※この作品はR-18です。

初恋と忘れられない想い   作:南雲悠介

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物語が始まる少し前のできごと
季節は新しい冬を迎えていた浅倉咲希の周りは少しずつ変化していく


Prologue
序曲 新しい年を迎える前には


 二〇一六年 十二月

 

 

 *Point of view Saki*

 

 

 外はクリスマスムード一色で街の中のお店のまではクリスマスツリーを出したり、ツリー用の飾りつけをしたりするのを見かける事が多くなった。

 昔は家族と過ごしていたけど社会人になればそういう風にはいかない。

 

 九州にある実家には大学を卒業した後はしばらく帰ってない……。

 成人式の時に地元で晴れ着を着て参加した時に帰ったくらいかなぁ。

 みんな元気にしてるかなぁ。なんて昔の友達のことをふと思い出した。

 今年もひとりでお祝いをすることになりそう。

 大学生の頃は友達と一緒にパーティーを開いて楽しんだりもしたんだけどねー。

 私は冬は結構好きな方──寒いのは辛い時もあるんだけど、クリスマスや新年を迎える前の独特なあの感じがすごく気に入ってる。

 雪が降った後の白い景色をきれいと思ったりするのは変なのかな? 

 クリスマスのイルミネーションが街を行く人たちを迎えてくれる。

 それを足を止めて眺める人もいれば、何も思わずに素通りする人もいる、他の人の色んな反応を見るのがまた面白い。

 

 周りにカップルも多くなってきた夜の街をひとり家に向かって歩く──手袋を付けている手も指先の感覚がないくらいに冷え切ってしまってる。

 うん、今日は暖かいものを食べようと思う。

 帰りを急ぐ私は自然と早足になっていた。

 その結果、いつもよりも早い時間に家に帰りつく、寒い中、仕事を頑張った自分にご褒美を上げたい気分かな。

 

 

「こんな時間に誰よ!」

 

 家に帰ったのに休む暇もなくケータイが鳴る。正直無視してもいいんだけど、もしも、重要な用事だったら困るのは私のほうだしとりあえず出ようっと──私は通話ボタンを押して電話に出た。

 

『もしもし』

『もしもし? ちょっと! もう少し早く出なさいよね!』

『その声はもしかして明日奈? こんな時間にどうしたのよ』

 

 電話の声の主は大学時代からの友達の明日奈。

 そういえば、私に電話をかけて来る人なんて限られてたなぁ。

 

『それで何の用なの?』

『そうだったわね。ねえ、今、あんたの家の近くまで来てるからこれから寄ってもいい?』

『ええっ……さっき家に帰ったばかりで何も準備してないわよ』

『大丈夫大丈夫。さっきコンビニで色々と買ってきたから』

『また私の部屋でお酒飲むの?』

『いいじゃない。あたしも咲希と色々話したいこともあるしさー』

 

 明日奈はいつでも強引──だけど、彼女のことは全然嫌いじゃない。

 本当に友達思いのいい子だなって思うし、大学を卒業してから何度も私の家に遊びに来てくれる。

 彼女の愚痴に付き合いながらお互いに気を遣うことのない会話を楽しむ。

 私は荷物を綺麗に片づけていつ明日奈が部屋に来てもいいように準備した。

 

「こんばんはー」

「いらっしゃい。寒かったでしょ? さあ、上がって」

「おじゃましまーす」

 

 明日奈を部屋に向かい入れて暖房の電源をオン、私たちは部屋の真ん中に置いてある炬燵に足を入れた。

 

「本当に寒いわねー咲希は風邪とかはひいてない?」

「大丈夫だよ。それより明日奈は今日どうするの? また泊っていくの?」

「明日は休みだし泊っていこうかなーあんたとじっくり話もしたいしね

「明日奈がいつもうちに来るのは次の日お仕事がお休みの時だけだったよね」

「お酒とおつまみ買ってきたから一緒に飲もうよ」

「いいねぇ。私、グラスを持ってくる」

 

 台所からグラスををふたつ持ってついでに食べようと思っていた唐揚げをお皿に移して部屋まで運ぶ。

 

「美味しそうじゃん。それじゃあ乾杯しよっか」

 

