「うん。それじゃあまた明日ね」
「はい。おやすみなさい。話せてよかったです」
「僕もだよ、明日がすごく楽しみになってきたよ。それじゃあおやすみなさい」
湊ちゃんとの電話を切り終えて携帯を枕元に置く、明日は彼女とのデート。すごく楽しみだ、新しい服と綺麗な靴を準備してまるで遠足前日の子どもみたいにワクワクとした気分になる。
デートプランは二人で話し合って決めた。ああいう風に恋人同士で何かを決めたりするのって昔からちょっと憧れていた。意見がぶつかる事があってもいい、全部が全部同じなんていうのはつまらないからね。
会社の帰りに寄ったコーヒーショップでちょっとしたブレイクタイムの中で色んな話をした、湊ちゃんは僕といきたい場所がたくさんあってなかなか決められないでいた、前に一緒に行ったアクアリウムパークも気になるらしい、チケットを準備するのは大変だけど頑張ってみるかね。
今度はふたりだけの水族館だし、ちょっとは楽しめるといいんだけど。
水族館も面白いけど僕はプラネタリウムも好きだ、涼しいドームの中で綺麗な星を眺めるなんていうのも悪くない気がする、今の時期に公開されているところがあればいいんだけど。
「もう十九時か風呂に入るにはまだ早いしちょっと出かけてくるかな、ちょうど喉も渇いたしコンビニで飲み物でも買ってこようかな。外は冷えるだろうから上着がいるか」
N−2Bを着て財布と携帯を持って外に出る、母さんたちは今日は仕事で遅くなるかもって言ってたし最近は僕自身も深夜に過ぎに帰り着く事が多いから家いなくても心配されないだろう。
「やっぱ寒いわ……。こいつを着ておいて正解だったな」
渇いた寒風が吹き荒む夜の街は静寂に包まれていた、周りはまだ明るくて繁華街の方は賑やかな音楽が聞こえてくる。
ジーンズのポケットに手を伸ばして風を切りながら歩き始める。
コンビニまではそんなに遠い距離じゃない、飲み物を買ったらちょっとだけぶらつくのも悪くない。
財布には諭吉が五枚、大したものを買うわけじゃないが、色々と見て回るのも悪くないな。
あえて人気の少ない道を選んで歩いていると何やら背後から来る違和感に後ろを振り返る。
コツンという足音は止まって聞こえなくなる。
(気のせいか? まさかつけられてるなんていうことがあったりしないか)
僕が歩みを始めると足音はちょっとずつ響いてくる──敢えて人気のない道を通ったからその違和感はすぐにわかるまでに。
胸くそ悪い感じがして足音を振り切るように駅へ走って電車に乗り込んだ。流石に目的地は決めていなかったが、電車の中までついて来る物好きはいないだろう。
目の前の席が空いたのでどっしりと腰を下ろす、途中一駅ほど乗ってから降りる。いつも使わないルートで出て駅の外へ。
「流石にもう追ってきてないだろう」
ほっと一息ついて遠回りしてしまった事に後悔しながら家に戻るルートを辿る。
「ここはあそこか。はは、そういえばこの場所には色々あったな」
どうしてだろう? 自分でも何でここに来たのか分からないが、湊ちゃんと咲希ちゃんがやりあっていた公園に辿り着いた。
冷たいベンチに腰を下ろして一息つく、今は誰かに付けられているなんていう違和感は無いし、ここでしばらく休んでいこう。
咲希ちゃんにプレゼントしたネックレスを探した場所──二人の女の子が激しく感情をぶつけ合っていた場所、夢で見た時はわからなかったけど後で知ることになった。
暗い公園には僕しか人はいない。雪の中必死でネックレスを探していた自分の姿が思い出しながら考える。
三十分以上寒空の下にいてすっかり冷え切ってしまった。もうあれから一時間以上経つ、時間が過ぎるのは早いもんだな。
「さてと、そろそろ帰ろうかね」
勢いよく立ち上がって顔を前に向けると目の前には思わぬ人物が立っていた。
「……咲希ちゃん。どうしてここに」
「やっぱりここにいたんだね」
彼女は僕の言葉に何も答えずにどんどんとこっちに向かって来る。僕はすり足でちょっとずつ後ろに下がるけどベンチに足がぶつかって止まってしまう。
「この場所は私にとっても特別な場所なんだよ? だって雅也君が私の為にこのネックレスを探してくれた場所なんだから」
できるだけ彼女と目を合わせないようにしていると咲希ちゃんの方から顔を近づけてきた。
「篠宮さんと結構激しくやりやったんだっけなぁ。あの時の痛み今でもわすれてない。結局雅也君はあの子を選んだけど私は納得してないから」
「前にも言っただろ。僕の君への気持ちはあの時にもう冷めてしまったって今更もう一度好きになることなんてない。それに僕にはもう恋人がいるんだ」
自分の気持ちに嘘はない──十年前のあの日、僕の初恋はとっくに終わりを迎えてしまったのだから、この先何があったとしても咲希ちゃんの事をまた好きになるなんて言うのはあり得ない。
「もういい加減にしてくれないか? 僕らの関係はもう終わったんだし、いつまでも付き纏われてもこっちが迷惑なんだよ!」
ちょっと強めの口調で言ったけど彼女の表情は変わらない、どうしてこんな風になってしまったんだろうなあ。僕が選んだ選択肢が間違っていたとでも言うつもりなのか?
