胎間忍 作:内府
織田と浅井の両軍の間に緊張が高まる。
両軍の大将が会談を行うと言われ戦闘が一時的に停止した。
この、緊張はいつ相手が攻撃してくるか分からず一歩間違えば自分達の大将が討たれる可能性もあり動くに動けない状況で正面の敵に集中していた。
アサギ達はこの隙を見逃さず織田軍の視線の外で音も無く包囲網をすり抜けていく。
アサギ達は一人一人が高い技術持った忍びで単独でしかも別の相手に集中している兵の包囲網を突破することなど容易かった。
事前に決めていた、集合場所にアサギ達4人はほぼ同時に集まりやや遅れてムラサキがやってきた。
ムラサキ「ハァハァ…申し訳ありません。遅れてしまいました。」
ムラサキの顔は青く、響子の子を移したことにより響子の悪阻までもらってしまった。
アサギ「気にしないで、問題ないから。」
そう言うとアサギはムラサキをサクラ達3人から見えないように木の陰に連れ込みムラサキの背をさすってやった。
ムラサキは今まで我慢していたのが限界を超えてついに嘔吐してしまった。
ムラサキは自分の思い人であるアサギに嘔吐しているところを見られる恥ずかしさと自分の背をさすっている嬉しさの二つの感情がせめぎ合っていた。
ムラサキ「ウップ……もう大丈夫です、アサギ様。ありがとうございました。」
アサギは、未だ青い顔のムラサキを心配そうに見つめた。
アサギ「そう、ならいいのだけれど。」
アサギはムラサキが自分達に心配をかけまいと無理をしているのが分かった。
ムラサキをこのままにしておくことはできず背負っていた忍び刀を腰に差し、アサギは彼女をおぶった。
ムラサキ「なっ!おやめ下さい、アサギ様。」
アサギ「無理はしないで。それに軽いもんだわ。ややのためにはもう少しごはんを食べなさい。」
アサギに背負われたムラサキは恥ずかしさに頬を赤らめた。
木の陰からアサギとムラサキが出てくる。
ユキカゼはアサギに背負われている、ムラサキを羨ましがった。
自分もアサギに背負われて甘えたいと思ったが、ユキカゼは任務に集中することにした。
サクラはユキカゼが何か言うのかと思ったが、何も言わず任務に集中しているユキカゼを見て姉の弟子の成長を喜んだ。
ムラサキの体調とアサギの負担を凜子は心配し、何か起こった場合は自分が師匠の盾になると改めて誓った。
山の頂上が騒がしい。
アサギ達は頂上で何かが起こって間もなく戦闘が始まることを察した。
この時頂上では長政がお市を突き飛ばしていた。
凜子「師匠、そろそろ出立しましょう。殿は私がするのでお先にお行き下さい。」
アサギは凜子より腕の立つサクラを殿にと考えていたが、凜子の強い意志を秘めた瞳から説得を諦めた。
アサギ「サクラは先頭で斥候、ユキカゼは私の援護、凜子は殿をして。」
アサギが指示を出すと、彼女達は隊形を整えすぐさまこの場を離れた。
アサギ達がこの場を離れてしばらくすると、流動警戒をしていた甲賀衆の忍び達がムラサキの吐瀉物を発見した。
この場の甲賀衆で最高位の者が平然と吐瀉物に手を突っ込む。
頭目「まだ暖かい。見たところ固形物もないから嘔吐を繰り返しているのだろう。急ぎ追い掛ける。他隊にも知らせろ。」
この部隊は伝令を出しつつアサギ達の追撃を始めた。
甲賀衆がアサギ達の追撃に移り、その場を離れると今度はキバがやってきた。
まず、キバは鼻を上に向けスゥーと大きく息を吸い込み、吐瀉物を見つけると次にそれに鼻を近づけクンクンと匂いを嗅いでいる。
そして、この場に残る女の匂いと子種の匂いが混じったものを嗅ぎ当てると、狼が獲物を狙うような笑みをこぼし舌舐めずりをして、アサギ達を追いかけた。