※この作品はR-18です。

初恋と忘れられない想い   作:南雲悠介

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湊との結婚式を控えている雅也は恋人との時間を増やしていく
将来に希望を抱きながらいつもと変わらない道を歩く。
繋がれた手を優しく握り返しながらささやかなに過ぎていく日常。
二人の未来は眩しい程に明るく照らされる。
今年もまたあの日のように冬がやってくるのだった。


Finale

「それじゃあ行こうか」

 

「うん。そう言えばもう少しで雅也さんの誕生日だね。今年も一緒にお祝いしようね」

 

「そうだね。誕生日をちゃんと祝ってもらえるのなんて子どもの時までと思っていたけれど、今は違う。湊ちゃんがいてくれるし、何よりも毎日が楽しいと感じてるよ」

 

 恋人と共に家を出て駅までの道を歩く──もうすぐ僕は誕生日を迎える。歳をとるなんて大人になってからは億劫で日に日に老けていくのを感じると子どもの頃は毎日成長する自分の姿にワクワクとしたのを思い出す。

 

 冬を迎える度にあの日の事が鮮明に蘇る。駅であの子と<再会>した事、僕の初恋の人で小学生の時の同級生、彼女を好きになって誰かを想う気持ちの辛さや片思いのもどかしさを知るきっかけになった。

 東京は僕が来てからも毎日変わらない。朝の満員電車に仕事へ急ぐ人たちの慌ただしさ、そんな風景にいつのまにか馴染んでしまい、当たり前のように感じる。

 

 もうじき結婚式を迎える僕らはお互いに過ごす時間がかけがえのないものだと共通の認識を持つようになる。

 

 式の会場選びから招待状の制作まで二人で共同作業で頑張った。一緒になってからは夫婦二人で暮らす準備を進めていて新居にはちょっとずつだけれども家具や荷物が揃い出している。

 決して広いとは言えないマンションの部屋を借りて暮らし始める。将来子どもができたらもっとちゃんとした物件に引っ越さなきゃいけないな。

 まだまだ先のことだろうけどそう遠くない未来──自分が結婚をできるなんて思わなかった、こんな自分でも好きでいてくれる子がいる。それが最高に嬉しい。

 幸せな時間が長く続けていけるように頑張らないといけないな。東京で迎える何度目かの冬、今年は例年とは違った年になりそうだ。

 少しずつだけれど未来に向かっている──これから先の人生に色々な困難が待っているかもしれないけどきっと悪い事ばかりじゃないだろう。

 むしろ真逆で湊ちゃんと暮らせることに子どもの頃みたいなワクワクとした昂揚感を覚えている。

 いつ頃からだっただろうか? そう言う感情を無くしてしまったのは。大人になると日々の生活がルーチンワークみたいに進んでいって気がついたらそれが当たり前に感じて、新鮮味に欠ける。

 

 時間が過ぎるのが早く感じるのだって子どもの時は毎日色んな発見があってその日その日を楽しんでいてきた。成長するにつれてそういった気持ちが薄れていってしまう。

 

 

 **

 

「雅也さん。今日はね今までずっと伝えたかった私の気持ちを言うね」

 

「こんな私を好きでいてくれてありがとう。運命の出逢いってファンタジーの世界だけのものだと思ってた、けれど、あなたと会えなかった自分を想像するとね、毎日代わり映えのない生活を送っていたと思う。それが幸せなら良いんだけど雅也さんとお付き合いするようになってからこんなにも恵まれているんだなって感じたことはありませんでした」

 

「私はね、こうやってあなたの側にいられて本当に嬉しいの、気持ちが昂っているの、こんなにも好きになれる人と出逢ってそれから同じ時間を共有する、二人で人生を歩き始めてたったそれだけのことだけど一番の幸せに感じるんだ」

 

 彼女の言葉を聞いて僕はスッと手を繋いだ──ギュッと繋がれた手、この手を離しちゃいけない。初めて「恋」をした季節、あの頃の気持ちをもう一回思い出してみよう。隣で微笑んでいる僕の彼女、そんな笑顔につられて自然と笑みが溢れた。

 冬の空の下、肩を寄せ合って歩く──今日の予定を話しながら電車に乗る、周りの風景は何一つ変わらないはずなのにな。

 

「……?」

 

「どうしたの?」

 

「いいや、何でもない。多分気のせいだと思うから」

 

 一瞬だけあの子とすれ違った気がした──僕の初恋の人、あれから彼女とは会っていない。義之君も気を遣っているのか咲希ちゃんの話題は出さないようにしているし、事実、僕自身もつい今さっきまで忘れていた。

 あの子と恋人になってたら違った未来があったんだろうなあ。けれども、それは僕にはもう縁の無い話だ、今は湊ちゃんが僕の彼女なのだから。

 

 もしも、あの時の告白が上手くいっていたら──なんていうのを考えるのはもう辞めたんだ、いつまでも初恋の苦い記憶を引きずってちゃいけない、僕には湊ちゃんとの未来があるのだから。彼女の為に生きていこうと決めたから。

 

 

 一瞬通り過ぎた影は立ち止まる──それは気のせいではない。たまたまではあるのだが、咲希とすれ違った。咲希は今でも雅也への想いを捨てきれないでいる、今度中学の同窓会があるらしいのだけど、参加を渋っていた、その場で雅也と“再会”した時の気まずさでいたたまれなくなるからだ。

 雅也とは違い咲希は過去を振り返っていた。時が巻き戻せるのならやり直したい、あの時の彼からの告白の返事に応えていたのなら、悔やんでも悔やみきれない、幸せになるチャンスを逃してしまった。

 

 雅也の隣にいて笑い合う時間、もしかしたらあの場所に自分がいたかもしれないなんて考えると泣けてくる……。自分自身の想いはあの頃とは変わったはずなのに周りは変化すらない、ふと目に入る看板に映る女優は明日奈が演じているものだった、彼らの「恋愛劇」をモデルした舞台は最後の役のイメージが決まらずに別のものにすり替わったと聞いている。

 明日奈はその舞台で成功を収めたのだが、彼女自身は納得してはいなかった。咲希との友情関係は破綻してしまいこれから先、彼女を満足させるようなイベントが起こりそうにない。

 

 咲希と雅也はそれぞれが違う道へ進んでいく。お互いが干渉する事が無い時間軸で月日は流れる。

 そしてもう何度目かの一月十日を迎えた──咲希と雅也が“再会”した駅のホームでは今日もたくさんの人たちが電車を待っていた。あの時落としたハンカチを身につけて過ぎ去る日々を感じながら「初恋」の忘れることができない想いを抱いたままの咲希は電車を待つのでした。




今までこの作品を読んで頂きありがとうございました!
皆さんのおかげで連載から二年あまり、遂に最終回を迎える事ができました。
連載開始当初、最後まで物語を描き続けられるのかという気持ちもあった反面自分のペースで投稿して、更新するたびに少しずつではありますが充実感を覚えました。

長編小説かと言えば微妙な話数になるかもしれないですが、それでもストーリーを完結させた自分を褒めてあげようと思う。

感想を書いてくれた方、お気に入りに登録してくれた人、色んな人に支えられてやり遂げることができ、本当に感謝の気持ちで一杯です。

この作品は完結しますが、別の作品でまた皆さんと出会えるのを楽しみにしています。

それではまたお会いしましょう!
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