穏やかな寝顔で寝息を立てている彼の横で私は微笑む。一緒のベッドで寝るなんてとっても恥ずかしい事だけど恋人になってから今まで大変な事が多かった。
雅也さん自身が咲希さんとの関係に悩んでいてこれから先も彼はきっと辛い思いをしつづけるんだろうな。
私が出来ることは少しでも長く彼のそばにいること──私たちの間に下手な言葉はいらないんです。お互いが想い合っているからこそ絆を深められて、相手を愛おしく感じるものなんです。
ここに来るまでに恋愛で辛い経験をしたから彼だからこそ私の気持ちを蔑ろにしない。そう思いたいけど……。
咲希さんのマンションで彼をみた時、酷く憔悴していた。あそこで何が合ったのか想像するだけでも吐き気が込み上がって来る……。
雅也さんが他の女の人と肉体関係を結んだ、もちろん彼の方から望んでいたわけじゃないんだろうけど、一度快楽を知ってしまったらその依存からは抜け出せない。
あの時の咲希さんが私に向けていつた言葉が頭から離れない、彼は何も悪くないはずなのに疑ってしまう。
私って嫌な子……。自分のそんな一面にうんざりする、表向きでは雅也さんに「大丈夫」だと声をかけながら本心では彼の事を信頼していない。
恋人になるのって難しいことだと思う……。相手の全てを肯定する関係だけじゃ上手くいかない、嫌な一面どうしても受け付けない面だってある。それをどういう風に感じるかによるんじゃないかな?
好きで一緒になっても別れることだってある、みんなそれぞれがそんな経験をしながら恋愛をしていく、私はまだ初めてだからこれか先にどんな事が起こるのかも予測できない。
けれど、雅也さんはしっかりと応えてくれた、その気持ちを私が無視しちゃいけない気がする、咲希さんとのことだってきっと──
彼女から告白されても私を選んでくれたのが彼の本当の想い。辛くて息苦しいできごとにも向き合っていかなきゃね。少しでも幸せに近づく為に。
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夢を見るなんていうのはここ最近ではなかった。ていうか見ていても内容を覚えていないだけかもしれない……。
目を閉じると現実と夢の世界との狭間を僕の魂はゆらゆらと揺らめいていた。
この感じは覚えている。いつも明晰夢の原理を利用して夢だと認識しながら自分の好きな様に展開を変える事ができる。
空っぽな僕の頭の中に流れ込んでくる風景はいつかプレイしたゲームの中に登場した景色だ。
たまにこういう風に夢の中に逃げ込む事がある、そういう時は大概心が耐えがたい苦痛に見舞われた場合で子どもの頃からよく起こっていることでもあった。
この原理を使ったときに見た夢は大抵僕が都合よく変えたもので精神的に辛い場面から逃避する為の防衛手段の一つでもある。
もちろんこんなことは今まで誰にも話したことはないし、ストレスを感じて生きているから誰にだってあるんじゃないかと思う。
このまま現実世界に戻らなかったらどうなるんだろう? なんていうのは子どもの頃から何度も考えた。永遠に目を瞑ったまま起きることがなく、生きているのかもわからない状態。
そう望んだ時もあったけれど、結局は現実に戻ってしまう……。
失恋してから咲希ちゃんと恋人同士になった夢を見る機会が増えた、いつまでの彼女に対して未練があったんだろう。それは心の奥底で僕が望んでいた事が夢として浮かんだんだろう。
湊ちゃんと付き合う様になってからはそんな夢は見ない様になった。
大切な人とこれから先どういうふうに向き合っていくのか考えないといけない、咲希ちゃんと肉体関係を結んだせいで心身共にすっかり疲れ果てていた、一度でも彼女を求めてしまった罪悪感に押しつぶされないになる。
湊ちゃんとどんな顔して逢えば良いんだ? こんな最低な自分を許してくれるのだろうか? 頭の中で何度考えても答えはなかなか見つかりそうにない。
現実と夢の世界との間を彷徨っている<精神>は深い奈落の底に落ちる。優しい手の感触を感じながらもう一度眠りにつくのだった。