ようやくひと段落ついた、思い起こせばこんなに解決までに時間がかかるものなんて思わなかったな。隣を歩いている湊ちゃんに視線を向けると彼女は立つどまる。
「やっと終わったね、これで穏やかな日を過ごせそうだよ」
「そうですね。雅也さんすごく疲れた顔してますよ」
「そうかなあ、普段はそういうのは顔に出さないようにしてたつもりなんだけどね、やっぱり湊ちゃんにはわかっちゃうか」
手で顔をゴシゴシと擦り気持ちをリセットした、恋人がいるのにこんな顔を見せるべきじゃない。これで久我山さんとの関係も終わりだ、そしてもう
これから僕がやるべきことは見えている──湊ちゃんとの時間を大切にすることだ。
「今度の休み空いてる? デートしようか、僕の買い物に付き合って欲しい。それからこの間湊ちゃんが行きたいと言ってたコーヒーショップに行こう。そして次は例の水族館に夏帆ちゃんも連れてまた行こうよ」
「そうですね、夏帆も喜ぶと思います。チケット買わなくちゃいけませんね」
「次は大丈夫だよ。湊ちゃんの家族とはこれから先もずっと付き合うことになるんだからね、だから僕は少しでも長い間君と一緒にいたい」
「あのさ、聞いて欲しいことがあるんだけど良いかな?」
二人の間に流れる風は静かな空気を運んでくる──雅也はあの日の想いをもう一度甦らせながら湊をある場所へ連れて行った。
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「どこへ行くんですか?」
「とっておきの場所」
僕は彼女の手を引いてとあるビルの中に入る。
「今日予約したものですが、新堂と言います」
「新堂様、ですね、こちらへどうぞ」
頭に? マークを浮かべる湊ちゃんの手を引いて僕らはとっびきりおしゃれな雰囲気のレストランの席に座る。
こういうところに来るのは初めてだから緊張する……。
「さ、座って。まずは何か食べようか?」
メニューに書いてある料理はどれも聞いたことがないものだかりだ、ここへ来る前にネットでおすすめのコースを調べておいた。僕はボーイさんを呼んで二人分のコース料理を注文する。
「今日の事が片付いたら伝えるつもりだったんだ」
湊ちゃんは僕の言葉を真剣に聞いてくれる、メロウな音楽が流れている店内はとてもいい感じの雰囲気だった。
(よしっと!)
僕は気持ちを切り替えて今日のために準備しておいたプレゼントを取り出した。
「これ、湊ちゃんに」
「私にですか? 何だろう」
不思議そうな顔する彼女はラッピングされた髪を剥がしていく。
「小さな箱? 何が入ってるのんだろう?」
「開けてみて」
僕がそういうとゆっくりと箱をあける──
「──これって指輪……ですか」
「それだけじゃないんだよ。実はこれも渡そうと思っておいたんだ」
僕は以前訪れた事があるアクセサリーショップで綺麗なネックレスを買っておいた、昔、咲希ちゃんに上げたやつとは意味合いが違っている。
ネックレスを受け取り指輪の箱をじっとみている湊ちゃんに僕は言葉を送る。
「篠宮湊さん」
「はい!」
急に名前を呼ばれて背筋を伸ばす湊ちゃん──その真面目さに僕は微笑んで彼女を見つめて今まで何度も練習してきた言葉を送る。
「僕と、結婚してもらえますか?」
「えっ……?」
突然の事に情報が整理できていないのか湊ちゃんは固まってしまう。数秒間二人の間に沈黙が流れる。もしも断れたらどうしよう? なんて言う不安な気持ちがないと言えば嘘になる。
僕は彼女が喋るまで何も言わないでおいた、すると湊ちゃんの目から涙がぽたぽたと落ちる。
「ごめん。泣かせるつもりはなかったんだ。大丈夫」
あたふたしながら席を立とうとすると──
「大丈夫です。これは嬉しくて泣いているんです。だって私は雅也さんのことがずっと好きで恋人になれて満足してました、だけど、将来の事とか真剣に考えてるうちに不安に思うこともあったんです。私に幸せな家庭を作れるのかなって」
今まで感じていたこと、心の奥底にある気持ちを吐露する。湊ちゃんはいつでも自分の気持ちよりも他の人を優先してきた、そんな彼女がこうして本心をぶちまけてくれたのは某らの関係が進展したっていうことなんだろう。
「私、こんなに幸せで良いのかな? 初恋が叶う可能性って天文学的な数字だって聞いたことがあります。私にとって雅也さんと出会えたこと、そしてあなたと恋人になれたのはそんな数字では計りきれない奇跡だと思う」
「もう一度『恋』をしても良いと思えた。そのきっかけをくれたのが湊ちゃんだった。昔の初恋の辛い記憶をいつまでも引きずって前に進めなかった、そんな僕を変えてくれたのが君なんだ」
僕は湊ちゃんの手を握って指輪を嵌めてあげた。綺麗輝く宝石はその混じり気ない美しさで僕の恋人を飾っている。
「ありがとう。私、雅也さんに出会えて本当に良かったと思います。私にたくさんの愛をくれて本当に感謝しています」
僕らは見つめ合う──今度は彼女のこの真っ直ぐな瞳から目を逸らさなようにしよう。
「……さっきのプロポーズの返事しますね。これからもよろしくお願いします」
「恋」なんてできないとずっと思っていた。十年前のあの日から僕は自分が誰かと幸せになるって言うのを諦めていたのかもしれない。
だけど、今は違う、目の前にいる彼女と共に未来を作っていくんだ。
今までいつまでも心に残っていた記憶とさよならできる。
(湊ちゃん、本当にありがとう。何度感謝してもしきれない、君に出会えたことが僕の奇跡だ)
ゆったりと流れる時間を共有しながらこれから先思い描く二人の未来に祝福をあげた。