【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ロクサーヌは、揺れる馬車の中でモイラと正対するように座っていた。
馬車がギストン家の屋敷の敷地内から出たところで、モイラが小さな黒い箱を座席の横に置く。
「これで、どんな魔道でも、この馬車の中の会話を聞き取ることはできないわ。安心して喋っていいわよ、妾腹のお嬢ちゃん」
ロクサーヌに仕えるメイドに扮しているモイラが馬車の座席に深くもたれかかるような姿勢になって脚を組んだ。
およそ、主家の令嬢の前でやっていい態度ではない。
まあ、ロクサーヌの前で、このモイラがそんな姿を晒すのはいつものことではあるが……。
それはともかく、本来であれば、このモイラの役割をするのは、ロクサーヌの専属奴隷である獣人のルカリナである。
だが、そのルカリナは、異母兄であるアントワークによって冤罪で捕らわれ、アントワークが命じた工作の実行をロクサーヌに強要するための人質にされている。もしも、ロクサーヌがアントワークの指示に従わなければ、おそらく、ルカリナは殺されるだろう。
それを阻止する力は、ロクサーヌにはない。
また、ロクサーヌとモイラが向かっているのは、大公宮の敷地内にあるシャルルの住む別邸のはずだ。シャルルは、大公位継承者第一位のカートン公の正妻であり、大公宮内にある別邸に居を構えていて、今日は彼女の茶会に招待をされている。
兄アントワークに命令をされているのは、兄に渡された得体の知れない魔石具を隠して置いてくることだ。
その魔石具にどんな効果があり、そして、兄がなにを企んでいるのかは教えられていない。
だが、実行しなければ、ルカリナは殺されるに違いない。
どうしたらいいのか……。
ロクサーヌは溜息をついた。
「そういえば、例の魔石はどうしているの? あの男の指示のとおりに、あんたのまんこに隠してきたのかしら?」
すると、モイラがけらけらと笑った。
ロクサーヌはスカートをたくし上げて、隠しポケットに入れていた魔石を外に出した。
「こんなの入りません。持ってきてます。でも、大公府内に入るときには、武器や魔道具の持ち込みは確認されますので、どうしていいのか」
ロクサーヌは泣きそうになってしまった。
すると、モイラがそれを手に取った。
「あの男も本当にいい加減なものねえ。そんな特殊工作を指示しといて、やり方は丸投げなんてねえ。まあ、任しなさい。あんたはなにも考えなくていいわ。こっちで動くから」
「どうするんですか?」
「それは、あんた聞く必要はないわね。ところで、驚いた?」
モイラが悪戯に成功をしたような表情になる。
「驚きました……。まさか、アントワーク様と一緒にいるだなんて……」
「一緒にいるっていうより、あの男のあれを舐めさせられてたのよ。はっきり言いなさいよ。それで驚いたって。だけど、言っとくけど、あんたのせいだからね」
「わ、わたしのせいですか?」
「ええ、あいつは、これは自分の愛人であり、自分の息がかかっているから、絶対に、監視の目がなくならないということを伝えたかったのね。だから、わざわざ、あんたの前でしゃぶらせたのよ。趣味悪いったら……」
「えぅ、愛人……なんですか?」
「少なくとも、あれはそう思っているわね……。ところで、準備しなさい。降りるわよ」
「降りる?」
ロクサーヌは首を傾げた。
まだ、大公宮には程遠い場所だ。
そして、近道でもしようとしているのか、馬車は大きな通りから外れて、両側に林が拡がる狭い場所に来ていた。
すると、いきなり馬車がとまった。
突然に馬車の扉が外から開かれた。
「ええっ?」
ロクサーヌは声をあげてしまった。
入ってきたのは、いまのロクサーヌと全く同じ顔をした少女だ。モイラにそっくりなメイド姿の女もいる。
「頼むわよ」
モイラがロクサーヌから取り上げた魔石をひょいと、入ってきた女に手渡す。
そのまま、モイラに押し落とされるように、馬車から放り降ろされた。
「走って──」
モイラに引っ張られて、林の中に入って走らされる。
一方で、背中側では、さっきまで乗っていた馬車がすで進んでいっている。すると、駆けた先にギストン家の馬車とは比べ物にならない小さな馬車があった。
扉は開かれていて、中には誰もいないのがわかる。
モイラが、ロクサーヌを中に押し込みながら、馭者に向かって手を振った。
「行って──」
そして、乗り込むとすぐに、モイラがばんと御者台側の壁を叩いた。馬車が動き始める。
あっという間のことだった。
「あ、あの、さっきのはどういうこと……」