「「カンパーイ」」

 

 グラスをこつんと合わせて乾杯する。ふたりだけの女子会はこうして始まった。

 

 

「やっぱり仕事の後の一杯は格別ね、これこそ大人の楽しみってやつ?」

「もう、なんかおじさんみたいだよ。明日奈」

「いいじゃん、本当のことなんだしさー。あーん」

 

 そう言うと唐揚げを皿から一つ摘まんで口の中に入れた。

 

「咲希さ、大学卒業してもう三年経つけど、社会人生活にはもう慣れた?」

「うん。まだまだ分からないこともいっぱいあるよ……働くって本当に難しいよね」

 

「大学の友達は皆バラバラになっちゃたし、東京で仕事してるのはあたしと咲希だけだよねー」

「うん。私もたまには会いたいけどなかなか都合がつかないよね」

「そういえばさ、あたしらもう今年で二十五歳になるけどいまだにどっちにも彼氏ができないよね」

「なによそれ……」

「だってそうじゃない? 他の友達は彼氏いる子ばかりだけどあたしと咲希には彼氏がいないしー」

「私は恋愛には──」

「──興味ないんでしょ? 咲希の言うことは予想できるわよ」

 私が言うつもりだったセリフを先に言われてしまう……。

 

「仕事だけが恋人っていう生き方は寂しいと思うんだよね。あたしはあんたとは違っていつも出会いのきっかけを探してるのよ」

 

 明日奈は大学生の頃も、積極的に合コンとかにも参加していて自分が良いと思った男の子には声をかけていた。

 

 ルックスも性格も悪くないのになぜか彼氏ができずに告白した相手にも振られちゃうことが多くてその度に泣きながら電話をしてきたから私も彼女が満足するまで話を聞いてあげていた。

 

「あたしと咲希、どっちが先に彼氏を作るかなー。ま、咲希は男には興味なさそうだし一生彼氏できなさそうだし」

「うっ……」

「咲希ってさ、人付き合いは上手いのにそういうことに関してはいつも他の人よりも一歩遅れてる感じがするんだよね」

「明日奈だっていつも告白して振られてばかりじゃん!」

「こ、告白をしたこともされたこともないあんたには言われたくないわよ!」

「なによ! 私だって男の人に告白されたことぐらいあるんだからね」

「えっ……マジ? それ、本当の話なの?」

「うん……」

「なになにー告白されたってどういうことよ! 詳しく聞かせなさいよ!」

「うるさいなあ。別にそんなの人に話すようなことでもないよ」

「そう言われと逆に聞きたくなるんだよねー気になるわ」

「たいした話じゃないってば!」

「でも、咲希が告白されるなんて天変地異でも起こらないとありえない話でしょ?」

「酷いなぁ」

「お願い! 聞かせてよ」

「もう。しょうがないなぁ」

 

 私は一度だけの話を明日奈に聞かせた。私が話し始めると黙って話の内容に耳を傾ける。 

 

 昔ね、私に告白してくれた男の子がいたの。

 小学校からの同級生で中学校まで一緒だったの、高校は私が進学校に行ったから彼とはそれっきりで一度も会わなかった。

 あまり話したこともなかったしどういったひとなのかも知らなかった。

 もちろん私の事が好きだっていうことも……。

 中学を卒業して何日か経った日に手紙が来たの。珍しいこともあるんだなって思って手紙の内容がすごく気になったの。

 もう十年も前の事だけどその手紙には一生懸命に自分の想いを伝えようっていう彼の熱意みたいなものも感じ取れた。

 

「僕は、僕は咲希ちゃんのことが好きです」って書かれた文字を見ても私は別になんとも思ってなかったから告白されても困るなあって。

 手紙で私に気持ちを伝えるまでに雅也君がどんなに悩んだのかわからないけど、好きでもない相手からそういうこと言われても迷惑だと感じた。

 だから私は、彼の手紙に返事をした「私は、雅也君の気持ちに答える事はできません。もう二度と私に話しかけないで!」って。

 

 

