胎間忍 作:内府
アサギ達が熱い抱擁をしている同じ頃近江国内織田軍本陣、総大将信長が母衣衆から報告を受けていた。
信長「であるか。」
報告によると小谷城に木下隊が単独で攻略を仕掛けているとのことであった。近習の者から急ぎ援軍を送るべしとの意見もあった。
信長「不要だ。下がってよい。」
信長は仇敵の浅井家討伐より配下の木下藤吉郎秀吉を気にかけその成長を優先した。
信長は仮にあのはげネズミが小谷城を落としたならば浅井の旧領を与え大名に取り立ててもよいと考えていた。
ユキカゼはアサギに慰められ忍びとしての自信を取り戻し泣くのやめた。
そして、いつのまにか自分の他にサクラと凜子がアサギに抱きついているのに気がつくと途端に恥ずかしさが込み上げてきてアサギから飛び退いてしまう。
アサギ「もう、大丈夫そうね。」
ユキカゼの様子を見たアサギが尋ねる。
サクラはユキカゼが今までの抱擁を見られていたことに対して恥ずかしいと思い顔を赤らめて、何も言えない様子をにやにやと笑いながら見て可愛い奴と思った。
凜子は、この抱擁が終わってしまったことを名残惜しく思いつつも自分の妹弟子が元気になったことを喜んだ。
その様子を一人だけ離れて見ていたムラサキは自分がアサギ達の輪の中に入りそびれたことに激しく後悔していた。
ムラサキはアンラッキースケベ体質ともいえる運命なのか、本命のアサギに甘える機会を逃したりアサギの痴態を見る機会を逃したりと、運がなかった。それ故か、普段からアサギに何もはばかることなく甘えるサクラに嫉妬してしまい、何かとつっかかるような態度をとっている。
しかし、元々ムラサキの性格は厳しさの中にも優しさがあり凜子達後輩を立派なくノ一にしようと努め、実母のいないユキカゼのことも強く案じている本当にいい娘である。ただ、サクラに対しては同い年で実力も拮抗しておりアサギとの仲に嫉妬して仲良くしたいと思ってもそれができずにいる。
ムラサキが自分達を見ている事に気が付いたアサギはこちらに来るように声をかけた。
凜子達は自分達の厳しい先輩が現れたことから先ほどのように甘えたところは見せられないと、姿勢を正している。
アサギ「何かあったの?」
ムラサキは響子とあのまま一緒にいては理性が保てず襲ってしまいそうだから抜け出してきたとは言えず、回答に窮している。
そんなムラサキを見てアサギは側室の件で何か問題でも起こったのかと心配し響子に自分も顔を見せそれを解決しようとした。
このまま響子とアサギが面会し万に一つの確率で自分が二人の容姿が似ているので興奮してしまったことに気づかれたくないムラサキは咄嗟に話を変えた。
ムラサキ「先ほど、側室の方に挨拶を終えた後この城の中を見て回りました。この小谷城はかなり守りやすく攻めにくい城ですが、しばらくの間滞在し何度か長政様と夜伽をされますか?」
凜子「たしかにこの城は山の上に作られていて国友が近いことから鉄砲もたくさんありましたね。」
サクラ「そうだねー、この城を守っているお侍さんも皆相手に一矢報いるためにやる気にあふれていたね。」
ユキカゼは中途半端な自分の知識ではアサギの判断を乱してしまうと思い黙って自分の師匠の言葉を待った。
アサギ「いえ、すぐにこの城から離れましょう。」
ムラサキ「理由を教えていただけますか?」
アサギ「簡単よ、敵があの織田家よ。」
アサギの答えを聞き、4人は皆アサギの意見に賛成した。
織田家は元々尾張国の大名であったが将軍を奉じて上洛してから短期間で勢力を拡大している。
その強大さも恐ろしいがそれよりも比叡山延暦寺の焼き討ちのように敵に対して容赦しないことも恐ろしかった。
5人はすぐに脱出できる用意を調えると夜に向けての準備をした。
水で身を清め、髪を結い、紅をさし、里に伝わる催淫効果のある香木を焚き、同じく里の秘伝の媚薬を用意した。
ムラサキは4人より早くに響子のいる館の奥に移動した。
4人はそのまま日が暮れるのを待った。