※この作品はR-18です。

胎間忍   作:内府

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激突編
第48話 遺言に背いて ~~カカシには早く帰って欲しい~~


 天正2年の正月、美濃国明智城を武田勝頼は1万5000の兵を率いて攻略した。

 明智城の後詰めに織田信忠、明智光秀に率いられた3万の織田軍が駆けつけていたがそれよりも先に城を落とした。

 この勝利は勝頼を諫めていた武田の家臣達の声を小さくするものであった。

 先代の信玄からは自分の死を3年隠し守りを固めるように言い遺していたが、既に信玄の死は織田をはじめ徳川や上杉といった周辺にまで知られていた。

 それだけでなく、反織田包囲網の中心であった将軍足利義昭は京から追放され包囲網の一翼を担っていた浅井朝倉の両家は滅んで状況は悪化の一途を辿っていた。

 勝頼はこのまま父の遺言に従っていては武田は滅びると考えて行動を起こした。

 武田の家臣の中には勝頼に反発する者もいたが勝つことで彼らを従わせなければならなかった。

 勝頼「父上、遺言を違えることをお許し下さい。ですがこうするより他に手はなかったのです。」

 落城する明智城を見ながら勝頼は亡き信玄に向けて呟いた。

 明智城を落とした武田軍は甲斐へと帰陣した。

 勝頼としてはこのまま美濃への侵攻を続けるか或いは南下して徳川と一戦することも考えていた。

 しかし、武田軍は強兵として知られていたがその多くは兵農分離が進んでおらず長期間の出陣は避けなければならなかった。

 ともあれ、勝頼はこの勝利を喜んだ。

 日頃は口やかましい家臣がこの勝利で少しは静かになっていた。

 勝頼が馬上で喜んでいると騒がしい足音が近づいてきた。

 ガイ「お舘様ー!俺を京へいかせてください!」

 ガイが暑苦しい顔で懲りもせずにまた、願い出てきた。

 勝頼「おお、ガイよ此度の戦でも大層な活躍であったな。」

 ガイ「はい!兜首を十ばかりあげました!」

 勝頼はガイの手柄を褒めて話をそらすことにした。

 勝頼「そうか、そうか。これからも励めよ。」

 ガイ「はい!」

 勝頼はそそくさと馬を走らせた。

 ガイは肝心の京行きの許しについて話をそらされたことに気づき慌てて食い下がった。

 ガイ「お待ちください、お舘様!俺を京に!」

 勝頼「何故そこまで、京へ行きたがるのだ?」

 ガイ「決まっています!カカシがいるからです!」

 ガイの言葉に勝頼は思わず目眩がしてきた。

 勝頼「そんな理由が通るわけなかろう。甲斐で大人しくしておれ。分かったな。」

 ガイ「ぐぬぬぬ…仕方ない。」

 勝頼はガイが諦めたことにほっとした。

 このガイという男は戦場ではとても頼りになる強者であったがこうした面が玉に瑕であった。

 勝頼はこのガイがもう少し落ち着いた人物になればよいと思った。

 ただ、ガイは暑苦し過ぎるだけでその心は自分に篤い忠誠心を持っており穴山などよりよっぽど頼りになる家臣だと勝頼は思っていた。

 この時カカシはアサギ達とともに京へと移っていた。

 ムラサキがダンゾウらと接触した件で見つからないように坂本の拠点を捨てて京へとアサギ達が移動しカカシもそれに従い京に移ったとのことであった。

 このことはカカシからの文で勝頼も知っていたのだがガイがカカシが京にいることを知っているのが謎だった。

 勝頼としては暑苦しいガイよりも冷静なカカシがこの場にいて欲しかったがそれは叶わぬ願いであった。

 勝頼はカカシに頼る自分を情けなく思ったが武田家の棟梁としての自覚を思い出して気を取り直すことにした。

 武田家の前には以前より強大になった織田家が立ちはだかっておりこれを打ち破らない限り武田家の平穏はないと勝頼は考えた。

 いずれ行われるであろう織田家との決戦に勝頼は今から武者震いをしていた。

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