「そんなことがあったんだ」

「実はここ最近までは忘れてたんだよね。もう十年も前の事だったし」

「咲希に告白した相手かー。どんな人か気になる」

「今頃どこで何をやってるんだろうねー。中学校を卒業して以来全く会ってないんだ」

「けど、あんたも惜しいことしたわね」

「何が?」

「だってそうじゃない。その人と付き合っていれば年の瀬を今こうして寂しく女友達と一緒に過ごすなんてことにはならなかっただろうし」

「私は別に明日奈と過ごすの嫌じゃないよ?」

「そういう意味じゃないわよ! もうすぐクリスマスなんだし彼氏がいたら予定が入ってるのが当たりじゃない? でも、今年もひとりでお祝いするっていうのは寂しいことじゃん」

「社会人になってからは毎年いつもこうやってお祝いしてるんだけどなぁ」

「でも、こうして過ごす寂しいクリスマスがこれから先ずっと続くと思うと結構堪えない?」

「私は一人でお祝いするのも好きだけどなぁ」

「ダメだ……あんたそんなんだから彼氏ができないのよ」

「そ、それは明日奈だって同じでしょ!?」

「人生で一度彼氏を作れる機会があったのにそれをみすみす手放しちゃうなんてね~」

「好きでもない人と付き合ってもうまくいくわけないと思う!」

「そんなの一回付き合ってみてつまんない男だったら別れればいい話じゃん。仮にも自分のことを好きだって言ってくれた相手なわけなんだしさ」

「そういう付き合い方ってどうなのかな?」

「最初は好きじゃない相手でも付き合ってみればわかることだってあると思う。向こうはあんたに対する好感度はMAXなわけなんだし」

「付き合うなら結婚したいと思える相手じゃないと」

「最終的にはそれがゴールかもしれないけど、色々な付き合い方もあっていいんじゃない?」

「私が本当に好きだと言える相手にこれから出会えるかもしれないでしょう?」

「あたし以上に恋愛に関して何もしない咲希にそういう相手が現れるとは思えないなぁ」

「何さその言い方」

「自分で積極的に行動しないとそういったチャンスは巡ってこないよ。待ってるだけじゃね」

「明日奈みたいに行動しても実に結んでない人もいるよね」

「何よ! それでもやらないよりはましでしょう。あんたの場合は相手を選り好みできるような立場でもないし、それともあんたは自分に自信があるわけ?」

「そうじゃないけど……」

 

 私は顔が特別可愛いと言うわけでもないし今まで一度も男の子にモテた事も少ない。容姿ならもっと上の人はたくさんいるだろうし、スタイルにも自信があるわけでもない。

 

「恋愛をしないのは勝手だろうけどあたしみたいに頑張っているひとに対してそんな風な言い方はないんじゃないかと思う」

「そうだね。ちょっと私も言い過ぎたかも……ごめんなさい」

「あたしも言い過ぎた、本当にごめん。なんか雰囲気悪くしちゃったね……」

「こうやってお互い遠慮することなく言い合えるのはすごい大事なことだと思うよ」

「何回もこういうやり取りをしてもすぐに仲良くなるよねーあたしら」

 

 本当にそう思う。明日奈と話すときの私は気を遣わずに自分の黒い分もさらけ出すことができる。

 大学を卒業しても私を気にかけてくれる大切な友達。

 

「けどさー相変わらず殺風景な部屋だよねー」

 

 そう言ってキョロキョロと部屋の中を見回す。

 

 

「もう! それどういう意味よ」

「女の子の部屋には思えないほど何もないって意味よ。もう少し女子らしい部屋にしないと彼氏できたとき呼べないわよ?」

「いいの! 私の部屋に来る人はあんまりいないんだから」

「もしも彼氏ができたらちゃんとあたしに教えてよね?」

「はいはい。今日は久しぶりに遅くまでお話ししようよ!」

「うん」

 

 

「お風呂どうぞー。はぁ~すごい気持ちよかった。やっぱりお風呂は最高だよ」

「あんたお風呂好きだよね~前に一緒に入りに行ったときすごく気持ちよさそうな顔してたし」

「そんで、こっちの方は成長したのかなー」

「ひゃっ!? ちょっと! 明日奈何してるのよ!」

「育ってるねえ。いつ揉んでもものすごい柔らかい」

 

 明日奈は後ろから私の胸を揉む。

 