「あんたに工作員のようなことができるとは思ってないわよ。あんたのお兄様も怒鳴るばかりで、工作の要領のひとつも指示しなかったから、こっちで手を打ったのよ。あれは、特殊な魔道具であんた変身している手の者よ。あんたの代わりにシャルル様の茶会に参加するわ」
モイラだ。
「えっ、大丈夫なんですか?」
ロクサーヌはびっくりしてしまった。
「だったら、本当にまんこに隠して、あの魔石具を持ち込む?」
モイラが小馬鹿にしたような笑い声をあげた。
だが、気がかりなのは、ルカリナのことだ。なにがどうなっているのか、さっぱりとわからないが、とにかく、兄が口にしたことに成功しなければ、ルカリナが殺されてしまうのだ。
ロクサーヌが考えているのは、それだけしかない。
「い、いえ……。でも、ルカリナが……」
「あの獣人奴隷については待ちなさい。放っておいても、すぐには処刑されたりしないわよ。そんなことしても、アントワーク自身にも、ビンス派についても、なんの得にもならないしね。まあ、アントワークはあんたのことが嫌いみたいだから、ちょっとばかり腹いせに意地の悪いことをされるだけよ」
「でも、万が一にも」
「一応、ゼル様の指示で見張っている。殺されるような状況になったら介入するように指示しているわ。だけど、犯されるくらいは我慢するのね。貞操は諦めなさい」
「あ、ありがとうございます」
ロクサーヌは頭をさげた。
モイラがくすくすと笑った。
そして、身体の前に透明の球体を出現させた。
魔道遣いが通信に使う「魔道球」だ。それが二個現れた。そして、消滅する。どんな言葉を送ったのかはわからないが、彼女からどこかに通信を送ったのだろう。
とにかく、もう託すしかない。
入れ替わりについて、馭者がなんの反応もしなかったが、あの馭者もまた、モイラの息がかかった者に入れ替わっていたのだろう。ロクサーヌは圧倒されてしまった。
そして、馬車は移動を続けている。
ちらりと外を見たが、明らかに大公宮に向かう道でもないし、かといって、ギストン家に帰る経路でもなさそうだ。
ロクサーヌは、モイラに視線を向けた。
「あのう、この馬車はどこに向かっているのでしょうか?」
「大公府の郊外よ。多分、そのまましばらく、これから向かう場所で暮らしてもらうことになると思うわ。少なくとも、数日はあんたの屋敷には戻れないと思う。まあ、そう思ってて」
モイラが事も無げに言った。
ロクサーヌは唖然とした。
「ええ、このまま? じゃ、じゃあ、ルカリナは──?」
「あんたって、本当に、あの獣人奴隷のことばかりねえ。あとで連れてくるわよ。ゼル様の指示でね。だって、あんたは、あの獣人奴隷がいないと、予知夢は見られないんでしょう? あたしとしてはどうでもいいけど、あんたとゼル様の身柄は絶対に確保しろと言われているの。まあ、安心しなさい」
「つまり、守ってくれるということですか?」
ロクサーヌはほっとした。
大丈夫なんだ。
アントワークに指示された工作行為については、どうしていいかもわからなかったが、モイラが引き受けてくれて、しかも、ロクサーヌだけでなく、ルカリナも連れだしてくれると言っている。
よかった。
「安心していいかどうかは知らないけど、ビンス派がついに動くみたいだしね。だけど、カートン派も黙ってはいない。報復もすると思う。とりあえず、騒動の前に身を隠すのが得策よ。いい機会だし、多分、ゼル様は、あんたをあの屋敷から連れ出す気だと思うわ。よかったわね。あんたは前から出たがっていたものね」
「はいっ」
ロクサーヌは大きく頷いた。
モイラが口にした通り、居心地の悪いあの屋敷から逃げることは、ずっと考えていた。はっきり言って、ロクサーヌはルカリナさえいてくれれば、なにもいらない。
今日のように冤罪を作られてルカリナを捕縛するということまでされたのは初めてだが、それに近い嫌がらせはずっとされ続けている。
必要最小限の世話しかされてないし、家族だけでなく、家人からの意地悪も日常茶飯事でもある。
なによりも、ロクサーヌの「予知夢」によれば、ロクサーヌが十四歳になる頃には、ギストン家ではなく、ビンス公の嫡男であるゼル王子の養女となって、そこで暮らすようになっているのだ。
どういう紆余曲折でそうなるのかは、さっぱりとわからない。
だが、何度か見た予知夢の中でそうなっていた。
また、いま激しく次期大公の座を死んだ第一公子の嫡男もカートン公と、第二公子のビンス公が争い、大公国内の貴族が各派閥に分かれて激しく争っているのは知っているものの、これもまた、ロクサーヌの「予知夢」では、次の大公は、そのどちらでもなく、ビンス公の息子のゼル王子なのだ。
