【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ビンスは上機嫌で晩餐会を愉しんでいた。
集まっている客は、ビンスを次期大公として推してくれている派閥の領袖たちであり、全員で三十数名である。
その三十数名が長方形の長いテーブルに集まっていて、一番奥の上座席にはもちろんビンスが腰かけている。
その右横の席は、第二将軍のルクセンだ。
本来であれば、その位置は、ビンス派の最上級者である大公弟のギストン公であるはずなのだが、そのギストン公は領地に戻らなければならない業務があって不在にしている。その代わりに名代として嫡男のアントワークという若造が来ているが、名代にすぎないので末席とした。
そして、今回のビンスの左隣の席には、ビンスの嫡男のゼルを指名している。いまも、物静かな態度で目の前の料理と酒を口にしている。
これまで大公争いの派閥の活動には、一線を引いて参加してこなかったゼルであるが、態度を一転させてこれまでの無礼を詫び、これからは派閥の活動に積極的に参加したいと申し出てきた。
その証として、カゲトという能力者を送り込み、カートンの子をさらわせ、それを材料にカートンの妃のシャルルを誘拐してみせたのだ。
今回のことは、すべて、カゲトという男を通じたゼルの功績といっていい。
だから、報奨として今夜の派閥の晩餐会の参加を許可したのである。
ビンスの嫡男のゼルがビンスの片腕の位置に座ることについて、領袖たちも不満があるわけもなく、そもそもゼルはそれだけの功績を成し遂げている。
なにしろ、ついにカートンを追いやり、ビンスが次期大公となることを確定させたのである。
カゲトという能力者の工作で誘拐したシャルルを媚薬と凌辱で愉しんだのは三日前のことだ。
その後三日三晩かけて輪姦させて徹底的に知性を破壊し、腹一杯の炸裂砂を飲ませて、昨日の朝早くにカートンのところに返した。
炸裂砂というのは爆発性のある砂だ。爆発の程度は炸裂砂の質によって異なるが、今回は最大級の爆発効果のあるものを準備した。
起爆については魔道を使った仕掛けだ。
シャルルを返したのは、痴呆化したシャルルを目の当たりにすることでカートンを絶望に追い込むとともに、できればカートン派の重鎮の幾人かを巻き込んで爆発死させることを期待したものだ。
ところが、シャルルをカートンのところに戻してから爆死させるように企てた工作が期待以上の成果を生み、大公宮に保護されたシャルルは、夫のカートンを巻き込んで、木っ端みじんに吹っ飛んだらしい。
カートンの死についての公式発表はまだであるが、死んだのは間違いない。
あらゆる情報がカートンの死を示唆している。
まあ、なにかの間違いで生きていたとしても、再起には数年単位の時間を要するであろうし、大公争いの抗争はついに決着したといっていい。
ビンス派の勝利だ。
次期大公はビンスだ──。
これだけの功績をあげたゼルを優遇しないという判断はありえず、今回、領袖たちへのゼルのお披露目を兼ねて、早速、今夜の晩餐会で派閥重鎮を集めて、それにゼルも参加させたというわけだ。
すると、ゼルは、そのお礼として、晩餐会そのものの準備を申し出た。
昨日早朝のシャルル爆殺事案から、わずか一日後の今夜のことであり、どれだけのことができるのかと訝しんだが、結果としてゼルはいい仕事をしてくれた。
並べられている料理も急ごしらえの晩餐会にしては豪華すぎるものであるし、酒も最高級のものだ。
また、晩餐会のこの場には、魔道で美しい音楽が流れていて、配膳や給仕を行う者も美女揃いだ。
しかも、全員が下着姿という趣向であり、なによりも、集められたのが昨日までカートン派としてビンス派に対抗としていた家の令夫人や令嬢たちなのだ。
それが半裸で恥辱に身体を震わせながら、料理を配り、酒を注いで回るのだ。
なんという粋な仕掛けだと思った。
わずか一日でここまでやってのけたゼルの手腕に、ビンスだけでなく全員が感嘆するとともに大喜びだ。
