胎間忍 作:内府
後書きで大まかなあらすじを書きます。
耐性のない方は飛ばしてください。
美濃から近江にかけて広がる山中を三つの陰が疾走していた。
この陰はダンゾウと彼の配下であった。
彼らが山の中を進んでいると、血の匂いが強くなってきた。
その匂いを辿っていくとそこには片腕を切断され喉を刺突された佐馬斗の変わり果てた姿があった。
ダンゾウ「愚か者が、先走りおって。」
ダンゾウはそう吐き捨てると既に佐馬斗への関心はなく、佐馬斗を殺した忍びへと移っていた。
包帯の男は佐馬斗へと近寄りそっと瞼をおろしてやった。
生前の佐馬斗とそれほど仲がよかったわけではなかったが同じダンゾウの配下として放っておくことは彼にはできなかった。
オビトは地面の様子を探っていた。
オビト「おい、見ろ。」
オビトが指差した先には足跡があり山の中を近江へと進んでいるかのように思われた。
ダンゾウ「追うぞ。」
ダンゾウはこの足跡が響子のものと考えてこれを追跡した。
ダンゾウらがしばらく山の中を走っていくとこの山の中には似つかわしくない市女笠をかぶった女が一人で歩いていた。
オビトがその女の背後をとりダンゾウと包帯の男が正面からその女を取り囲んだ。
ダンゾウ「やっと見つけたぞ。観念せい。」
市女笠の女は顔を隠したままだまっていた。
ダンゾウ「おい、顔を見せろ。」
市女笠の女「くっくっく、残念だったな。私は響子様ではない。」
市女笠の女は笠を跳ね上げ、一瞬の内に衣を脱いで目くらましをしたかと思うと中から忍び装束のくノ一が現れた。
市女笠の女は響子と入れ替わったムラサキであった。
ダンゾウ「お前は…胎間忍か?」
ムラサキ「ご名答!」
ムラサキは自分の正体を明かすとともに忍び刀を抜刀しダンゾウに向けて跳躍しこの場で彼の命を奪うつもりでいた。
ムラサキの一撃は高速で体当たりをしてきた包帯の男によって阻まれた。
包帯の男の体当たりが直撃したムラサキは明後日の方向へと吹き飛ばされかろうじて着地することができたがそこへ包帯の男の追撃が襲ってきた。
包帯の男の拳をぎりぎりで躱したムラサキであったが自分を襲った拳が容易に立っていた木を粉砕するのを見てその威力に恐怖した。
先ほど倒した細長い男とは比べものにならない強さだとムラサキは思った。
ダンゾウの配下の中で佐馬斗は戦闘にそれほど強くはなかった。
佐馬斗の本業は医術を用いて味方を治療したり敵を拷問したり薬物の作成などであった。
ただしダンゾウとオビトそれに包帯の男は戦闘にも強く、包帯の男は岩をも容易く粉砕する怪力の持ち主だった。
ムラサキはこの男に一撃でもくらったらおしまいだと考え回避に専念して逃げる隙を窺うことにした。
包帯の男の攻撃は凄まじく刀で牽制しいなしながらなんとか躱し続けることができた。
ムラサキ「ッ痛!」
ムラサキが躱し続けていると、突然両足の膝裏に激痛が走り立っていられなくなった。
両膝を地に着けてそのまま立つことができず、膝裏に手を当てると出血していた。
背後から機を狙っていたオビトがムラサキの背後から両膝を斬りつけたことによりムラサキは機動力を失ってしまった。
正面にいる包帯の男がムラサキの手から忍び刀を奪い彼女の攻撃手段を奪っていった。
立つことができず四つん這いになっているムラサキの顔面をダンゾウが蹴飛ばした。
ムラサキ「グッ…。」
ムラサキの鼻から血が流れた。
うつ伏せに倒れるムラサキをダンゾウが彼女の髪を掴み頭を引き上げた。
ダンゾウ「あの女はどこへ行った?」
ムラサキ「誰が言うか……グア゛ア゛ア゛ッ!」
ダンゾウの質問に悪態をついたムラサキの肩にダンゾウが短刀を刺しぐりぐりと傷口を掻き回された。
ダンゾウ「あの女はどこへ行った?」
ムラサキ「ハァハァ、こんなことで、口を割ッガハッ。」
尚も悪態をつくムラサキの鳩尾にダンゾウの拳がめり込みムラサキは腹を押さえて胃の中のものを吐き出して前のめりに倒れた。
ダンゾウ「あのっ、女はっ、どこへっ、行ったっ?」
ムラサキ「ハァハァ……ハァハァ……。」
ダンゾウは倒れたムラサキの背中を何度も踏みつけたがムラサキは一向に口を割らなかった。
ダンゾウ「これが最後の機会だ、あの女はどこへ行った?」
ムラサキ「……………。」
ダンゾウ「そうか、楽に死ねると思うなよ。」
ダンゾウはムラサキの肩の短刀を乱暴に引き抜くと彼女の肺をめがけて突き刺しゆっくりと掻き回した。
ムラサキ「グッ…ガハッゴホゴホ、カハッグックハッ……」
ムラサキは吐血し呼吸が上手くできなくなった。
ダンゾウ「肺腑を深く刺した、直に息もうまくできなくなる。己の血で溺れ死ね。」
ダンゾウはそう言い残すと彼の配下を連れて再び山の中を響子を求めて走り出した。
ムラサキはダンゾウらが山の深い方へと探しに行ったことを見て響子の方向とは逆方向であることに安堵した。
残された力を振り絞りなんとか上体を起こして近くの木へともたれかかった。
ムラサキ「ゴホゴホ、……ヒュー、ヒュー、…」
ダンゾウに刺されてからムラサキは吐血が止まらず胸の内側が押し潰されるように痛かった。
傷口からは血がとめどなく流れ、ムラサキの体から急速に温もりが消えていった。
ムラサキは自分が確実に死ぬことが分かり遺された仲間達のことが気に掛かった。
アサギには結局自分の想いが伝えられなかったこと、サクラともう少し仲良くできなかったこと、凜子とユキカゼにもう少し優しくしてやれなかったこと、響子の子を守れなかったことそうした後悔が一筋の涙となってムラサキの瞳からこぼれた。
ムラサキは最期にもう一度だけアサギに会いたいと思ったがそれは叶いそうになかった。
そこで、もしアサギが自分を発見したときのために自分の子をアサギに設けるためにムラサキは最期の力を振り絞り忍法・愛飛恵寿を発動させた。
アサギが自分の遺体に触れた際にわずかでも孕ませる可能性があるのではないかというムラサキの考えであった。
自分の体から熱がなくなり体が重くなり目の前が暗くなっていくのが感じられムラサキは瞳を閉じた。
響子を追撃するダンゾウとオビトと包帯の男であったが、発見した市女笠の女はムラサキであった。
ムラサキを拷問するも口を割らないのでダンゾウはついには彼女の肺に短刀を突き刺した。