事の発端
・FGOにアルク実装しないかな? → アルクには眼鏡がいるやん…… → ワルクならワンチャン……
という感じで考えました。
なお作中のワルクはCCCのアルクの宝具と数種類のスキル以外は同じパラメーターの設定です
エロが短いのでご了承くださいませ
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! くっ……っはぁっ!」
(なんでっ、こんなことにっ……!)
――走る 駆ける 奔る
一息つく暇もなく、ただひたすらに脚を動かす。全力疾走し続けて腹部、胸が苦しさを訴える。脚が悲鳴を上げる。それでも必死になって足を動かす。なぜこんな事になっているのか。まだ理解が追い付いていないが、そんなことを考えている余裕はなかった。
◇
――一時間前
「お疲れ様でした、先輩っ! ゆっくりと身体を休めてくださいねっ!」
「ありがとう、マシュ」
日課となったトレーニングを終えた自分は、汗をタオルで拭きながら、ともに参加していたマシュをねぎらう。カルデアに来てから大分筋肉のついた身体。魔術が使えない以上、身体を鍛えることがより己を高める方法である立香は、その努力を惜しまなかった。
せめてと体術を得意とするサーヴァントから護身術を習ったりと、身を守る手段を身に付けられれば、少しは今後の役に立つはずだ。
(う~ん……もうちょっと筋肉を付けたいかなぁ……)
以前よりは大分マッシブな身体を見て、立香はそう思う。まだまだ細マッチョ程度な肉体。フェルグスやオリオン達筋肉系サーヴァントたちとまではいかなくとも、それなりに筋肉を付けたい。筋力Dみたいな見掛け倒しにもなりたくないし。
(魔術師だったら、ザーヴァント相手に立ち回れるかもしれないけど……)
本来魔術師ではサーヴァントに太刀打ちできない。しかし魔術師としての力量が高ければ、防戦一方であっても戦えるかもしれない。でも自分ではその域に至れない以上は、少しでも抵抗の術を身に付ける必要があるのだ。
「ふぅ……」
シャワーで汗を流し、ベッドに身体を預ける。今まで戦ってきたクリプターたちはやはり自分とは別世界の住人だ。魔術という魔法にまったく縁のなかった自分、そもそも魔術なんて空想のものとばかり思っていた。カルデアに来てからというもの、自分の常識がまるで通じないことだらけ。そのたびに学習し、知識を身に付けることが精一杯だった。
(皆に頼ってばかりじゃいられない……。もっとオレも頑張らないと……)
ふと身体の疲労の所為か、うつらうつらと睡魔が襲ってくる。身体が疲れているのだろう、すこし寝て休もう。そう思った立香は、襲い掛かる睡魔に抵抗することなく、その身を預けた――
◇
――はずだった。
しかし起きたときにはどこかの古びた教会の長いすの上。何があったのか、状況を確認する前に突然エネミーによる襲撃を受けて今に至る。恐らく強制レイシフトでどこかに飛ばされたのではないか? しかしそれを確認できるような余裕など一切ない。
「ぜぇっ! ぜぇっ……! まだっ、まだ追ってくるっ……!」
今までの冒険で鍛えられたスタミナも、長時間全力疾走していては流石に尽きる。しかしそれでも脚を止めてはいけない。止めたら最後、自分に待っているのは死だ。カルデアとの連絡がつくかも試せていない上に、カルデアのサーヴァントもいない。だとすればどうにか自力で撒くしかない。追ってきてるのはフードに剣を携えたゴースト系のエネミー。スピードは互角なのか、付かず離れずの距離を保っている。
(このままじゃジリ貧だ……。どうにか体勢を整えないと……)
手段はある。しかしそれは、ほんのその場しのぎでしかない。そして外せば一貫の終わりだ。失敗は許されない。覚悟を決めろ。どの道このままでは死ぬだけだ。
「くそぉっ!」
立香は立ち止まり、呼吸を整える。意識を集中させるは自身の右手の指。使うは自身が使える数少ない魔術であるガンド。これを打ち込めれば多少の時間稼ぎにはなるはず……! 荒い呼吸をどうにか抑えながら、追跡者へと狙いを定める。
「くらえっ……!」
魔術の弾丸がエネミー目がけて一直線に飛んでいく。当たる――そう思ったのだが、
「ギギッ……」
「っ!? そんなっ……!?」
寸前のところで身体を翻し、逸れていくガンド。エネミーは、立香の攻撃を予測して回避行動を取ったのだ。唯一の反撃の機会を逃してしまった――それが意味することは、それ即ち自身の死だ。そして、それを防ぐ術を立香は持ち合わせていなかった。
「ぐあっ!」
エネミーの攻撃を躱すも、躱し切れずに刃が腕と脚を裂き、地に身体を転がせる。布地に切れ目が入り、その隙間から赤い飛沫が上がった。
(危なかった……。李先生から体術学んでなかったら死んでたな……)
まだ未熟故に完全に躱せはしなかったものの、首の皮一枚繋がった。日々の特訓が無駄ではなかったことを実感しつつも、立香は痛みで歯を食いしばる。脚を負傷してしまったことがなにより不味い。これでは逃げられない。
辛うじて動く左半身を使って後ずさりするも、やがて大木にそれを阻まれる。目の前にはゆっくりとにじり寄ってくる死神の鎌。
(ここまで、か……)
もう打つ手がない。突然見知らぬ土地に放り出され、カルデアと連絡はとれない上にサーヴァントもいない。どう考えても詰みだ。訪れた己の終焉に、変な笑いが込み上げてくる。カルデアの皆は自分が死んだらどう思うのだろう。泣いてくれるだろうか。嘆いてくれるだろうか。
(ごめんっ……マシュ、皆……!)
