胎間忍 作:内府
本丸の館の裏手で人目につきにくい場所にアサギとユキカゼがいた。ユキカゼの振る舞いについて先刻からアサギが叱っている。
アサギ「ユキカゼ、いつも言っているでしょう。貴方はもう少し考えて行動しなさいと、忘れたのですか?」
ユキカゼ「いえ、師匠。師匠の教えを忘れた訳ではありませんが…」
ユキカゼの声が徐々に涙ぐんできている。
ユキカゼは忍法や体術などの技量が抜群で天才的といえることは自分だけでなく周りも認めるところであったが、その性格が災いしているのか軽率な失敗が目立つ。天才少女としてのプライドと簡単な失敗ばかりしてしまう自分の情け無さが入り混じりどうしていいのか分からず、涙が零れてしまった。
ユキカゼ「うっうっグスン…」
泣き出してしまったユキカゼを見てアサギはやりすぎてしまったと思った。
アサギは自分の胸にユキカゼを抱き寄せ小さな子供が泣いたのをあやすように声をかけつつ頭を撫でた。
実は、ユキカゼには母親がいない。
ユキカゼの母親は不知火といって里長の候補に選ばれる程のくノ一であったが、ユキカゼが幼い頃に任務に行ったきり帰ってこなかった。
そんな幼いユキカゼの面倒を見ていたのは、当時凜子を最初の弟子にしていた若き日のアサギであった。ユキカゼにとってはアサギは師であると同時に母親でもあった。
ユキカゼは母親にかまって欲しいと思い知らず知らずの内にアサギの目を引こうとどこか子供じみた行動の結果として失敗を繰り返していた。
アサギはユキカゼに頬ずりをしたり優しく励ましの声をかけ、もう大丈夫かと尋ねた。
ユキカゼはアサギの胸に顔を埋めたまま首を横に振り、もう少しだけと答えた。
アサギはこの甘えん坊めと思いながらもそのままユキカゼと抱擁を続ける自分の甘さに苦笑した。
この少し前、凜子は赤尾を追いかけようとするサクラを何とか引き止め、館の裏手の人目につかない所へ移動した。このまま城の中を歩き回れば余計ないざこざが起き、それは回避しなければならないと思ってのことであった。
サクラ「あっ見てみて、凜子」
サクラが指さす方向にはアサギをユキカゼが抱擁をしている。
その光景をしばらく見ていたサクラはあまりにも長く抱き合っている二人に妬けたのか突如としてアサギの背中に抱きついた。
アサギはいきなり背中から抱きつかれたことに驚いたが、すぐにサクラであることに気がつくとしょうがないといった様子でそのままにした。
凜子がその様子を眺めているとアサギがこっそりと手招きをしているのが見えた。
凜子は自分でも気づかぬ内にアサギに抱かれたいと顔に出してしまい、それをアサギに見られたようであった。
アサギは自分の手招きに応じ照れくさそうに近づいてきた凜子の首にそっと手を回し、凜子とユキカゼの顔を自分の胸に優しく埋めるようにした。
アサギ達4人は熱く抱き合っている。
その様子をムラサキは見てしまった。
響子に対する感情と依頼への使命感との狭間で揺れていたムラサキはこの光景を目にしたことにより思わず叫びたくなった。
アサギがユキカゼ達を抱いている様子は、アサギの母性を際立たせアサギをより尊いものにしていた。
ムラサキはこの光景を見ることができたことに感謝する一方で、自分もアサギに抱きつきたいと思い絶頂に達し股から一筋の液が垂れた。
ムラサキのアサギに対する感情で頭が一杯になり、響子に対する感情が抑えられたことにより響子を前にしても理性を保てるようになった。