※この作品はR-18です。

胎間忍   作:内府

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小谷落城編
第1話 忍び里 ~~子作りくノ一達のお仕事~~


 時は戦国時代、信濃国の人里離れた山奥に女ばかりが暮らす里があった。その里に暮らす女は500人程度で大きくはないが小さすぎるということもない規模であったが皆美人である。この里には大きな田畑はなく、特産品とよべる物もなかったが暮らし向きは豊かであった。実はこの里は忍び里として知られる里で京のやんごとなき公家衆から堺の納屋衆、足利将軍家から地方の豪農まで日の本のありとあらゆるところから依頼を受け大いに繁盛している。この忍び里は伊賀や甲賀といった里のように忍び働きもしているが副業といってもいい。この里の本業とは日の本唯一の胎間忍を生業としていることである。

 

 里の近くにある林の中で1人の女が小太刀を振るっている。この女はこの里のくノ一でアサギといいすでにいくつもの任務を成功させている腕のたつ忍で、今は里で任務を待ちその間に鍛錬をしている。

 

 アサギ「エイッタアッハッ……とこんなものね。」

 

 アサギが小太刀を納めると今まで立っていた木々がバタバタと音をたてて崩れその影から人がアサギに向かって跳躍してきた。

 

 アサギ「何の用かしら?」

 

 使いの忍「長がお呼びです。」

 

 アサギ「分かった、すぐに向かうわ。」

 

 そう言うとアサギは里長の綱手がいる館へ走り出した。

 

 館の中に入ると綱手の他にも数人の親方衆がおり、皆一様に大きな腹を抱えている。里の幹部ともいえる親方衆は主に里の内の務をしており、その最たる務は里の後継を絶やさぬことでしたがって親方衆の多くが身篭もっている。

 

 アサギ「アサギ参りました。」

 

 綱手「よく来たな、アサギ。さっそくだが里に依頼が来ておる。その依頼とは………依頼とは……」

 

 アサギ「…綱手様?」

 

 綱手「グアッ…は腹があ」

 綱手は、腹を抑えて苦しみだした。陣痛が始まったのである。同席していた親方衆は驚きながらも慣れた手つきで綱手に肩を貸して里にある産小屋へと連れて行く。親方衆の里での役目は産婆を兼ねており、産婆役の親方衆が自らもお産をしつつ立ち会い子供を産んだばかりの親方衆が産婆役の親方衆の子を取り上げるという事態もよくあった。

 

 綱手「フーッフーッ…すまんが依頼の件は依頼人から直接聞いてくれェッ」

 

 アサギ「承知しました。綱手様のご無事をお祈りしております。」

 

 アサギに依頼人から直接聞くように命じた綱手は、足下に水をつたらせながら産小屋へと運ばれた。

 アサギは館の中にある来客の間へ向かう。来客の間は里の外から来た者特に男を通すための間で、襖の前には監視役件世話役の忍が常駐している。アサギは監視役に綱手のお産が始まり依頼人から直接用件を聞くようにと言われたと伝え中に入ってもよいかと尋ねた。

 

 監視役の忍「はぁ、綱手様はまたですか。」

 

 アサギ「ええ、これも里の務だから仕方ないけれど。」

 

 監視役の忍「分かりました、中にお入りください。ただ中の侍はかなり気がたっているので、お気をつけて。」

 

 アサギは頷き用心をして中に入った。

客間の中には甲冑姿の侍が座っていた。その侍はいかにも落ち武者といった様で鎧は土と血で汚れ頭からは出血し包帯で止血をしており所々矢が刺さったままであった。

 

 侍「誰じゃっ?!」

 

 アサギ「失礼いたします。この里の忍でアサギと申します。」

 

 侍「おお、この里の者か。では我らの願いを聞いてくれるのか。」

 

 アサギ「いえ、長から貴方様から直接用件を聞くようにと。」

 

 侍「何?綱手殿には伝えたはずだが?」

 

 アサギ「長はただ今お産をしております。」

 

 侍「なんと!大丈夫なのか?」

 

 アサギ「ご安心を、この里ではよくあることでございます。それより用件を伺います。」

 

 侍「う、うむ。儂は浅井家に仕える横田という者じゃ。今、浅井家は隣国の大名と合戦をしておる。我が方はいささか苦戦しておるがもうしばらくすれば敵方の大名に対し他の大名家と連合し戦況は必ずや逆転するであろう。ただ、我が主には跡を継ぐ男子がおらぬゆえそのことだけが気がかりじゃ。なのでこの里に望みを持ちここまで来た次第である。」

 

 アサギは横田の用件を聞くとこの男は依頼について嘘と脚色を重ねていると思った。

 

 アサギ「横田様、用件は伺いましたがこの依頼断らせていただきます。」

 

 横田「なんじゃと!なにゆえ我らの願いを拒む!」

 

 横田は、怒り今にもアサギを斬ろうと刀に手をかけている。アサギは落ち着いた様子で依頼について現実をたたきつけた。

 

 アサギ「まず浅井家は苦戦どころか滅亡の際です。もはや最後の小谷城を残すのみではありませんか。次に敵方の大名とは織田家であり天下に威名を轟かせています。」

 

 アサギの反論にあい横田は先ほどと違い色を失って黙り込んでいる。

 

 アサギ「最後に跡取りが欲しいというよりもこの件は敵からの攻めを躱し血脈を残すというものです。これは危険度が断然違います。」

 

 横田はアサギの指摘を受け、自らの非を認めた。

 

 横田「アサギ殿の申すとおりです。どうかこのとおり、何とぞ我らの願いを聞き入れてくだされ。」

 

 横田はアサギに対し土下座をしている。

 

 アサギ「…分かりました。依頼を受けましょう。ただし、報酬は割り増します。」

 

 横田「かたじけない、かたじけない。」

 

 横田はようやく面を上げ安堵の表情を浮かべた。

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