【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「一日デート? はああ? いやだ──」
ゼノビアは、はっきりと言った。
このロウとデートだと?
そんなもの、ただのデートで済むわけがない。
おかしなことをさせるに決まっている。
絶対にいやだ──。
ミランダを説得して、こいつをどうにかしようとも思ったが、そのミランダは、ディルド付きの貞操帯を抱えて、逃げるように部屋から出ていってしまった。
「まあ、そう言うなって。俺の眼を見てみろよ」
一方で、ロウは、笑いながらゼノビアにそう言った。
眼だと?
訝しみながらも、ゼノビアは何気なくロウの顔を見る。
その瞬間、なにかが頭の中に入り込んだような気がした。それがなんだかわからなかったし、ロウのすることはとんでもないことが多いのはわかっているので、動揺しかけたが、すぐに違和感は消滅したので安堵した。
でも、なんなのだ?
ゼノビアは首を傾げた。
「とにかく、折角のデートだ。服を準備してやったぞ。これに着替えてくれ。デートらしく待ち合わせをしような。城郭の中央広場にしよう」
しかし、ロウがあたかも宙から出現させたかのように籠を取り出して手渡してくる。ふと見ると、中には女物の服と履物まで入っているみたいだ。
だが、応じるつもりのないゼノビアは、受け取ろうとはしなかった。
すると、ロウがにんまりと微笑んだ。
「受け取るんだ、ゼノビア」
ロウが言った。
驚いたことに、ゼノビアは次の瞬間、素直に手を出して、その籠を受け取っていた。
唖然としてしまった。
「な、な、なんで?」
どうして受け取ってしまったのか、全く理解できない。
あくまで拒絶するつもりだったのに……。
「いいな、着替えるんだぞ。それと、そこに入っているもの以外を身につけることはだめだ。布一枚足してもならない。そういうことだ」
ロウはくすくすと笑う。
とりあえず、ゼノビアは衣服の入った籠を返そうと思った。
でも、なぜか、身体が応じてくれない。
じっと、籠を持ったまま身体が動かないのだ。
ゼノビアは、だんだんと恐怖を感じてきた。
「ちょ、ちょっと待っておくれ。あんた、あたしになにかしたのかよ──?」
ロウに向かって怒鳴った。
「本当ですね。なにかをされたのですか? もしかして、操り術のようなものですか?」
スクルドが横から口を挟んでくる。
だが、ぞっとした。
操り術──?
まさか……。
「聞き分けのない性奴隷には、淫魔力を使った操心術だ。しかし、安心していいぞ、ゼノビア。操られるのは、あくまでも身体だけだ。心も意思もしっかりと自分は保ってる。わかったら、着替えに行け。拒否できれば拒否していいけど、俺の性奴隷として支配されている以上、淫魔術を破ることは不可能だろうな」
ロウが笑い声をあげた。
ゼノビアはびっくりした。
「な、なんでだよ──。そもそも、あたしは、あんたの性奴隷になった覚えはない──」
「覚えがなくても刻まれているから仕方ないだろう。一度でも俺に犯されたことがあれば、俺はいつでもその女を支配下におけるんだ。それなのに、お前たち、何度俺に犯された」
ロウがあっけらかんと言った。
「はああ──?」
ゼノビアは思わず怒鳴った。
そんなこと知らない──。
本当に冗談じゃない。
だけど、持っている籠から手が離れない。
操り状態にあるというのは本当なのだろう。
「へえ、そんなこともできるのですね?」
エリカだ。
「あんたって、本当に、いつの間にか、とんでもなくなったのねえ」
イライジャは半分笑っている。
「好色なこと限定だけどな……。まあ、そういうわけだ。諦めろ、ゼノビア。逆らおうとしても無駄だ。どうしても俺の言葉に応じてしまう。そんな風に術をかけてる。というわけで、中央広場な」
ロウが笑いながら言った。
ゼノビアは歯噛みした。
本当に逆らえない。
ゼノビアの身体は、確かに、ロウの支配下になっている。
拒否できないという感覚がゼノビアの中にある。
「じゃあ、ロウ様。わたしたちは、シズと遊んでますね。夕方くらいに合流しましょう……。スクルド、今日の護衛は頼むわよ。しっかりね──」
エリカが言った。
「なんの問題もありませんわ」
スクルドはにこにこと笑っている。
そして、スクルドとロウの姿が消滅した。