「ちょ、ちょっと! 手つきがやらしいよ?」

「ふふふ~このすごいおっぱいを目の前にして我慢できるわけないよ」

「や、それ以上はやめて……おっぱい揉まないでよ」

「あんまりやり過ぎると咲希が泣いちゃうからこの辺にしておく。私もゆっくりとお風呂入ってこよっかな」

 

 明日奈の手から解放された私は乱れた息を整える。

 

「あれ? もしかして刺激が強すぎた? ごめんごめん。それじゃあ。お風呂いただきますわ」

「う、うん……いってらっしゃい」

 

 彼女がお風呂場に入っている間、私は髪をドライヤーで乾かしながら心を落ち着かせた。

 この前も一緒にお風呂に入りに行った時もああいう風に胸を揉んできた……。女の子同士だからと言ってももう少し遠慮してほしいなぁ。

 

 そんなに大きいかなあ。丸く大きく膨らんだ自分の胸を触ってみる。明日奈だって別に小さいわけじゃないのに、でも、最近ブラがきつくなってきた気がする……。

 小学校高学年の頃くらいから大きくなり始めた胸は高校を卒業する辺りには他の女子が羨ましがるくらいサイズに。

 

 その分、私に対する視線はいつも胸に集まっちゃう。大人になったら大きくなるのは止まるって思っていたけどまだ成長している……。そういえばネットとかであんまり胸が大きくなり過ぎると下着を探すのが大変だって言うのを見たことがある。実際に可愛いデザインの下着は見つからなくていつも苦労してるの。

 

「上がったよー。気持ちよかったわ」

「おかえりなさい。はいこれ」

 

 お茶をコップに入れて明日奈に渡す。氷を入れておいたから結構冷たい。

 

「ありがとう」

 

 腰に手を当てて一気に飲み干してしまう。お風呂上りに飲む飲み物ってどうしてあんなに美味しいんだろう。

 

「ちょっと待ってね。その前にお布団敷くから」

「あたしがお風呂入ってるときにやっちゃえばよかったのに」

 

 机を片付けて私のベッドの隣にお布団を敷く。彼女の言うようにしていればよかったかもしれない、こういうところは相変わらず要領が悪い……。

 

「どうする? もう電気は消す?」

「寝る時でいいよ。それよりさ、もう少し話しようよ」

「何の話しようか?」

「それじゃあさ、あたしの子どもの頃の話をするね」

 

 明日奈の子どもの頃はすごく気になる。私は彼女の話に耳を傾ける。

 

「こう見えても私、子どもの頃は人見知りをしてたんだ」

「へえーそれは意外」

「今はそうは見えないでしょう? 子どものころってね、家族以外の人が怖いひとに見えてたんだ。それで周りの大人と話すできなかったのよね」

「そういう性格のせいか中学までは一人も友達ができなかったの。と言うよりはあたしの方が人付き合いを避けてた気がする」

「高校に上がった辺りからこんな自分を変えたいと思って思い切ってイメチェンしてみたの」

「イメチェン?」

「うん。長かった髪を切って今の髪型に変えた──」

「──そうしたらね、なんだか嘘みたいに明るくなれたんだ。今まで悩んでいたのが馬鹿みたいに思えるほどにね」

「髪型を変えて積極的に周りに話しかけていったの。そしたら、皆とっても面白くて毎日が楽しくなった。もちろんそんな中にも変わっているひともいたけど、そういうのもありなんだと受け入れることができた」

「自分の中だけで閉じていた世界から一歩踏み出してみたらそこには見たこともない景色が広がってたの」

「それが今の明日奈なんだ?」

「うん、けどね、私だって落ち込んだりすることもあるんだ。だって、世の中って楽しいことばかりじゃないじゃない? 辛いことや苦しいことの方が多いような気がする」

「だけど、そこで立ち止まっていたらその先にあるもっと楽しい未来を見ることができないんじゃないかって、あたしは自分が楽しければそれでいいわけじゃないんだ、あたしの大切な人にも笑顔でいてほしい。嬉しいことや楽しいことを一緒に共有したい」