「ははは、実に愉快だ。皆の者よ。この光景を見よ。これが余に対抗として、カートンのような腑抜けを担いだ者たちの成れの果てよ──。とにかく、今回のことは、このゼルが功績第一等だ。それに異論のある者はおるまい?」
ビンスは大声をあげつつ、グラスをゼルの方向にかざす。
すると、次々に追従の言葉が領袖たちの口から返されてきた。
「恐れ入ります。まだまだ力不足ですが、これからは皆さまとともに、父の後継者として職務に励んでまいります」
ゼルが口元に笑みを称えて会釈する。
また、テーブル中から喝采があがる。
実に愉しい──。
素晴らしい気分だ。
ビンスは今度は、長テーブルの反対側──長いテーブルを挟んで向こう側に座らせている「生贄」に声をかけた。
「ところで、妹殿よ。宴を愉しんでおるか? 愉しんでおられるといいのだがな」
ビンスは大笑いした。
テーブルについている者たちもどっと沸く。
一方で、ずっとすすり泣きをしていた「生贄」がわっと号泣した。
「ああっ、お願いします。もうお許しを……。こんなこと酷すぎます。こ、こんな辱めを受けるくらいなら、いっそ殺してください──」
その生贄が泣きながら叫ぶ。
ビンスは噴き出してしまった。
「死にたいなら、舌を噛むなり、息をとめるなり好きにするがいい。だが、そなたが死ねば、お前の家は一族郎党皆殺しだ。それこそ、他家に嫁いだ者も含めて、ことごとくな。それを守りたいなら、惨めに恥を晒すがいい」
ビンスは言った。
すると、その「生贄」の娘がまたもや、わっと泣き出した。
その生贄は、爆死させたシャルルの妹だ。年齢は十八であり、宰相家の嫡男に嫁いでいたのを「命令」により、今回の晩餐会に参加させたのである。
カートン派の重鎮として、ビンス派との抗争の中心になっていた宰相であるが、その理不尽なビンスの命令を拒否せず、嫁いできた息子の若妻を今回の晩餐会に差し出してきた。
それこそ、長く続いていたビンス派とカートン派の争いに決着がついたというなによりの証だ。
令夫人や令嬢を給女として差し出したほかの家もそうなのだが、もう終わった抗争として、今度はビンスに媚びを売るという行動に出ているということだろう。
いずれにしても、ビンスは向かい側の生贄の惨めな姿に、勝利者となったことを確認して溜飲をさげた。
連れてこられたシャルルの妹は全裸であり、右脚と右手、左脚と左手をそれぞれに枷でまとめ、左右に肘掛けに膝を載せさせて開脚させて固定している。さらに、項垂れることもできないように、頭についても背もたれに括り付けている。
つまりは、全裸で股間を晒し、俯くことも許されずに、シャルルの妹が恥を晒しているのだ。
四肢を大きく開き、恥毛も恥部も露わにした若い人妻の姿に、集まっている者たちの眼が露骨に集まっている。
「ゼルよ、今回の晩餐会の準備は苦労だったが、こういう余興も次からは、そなたが凝らすようにせよ。工夫を愉しみにしてるぞ」
ビンスはゼルに言った。
晩餐会のそのものの準備はゼルであり、敵対していた家から令夫人や令嬢を集めたのもゼルの手腕なのだが、さらに死んだシャルルの妹を連れてきたのはビンスの命令だ。
ゼルが令嬢や令夫人を給女にする手配をしていると耳にし、それにビンスが趣向を足したということだ。
「勉強いたします、ビンス公。これからもご鞭撻をお願いいたします」
ゼルが微笑んだまま頭をさげた。
ビンスは頷いた。
そして、グラスの酒を呷って、空になったグラスを上にあげた。
「おい、酌だ。ちゃんと空になっていないかどうか、確認せんか──」
大声で怒鳴る。
「は、はい、申し訳……」
すぐに、一番近くにいた侍女になっている女が葡萄酒の瓶を持って注ぎにくる。
確か、どこかの伯爵家の令夫人だっと思う。
この女もそうだが、下着姿で酌をする女や娘たちの太腿は、なにかに耐えるように震えている。
実は、この晩餐会を開始する前に、下着姿にするとともに、全員に利尿剤の入った水をひと瓶ずつ飲ませている。
だから、全員が尿意に苦しんで身悶えをしているというわけだ。
