*Point of view Minato*
誰かに「恋」をする事はとても素敵なことだと思う。
学生時代は恋愛になんて無関心で周りの友達の色恋話にはついて行けず、ずっと彼氏なんていなかった。
その後は家から近い会社に就職して慌ただしい毎日を過ごていた。
そんな私を変えてくれた人がいる。
——名前は新堂雅也さんと言って仕事先の先輩で私より少し年上の人。
年上なのにどこか子どもっぽさがある人で、いつも笑顔で好印象。
先輩達に聞いた話によると新堂さんは九州で数年働いてから東京こっちに上京してきたらしい。
生まれも育ちも関東の私には九州がどんなところなのかイメージできない。
最初は仕事に対する端的な会話を交わすようになったけど新堂さんはあまり他人と話すようなタイプじゃないなって感じた。
話はするんだけど深く関わろうとはせずに距離を置いている。
私も最初は苦手なひとだった……。
だけど、私が仕事でミスをしてテンパっちゃった時に「大丈夫だから落ち着いて」と声を掛けてフォローしてくれた。
新堂さんのおかげで何とかトラブルを乗り越えることができた私はお礼を言いにデスクに向かう。
「新堂さん、今お話できますか?」
昼休みになって書類を綺麗にまとめている新堂さんに話かけた。
「ん? ああ、篠宮さんか、どうしたの?」
書類を整理する手を止めて私の方へ体を向ける。
「この間の仕事でのトラブルからフォローありがとうございました」
「ああ、その事ね。随分と深刻な顔してるから大事な話かと身構えちゃったよ」
「えっ? 私そんな顔してました?」
「ちょっと怖い顔になってだよ」
そう言って不器用に笑顔を見せた、このひともこんな表情するんだ。
仕事をしている時には見せたことのない顔だ。
「お昼まだでしょ? 良かったら一緒にどう?」
「良いんですか?」
「もちろん。僕は何が買ってくるけど篠宮さんは食べるものある?」
「私はお弁当があります」
「自分で作ってるの? 偉いなー。僕も今度から弁当にしようかな。流石に毎日何か買ってるとお金勿体無いないし」
お財布を持って「それじゃあ行ってくるよ」と立ち上がってビルの中に入っているコンビニへ。
新堂さんが戻ってくるまで私はお弁当の包みだけを広げて待つことに。
数分するとちょっと大きめなレジ袋を持って戻ってきた。
「待たせてごめんね」
机の上に袋を置いて中からコンビニ弁当を取り出す。
手作りのお弁当とは違っておかずやごはんの量が決まっているコンビニ弁当。
私は全く食べないからわからないけどああいうのって美味しいのかな?
「一つじゃ量が足りないから三つ買ってきた」
袋からお弁当を出して揚げ物がたくさん入っている方を選んで割り箸を割った。
「これ飲んでいいよ。そのまま食べたら喉に詰まるからね」
横に置いてあるお茶のペットボトルを一本、私に差し出す。
「ありがとうございます」
静かな職場で食べるお昼ごはん、他の人は外に食べに出かけちゃってオフィス内は私と新堂さんの二人だけ。
「篠宮さんは外に食べに行ったりしないの?」
「はい」
「そっか、ずっとオフィスの中で仕事してると息苦しさを感じることあるからね。たまには外の空気を吸いに行くのも悪くないよ」
「そうですね」
せっかく新堂さんが話しかけてくれたのに事務的な反応しかできない自分に軽く自己嫌悪。
それから会話もせずに取り黙々と食べる。
「ごちそう様でした」
先に食べ終えた私はお弁当箱を持った立ち上がる——新堂さんはまだ食べているから邪魔しないように。
「待って、これ食べていいよ」
コンビニ弁当が入ってた袋から粒タイプのチョコレートを出す。
「ついでに買ったから篠宮さんにあげるよ」
「ありがとうございます!」
チョコを受け取ると優しい笑みを返してくれた。
案外優しいところあるんだー。なんて感動しながらもらったチョコを見てそう思った。
少しずつ変わっていく、私の心、あの人のおかげで毎日が本当に楽しい。
自分の中の気持ちに気がつくようになるのは少し後の話。