やっと自分の気持ちに気がつく事ができたの、私は雅也君の事が好き。
まさか自分が恋をするなんて思いもしなかった──私は昔、中学生の頃に彼が私を好きだと言ってくれたのを思い出す。
あの時の私はまだ恋愛をするって事を理解できてなかったのかも、高校の時は彼氏はいなくて毎日勉強ばかりしていた。
周りが大学に進学する人ばかりだったから遊んでいる暇なんてなかった。
中学の頃は人数が少なくて部活は強制だったけど、高校はそうじゃなくて部活をやらないのも自由。
私は高校では弓道部に入って毎日練習をがんばっていた。大会に出場した経験もある。勉強と部活の両立が意外に大変で遅くまで練習した後にどこかに寄って遊ぶなんてこともしなかった。
家に帰ったらまずはその日の授業の復習をする、学校から出されたたくさんの課題が終わる頃には深夜を迎えているなんていうのがしょっちゅう。
まあ、そのおかげで希望する大学に通う事は出来たんだけど、私には学生時代が楽しいと思えるような出来事はほとんどなかった。
なんだろう? こんなに胸が熱くなるものなの? 初めてこんな感情が湧いてくる、息が苦しくて辛い……。
駅のホームで雅也君と十年ぶりに“再会”したあの日、彼は小中学時代とは全く違っていた。
最初は私も雅也君ってわからなかった、それからは連絡先を交換して色々話すようになった、彼が私の為になかなか取れない水族館のチケットを準備して一緒に行くつもりだったこと、このネックレスを無くした時に雪の降る中、必死に探し出してくれたこと、そしてネックレスをプレゼントしてくれた意味──
──咲希はもう一度スマホで雅也に電話をかけた、今すぐにでも声が聞きたかったから。
「……やっぱり出ない」
この日に限っては二人の電波は全く繋がらない。
ちょっと不安になりながらベッドに入って考える。
雅也君って意外と女の子にモテるのかな……?
二人で一緒に街を歩いてた時に彼は知らない女の子から声をかけられてた。
だってあの雅也君だよ? 中学時代はモテない事を絵に描いたような男子で、仲のいいクラスメイトの女子もいなかったし、どちらかといえば嫌われていた印象が残ってる……。私も苦手なタイプだった。
好きだとわかって初めて気がついた、あの時の私は嫉妬してたんだ……。
彼が他の女の子と話している事に──こんなに自分が嫉妬深いなんて知らなかったなぁ。
付き合ってもいない相手にヤキモチを妬くなんて。
眠ろうと目を閉じても雅也君の事を考えると眠れない。
「もう一回電話してみようかな」
一人であれこれ悩んでもどうしたらいいのかわからない。
ちゃんと私の気持ちを雅也君に伝えないと──胸元に輝くネックレス、特別な贈り物を簡単には外せなかった。
*
湊に告白された雅也は彼女を抱きしめた。
十年間忘れなくちゃいけないとわかっていてもそれが出来なかった「初恋」の苦い思い出をようやく忘れられる、やっと一歩前に進むことが出来る。
新しい「恋」に踏み出せるきっかけをくれた湊に雅也は感謝した。
気持ちの整理を付けることを理由に告白の返事を待ってもらった。
いつまでも待ち続けると言う湊に早めに決断しないといけないと思った。
雅也の中で湊の存在が日に日に大きくなる。篠宮家での食事を終えて家に帰ってからは何度も自分の湊への気持ちを確認した。
「篠宮さんにちゃんと返事しないとな」
あの時の告白が何度もフラッシュバックする、それはまるでゲームのワンシーン、雅也の心は湊の方へぐっと惹きつけられていくのだった。