だから、半年ほど前、ロクサーヌはルカリナを携えて、ひそかに、ゼル王子に接触した。
もちろん、最初はまったく相手にされなかったが、ロクサーヌの予知夢の能力のことを話し、いくつかの日常についての予知を伝えた。
最初の会合は、それで終わったが、十日もしないうちに、今度ゼル王子側から接触があった。
そして、ロクサーヌは、いざとなったら助けてもらうことを条件に、ゼル王子の庇護に入ることになったということだ。
庇護の約束を得た段階で、ロクサーヌは、自分の予知夢の中で、ゼルが次期大公になることを伝えた。彼が大公になるのは、いま争っているカートン公とビンス公がお互いに潰し合って共倒れになって、それでゼルが台頭するのである。
それを伝えると、ゼルはびっくりしていた。
しかし、満更でもないゼルの反応は、ロクサーヌにもわかった。
ロクサーヌが、まだ十三歳であり、顔も童顔の傾向があるので、大人は油断して、色々と隠すことを忘れるところがあるが、実のところ、ロクサーヌは人よりもずっと相手の機微の変化に敏感だと思っている。
ビンス公の息子であるゼルが、実のところ、カートン公のみならず、父のビンス公までも蹴落として、漁夫の利を得ようとしているのは間違いないと思う。
なによりも、ロクサーヌの予知夢がそれが実現することを教えている。
そして、そのゼル王子によって、ギストン家に送られてきたのが、目の前のモイラである。
能力の高い女工作員であり、そもそも、最初のゼル王子からの接触は、彼女を通じて行われてきた。
さらにしばらくして、そのモイラは、新人のメイドとして屋敷内に入り込むようになっていた。幾人かの手の者も一緒にだ。
母屋ではなく、離れで暮らすロクサーヌには、そういう状況になっていることを知らなかったので、何食わぬ顔をしてモイラが屋敷のメイドになっているのを見たときにはびっくりしたものだ。
そして、今日──。
そのモイラは、いつの間にか、異母兄アントワークの愛人ということになっていた。
とにかく驚いた。
「それにしても、到着までしばらくあるわね。おませさんのローヌに、奉仕でもしてもらおうかなあ。あんたって、本当に苛められるのが似合うのよねえ」
すると、対面に腰掛けているモイラがメイド服のスカートをまくり上げて、股を拡げて股間を晒してきた。
モイラは下着をつけていなかった。
むんとする女の匂いと、さらに異臭のようなものがモイラの股間から漂ってきた。
モイラがメイドとして、屋敷に潜入してきて、ロクサーヌとルカリナの倒錯の関係がばれたのはあっという間だった。
それ以来、それを脅迫の材料として、時折、ロクサーヌはこのモイラにも性奉仕を強要されるようになっていた。
あるいは、ルカリナと揃ってだ。
それとも、ルカリナとモイラの両方に、ロクサーヌが奉仕をするということもある。共通するのは、いつも苛められたり、奉仕強要されるのはロクサーヌだということだ。
ふたりがかりで泣かされることもある。
とにかく、このモイラは、上級貴族の令嬢であるロクサーヌに、奴隷のようにモイラに従うことを強要するのが好きだ。
モイラはそれが愉しいらしい。
こうやって、股舐めをさせられるのも、何十回目になるのか見当もつかない。
いつも、舌が動かなくなるまでやらされて、なかなか許してもらえない。
「わ、わかりました。奉仕します、モイラ様……」
性奉仕のときだけは、モイラを様付けで呼ぶ。
それもまた、約束事として強要されていることだ。
ロクサーヌは座席と座席のあいだの床に跪き、モイラの股に顔をつけて舌を伸ばす。
いつものようにぺろぺろとモイラの股を舐める。
「あっ、ああっ、気持ちいいわ──。貴族令嬢にはもったいないわねえ。あたしの性奴隷になりなさいよ──。ずっと飼ってあげるわ。あの獣人奴隷も一緒にね。それでいいんでしょう、あんた。ああっ、あああっ」
モイラがすぐに羽目を外したような嬌声をあられもない態度を取り始めた。
とにかく、ロクサーヌは一心不乱に、目の前のモイラの股間に奉仕を続ける。
だが、そうやって舐めながら、思うこともある。
ロクサーヌが見ている予知夢には、ゼルが大公となった後のこともある。
それは、もちろん、ゼルにもモイラにも語っていないが、あのゼルについても、大公としての地位は短命に終わるのである。
その理由は知らないが、その次の大公になるのが、なぜかロクサーヌになる。
どうして、そうなってしまうのか見当もつかない。
なんとか回避したい未来であり、そのための予知夢が見れればいいと思う。
しかし、いまのところ、ロクサーヌが女大公になるのを回避している未来を予知夢で見ることは一度もない……。