今度は十回転ほどしたところで、エリカの身体はやや頭を下にした斜め向きになって止まった。
肩から二の腕、太腿の筋肉が痛いほどに張りつめている。
息をするだけで、身体が苦しくて震えた。
なによりも、ぐるぐる回っている目が、エリカに激しい嘔吐感を与え続けている。
「まだ、あたしに悪態をつく元気はあるかい、エルフ女?」
ノルズが嘲笑を浮かべて、ウーズが作っている球体の表面に手を触れて、軽く押した。
「ああっ」
再び予期せぬ方向に回転させられてエリカは悲鳴をあげた。
予想のつかない回転をする身体を支えるためには、背中や腹筋、あらゆる場所に瞬時に対応しなければならない。少しでも楽なように身体を支えようとするのだが、疲労困憊しているエリカには、うまく対処することができず、果てしない苦痛に包まれ続けている。
「……も、もう許して……。そ、そして、コゼを助けて……。お願い……。治療して……。死んでしまうわ……」
やっと回転が静止すると、エリカは必死に言葉をついた。
いまでも目の前の景色はぐるぐると回っている。
今度はほぼ完全に逆さになっているらしく、エリカの朦朧としている視界には、反転したノルズの身体が揺らいで見えていた。
「心配ないよ。ウーズには最小限度の治療効果もあるんだ。死なない程度には止血はできている。だから、わざわざウーズに包ませているんだ。だけど、残りの治療は、お前たちのご主人様だというロウを捕らえてからだ……。それにしても驚いたね。あたしの仕事を邪魔をした冒険者というのが、まさか、あのアスカのところから逃げ出した外界人と、そいつにたらしこまれたアスカの部下とはね。まあ、世の中は広いようで狭いねえ」
ノルズが笑った。
このノルズが、あのアスカのことに言及し始めたのは、この中州に転送されてすぐだった。
ロウとどういう関係であるのかということを喋るように命じられ、素直にしゃべらないとコゼを殺すと脅されたのだ。
エリカは、差しさわりのない範囲で、自分の生い立ちや、コゼとともにロウに抱かれる女のひとりだと説明したのだが、ノルズはそれだけで、エリカがアスカ城から逃げ出したエルフ女だということに気がついたようだ。
どういうことなのかわからないが、どうやらノルズはアスカのことを少しは知っている気配だ。
それ以上のことはわからない。
ノルズがさらに語ろうとはしないからだ。
ただ、少なくとも、アスカ城にいたエリカには、ノルズとの面識がなかったことは確かだ。
ただ、アスカを呼び捨てにして、アスカを含める大きな組織のひとりであるかのようなことを仄めかしている。
これは、どういうことなのだろう……?
「……じゃあ今度は、股間を愛撫されながら、五十くらい回転してみようか。それが終われば、二十発のビンタを与えてやろう。それで真っ直ぐに立ってられたら、コゼの逆さ吊りだけは解放してやるさ」
ノルズが言った。
抗議の言葉を放つ余裕もなく、身体が回りだした。
四肢がばらばらになるような苦痛とともに、めまいと吐気に襲われた。顔が中州の地面すれすれになったかと思うと、次の瞬間には真横になり、あるいは、斜めになり、そして、回転しながら上になる。
しかも、股間に潜り込んでいるウーズの張形が容赦なく蠕動運動を開始している。
今度は回転に備えるために、身体を反応させることもできなくなった。張形で与えられる快感に翻弄されて、ほかのことに対処することは不可能なのだ。
もう駄目だ……。
激しい回転をさせられながらエリカは思った。
だが、回転が十回転を超えたと思ったところで、不意に身体の回転と股間の振動が静止した。
「……来たようだね。残念だけど、退屈しのぎは終わりだよ」
ノルズが言った。
エリカは頭を下にした状態にあった。
そのとき、エリカに、エリカたちのいる中州の一部の空間が揺らぐ感覚が伝わってきた。
すると、少し離れた場所に、ロウとウルズが移動術で跳躍して出現してきた。
「ロ、ロ、ロ……ウ……さ……ま……」
エリカは叫んだが、自分でも驚くくらいに舌が回らない。
ロウはどうやら後手に拘束されているようであり、両手を背中に回していて、両足首にも鎖で繋がった金属の枷をしている。その後ろに、ロウを見張るように、あのウルズが魔道の杖を握って立っていた。
「……ノルズ、事前に知らせた通り、こいつの屋敷には、スクルズもベルズもいなかったわ。こいつがどこかに隠していることは確かだと思うけど、とりあえず、口を割る感じじゃなかったら、連れてきたわ」
ウルズが言った。
エリカは愕然とした。
ここに連れてこられてすぐ、エリカから取りあげたギルドの魔道具である「変身リング」によって、ウルズがミランダに変身したのは見ていたが、ロウはあっさりと捕らえられてしまったのだろうか。
「まあ、いいさ。身体に訊ねる方法はいくらでもあるしね」
ノルズがロウに向かって、さっと手をあげた。
すると、エリカの身体からウーズがさっとなくなり、ロウに向かっていった。
そして、ロウの顔から下を粘性体で包む。
とにかく、自由になったエリカは、ノルズに襲い掛かろうと立ちあがった。
だが、自分の身体であるのに、まるで他人のものであるかのように、いうことをきかない。
エリカは呆気なく、その場で四つん這いになってしまった。
「じたばたするんじゃないよ、エルフ女」
ノルズが叫んだ。
すると、両足首を束ねて縛る魔道の枷のようなものが出現して、エリカの足を縛った。
エリカはその場に倒れてしまった。
