胎間忍 作:内府
第31話 潜伏、近江国坂本 ~~巫女とツンデレ?~~
近江国坂本、この地は織田家の重臣明智光秀が治めていた。
アサギ達5人は小谷城から離脱した後、この地に潜伏して2ヶ月が過ぎていた。
小谷城が落城したあの日、アサギ達は小谷城から脱出した後の行動も計画していた。
この時の計画では3つの案を考えていた。
甲案 石山本願寺
乙案 加賀一向衆
丙案 甲斐武田家
この3つの案を考えていた。
小谷城から離脱した後近江国内で織田家の動向をうかがっていた。
浅井家を滅ぼした織田家は本拠地の岐阜城へと戻っていった。
アサギはこの中で本命は甲案であると考えていた。
乙案の場合、朝倉の残党狩りを突破する必要もあり更に加賀は織田と親しい畠山と上杉に囲まれ情勢が不安定であると考えた。
丙案の場合、武田家は強国であったが道中に織田の本拠地岐阜城がありここを突破するのは危険が大きすぎると考えた。
そのためアサギは甲案の石山本願寺に移動しようと考えていた。
しかし、情勢がそれを許さなかった。
小谷城が落城して間もなく河内国で三好が挙兵して織田と合戦をしていた。
このため織田の監視が強まり本願寺を頼る訳にはいかなかった。
更に、ムラサキの体調が優れず本願寺へと潜入することははばかられた。
アサギ達はこの坂本の地に留まり織田の捜索から潜伏していた。
アサギがこの地を選んだ理由は、この地を治める明智光秀はキレ者として知られているがそれ故に京で公家と折衝をしたり、信長から呼ばれたりとこの地を留守にすることが多くそこに隙があると考えた。
アサギ達は人里離れた山の中にある、使われていない小屋を拠点としていた。
悪阻により衰弱しているムラサキを寝かせ、残りの4人で情報収集と生活物資の確保を行っていた。
この時、アサギ達が生業としたのは巫女であった。
信濃には歩き巫女と呼ばれるくノ一の集団があり、武田家が用いていた。
胎間忍の本拠地も信濃にあり両者は必然的に交流があり胎間忍にとって巫女のふりなど容易かった。
アサギ達は山村などを巡り病人の世話などをしていくらかの食糧危機をもらい、街道に出て旅人の噂話から情報を得ていた。
夜はその小屋でそれぞれの情報交換をした。
アサギ達が小屋の中で話し合っていると変わった調子で扉が敲かれた。
サクラ「はーい、入っていいですよー」
外から虚無僧が入ってくる。
この虚無僧の正体はカカシで勝頼からの主命でこうしてアサギ達の元を訪れては路銀などを与えて彼女達が甲斐に向かうように説得していた。
カカシ「どーも、どーも、皆さんおそろいで。今日はこんなもんを持ってきましたよ。」
ユキカゼ「わーい、カカシさんありがとう!」
凜子「いつもありがとうございます、カカシ様。」
カカシ「いやその、カカシ様ってのやめない?なんかこうむずかゆくって。」
凜子は小谷城から離脱する際に鬼神のようなカカシに救われて以来、カカシを第二の師と仰いでいた。
対してユキカゼは普段の昼行灯のようなぼうっとしたカカシしか知らず、いつも何かをくれるおじさんくらいにしか思っていないのか彼女の人柄か仔猫のように甘えていた。
サクラ「いやー、いつもすいませんねぇ。こんなにもらっちゃって。」
カカシ「まっ必要経費ってやつですね。」
ムラサキ「うっ…いつも、ありがとうございます。」
カカシ「あぁ、ほら、無理しないで。」
サクラ「もー、寝てなきゃ駄目だよムラサキちゃん。」
ムラサキは寝床から起き上がりカカシに礼を言うがサクラに背中をさすってもらっている。
5人が打ち解けているのをアサギは見ないようにしていた。
カカシと始めてあったあの日、アサギは無事に帰ってきた凜子を見て泣きながら抱きしめた。
アサギはカカシの存在を忘れて熱く抱擁して後から彼の存在に気が付き激しく赤面した。
それ以来カカシを避けるようにしているが、本心では弟子の命を救ってくれたことを深く感謝していた。
カカシ「アサギさん、いい加減俺の話しを聞いてくれませんかね?」
アサギはそれに答えずぷいっとそっぽを向いていた。
そんなアサギを見てムラサキはこの人にもこんな可愛いところがあるのだと思った。
ムラサキ「カカシ殿、こちらをお受け取り下さい。」
カカシ「おお、ありがとうございます、助かりますよ。」
ムラサキはカカシに彼女達が集めた情報をまとめた資料を渡した。
体調の優れない彼女はこうした情報の整理と記録をしていた。
カカシはこのように近江国周辺の情報を得ていた。
カカシ「ふーん、新しく羽柴秀吉ってのが大名になるのかね、織田も思い切ったことするなぁ。」