もう失敗はしたくない、これが恋をする最後のチャンスだと思うから。何度も自分自身に問いかける、僕のことを好きだと言ってくれたあの子の想いに応えたい。
湊ちゃんを抱きしめた時、いや、もっと前から僕はあの子に惹かれていたのかもしれない。
女の子に告白された事なんて無かったから自分がその立場になるとすごくドキドキする。
湊ちゃんは僕のどこがいいんだろう? 彼女とはそこまで長い付き合いじゃない、一緒に帰ったり食事をしたりする事もあったけど……。
付き合いの長さなら咲希ちゃんの方が長い、同じベッドで寝た事を思い出すと恥ずかしくなる。
女友達の家に泊まるなんて前までの僕なら絶対にありえない事だった。咲希ちゃんは独り暮らしみたいだし寂しくなったんだろうな。
所詮彼女にとって僕はそういう存在。ただの友達なんだ、あの頃みたいにお互いの関係は変わらない。
そもそも東京で再会できたことが奇跡みたいなものだし一生会わない展開もあっただろう。
けれども、僕はまた彼女と巡り会ってしまった。あの日、僕の初恋が終わってしまってから止まったままの時間。
思い出すと胃が痛くなるほど苦しくなる……。咲希ちゃんへの気持ちは区切りがついているはずなのに。
こんなフラフラとしたまま湊ちゃんに返事をしていいんだろうか?
もしも、咲希ちゃんに再会しなかったら僕はすぐにでも湊ちゃんに告白の返事をしていただろうか?
自分自身の決断が鈍っているのは心の奥底じゃまだあの失恋を引きずったまま前に進めていないんじゃないかとわかる。
ただの友達の彼女にあのネックレスをプレゼントしたのはなんでだ? 水族館に行く約束をおしゃかにしたのは咲希ちゃんの方だし僕がそこまで気を遣う必要があるのか?
いつまでもそういう関係を続けるのは良くない、湊ちゃんに返事をしたら咲希ちゃんとは距離を置こう。
恋人を第一に考えないといけないからね、決意が鈍らないように早く告白の返事をしなくちゃな。
*
咲希は雅也に電話する為にスマホを握りしめていた。
いつもは連絡するのに気を遣う事なんてないのに今日は違っていた。
次の土曜日に雅也を呼び出して告白するつもりでいた、何度も深呼吸をしてから何を喋るのか頭の中でシミュレーションしてから電話をかける。
ツーコールもならないうちに相手は電話に出る、咲希はもう一度深呼吸してからゆっくりと口を開いて言葉を発する。
「もしもし雅也君? 咲希です。今電話して大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。僕はさっき家に帰ってきたばかりなんだ。それで僕に何か用?」
「うん……あのね、今週の土曜日って何か用事あったりする?」
「土曜? いや、特に何もないけど……」
「そうなんだ、あのね、土曜なんだけど雅也君に話したい事があるから私の部屋に来てくれない?」
「咲希ちゃんの所に? その用事って電話とかメールじゃダメなの」
「うん、二人きりで会って話したいの」
「そっか、わかったよ。土曜は大丈夫。だけど、日曜はちょっと大事な用があるからさ」
「そうなの?」
「ああ、かなり大事な用でねー。こればかりは外せないんだよ」
雅也君がそこまで言う用事って何なんだろう? 気になるけど多分プライベートなところだから私が聞いちゃいけない事だよね。
もっと長く彼と話していたい寝る前にはおやすみって言ってほしい。
伝えたい用はとっくに終わっているはずなのに私は雅也君との通話が終わるのが名残惜しくて会話を繋げようと話題を考える。
「この間はワガママ言って泊まって貰ってごめんなさい。迷惑だったよね」
「あーその事かー。いや、別にいいよ。結局帰らないって判断したのは僕なんだからさ、風呂までご馳走になってあのまま帰るのは流石に悪かったからね」
雅也君のその言葉にホッと一安心する。正直なところワガママ言って彼を引き止めちゃったから軽く自己嫌悪してたから……。
私の聞いたことに答えてくれただけなのに、何だか自分だけが特別な存在だと思えてきちゃう。
彼にプレゼントからされたネックレスは私への愛情だって勝手に勘違いしてるだけかもしれない。
それでも私はやっぱり雅也君の事が好きなんだって。
自分がこんなに愛して貰っているのが涙が出るくらい嬉しい。
だけどまだ彼の本当の気持ちを聞いていない。 いくら私が想い続けても片思いなら私達の関係は変わらない。
変えたいよ、ずっとずっと一緒にいたいよ。今だって触れ合いたい、抱きしめてほしい。
人を好きになるとこんなに抑えきれない感情が溢れてくるものなんだ。
本当に信じられないくらい。
——私は変わっていく、雅也君に好きだと言って貰える女の子になりたい。
篠宮さんにアドバイスされた通り今の私の気持ちを素直に彼に伝えてみよう。
断られたらどうしようって言う不安もあるんだけど伝えないで後悔はしたくたい。
十年も掛かって自分の気持ちに気づくなんてね。私がたまに読む恋愛漫画の主人公みたい。
ああいう物語は恋のライバルが登場したりイケメンな男の子に迫られてドキドキするって言う展開が良くあるパターンだけど。
私には恋のライバルはいないし雅也君は彼女はいないって言ってたし私が恋人になれる可能性は高い。
彼もまさか私から告白をされるなんて思いもしないんだろうなぁ。
初めての恋が順調に行きそうで良かった。恋の神様には感謝しなくちゃね!
「私が雅也君に告白する初めての人になるのか〜」
そんな事を考えると自然と頬が緩みっぱなしになる。私は自分の恋愛が上手くいく事に自信を持っていた。
だけど、実際には私は二番目で—雅也君へ気持ちを伝えるのは遅すぎたのが分かるのはすぐの出来事だった。
そうとは知らずに土曜日が来るのを待ちながら告白の練習する。
とびっきりの笑顔とナチュラルなメイク、少しでも可愛く見えるように前に明日奈が無理矢理買ってくれた洋服を着て鏡の前でクルッと一
回転して決めポーズ、スマイルも完璧!
「これでよし」
早く土曜日にならないかなぁなんて子どもの頃みたいにワクワクする。
雅也君待っててね。私の想いをあなたに届けるから、恋の神様お願いします。私に少しだけ力を貸してください。