彼女とはただの友達関係にも戻ることはできない、それは事実だし僕自身がちゃんとけじめをつけないと。
「もう二度と会う事はないよ、これから僕は湊ちゃんと一緒にいるだろうから、君と昔みたいな友人として接するのは難しいと思う」
自分の口から嘘のない気持ちを伝える、恋人いるのにいつまでも昔に「恋」に縛られてちゃいけない。
彼女と目があっても逸らす事はしない、今の僕の本当の想いを知ってもらう為に、冬の公園の中、二人の間に流れる空気感は逃げ出してしまいそうなくらいに冷え切っていた。
僕はいい加減帰ろうと彼女に背を向ける──その瞬間頭にずしりとした衝撃が襲う。
「っ! これは一体……」
思わず後頭部に手を当ててガックリと地面に膝を落とした。朦朧とする意識の中、何とか自我を保って立ち上がろうとするけれど、頭の痛みに引きずられ視界がぼやける。
「くっ、何だよこれ」
ぼんやりとした意識下で今の状況を飲み込もうとしていると再び後頭部に強い衝撃が──その痛みに耐えかねて今度は殴られた場所に手を当てることさえままらない。そうして僕の視界はまるで白いもやがかかったようにはっきりとしない。
この状況でこんな事ができるのは一人しかいない、迂闊だった。まさか彼女がこんなことをするとは思わずに背中を向けたのが間違いだった。
僕にまだ意識があるのを気づいた咲希ちゃんは再び手に持っていたものでもう一撃加える。三回目の衝撃はすでに弱り切っている僕を気絶させるには十分だ、遂に目を閉じて落としていた膝から崩れるように地面に倒れ込んだ。
(ああ、これから先一体何が起こるんだろうか)
目を閉じると暗黒の世界が広がる──その暗闇に身を任せると一気に引き込まれるように僕の意識は奈落の底へ落ちていった。
*
「ここは? どこだ」
あれからどのくらい時間が経ったんだろう? 僕は目を覚まして暗闇の中で頭を動かして状況を確認した。
「ん? これ、手を縛られてるのか」
両手はきつめに縛ってある、僕は床に座らせられていて自分では立ち上がるのも難しい状況だった。まずここがどこなのか知る必要がある。唯一自由に動かせる頭を左右に振って確認する。
「ここってもしかしてー」
そうだ、僕はこの場所に身に覚えがある、間違っていないのならおそらくは──
「やっと起きたんだ」
闇の中から聞こえる声に耳を傾ける。声の主は僕に近づいて来ると何か長方形の物体をパキリと折って床に投げ捨てた。
「これ。僕の携帯じゃないか! ねえ咲希ちゃんいるんだろう? 何でこんなことするんだよ!」
声を荒げて暗闇に呼びかけたけれど返事はない、次の瞬間彼女は僕の目の前に姿を表す。
「もう絶対に逃げられないから。前は腕を解いてあげたのが悪かったかなぁ、これでもう身動きすらできなくなるはず」
僕を見下ろしてそう言うと逃げないようにとさらにキツく縛り上げる。床に寝せられて抵抗もできない相手に彼女は何をするつもりなんだろうか?
