※この作品はR-18です。

胎間忍   作:内府

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第28話 剣鬼対犬鬼 ~~旗が立ちすぎな気がする~~

 凜子はキバと対峙しながら昔のことを思い出していた。

 

 今から10年前、凜子が7歳の時アサギに弟子入りした。

 当時のアサギは14歳の若さであったが天才少女と言われ里の大人達でも彼女に勝てる者は少なかった。

 そんなアサギに凜子は初めての弟子として師事した。

 アサギに弟子入りして修行を続けていたある日凜子は忍び刀を持って巻き藁の前に立っていた。

 

 アサギ「好きに斬ってみなさい。」

 

 アサギに命じられ凜子は大きく振りかぶり袈裟斬りに巻き藁を斬った。

 凜子が振るった刃は巻き藁の中央の竹に食い込んで止まってしまった。

 凜子は師匠の前で失敗したと思い刀を抜こうとするが食い込んだ刃はなかなか抜けず、怒られると思い涙ぐんできた。

 アサギが巻き藁から刃を抜き取り凜子に返し、優しく凜子の頭に優しくてを置いた。

 

 アサギ「もう、泣かないの。今から私が斬ってみるから見ていなさい。」

 

 アサギは正眼に構えると小さな動きで一瞬の内に巻き藁を斜めに四方向から切ったが、巻いてある藁だけを斬り中央の竹には傷一つ着いていない。

 

 凜子「師匠、巻き藁は切れていませんよ?」

 

 アサギ「ええ、そうね。でもね凜子、手首の筋を切られた刀は持てないし、血管を切られたら出血で死ぬ。斬ることにばかりこだわっていてはそれは剣術とは言えないわ。剣術とは確実に相手に勝つことが大切なのよ、分かった?」

 

 凜子「はい、師匠!凜子は剣術を頑張ります。」

 

 アサギはこの子には少し難しかったかと思ったが、弟子の元気な返事を聞いて安心し、凜子の頭を優しく撫でた。

 師匠に撫でられ凜子は少し照れながらもとても嬉しかった。

 

 アサギ「それとね凜子、斬ることに必要なのは力ではないの。正しく刃を立てて集中していれば非力な女でも斬れない物はないの。」

 

 アサギはそう言うと近くに生えていた小屋よりも高い木の前に立つと、刀を真一文字に薙いだ。

 その木はまっすぐと立っていたがアサギが触れると彼女が一閃したところから裂けて倒れた。

 凜子は師の神業に声も出ない。

 

 アサギ「凜子、修行に励みなさい。」

 

 凜子「はい!」

 

 凜子はこの日から毎日血の滲む修行を欠かさずにいた。

 幼女の何もかも小さく可愛らしかった体が豊かな胸としっかりした腰を持つ大人の女の肉体に凜子の体は成長した。

 アサギがあの木を切ってから数年が経っていた。

 大人の女に成長した凜子は彼女の背程ある岩の前に立って集中していた。

 凜子が刮目し跳躍して剣を振り下ろすと、岩は真っ二つに斬れた。

 

 アサギ「お見事!」

 

 振り返るとアサギが立っていた。

 

 アサギ「凜子、これをあなたに授けるわ。これからも精進なさい。」

 

 アサギは凜子に一振りの刀を渡すとすぐさまどこかへ行ってしまった。

 アサギからもらった刀の袋を開けると中には兼光の名刀が入っていた。

 凜子は師匠の優しさに涙した。

 その後凜子は里一番の剣術の使い手と呼ばれ、彼女の兼光は石切兼光と呼ばれるようになった。

 

 

 凜子が師匠の教えを思い出しているとキバが四足の獣のように跳躍してきた。

 一直線に飛び込んでくるキバの攻撃は凜子にとって簡単に躱せるものであった。 

 キバの攻撃を紙一重でキバの右側へ躱し同時に彼の膝下を斬った。

 攻撃を躱されたキバは体勢を崩し前のめりに転んだ。

 キバは立とうとしても右足が自由に動かないことから右足を切られたことに気がついた。

 

 キバ「殺す殺す殺す!ぜってぇー殺す!」

 

 足を引きずりながらもキバが大きく振りかぶり右手の爪で凜子を引っ搔こうとするが振りかぶった右手を剣で上にいなされがら空きの脇を切られた。

 キバは脇を抑えて止血し戦うどころではなくなった。

 凜子が留めを刺そうとキバに近づくと手裏剣が飛んできた。

 凜子は刀で弾きながら後方へ跳んだ。

 木々の間から甲賀衆が続々と現れる。

 

 キバ「おい、お前らさっさとこいつを殺して俺様をたすけろ!」

 

