※この作品はR-18です。

初恋と忘れられない想い   作:南雲悠介

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第15楽章 気になる存在

 *Point of view Minato*

 

 

 恋をする事がなんなのかは私には分からなかった——社会人になってから代わり映えのない日を送っている。

 会社の人たちは良い人ばかりだと思うけどプライベートで付き合うまでの関係じゃない。

 人付き合いってそういうものじゃないかな? 仕事が終わって真っ直ぐ家に帰る事が多い、今のこの生活に私は納得してるのかしら……。

 

 

 でもね、そんな私には最近気になる人がいます。

 それは先輩の新堂さん。彼とはこの会社に入ってから知り合ったんだけど、たまに話すようになってからはいつも顔を合わせるのが楽しみになってた。

 先輩は結構色々な事を知っていて面白い。

 会話の内容はいつも違っていて話す度に新しい話題を振ってくる。

 時には聞き手側に回って私の悩みに対しても真剣に向き合ってくれた。

 新堂さんには私も自分の事を色々相談するようになった。

 ——だけど、あの人は私にもあまり自分の事は話そうとしないの。

 最初会った時に感じた事だけれど、新堂さんは周りと距離を置いている気がする。

 表向きは人当たりが良さそうだけど深い部分には決して振り込んでこない。

 どうしてなのか理由は聞けなかった。

 

 携帯を開いてぼんやりとアドレス帳を眺める——家族以外の連絡先が登録されていないこのスマホに初めて男の人の番号が登録された。

「新堂雅也」の名前を見て考える。

 

 実は私の方が新堂さんに連絡先を聞いたの。

 彼は最初戸惑った表情を見せたけれどすぐにいつも顔を戻ると「後でね」とだけ私に伝える。

 仕事が終わる時に今の時代だとあまり若い人が使っているのを見かけないフューチャーフォンを片手に持って私のデスクまでやってきた。

 

 

「ごめん。普段は携帯をロッカーにしまってるからさー」

 隣の椅子に座って携帯を操作しだす。

「ええっと、スマフォって赤外線通信とかってあるのかな?」

「この機種には無いです」

 新堂さんは「そっかー」と呟いて携帯とにらめっこする。

 そんな様子を見かねた私は自分のメールアドレスと電話番号を書いた紙を渡す。

 すると新堂さんは右手にメモを持ちながら左手で携帯を操作し始めた。

 新堂さんは確か右利きだったような気がするけど利き手じゃない方で操作するのってやりづらくないのかな。

 そんな事を考えていると入力を終えてメモを丸めてポケットにしまい込んだ。

 

「新堂さんはいつも左手で携帯の操作するんですね」

「えっ、何かおかしかった? 僕にはこれが普通なんだけど」

「右利きですよね? 逆の手だとやりづらくないですか?」

 私がそういうと「別にそんな事ないけどなー」と言って不思議そうな顔をして携帯を触る。

 

 後で教えてもらったんだけど新堂さんは高校生の頃から今の携帯を使っているとのこと。

 家族はスマフォに機種変更したけど自分はイマイチタイミングを逃してしまったらしい。

 

「まあ、普段は電話もあまりかかって来ないしネットも使わないから今の携帯でも充分かな」って言っていた。

 

 私達は駅までの道を一緒に歩く。

 そういえばいつの間か新堂さんと帰るのが当たり前のようになっていた。

 代わり映えのなかった日に少しずつだけど「変化」が生まれていた。

 

 新堂さんは私が駅の姿が見えなくなるまで見送ってくれる。

 その様子にどこか安心して足取りも軽やかに家に帰り着く。

 初めて連絡先の交換をしてから私は新堂さんにメールや電話をするようになった。

 夜の遅い時間でもちゃんと返事をしてくれる。

 私達の関係はちょっとずつだけど変わっていった。

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