恐怖で冷や汗をかく僕のことを気にもせずに破壊した携帯の残骸を回収する。
「逃げようにとしても誰かに連絡しようとしても無駄だからね。雅也君は何もできないんだから」
声のトーンは普段と変わらないはずなのにそんな彼女の様子に恐怖感を覚える。
「あんなにエッチしたのにどうして逃げちゃうのかな? 私たちの体の相性は抜群のはずなのに」
頬に手で触れるとそのまま思いっきり引っ張られた、ジンジンとした痛みを感じながら抵抗しようと頭を動かす。
「ダーメ。大人しくしなさい。じゃないともっと酷い目にあうかも」
耳元で囁くように言うと彼女は僕をベッドまで連れて行った。
「この間は途中で終わっちゃったしまた続きでもしよっか」
そう言って服を脱ぎ出す。僕は思わず目を閉じてしまった、それからベッドに倒されて押さえつけられる。
彼女はズボンのベルトを緩めると何の躊躇いもなくズボンをずり下げた、下着姿になった僕あ足をバタバタと動かして抜け出そうとするけど体を乗せて妨害される。
それから一呼吸おかずにパンツを脱がす──露わになる自分の性器はまだ小さくふにゃふにゃのままだ。
この状況で経つほど変態じゃないし第一にこんな事が許されるわけがない。
僕は咲希ちゃんのことを出来る限り意識しないように振る舞う、そんな様子が面白くないのか彼女は不満げな表情を覗かせてまずはブラジャーを外す。
ぷるんと曝け出された大きな胸は重力で垂れ下がりちょうど僕の顔の前で止まる。なんとか視線を逸らして見ないようにしてたのがわかったのか彼女はそのまま胸を押し付ける。
息ができないほど苦しい……。柔らかいものが押し付けられているはずなのに呼吸するのもままならない。
ツンと立った乳首が唇に触れる──おそらく咲希ちゃんは意識してそれをやったいる、口を開けたらそのまま乳首に吸い付いてしまいそうだ。
鼻で息をしながら理性を保とうとする。
なかなか僕が自分を求めてくれないことに痺れを切らせてもっと積極的に行動する、押し付けられたおっぱいの感触と触れ合う彼女の肌の温もり、前はそれに負けてしまったけれど、今は違う、限界を迎えても耐え切る自信はある。
鼻で呼吸する僕の様子を見ると胸を離して今度は顔を近づける──見つめ合う形で向きある僕ら咲希ちゃんの丸い瞳は僕を捉えている顔を横に流して見ないようにすると首を押さえつけられて無理やり自分の方へ顔を向けさせる。
唇に指を当てると顔を埋める──無理やりに口を塞がれる、彼女も鼻で息をする、貪るように啄むとピチャピチャとした音が響く。
こんな形でキスをされるのは正直好きじゃない……。それに相手は好きな子でもない。
心のどこかで咲希ちゃんと恋人になりたいと思ってた、けれどそれは昔のこと、今の僕にもう一度彼女に対して好意を持つことなんてないのだから。
身動き取れない僕の体を好きにしていく、例え意識していなくとも人間の体というのは不思議なものだ
さっきまで全く反応を見せていなかった自分の股間はムクムクと大きくなり始めた、感情を抑え込んでいるはずなのに男性器は外からの刺激を受け入れる。
僕に出来る最低限の抵抗といえば目を閉じて彼女の裸を見ないことだ。
そしてそれを実行に移す──目を閉じて視線を遮る、その間彼女は勃起したチンポに跨ると激しい声を上げた。生暖かい感触を覚えたけど僕はそれに抗う様にひたすら早くこんな事が終わってくれと願った。
脳裏に浮かぶ湊ちゃんの顔、罪悪感で押し潰されそうになる、快楽に負けてしまってはいけない、自分にそう言い聞かせて目を閉じ必死に我慢した。
それから数時間が経った、もう何発射精したかも分からない。咲希ちゃんは息を乱しながらも腰を上下に動かしてチンポを奥まではめる。
数発で萎えるどころか突き上げる度に先端は膨らみ彼女の膣内を刺激する、逆に咲希ちゃんの方が限界を迎え到底耐えられない様子だった。
目を閉じていても聞こえて来る彼女の喘ぎ声がその状況を理解させる。
バックからしてほしいらしいが前みたいに僕に逃げられる可能性があると察したのか彼女は体位を騎乗位から変えることはない。
部屋中に充満する卑猥な臭いに僕は思わず顔をしかめる、自分で動くことはせずに彼女にされるがまま、まるで調教でも受けている気分だ。
こういうシチュエーションは大概男女の立場が逆なパターンが多い、まあ、僕にはそんな趣味はないが──
咲希ちゃんの体なしでは生きていけないようにされてしまうのか? いいや、そんな事はありえない。彼女はただ、己の性欲を満たすためにやっているだけだからそこまでは考えていないと思う。
時間は経ち、ヘナヘナと体を前に倒し込み絶頂する咲希ちゃん、胸の感触が肌に伝わる、理性が崩壊するまで一本の綱の上を慎重に渡っている状況だ、彼女は拘束され抵抗できない相手を一方的に自分のものにしようとしている。
僕が調教される時間は日付が変わるまで続けられるのだった。