久我山さんと会った僕は彼女の言葉が頭の中に残っていた。
咲希ちゃんは僕を諦めていない、この間みたいなことが今度僕の身に起こるのか? と嫌な予感がする。
初めて会った咲希ちゃんの友人は随分綺麗な子だった、初対面の人とあまり積極的に話すタイプじゃ無いのにどうしてか僕は彼女と会話を続けてしまった。久我山さんはまるでドラマの中で役を演じている女優の様な雰囲気を醸し出していた。
どうしたら咲希ちゃんが僕を諦めてくれるのか彼女に相談しようにもあの子は咲希ちゃんの「恋」を応援すると言ってた。
僕と湊ちゃんの恋愛を祝福してくれる人はほんの数人程度、友人の義之君はもちろんそうだけど、僕の家族それに篠宮家の人たち──
──あの暖かくて優しい家族の一員になれるかと考えると今からすごく楽しみでもある。
何で恋愛をするのにこんなにも苦労するんだ……。片思いをしてたあの頃を思い返すと今では信じられないくらいだ。
僕に恋人ができて幸せを実感できる日々が訪れるなんて。十年来の想いが報われることはなかったけれども、それ以上に大切な人ができた。やっとまた好きになれる女の子と出会えたんだな。
ゆっくりとだけど僕たちはお互いの時間を共有していく。最初は会社の後輩だった相手が今では僕の恋人、そんなゲームみたいな出来事に幸福感を抱いて細やかな日常を謳歌している。
湊ちゃんと過ごす時間はいつだって僕にワクワク感と充実感で満たしてくれる。
最近だとLINEを使って連絡取ることも多くて彼女は可愛いスタンプとかを何種類も持っている。スマホに変えてから生活がガラリと変化したし、やっぱり最新のものに触れる機会は貴重だなって思う。
僕らが付き合い始めたと言うことはごく一部の人にしか伝えていない。そもそもそう言うことをペラペラと周りに話すのは好きじゃない。
付き合ってから結婚まで長い時間はかけたくはないけど勝利のことはしっかりと考えて二人で話をしてから決めていこうと思ってる。
*
咲希が片思いしている相手と話をして抱いていた印象が変わった。あたしが想像していた以上に彼は面白いひとだった。
こう見えても大学時代は舞台に立つことが多くて女優として色んな役を経験した。あたしが咲希と付き合っているのはあの子の友達だって言うのもあるけど興味深い人間だと感じたから。
咲希を観察してると演技に幅が出るだろうし、なによりあの子は今の境遇はなんだかドラマのワンシーンのみたいに見える。
新堂君の前じゃ猫をかぶって振る舞ったおかげでどう言う人間なのかをじっくりと知ることできた。
仲の良い友達として咲希との関係は続けているけどあの子はあたしの本心は知らないだろうしそれを知ったところで大した問題じゃない。
三角関係をテーマにした舞台が作れそうな気もするし、情報の収集はやっておくべきだと思う。
咲希の事はもう色々と知っているから次は渦中の人物二人と接触してみようかな。
新堂君の恋人の情報は持っていないけど彼と仲を深めれば自然と聞き出せる状況になるかもしれない。この舞台は脚本から演出の細部に至るまで拘りたい。
だけど、問題は役を演じることができる適切な人がいればの話だけどね。
まあ、誰もいない時はあたしが一人二役すればいいか。
自分がモデルになっているってあのこが知った時にどういう反応をするのか興味はある、例えそれであたし達の関係が悪くなったとしても気にしない。
初めて咲希と会った時から彼女を演じる為に今まで影で努力してきた、あの子からしたらあたしは気遣い無く接することのできる友人なんだろうね。
大学時代は四年間観察してたけど、面白いと思えるような出来事は何も起きなかったけど、まさか今になってこんな風になるなんてね。
……舞台に上でのあたしは【浅倉咲希】そして、もしかしたらもう一人を演じる事になるかもしれないけれど。
この舞台が必ず成功させてみせる。上映したらヒットは間違いないと思う。
もっと彼と彼女の情報を入手しなくちゃね。近いうちに新堂君とはもう一度会うことになりそう。
いざとなれば──まぁ、それは今後の展開次第ね。
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恋人になってからの日々は内気な私を少しずつだけど変えてくれました。
あの人の側にいたいと強く願い片時でも離れたくないと思うようになりました。
私の家族は私たちが結婚するんじゃないかと期待してるけれどそれはまだ先になりそうです。
雅也さんがどう言う風に考えているのか、私も結婚へ向けて理想を語ったりしてお互いの認識を高めています。
ウェディングドレスを着たくないなんて言うのは本心じゃないけれど、細やかな結婚式でも良いなぁと思っています。
式をあげなくても夫婦でいる人は存在するだろうし……。
ここまで育ててくれた両親に感謝の気持ちを込めて結婚式をやりたいと思うのは女の子なら誰だって感じるんじゃないかな?
彼がどこまで真剣に考えてくれているのか気にはなるけど私から急かすような真似はしたくない。
だってあの人はようやく掴んだ小さな幸せを継続させる為に毎日頑張っているんだもん。それは同じ場所で見てきた私だからこそわかること。
今はとっても幸せ、この穏やかな日常がこれからもずっと続いていけば良いなと感じる、二人で並んで歩いていこう。雅也さんとならきっと大丈夫だよね。
そんな風に思いながら。彼との将来に想いを馳せるのでした。
明日奈の目的を知らない咲希は雅也との事を相談しようと考えていた。
今まで仲良くしてきた友人の本当の姿それを彼女が知ることになるのはもう少し後の話。最終部へ向けて加速する演奏はより情熱を帯びていく。
新しい季節を迎えるうちに変化していく毎日の中で三人はそれぞれの想いを秘めて先の未来を想像する。
そして時折導入される別視点で進められる物語が本編とクロスしてより一層に複雑になる、二度目の「恋」は狂気と波乱に包まれて着実に進行していくのだった。
それはまだ見果てぬ夢の続き──