※この作品はR-18です。

初恋と忘れられない想い   作:南雲悠介

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closing chapter
不安と戸惑いの中にある感情


 家に帰りついてからは今日の出来事を振り返っていた。

 湊ちゃんの告白にやっと返事をして僕たちの関係は変わった。

 僕からしたキス、彼女の唇の柔らかい感触を思い出すと全身が火照ってきた。

 二度目の「恋」を今度こそは成功させようと思う。

 こんな僕の事を好きになってくれた湊ちゃんを大切にしていこう。

 ベッドに寝転んで携帯を枕元に置いた。家に帰ってから湊ちゃんからの着信はない。

 でも、それが実に彼女らしいと思うし、今すぐにでも恋人の声が聴きたいのを抑え込んでゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 *

 

 

 僕は夢を見ている。前におんなじ感じのを見たことがあるけど内容はそこまで覚えているわけじゃない、二人の女の子が言い争いをしている場面だ。

 

 夢の中の僕はそんな彼女たちの様子を離れたところで眺めている。言い争いをしている人物が誰なのか気になってちょっと近づいてみるけど白い靄(もや)みたいなのが掛かっていて顔を確認する事ができない。

 

 激しく感情をぶつける二人の女の子、そんな醜い所を遠くで見ている僕は何だか胸が痛んできた。

 起きてしまったらすぐに夢の内容は忘れてしまうのだからできるだけ夢からのメッセージを受け取ろう。

 

 女の子達はお互いの髪を引っ張たりして喧嘩をしている、男同士の喧嘩とは違いがあるけれど

 ——かなり激しい争いだ、髪を掴まれた女の子は涙目になるつつも相手に反撃する。二人は一歩も譲らない。

 ——髪を掴まれていた子はバランスを崩した相手のお腹にパンチをする。

 たまたま体重の乗ったパンチは格闘家さながらの威力で打ち出され、受けた子はお腹を抑えて地面に座り込んだ。

 今度は彼女の方が涙目になり乱れた呼吸を整える。

 顔も分からない女の子が喧嘩しているところを見るのは何だか不思議な感じがする。

 離れた場所で様子を伺う僕に片方の女の子が気づいて後ろを振り返る! 

 相手の顔が分かる前に僕は更に深い眠りについた。

 

 

 **

 

 

 雅也さんに告白した日からずっとこの瞬間を待ってたのかも。

 私は彼に抱きしめられた時の事を何度も思い出す。

 悶々とした感情が浮かんで来るけどそれ以上に泣いちゃいそうになるくらい嬉しい。

 

 私達は今日恋人同士になりました。

 ──冷たい部屋の中でもポカポカとするくらい熱く感じた。

 私のファーストキスは大好きな人に捧げる事ができた。

 お互いの気持ちが通じ合って初めて恋人になれた。

 こんな私を雅也さんは好きだと言ってくれた。先に告白をしたのは私からだけど、雅也さんからの返事はかけがえのないものだと思うの。

 

 ちょっと話が逸れるんだけどー私は恋人ができたのを家族に話した。

 妹の夏帆は最初、ニヤニヤとして私をからかうような事を言ってきたけど最後には「おめでとう」と祝福してくれた。

 お父さんは私に彼氏ができた事に舞い上がっていつも少しずつしか飲んでいなかったお酒を出して飲み始める。

 お母さんからは恋愛に対してアドバイスを貰う。機会を作って雅也さんを改めて家族に紹介しようって言うアイデアも浮かんで来た。

 

 篠宮家の夕飯は普段よりも豪勢で、私自身家族の温かさを再度確認出来た。

 いつか雅也さんとこんな家庭を作れたらいいなぁ。

 そんなに遠くない将来に焦がれて今の状況が夢なんかじゃないって言うのを確かる。

 

(大丈夫だよね、きっと)

 

 ちょっぴり不安な事があるの、それは浅倉さんのこと。

 ──雅也さんの初恋の人で最近十年振りに再会した相手。

 彼の心の中では十年前の失恋がいつまでも残っている。

 悔しいけれど、私が雅也さんに出会って一緒にいた時間よりも浅倉さんと過ごした時の方が多い。

 最初に彼が好きになった人は私じゃなくて別のひと……。

 どうして神様はそんなイジワルをしたんだろう? 

 もしも私が雅也さんの初恋の相手だったらこんなに不安な気持ちにならなかったのになぁ。

 

 あの日の公園で浅倉さんの雅也さんへの想いを知った。

 彼女が身につけていたネックレスは彼がプレゼントしたものなんだろう。

 あんな素敵な物をプレゼントされた彼女が妬ましい。

 

「どうして今頃になって……」

 

 初めて浅倉さんと会った時、彼女はまだ雅也さんが好きじゃ無かったと思う。

 それから私の知らないうちに彼女の気持ちが変わるような出来事があったんじゃないかな、もしも、私が問いただしたら彼は本当のことを教えてくれるのかしら。

 雅也さんの心をずっと繋ぎ留めておきたい、他の女の子の事なんて見ちゃ嫌! 

