【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「だから、それを飲みなさい。あなたのお茶よ。こぼさないようにね。床に落ちたのも全部、舌できれいにするのよ……。もちろん、手は使わないのよ、雌犬ちゃん。命令よ」
エルヴェラが酷薄な口調で言った。
さすがに、この場で床に置かれた皿を舐めるのは躊躇する。
だが、ゼルの眼がある。
命令に逆らうわけにはいかないのだ。
ロクサーヌには、ルカリナを“主人”とする隷属魔道がかかっていることになっていて、そのルカリナはゼルに隷属をしていることになっている。
そして、ゼルは、ルカリナを通じて、ロクサーヌに、ゼルが口にするすべての命令に従うように命令をさせており、ゼルは、さらにエルヴェラの命令にも従えと、ロクサーヌに命令をしている。
すべてはルカリナの欺編魔道であり、本当はまったく隷属は刻まれていないのだが、かかっているように反応しなければ、その事実がゼルにばれてしまう。
「う、うう……」
ロクサーヌはエルヴェラの足元に跪いた。
さらに口を近づける。
「待って」
すると、エルヴェラが上から声をかけた。
そして、驚いたことに、お茶が薄く注がれている皿をいきなり、靴のかかとで踏みつけた。しかも、さらに、皿の上のお茶で靴底を洗うような動きをする。
ロクサーヌは呆然となった。
皿にエルヴェラの靴底についていた土が混じる。
そこに、もう一度、上からお茶を足された。
「美味しそうになったでしょう? マゾのお嬢ちゃん。お飲み」
さすがに鼻白んだが、やるしかない。
ロクサーヌは、諦めて皿の上に身を沈め、皿に口をつける。
とりあえず、口でお茶をすすり、あとは舌で舐めていく。
「んふっ、ああっ」
すると、股間の革帯がまたもや、強い振動を開始した。
ロクサーヌはびくりと身体を硬直させてしまった。
「なにしているの。もっと、熱を込めて舐めるのよ。皿だけでなく、床にこぼれたものも舐めろと命令したでしょう」
「は、はい……」
股間の振動に耐えて、床を舐める。
「今度はここよ」
エルヴェラが自分の靴のかかとに、カップからお茶をかけて、足を組んで濡れた側の靴先をロクサーヌに向けた。
仕方なく、一生懸命に舌先で靴を舐める。
「ゼル、やっぱり、可愛いわ。本当に好きにしていいかしら。前から、こんな可愛いペットが欲しかったのよ」
「好きにするといい。君の娘になる女だ」
ゼルが笑って言った。
「嬉しいわ、ゼル。愛している」
股間の振動に耐え、また、惨めさを感じながらエルヴェラの靴を舐め続ける。
頭の上で、口づけの音がした。
どうやら、テーブルに座っているゼルとエルヴェラがロクサーヌの上で唇を重ねたようだ。
そのあいだも、ロクサーヌはひたすらエルヴェラの靴に舌を這わせる。
「ルカリナ、奥にボウルがあるから持っておいで」
「はい、エルヴェラ様」
気配を消してゼルの後ろに立っているはずのルカリナにエルヴェラが声をかける。
ルカリナの口調には、まったく感情がこもっていない。
しばらくすると、ルカリナが戻ってきた。
エルヴェラがルカリナが持ってきたらしい金属のボウルを床に置く。ボウルはかなり大きめのものであり、ロクサーヌの顔が全部埋まるくらいに大きい。
エルヴェラが、そのボウルに手をかざした。
すると、彼女の手の平から水が噴き出し、あっという間にボウルが満水になる。
魔道だ。
「お前のために準備した飲み物よ。手を使っていいから、十を数え終わるまでに飲み干しなさい。ほら、命令よ。はじめ──。一……、二……、三……」
いきなり、エルヴェラが数をかぞえだした。
一瞬、呆気にとられたが、慌ててボールを手に取る。満水なのでかなり重い。
とにかく、口をつけて急いで水を飲んでいく。
「ぶふっ、んぐっ」
だが、途中でさらに股間に喰い込んでいる革帯の内側の突起の振動を強くされた。