ふと見ると、逆さ吊りのコゼの身体からも粘性体がなくなっている。
いま、すべての粘性体は、ロウの身体を襲っているのだ。
「もっと、手間がかかると思ったけど、案外、すぐに捕らえられたね。もっと、いろいろと罠を準備してあったのに、無駄になってしまったじゃないか」
ノルズはロウに向き直って笑った。
「エリカとコゼを解放しろ、いますぐにだ。そうすれば、少しは優しく扱ってやるぞ」
すると、ロウが言った。
ノルズはそれを聞いて、大きな笑い声をあげる。
「ウーズに包まれて絶体絶命の状態で、よくも、そんな言葉が告げられるものさ。とにかく、女のことよりも、自分のことを心配しな。いま、この瞬間にも、あたしはウーズにお前を溶かさせることができるんだよ……。まあ、だけど、お前については、殺しはしないよ。エリカともども、アスカのところに送り返してやる。あの馬鹿女が、少しは喜ぶだろうさ」
「アスカを知っているのか──?」
ロウが驚いたような声をあげた。
しかし、声の動揺ぶりとは裏腹に、ロウの顔はほとんど無表情のままだ。エリカは、それに少し違和感を覚えた。
「知っているさ。同じ主に仕える同志のようなものだしね」
「同志?」
「まあいいさ。お前には関係のないことだよ」
ノルズが肩をすくめた。
「……そうか……。よくはわからないが、まあ、じっくりとあんたの身体に訊ねてやるさ」
ロウが言った。
そのとき、ロウの背後にいるウルズが不思議な動きをしたと思った。
ロウから離れるように、するすると後退していったのだ。
ノルズも訝しむ様子を見せたと思った。
「なにしているんだい、ウルズ……?」
ノルズが呟いた。
だが、次の瞬間、轟音が轟いて、目の前に大きな光が拡がった。
なにが起きたのかを理解したのは、一瞬後だ。
ウーズに包まれていたロウが突然に爆発炎上したのだ。
「うわあ──」
爆風に巻き込まれたノルズが飛ばされて転がる。
火炎そのものを飲み込んでいるかたちとなったウーズが狂ったように暴れだす。
どうやら、ロウだと思っていたものは、内部に油かなにかを充満させた人形だったようだ。それを誰かが魔道で引火させたに違いない。
しかし、そうであれば、ロウはどこに……?
「エリカ、大丈夫か?」
そのとき、目の前から突然、ロウとシャングリアが出現した。
「透明布」だ。
ミランダから、変身リングとともに借りていたギルドの宝物のひとつであり、全身を包むと、完全に内のものを透明にしてくれ、あらゆる気配を遮断してくれる魔道具だ。
それで身を隠して、人形のそばでロウは声を出していただけなのだと悟った。
「ロ、ロウ様──」
エリカは嬉しくて名を告げるだけしかできなかった。
「コゼ、いま、助けるぞ」
剣を抜いているシャングリアが、コゼを吊っている縄に向かって剣を振るう。
縄が切断されて、コゼの身体が落ちた。
それをシャングリアが受け止める。
「終わりだ。大人しくしろ。ウルズもすでに捕まえてる。お前がウーズを操っていることも喋ってくれたぞ。ちょっとばかり、情報を聞き出すのが大変だったけどな」
ロウが険しい表情で、射撃準備の整った短銃をノルズに向けた。
「な、なにを──」
尻もちをついたままのノルズがさっと腕を振って、魔道を放つ気配を示したと思った。
しかし、それよりも前に、ロウは短銃を放って、ノルズの腿に弾を貫かせていた。
「あがああ──」
ノルズの魔道が中断されて、ノルズがその場でのたうち回る。
「ノルズ、大人しくせよ」
ウルズ──と思っていたベルズが指に嵌めていた「変身リング」に触れて変身を解くと、なにかの魔道をノルズに放った。
ノルズの身体がなにかに縛られたように真っ直ぐになる。
「もう、終わりよ、ノルズ」
そのとき、再び空間が揺らいで、スクルズも出現した。
やはり、ノルズに向き合うように、杖を向けている。
そして、反対の手に持っていた首輪をノルズに嵌めた。
「ロウ殿、ノルズの魔道は封じました。これで大丈夫です」
スクルズが振り返った。
すると、ロウがうなずく。
「ノルズの脚を魔道で治療してやってください、スクルズ殿。それから、コゼを頼みます。エリカの手当ても……」
ロウが言った。
スクルズがすぐに魔道を放つ。
弾丸を撃ち抜かれたノルズの脚が癒えていくのがわかった。
そして、すぐにスクルズがコゼに向かう。
「わ、わたしは大丈夫です……。ロ、ロウ様、ありがとうございます……。そ、それと、申しわけありませんでした……」
まだ目まいは続いているが、かなりましな感じだ。
すでに足の拘束は消滅している。
エリカは、裸身を両手で隠しながら、なんとか立ちあがった。
「俺こそすまない。ノルズのことを甘くみすぎた。とにかく、無事でよかった」
ロウがエリカの裸身を引き寄せるようにぎゅっと抱いてくれた。
それだけでエリカは夢心地の気分になった。
エリカもロウを抱き締めさせてもらった。
「さてと、じゃあ、完全に引導を渡してやるか」
そして、エリカから離れたロウが、身動きできないでいるノルズに向かう。
そして、襟首に両手を向かわせると、一気にノルズの身に着けているものを左右に引き破った。
「な、なにをするんだい──」
乳房を露わにされたノルズが狼狽えた声をあげた。
しかし、次の瞬間には、ノルズはロウによって、スカートを破られ、下着も引きちぎられた。
「あんたを強姦してやろうと思ってね。このまま、まったく濡れていないまま、股間を貫かれるのがいいか。それとも、しっかりと愛撫をしてから犯してほしいか。好きな方を選びな」
ロウが言った。