 

 これから同じ時間を過ごして彼の嫌な一面だって見えてくるかもしれないけどきちんと受け止めていこう。

 もちろん嫌なとこは私からもしっかり言おうと思う。

 欠点の無い人間なんていないんだからお互いにそういうのを言い合えるような関係でいなくちゃね。

 湊は気持ちを新たにして恋愛に向き合っていこうと決意した。

 

 

 ***

 

 

 ちょうどその頃、咲希は友達の明日奈と会う為に出かける支度をしていた。

 急な用事に戸惑ったけれど、大学からの付き合いである友達の頼みを無碍に断る訳にもいなかった。

 

 夜に外に出る機会はそれほど多くない。冷たい風に体を丸めながら待ち合わせ場所のファミレスへ向かう。

 周りには紙袋を下げたひとが多くいる、きっと皆バレンタインの贈り物なんだろう。

 町を歩いていると人気のアーティストが歌う歌が流れてその曲に足を止めるひともちらほらいる。

 私の前を歩いているカップルは人目も気にせずに肩を寄せ合う

 ──ああ言うのを見ていても前は何も感じなかったけれど今は違う。

 私も雅也君とあんな風に一緒に歩きたい、彼の事を考えると冷え切った体に沸沸とした感情が湧き上がって来る。

 やっと自分の本当の想いを伝えられた。毎日身につけているこのネックレスは最高のプレゼントで雅也君が好きだという気持ちに気づかせてくれた大切なもの。

 一度も恋愛を経験した事が無かった私が今ではもうすっかり恋する乙女に変わっていた。

 一日中雅也君の事を考えてるの、もっと彼の事を知りたい。

 私が知っている雅也君の情報と言えば中学生時代までの子どもの頃のやつばかり。

 私の中では彼との思い出なんて無いし、学生時代は気持ち悪いとも思っていた。

 高校に入学してからは一度も会わなくて共通の友達でもある義之君から雅也君の話も聞かなかったし。

 

 それが何の因果なのか東京で十年振りに“再会”した彼は私よりも背が高くて落ち着いた感じの男の人になっていた。

 正直、最初は何とも思わなかった。私の好きなイケメン俳優比べても地味でカッコいいなんて微塵も感じられない普通の男性ってイメージ。

 

 ただ、昔は性格が悪いと思っていた雅也君の優しい一面を初めて見た時私の中の彼のイメージが少しずつ変化していった。

 ネックレスを無くした私の為にとっても寒い中必死に無くし物を探してくれた事、肩にまで雪の積もった服でネックレスを届けてくれた事、そしてこのネックレスの意味を店員さん聞いた時に私は気づいた。

 十年経ってようやく気づけた堪らないほど切なくて息が苦しくなるほどの強い想いと愛情。

 こんなにも一人のひとを好きになるなんて思いもしなかった。

 ちょっといきなり過ぎだと思われるかもしれないけど、恋愛経験が全く無かった私でも分かるくらい雅也君を好きになる。

 

 ただ、そんな中ある一つの不安要素がいつも私を弱気にさせる。

 それは何かというと十年前の彼の告白を断った過去

 ──昔に戻ってやり直したいくらい後悔してる……。

 当時の私は恋愛に興味が無かったから仕方ないと言えばそれまでなんだけど、過去のたった一つの過ちが初めての「恋」の大きな障害になってる。

 私がいつまでも自分の本当の想いに気づかなかったせいで雅也君の心は今、一人の女の子に向けられている。

 出会ってからそんなに時間が経っていないはずなのに彼女は雅也君を惹きつけた。

 私が彼と出会って過ごして来た時間をあっという間に追い抜いて親密になっていく篠宮さんに激しい嫉妬心を抱く。

 恋愛の神様は平等じゃなくて私に試練を与える。

 バレンタインのプレゼントだって雅也君は篠宮さんにだけ用意してた。

 可愛いデザインのチャーム。

 彼はそれを彼女に贈ろうとしていた。私には何もプレゼントを準備してくれてなかった……。

 

 

 明日奈との待ち合わせ場所に到着した私は不機嫌な顔をして席に座る。

 明日奈は先に来ていて料理をいくつか注文してた。

 私の微妙な変化にすぐに気付いた彼女は「何かあった?」話しかけて来る。

 私は重く息を吐くと明日奈にこれまで出来事を話し始める。

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