ロクサーヌは体勢を崩しかけるとともに、口に含んでいた水をボウルに吐き戻してしまった。
結局、とてもじゃないが、十のあいだに水を飲み干すことはできなかった。
エルヴェラが十を数えてから、かなり経って、やっとボウルが空になる。
すると、やっと振動をとめてくれた。
すでに、お腹が水で腹一杯だ。かなり苦しい。
「だめね。やり直しよ。はい、もう一度」
だが、エルヴェラがロクサーヌがまだ持っていたボウルに手をかざし、再び満水にする。
数をかぞえだす。
ロクサーヌは涙目になりながら、ボウルの水を飲んだ。
しかし、またしても、股間を途中で振動で刺激されて邪魔される。それでなくても、飲み終わらなかったと思うが、二度目も十のあいだには飲み干せなかった。
「駄目な子ね。もう一度よ」
同じことをまたやらされた。
またしても、駄目。
「次よ。今度こそ、成功しなさい」
肩で息をしているロクサーヌの前のボウルをまたもや満水にされる。
もう無理だ。
ロクサーヌは首を横に振った。
「お、お許しを。もう、無理です」
「何度でも成功するまでやらせるわよ。命令よ、はじめ──」
だが、容赦のなく再開を命令された。
ロクサーヌはボウルを抱えて口をつける。
やはり、無理だ。
これまでで一番時間がかかったと思う。
もう、ロクサーヌのお腹はかなり膨らんでいた。
「五回目ね。そろそろ、成功しないよ、死んでしまうわよ」
エルヴェラが笑いながら、ボウルを魔道で水を満たしていく。
「無理です──。許してください」
ロクサーヌは泣き出してしまった。
「五回目の挑戦をしなさい。命令──。はじめ──」
だが、エルヴェラは愉しそうに笑うだけだ。そして、再開の命令を与えられてしまう。
ロクサーヌは必死に水を飲んだ。
確かに、いい加減に成功しないと、死んでしまう。そもそも、もう水は飲めない。
懸命に喉を動かして水を飲む。
「んんっ」
お決まりのように股間を振動されて妨害される。
耐えて飲む。
だが、胃から水流が逆流してきた。
「おええええ──」
ロクサーヌはボウルに水を吐いてしまった。
「あらあら、吐いて許さないからね。六杯目にいくわよ。もっとも、その前に、その吐いたものも飲み干してからね」
エルヴェラが口からだけでなく、鼻からも水を噴き出してしまったみっともないロクサーヌの姿に、手を叩いて笑った。
「ああ、お許しをおお、エルヴェラ様──」
ロクサーヌは号泣してしまった。
「お母様と呼びなさい。その予定なんだから」
「お母様──」
ロクサーヌはとにかく涙を流して哀願した。
「エルヴェラ、僕は行くよ。近いうちに婚約の手続きを進めよう。じゃあ、夜にでも」
すると、ゼルが上機嫌の様子で立ちあがるのがわかった。
「わかったわ、では夜に……。ロクサーヌは、今日は、このまま借りていいかしら? それとも、どうしても、今日中にさせる仕事があるの?」
「問題ない。任せるよ」
ゼルが部屋を出ていく。
当然にルカリナもついていくが、ロクサーヌの横を通り過ぎるとき、一瞬だが、ルカリナがロクサーヌの肩を掴んで離した。
たったそれだけのことだが、ルカリナの愛情を感じて、泣いていたロクサーヌは身体が熱くなる。
一方で、エルヴェラは、ゼルが立ち去るのを椅子に座ったまま、顔だけを向けて見守っていたみたいだったが、ゼルが去り、外の護衛も遠ざかっていく気配がすると、ロクサーヌが抱えていた水の入ったボウルをすっと取りあげた。
「ふふふ、やっと行ったわね。本当に、あんたって、苛められるのがよく似合うわね。ぞくぞくするわ……。もういいわ。座りなさい、ロクサーヌ」
「えっ?」
思わず、跪いたままエルヴェラを見上げてしまった。
部屋には、もうロクサーヌとエルヴェラしかいない。
ふたりきりだ。
「なに? それとも、もっと苛めて欲しければ、続きをしてもいいわよ。水飲みをまたやる?」
エルヴェラが笑った。
ロクサーヌは、急いで首を横に振る。
よくわからない。
許されたのか?