「じゃあ、ゼノビアは着替えにこの部屋を使ってね。シズは隣に行こうか。イライジャと一緒に、色々趣向を考えているのよ」
すると、エリカが硬直して黙り込んでいる感じのシズの腕を握ったのがわかった。
「あっ、やだ──」
シズは我に返って振り払おうとする。
「あら、抵抗しちゃだめじゃないの、シズ。大人しくね……。そういうわけだから、シズを借りるわ、ゼノビア。じゃあね」
イライジャもエリカの反対側からシズの腕を掴む。
「ちょ、ちょっと──」
シズも振り払う素振りは示したが、エリカとイライジャから両側から腕を掴まれたらどうしようもないらしく、そのまま部屋の外に連れていかれてしまった。
そのあいだ、ゼノビアは金縛りになったかのように、動けないでいた。
気がつくと、ひとりで部屋に残されてしまっていた。
「な、なんで?」
そして、やっと我に返ったようになり、思わず声をあげてしまった。
*
「くっ、な、なんだよ、これ……」
ゼノビアは城郭の中央広場の喧噪の中でひとりで立っていた。
もともと、さまざまな理由で民衆が集まる場所であり、屋台もあれば、大道芸人などもいる賑やかな場所だ。
王都の噴水広場ほどではないが、それに近いくらいの人が集まっている。
だからこそ、いまのゼノビアは、すっかりと周囲の注目を浴びていた。
なにしろ、ロウに渡された服を着替えてわかったのだが、それがかなりの破廉恥な恰好だったのだ。
そもそも、ゼノビアは男冒険者風の服装しかしないので、女の格好はしたことはない。だが、あの籠に入っていたのは、ズボンではなく、スカートだったのだ。
籠に入っていたもの以外を身につけてはならないというロウの言葉だったので、ゼノビアは従うしかないのだ。
やはり、どうしても、逆らうということはできなかった。
逃げるということもできない。
広場に向かわずにいるということも無理だった。
ゼノビアの身体は、ゼノビアの本来の意思に関係なく、ロウの言葉に従い、あの籠の中の衣服に着替えて、ここまで来てしまった。
なんという術だ──。
それはともかく、ロウが渡したのは、実にとんでもないスカートだった。
恐ろしく短いのだ。
このところ、この王国の王都を中心として、短いスカート丈が若い女の中で流行っているというのは知っているが、これは、その限度を越している。
スカートというよりは、身体を拭く布を腰に巻いただけという感じなのだ。スカート丈は股間を辛うじて隠しただけでしかなく、太腿のほとんどは露わになっている。
ちょっとでも動けば、籠の中にあった紐で横を縛る白い下着が見えてしまいそうだ。
こんなものを強要して、人前に出させるなど、なんという意地悪だ。
夜の街の娼婦でも、ここまで破廉恥じゃない。
それなのに、まだ陽は中天にある真昼間だ。
また、上半身も普通じゃない。
ゼノビアに渡されたのは、ゼノビアの身体に比して一回り程小さい開襟の服一枚だった。しかも、胸に巻く下着のようなものはない。
だから、それをまともに着れば、ゼノビアの大きめの乳房だけでなく、乳首がくっきりと布に形を作ってしまうのである。
仕方なく、ゼノビアは一番上と次のぼたんを外して、その開襟服を着た。
そうすれば、なんとか乳首は目立たないで済む。
その代わりに、乳房の上半分は露出しなければならないが……。
「おう、姉ちゃん、立ちん坊か?」
そのとき、またもや行儀の悪そうな男が二人連れで声をかけてきた。
さっきから、この手合いがひっきりなしにやってくる。
立ちん坊というのは、娼館ではなく、街の辻で客をとる下級娼婦のことだ。
「うるさい──。消えな──」
ゼノビアは殺気を発して怒鳴る。
さすがに、ゼノビアの本気の殺気に当てられれば、男たちも慌てて逃げていく。
だが、そうやっても、しばらくすると、別の男たちがやってきて揶揄いの言葉をかけてくるのだ。
それを繰り返している。
「うわっ、おっかねえ……」
その男たちも逃げていった。
だが、それはともかく、まだロウは来ない。
ちょっと遅くないか……。
ゼノビアは舌打ちした。
そうやって、ゼノビアはしばらく待ち続けた。
そして、かなりの時間が過ぎた。
「待たせたな」
ふと、背後から声を掛けられた。
やっとか……。
ゼノビアは振り返った。
「ああ?」
しかし、声をかけてきた男を見て、ゼノビアは思わず眉をひそめてしまった。