※この作品はR-18です。

胎間忍   作:内府

39 / 67
第36話 父との思い出 ~~露骨な引き伸ばし~~

 甲斐国躑躅ヶ崎舘、当主の間において現武田家当主勝頼が亡き父との思い出を振り返っていた。

 ある時、父信玄が勝頼に尋ねた。

 信玄「男しての最大の快楽とはなんであろうか?」

 勝頼「鍛え上げた一軍を持って強敵と戦い、これを破ることでしょうか。」

 信玄「ほう、他には?」

 勝頼「領国の経営に気を配り、その恵みを受けることなども快楽といえるでしょう。」

 信玄「より、楽しいことはないのか?」

 勝頼「では、春の日に逞しい馬に跨がり鷹狩りをして鷹が獲物に一撃を加えるところを見ることなど胸のすくものでございます。」

 信玄「なるほどのう。」

 勝頼がいくつかの答えをあげるも信玄はどれも違うといった様子であった。

 勝頼「では、父上。父上のお考えになる男としての最大の快楽とは何でございますか?」

 勝頼はしびれを切らして、信玄に尋ねた。

 信玄「ふむ、儂か。……、唐土を制服した北方の蛮族の王がこう答えた。男としての最大の快楽とは敵を撃滅し、これをまっしぐらに駆逐し、その所有する財物を奪い、その親しい人々が嘆き悲しむのを眺め、その馬に跨り、その敵の妻と娘を犯すことにあるとな。」

 勝頼はその答えに愕然とした。

 信玄「其方の答えも悪くは無い。が、大名たるものこの冷酷さを忘れてはならぬぞ。」

 勝頼「ははっ。」

 その時の勝頼は父の教えを素直に受け止めることにした。

 それから父が亡くなり勝頼が跡を継いだ現在、この教えを思い出していた彼は当時とは違った考えを持つようになっていた。

 信玄のやり方では余計に敵を作ったのではないかと考えるようになっていた。

 父、信玄の外交は裏切りがつきまとった。

 そのためにしなくてもいい戦をして周りに敵を作り続けたと勝頼は考えるようになっていた。

 勝頼はこれから攻め込むであろう、徳川家康のことを考えた。

 かの大名は父信玄に手酷くやられていたが、上杉と織田と手を結び武田に対抗した。

 遠江に侵攻した際は武田に降伏せず、織田の盾となった。

 その事により、織田とは強固な同盟関係にあった。

 また、三方ヶ原の戦いでは徳川家の家臣は皆主のために盾となり奮戦した。

 翻って武田の家臣はおそらく自分のために忠誠を誓う者は少ないと勝頼は思った。

 そんな家臣を引き込むには、戦に勝ち強い君主であることを示す必要があった。

 勝頼は近い将来戦うことになる強敵に思いをはせていた。

 そんな彼の元に忍びがカカシからの文を届けてきた。

 勝頼はカカシに胎間忍を甲斐に連れてくるように密命を与えていたが、相手がなかなか腰を上げないらしかった。

 かわりにカカシは畿内等で織田家の動向を探りこうして文で知らせてきた。

 勝頼「奴も苦労するな。」

 カカシがアサギの機嫌を損ねてしまい話しが難航していることを文で知った勝頼は苦笑した。

 勝頼がカカシからの情報を基に今後の計画を思案していると騒がしい足音が近づいてきて、襖が勢いよく開いて太い眉の暑苦しい男が入ってきた。

 太い眉の男「お舘様!俺を畿内に行かせください!」

 勝頼「落ち着け、ガイよ。なにゆえお主をいかせるのだ?」

 ガイ「決まっています!カカシがいるからです!」

 勝頼は呆れてしまった。

 このガイという男は甲斐の忍びであったが、忍びとしての腕は無かった。

 しかし、とにかく強く戦場において少数で敵の後方を攪乱するなど高い武力の持ち主であった。

 また、カカシの好敵手を自称しており体術や駆け競べ等で勝負を挑んでは50勝49敗と勝ち越していた。

 どうやらカカシが畿内にいるので自分も畿内へ行くという子供じみた意地で張り合っているようであった。

 勝頼はガイを宥めながら、カカシが任務を終えて早く戻ってくることを願った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。