とりあえず、おずおずと立ちあがって、さっきまでゼルが腰かけていた椅子に座る。
だが、苦しい。
また、水を戻しそうになった。
ふとお腹を触ると、まるで妊婦のようにお腹が膨らんでいた。
そして、急に尿意を覚えた。
あれだけ水を大量に飲んだからだろうか。
意識すると、もう我慢するのは難しい。
ロクサーヌは手でぎゅっと下腹部をスカートの上から抑える。
「お、お母様……。あのう……。厠に行ってもよろしいでしょうか……」
ロクサーヌはぐっと腿を密着させながら言った。
必死に歯を喰いしばる。
だが、おしっこがいまにも漏れそうで、脚が痙攣したように震えてとまらない。
「両手は背中で組みなさい。命令よ」
だが、エルヴェラは聞こえなかったかのように、ロクサーヌの訴えを無視した
仕方なく、両手を背中に回して、右手で左手首を持つ。
「あ、あのう、お母様……」
「エルヴェラでいいわよ。あんたの義理のお父さんと結婚する気なんてないから」
「えっ?」
思わず、問い返した。
だって、さっき婚約すると……。
だが、なんとなくだが、エルヴェラのたったいまの物言いには、“あんたのお父さん”という呼び方をしたゼルに対する蔑みの口調が混ざっている気がした。
「それよりも、やっと、ふたりきりになったわね。なんだかんだと、少し前から、ずっとふたりきりになる機会を伺っていたんだけど、結構、あれが、ずっとくっついてきてねえ」
「えっ、“あれ”?」
あれというのは、ゼルのことだろうか。
だが、いままで知っているエルヴェラとは、まるで人が変わった感じだ。
エルヴェラというのは、年齢こそ、ゼルよりも十歳も年上であるものの、ゼルにぞっこんであり、あのチムルという獣人女性をゼルが遠ざけてから、多くの貴族女性がゼルの寵愛を得ようと競う中、一番積極的に愛をささやいて、ゼルの心をものにした女性だ。
少なくとも、ロクサーヌの認識はそれである。
だから、ゼルを“あれ”呼ばわりするのは、信じられなかった。
唖然として、エルヴェラを見た。
思わず、一瞬だけ尿意さえ忘れたほどだ。
「そうよ。あれ……。ところで、あんたには、感謝しているわ。あのチムルという獣人女をあれから遠ざけてくれたことは、本当にありがたかったわ。それで一気にやりやすくなった。そもそも、どうして、急に獣人女を遠ざけたのか不思議だったんだけど、あんたの予知夢のことをあれに教えられて、合点がいったわ。あれは、あんたの予知夢をかなり重要視しているのね」
エルヴェラが豊満な胸を揺すって笑った。
「あ、あのう……」
どう応じていいかわからない。
そもそも、どうして急に、ゼルの愛人にして、婚約者ともなった彼女がそんなことを言い出したのか……。
また、チムルというのは、一年前までゼルの恋人だった獣人女性であり、魔道に長けた工作員だ。
だが、ロクサーヌがある予知夢を告げたことで、ゼルは急にそのチムルを遠ざけてしまった。
つまりは、チムルがある別の男に抱かれているという光景を予知夢で見たことを告げたのだ。
それは事実であり、嘘は言っていない。
ただ、その背景は喋らなかったし、内容を少し脚色した。
ゼルに教えたのは、チムルが黒髪の男に寝台の上で抱かれている光景をロクサーヌが眺めていたという夢の内容だ
ゼルは驚愕していたし、拷問まがいの訊問もされたが、ロクサーヌにはゼルに嘘を告げられない隷属がかかっていると信じているゼルは最終的にはそれを信じた。
いずれにしても、権力者となったゼルは、かなりそれまでと人が変わったという評判みたいだ。