「面白いことがあったら咲希や友達に真っ先に報告してる。そしてそれぞれの違った反応をもらって色んな考え方があるんだなって改めて思うんだ」

「色々と考えてるんだね」

「もちろん! 今日だってあんたと一杯話ができてすごく嬉しいし、楽しいよ!」

「それは私もかなぁ」

「こういう面倒なところもあるあたしだけどこれからもよろしくね」

「そんなことないよ。私の方こそよろしくね」

 

 私たちは学生の頃に戻ったみたいに夜遅い時間まで話をする、明日奈と話せる時間がとても大切に感じるの。

 

「それじゃあ電気消すよ~」

「はーい」

 

 部屋を真っ暗にして目を閉じた。

 

「ねえ? 咲希、起きてる?」

「どうしたの? もう寝るんじゃないの?」

「暗くなったら急に聞きたいことを思い出してね」

「今度は何を聞きたいのよ」

「咲希はさ、いつか自分に好きな人ができたらどうする?」

「またその話? うーん、その時にならないとわからないかなぁ」

「もしもさ、あたしよりに先に彼氏ができたらちゃんと紹介してよね」

「できたらね、ちゃんと一番に報告するから」

「あたしはね、咲希に『恋愛』をすることはいいことなんだよって伝えたい。まだ、彼氏はいないんだけどこれからがんばっていこうと思う」

「私も言いたいことちゃんとわかってるよ」

 

 そう答えたけど、自分が恋愛をしているところなんてイメージがつかない。

 

「言いたいことはそれだけ、それじゃあおやすみ」

 

 私も寝ることにして携帯で時間を確認するともう夜中の一時、こんな遅い時間まで話をしていたんだ。

 ひとりの時は十一時前には寝ているからこの時間帯に寝るのはなんだか久しぶり。

 

 学生の頃は読書が好きで夜が明けるまで本を読んでいたけど、社会人になると仕事があるから夜更かしできないし、残業をすると本を読む時間もない……。この前買った小説はまだ読んでいないし、手つかずの本が何冊もある。今度時間を取って読もうと思う。おやすみなさい。また明日。

 

 

 

 十二月二十八日(水)

 

 

 私の働く会社は今日が仕事納めでお正月前の最後の出勤になる。

 それが終わると明日から一月八日までの長い正月休みに入る。

 今年最後

 の会社での仕事は大掃除、普段やらないとこを徹底的に掃除する。

 早めに終わればすぐに帰ることができるから頑張ろうと思う。っと言っても実は大掃除の前に自分の周りを少しずつ整理整頓していた私はそんなに力を入れてやらないでもいいんだけどね、あとやるべき作業はデスクを拭き掃除したりするだけだし。

 

「こんなところかな?」

 

 机を拭きあげて不要な書類を整理、ゴミを捨ててから、身の回りの整理を済ませて上司の吉岡さんの元へ報告に行く。

 

「掃除終わりました」

「お疲れ様。浅倉さんは普段からしっかりと整理整頓ができているわねー」

「はい」

 

 上司の吉岡さんは綺麗になった私のデスクを見て満足そうに微笑む。

 

「浅倉さんの頑張りはいつも評価してるわよ」

「ありがとうございます!」

 

 吉岡さんは私と歳がふたつしか変わらないのにすごく落ち着いて素敵な女性。

 会社の中でも人気があって、仕事もきっちりとこなして人付き合いもいい。

 そして美人という非の打ち所がない人。こういう人に憧れる。

 

「それじゃあ周りの人が終わるまで手伝いをしてくれるかしら?」

「はい」

 

 私は掃除が終わっていない同僚の手伝いをするために机に戻った。

 

「女性ばかりの職場だけどいつもみんなが頑張ってくれるおかげで今年も平穏に終えることができました。それでは皆さんよいお年を」

 

 最後のあいさつで締められて今年の仕事は終わり。二十歳を超えると一年があっという間に過ぎていくという話を聞いたことがおるけど、本当にそうだと思う、昔と比べて一年が終わるのが早く感じるようになった。

 一つ一つ歳を重ねるごとにまた世界から自分が取り残されていくような気がしない? 

 明日奈が変われたように私もこれから変わることができるのかな? 

 新しく買ったハンカチを机の上におきっぱなしにして眠りについた。

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