これについては、ゼルではなく、ルクセン卿の発案と指示だ。
ビンスは後で報告を聞いて、愉快な趣向に手を叩いて笑ってしまった。
「これ、伯爵夫人よ。なぜ、そんなに震えておるのだ? ちょっと教えてくれんか?」
すると、少し酔った感じのルクセンが夫人を揶揄って、ぎゅっと下腹部を押すような仕草をした。
「ああ、お、押えないでくださいまし。あまりでございます」
夫人が悲鳴をあげた。
全員がどっと笑った。
また、利尿剤を飲まされているのは、給仕の女たちだけでなく、生贄の妹も同様だ。しかも、三瓶も飲ませたそうだ。
だから、彼女は股ぐらを晒す恥辱だけでなく、尿意にも耐えなければならないということだ。
いまでも歯を喰いしばって、小刻みに身体を震わせている。
「ところで、閣下。どうやって、シャルルを使ってカートン公を爆殺したのか教えてもらえませんか」
すると、真ん中くらいの席から声がかかった。
ビンスは頷いた。
「シャルルになあ、炸裂砂を詰めた小さな袋を飲ませたのだ。あれは最後の日だったのう。股ぐらに掻痒剤を水刷毛で塗って放置して、百袋飲まねば、いつまでも犯してやらんと脅したら、必死になって飲みよってなあ」
ビンスは思い出して笑った。
「まことに惨めな姿でございました」
ルクセン卿が付け足し、領袖たちがまた沸く。
一方で、連れてこられている敵派閥の家の一員だった女たちは、一斉に悲しそうな顔になった。
「しかし、炸裂砂の起爆の仕掛けはどうしたのですか。魔道起爆で行ったと思うのですが、どうやってタイミングよくカートン公を巻き込んで爆発を?」
別の領袖が訊ねてきた。
今度はルクセンが口を開く。
「なに、別段に、カートン公を狙ったわけではないのだ。誰かしら巻き込めば御の字くらいの仕掛けでなあ。つまりは、時間を置けば自動的に腹が爆殺するようにもしていたのだが、もうひとつの切っ掛けは、口づけにした」
「口づけ?」
訊ねた男が怪訝な顔になる。
「そうよ。シャルルが誰かと口づけをすれば、それを切っ掛けに腹の炸裂砂が爆発するように魔道紋をシャルルに刻んでいた。魔道紋の場所は足の裏だ。連中は魔道紋にも、腹の炸裂砂にも気がつかずに、シャルルを大公宮に連れて行ったということよ」
「なるほど、すると、カートン公が死んだのは、さしずめ、愛する奥方との最期の口づけの直後というわけですなあ」
全員がまたもや爆笑した。
そして、しばらくのあいだ、シャルルの凌辱のことなどの話題を中心に談笑する。
「ああ、お許しおおお──。お許しおおお──」
すると、突然にテーブルの反対側に位置する生贄が大きな声で悲鳴をあげた。
おそらく、尿意が限界なのだろう。
ビンスは口を開く。
「ならんぞ。死ぬ気で我慢せよ。もしも、みっともなく失禁をすれば、そなた以外の誰かに毒杯を飲んでもらう。それは、ほかの女も同様であるぞ。友人や仲間を殺したくなければ、我慢することだ」
ビンスは言った。
その言葉に、生贄女をはじめ、給仕の女たちが絶望的な顔になる。
「そういえば、ゼル。お前に所望があるのだ」
思い出して、ビンスはゼルに言った。
「所望でございますか? 僕にできることであれば、なんなりと」
ゼルが座ったまま頭をさげた。
「あのカゲトを譲れ。あれは余の直属とする。そなたには、あれは身に余ろう。あれだけの能力。余が直接に使ってやるべき男だ。よいな」
「カゲトを?」
ゼルが顔をあげた。
ずっと浮かんでいた笑みが消え、顔から表情がなくなっている。
「不満か?」
ビンスは腹が立ってゼルを睨んだ。
「不満というよりは、ひとつだけ、申したいことがあります」
ゼルがぱちんと指を鳴らした。
すると、誰もいなかったゼルの後ろの空間に、あの黒装束のカゲトが現れた。
ビンスはびっくりした。
「カゲト、我が父がお前を所望だそうだ。お前ほどの能力者は、ぼくには勿体ないと申しておられる。しかし、その誤りを正そうと思ってな。カゲト、顔の装束をとれ」
ゼルが言った。
カゲトが貌に巻いていた布を外す。
現れた顔を見て、ビンスはびっくりしてしまった。