ロクサーヌが耳にしているところによれば、大公代理となって権力と人望と財産を手に入れたゼルは、特に女性関係が華やかになり、次第に獣人女性のチムルを遠ざけて、別の女性たちとの逢瀬を繰り返すようになったそうだ。
そして、ロクサーヌのその予知夢のことがあり、ついに恋人としての別れを告げたらしい。
まあ、ロクサーヌの予知夢がチムルをそばから離すことのなにかの切っ掛けのひとつだったのかもしれないが、ロクサーヌとしては、ただそれだけでのことでと思いもする。
その後、一気に華やかになったゼルの女性関係の末に、勝ち抜いたかたちなのが目の前のエルヴェラという女貴族なのである。
それはともかく、ゼルに告げたとおり、ロクサーヌが見た予知夢は、黒髪の男に寝台で抱かれる獣人女のチムルの姿だが、ゼルに言わなかったのは、ロクサーヌはそれをただ眺めていたのではなく、同じように寝台に乗っていたのだ。
しかも、裸で……。
縄をかけられて……。
いまでも、それを思い出すとどきどきする。
そもそも、ゼルの恋人だった獣人女性とともに、同じ寝台でひとりの男に抱かれる?
しかも、縛られて?
その予知夢の中では、ルカリナがそばにいなかったので、ルカリナは予知夢を見ていない。
多分、あれはかなり遠い先の未来だと思うが……。
「いずれにしても、さっきので確信したわ。実は、あんた、隷属にかかってないでしょう。下手くそ過ぎるのよねえ。本当に隷属にかかっていれば、あんな風に水は飲まないのよ。心では拒絶しながら、それでも手と口は勝手に水を飲むの。途中で吐き出しても、命令の解除がない限り、水飲みはやめないわ。あんたは下手くそ。あれは気がついてないけどね」
エルヴェラが言った。
「えっ……」
絶句した。
あれは、ただのいやがらせではなく、ロクサーヌが隷属にかかっているかどうかを最終的に確認するための試し?
背中に冷たいものが流れるのがわかった。
だが、それよりも──。
「あ、あのう、お、お願いです。厠に……。厠に行かせてください──」
ロクサーヌは声をあげた。
もう限界だ。
おしっこが漏れる──。
「ふふふ、だめええ──。あんたが可愛くて、苛めがいがあるというのは、嘘じゃなくて本当よ。まだ、我慢しなさい。ああ、言い忘れてたけど、さっきボウルから飲み続けた水は、ただの水じゃないわよ。利尿剤をたっぷり配合してあったの。それをあれだけがぶ飲みしたら、そりゃあ、おしっこしたくなるわよね。だから、まだ我慢しなさい。勝手に厠に行ったら、あれに、あんたたちが隷属かかってないってばらすからね」
「そんなあ……」
「なんて顔してんのよ。ばればれなのよ。あんたには、本当は隷属にかかってない。そうなんでしょう? そして、そうであれば、あのルカリナも実はそうなんでしょう? あれにばらしていい?」
エルヴェラが意味ありげに微笑む。
「お、お待ちください。わ、わたしたちには、ちゃんと隷属魔道がかかっていて……。お疑いなら、どんな鑑定でも……」
「あーあ、そんな誤魔化しはいいから。多分、なにかの欺編をかけてるんでしょう? それがどんな方法だかわかんないけどね。だけど、本当はあんたらには隷属はかかってない。まずは、そこから話をしようか」
「……は、話とは……?」
ちょっとだけ迷ったが、ロクサーヌは言った。
それはともかく、尿意はもう限界だ。涙目である。
ロクサーヌの全身には、脂汗が噴き出してきているのがわかった。
「わたしと取引きしようか? あんたたちは、あれを蹴落としたいんでしょう? 少なくとも自由になりたい。そうなんじゃない? 実を言うと、わたしの目的も同じところにあるんだよね」
すると、エルヴェラがにやりと笑った。