※この作品はR-18です。

初恋と忘れられない想い   作:南雲悠介

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第16楽章 浮ついたままで

 湊は鼻歌を歌いながら土曜日の予定を考えていた。

 初めて雅也が篠宮家にやって来る、誘ったのは湊だけど彼女は今まで男の人を家に呼んだ事は無かった。

 

 

「それで、ちゃんと新堂さんは誘ったの?」

「うん、誘ったよ」

 湊の部屋には妹の夏帆がいて食事に誘ったのかを聞いてきた、内気な姉の恋を応援したいと考えた夏帆はまず家に雅也を呼んでみたら? と提案した、最初は遠慮していた湊も一歩踏み出す勇気を持ちたいと妹に打ち明けた。

 その日の夕飯の準備をしている母に雅也を家に呼びたい事を伝えた、ちょうどテレビを見ていた父は突然の娘の言葉に驚きリアクションを見せたけど、湊の真剣な想いに許可を出すことに。

 両親は娘に彼氏が出来ない事を心配していた、二十代の女の子なら恋愛に興味がある年頃なのに全くそういう話を聞かないから不安にも感じていた。

 湊は雅也の事を会社の先輩だと両親に伝えたけれど、どうもそれだけじゃない事を察した、幸い土曜日は二人共家にいる、食事をする時に改めて雅也を紹介しようと考える。

 母親と一緒に夕飯の準備する湊の様子をうんうんと頷きながら眺める父、篠宮家の家族仲は良好。

 

 

 夏帆ももう一度雅也に会えるのを楽しみにしてる、一緒に水族館に行った時に自分と波長の合う人だと感じた。

 姉の湊とは違って明るくて前向きな性格をしている夏帆は姉がいつも話していた相手に興味があった。

 小さい頃から自分よりも大人びていてワガママも言った事の無いしっかり者の姉が夏帆は大好きだ。

 たまに無理を言って困らせる事もあったけど、二人しかいない姉妹の間は絆で結ばれている。

 もちろん大好きな姉の選んだ相手ならその恋を応援してあげたい、だけど、その人が酷いひとなら許せない! 夏帆は新堂雅也という人がどういう人間なのか自分の目で確かめる必要があった。

 実際に会ってみた感想は思っていた人とは良い意味で違った。

 高校生の夏帆からしてみると父以外の男は騒がしくて子供っぽい印象を持っていた、同じ年のクラスの男子はうるさくていつまでも子供だったから。

 雅也は落ち着いた感じの人で、初対面の夏帆にも大人の態度で接してくれた。

 なによりも雅也と過ごしている姉の嬉しそうな表情を見る事ができたのは収穫あり、家族といる時にあんな顔はなかなか見れない。

 行きたかった水族館のチケットを譲ってくれた雅也はいい人だと思った。

 お姉ちゃんには幸せになって欲しいという夏帆の純粋な願いは湊に伝わっているかはわからない、だけど、篠宮姉妹には言葉にしなくてもお互い相手の気待ちが分かるのかもしれない、それが姉妹の絆だと思う。

 

 

 湊との約束をしてからの雅也は早く土曜にならないかなあと毎日考えていた、誰かの家で食事を取るなんて経験は今までに一度も無い、しかも相手は最近気になり始めた存在の湊であること、これからも彼女と良い関係を続けていきたいと思っていた。

 雅也の中で湊の存在はドンドン大きくなっていく、もうあの時みたいに失敗をしたくない。

 これまで恋をする事に臆病になっていた自分を変えたいと強く願う。

 東京で咲希と再会してから昔みたいに友達としていられる自分でいい、雅也が彼女に告白した事なんて咲希自身は覚えているわけないと。

 じゃあどうしてあんなネックレスをプレゼントしたんだろう? どこかで彼女への未練を断ち切らないといけなかったはずなのに……。

 頭では忘れなくちゃと思っていても雅也にはあの時の咲希の返事がいつまでも心に残っていた。

 ゆらゆら揺れる浮ついた気待ちのまま、これから先に起こる出来事を予感なんてできるはずはなかった。

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