 甲賀衆はキバに同胞を殺されていたが、今は眼前の凜子に集中した。

 凜子に甲賀衆が襲いかかる。

 甲賀衆一人一人は大した脅威ではなかったが各自が連携し冷徹な計算に基づいて行動し確実に任務を遂行した。

 凜子は甲賀衆の攻撃を躱すが反撃をすることはできずにいた。

 甲賀衆は互いに連携して凜子が攻撃をする前に襲いかかり、無理に甲賀衆を攻撃すれば残りの者が無防備になった凜子を仕留めることが予測された。

 キバはこの隙にこの場を離れ逃げ延びようとし、凜子はそれに気づいていた。

 このまま奴を逃せばアサギ達の情報が敵に洩れるおそれがあるが、かといって甲賀衆の攻撃でキバを殺せそうになかった。

 

 赤尾清綱「ウォォォォォーーー」

 

 突如として赤尾が刀を振りかざし凜子を囲う甲賀衆に突撃した。

 甲賀衆は凜子への攻撃を一時中断し間合いを取った。

 凜子はその間隙を突いて一際高く跳躍し一足飛びにキバへと襲いかかった。

 キバはそれに気づき鋼鉄製手甲を着けた両腕を交差して斬撃に備えた。

 キバは内心鋼鉄製の防具があるのに斬り掛かれるとは馬鹿な奴めと思いほくそ笑んだ。

 凜子は上段に構えて脳天唐竹割りに剣を振り下ろした。

 キバは目の前に着地した凜子から逃れようとしたがそれができなかった。

 凜子が振り返り駆け出すとキバは真ん中から裂け、真っ二つに両断されて死んだ。

 凜子は師の教えを実践できたことに安堵した。

 赤尾と甲賀衆が剣を交えており凜子も赤尾に加勢しようとした。

 

 赤尾「儂に構うな!先に行けい!」

 

 赤尾の言葉に凜子はどうすればいいのか分からずに戸惑っていた。

 

 赤尾「早うせんか!」

 

 凜子は一度頷くとアサギ達を追って山を下りた。

 ようやく走り出した凜子に赤尾は安堵し少しでも彼女が逃れる時間を稼ごうとした。

 甲賀衆は彼の考えを読んで少人数をこの場に残し本隊は凜子を追った。

 赤尾はそれを咎めることができず、残された甲賀衆に徐々に追い詰められついに捕らえられた。

 赤尾は縛り上げられる中で最後にみた凜子の姿を思い出した。

 赤尾には凜子の姿は彼の娘の姿に重なって思え、何かと彼女達を優遇したのだった。

 甲賀衆は浅井家の重臣と思われこの男を捕虜とし、先ほどのくノ一の情報を得ようとした。

 赤尾はそのまま信長のいる京極丸に連れて行かれた。

 京極丸では信長が各将から戦闘の報告と討ち取った者を確認していた。

 そんな中滝川一益が配下の甲賀衆により浅井家の重臣を捕らえたと報告したので、早速引見した。

 赤尾は信長の前に引き立てられた。

 

 滝川「お主の名は?」

 

 赤尾「浅井家家臣赤尾清綱。」

 

 滝川「先ほどまで何をしておった?」

 

 赤尾は名前だけ答えると後は黙ってしまった。

 滝川は手をこまねいていると追い忍五人組の仮面の男が現れた。

 

 オビト「俺に任せろ。」

 

 オビトは赤尾の縄を切って、自分の瞳を彼に見せた。

 赤尾の意識は徐々に薄れ失神寸前になった。

 

 オビト「山で何をしていた?」

 

 赤尾「信長に…一矢…報いる…本陣…探した。」

 

 オビト「他には?」

 

 赤尾「くノ一…逃がす…戦い…捕まる…。」

 

 オビト「そのくノ一はどんな奴だ?」

 

 赤尾「くノ一…くノ一…儂の…娘…娘…娘…」

 

 赤尾が同じことを繰り返すのでもう一度瞳を見せようとオビトが近づいた。

 その瞬間、赤尾は自分の舌をかみ切り覚醒するとオビトが用いた短刀を奪い腹を十文字に割いた。

 オビトが短刀を取り戻し暴れないように床に押さえつけた。

 赤尾の腹からは血と臓物が溢れ口からも血を流して痛みに身をよじらせていた。

 信長が素早く小姓から刀を受け取り赤尾の首筋に刃を当てて介錯をした。

 

 信長「見事だ。武士とはかくありたいものである。」

 

 信長は片手念仏をして赤尾を弔った。

 その場の織田家の将兵は彼らの大将にならい合掌した。

 

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