次々に浮かんでくる顔に謝罪しつつ、立香は自身の命を刈り取る鎌が振り下ろされるのを身構え、目を閉じた。が、
(…………?)
――しかしその時は一向に訪れない。いや、それ以前に今、目の前で
「それでおしまい? なら、アナタの命もこれでおしまい。……で、そこで倒れてるアナタ、まだ生きてる?」
そこにいたのは、残酷なまでの笑顔の向ける――
「聞くわ、貴方がわたしを呼んだの? ま、どうでもいいか――」
「――選びなさい。ここでわたしに殺されるか、わたしと契約するか。殺してほしいのなら惨たらっしく殺してあげるわ! あはははははは!」
――悪魔のような吸血鬼だった
◇
「た、助かったよ。ありが、とう……」
「ん……あぁ、アナタを助けたこと? ただ助けたわけじゃない。利用価値があったから助けたのよ」
傷を負った箇所に布を巻きながら、立香は目の前の女性に感謝を述べる。よくわからないが、命が助かったのは間違いない。進まれるままに仮契約を結んでしまったが、助けてくれた以上悪いサーヴァントではない……と思いたい。
「こっちは魔力が切れかかってるのよ。マスターなしじゃ長くはもたなかったわ」
よく見ると彼女もボロボロだ。どうやら野良サーヴァントだったようだが、どんな英霊なのだろう。……それにしても、妙にとげとげしい雰囲気だ。まるで出会った頃のジャンヌ・オルタを見ているよう。
「……まぁ、これでしばらく大丈夫ね。さ、行くわよマスター」
「行くって……?」
「? あぁ行先? わたしを呼び出していながらこんな目に合わせた奴を
「なっ……!?」
「本当なら片が済んだら貴方も殺したいところだけど、上手くいけば見逃してやらなくもないわ。精々上手く働きなさいな」
眼を鬼灯のように充血させ、肉食獣のように鋭い歯と爪を立香に見せる。彼女は見た目こそ人間だが、その実人の外見をした化物なのかもしれない。彼女の強い殺気に、立香は生唾を飲み込む。まるで自分以外のものすべてを殺さんとする殺人衝動の権化ともいえる彼女に足がすくむ。
彼女が言っていることが本当か嘘かもわからない。約束を守るかさえ、わからないのだ。自分が知るサーヴァントたちを入れても、彼女はダントツのヤバさ。一線を画すほどの狂暴さに、背筋を冷たいものが流れる。
「そ、そういえば……」
「何?」
「い、いや、名前……」
立香は恐る恐る彼女に声をかける。自分は彼女の名前も何のクラスかも知らないのだ。それを知ってるか知らないかで、援護の仕方も変わってくる。
「……そういえばまだ名乗ってなかったわね」
「オレは藤丸立香……、君、は……?」
「わたしは
◇
――紛い物
アルクェイド・ブリュンスタッドと名乗ったその女性は文字通りの偽物だった。彼女の本物が持っていた吸血衝動に対する不安や吸血衝動、それがある現象によって具現化したのが立香の前にいるアルクェイド。そして具現化した彼女は本物を凌駕する力を持っている――はずだった。
しかしその現象による再現には限界があり、性能は力を抑制している状態の彼女とほぼ同じ。吸血衝動の抑制に力を使う必要も、星からの出力制限もないが、それでも自分が100人いたとしても本物には敵わない。そんな自分はあの騒動の果てに消滅したと思っていた。
それが気が付けばサーヴァントなどという使い魔にされていた挙句、訳も分からぬままに攻撃を受けてこの有様。自身の滑稽さに思わず笑ってしまう。そしてボロボロになった自分は"マスター"を持たぬが為にあと僅かの時間で消滅するという状態。勝手に呼び出されてボコられた上に、何もできずに消えるのは癪だ。なにより怒りが収まらない。仕返しに殺してやらなくては気が済まない。
そんな時に見つけたのだ。傷だらけで逃げ惑う、マスターの役を務められる人間を。自身の復讐を完遂させる為の駒を。湧き上がる衝動のままに殺すのは容易し今にも殺したいのはやまやまだが、そうして怒りを晴らせずに消えるのは我慢がならない。ならばこの男にはそれまで傀儡になってもらわなくては。
◇
「そ、それで目星はついているの?」
一体彼女……アルクェイドを襲った人物がわからず問いかける。これからその場所に向かうべく、黙々と歩いていく彼女に置いて行かれないように立香は追いかけていく。
「なんとなくわかるのよ。アイツの残り香っていうの? そんなのがね」
「そ、そう……」
そっけない態度、そして彼女の身体からにじみ出る殺意に、鳥肌が立つ。味方にいる分は頼りになりそうではあるが、そもそも自身の指示を聞くつもりもないのだろう。自身を魔力タンクと呼んだその言葉からも、自分は好き勝手に暴れさせてもらうという意志が感じ取れる。
「そもそもアナタこそなんであんなとこにいたの? 自殺志願者だったかしら? そうなら後で優しく殺してあげてもいいわよ?」
「違うよ。ベッドで寝てたらいつの間にかこんなとこにいて、いきなり襲われてあの状況だったんだ」
いきなり空中に出たり、宇宙に飛んだりはあったが、いきなり襲われるケースはそうそうない。あったとしても傍にはカルデアのサーヴァントがいた。それに比べれば、今の状況は中々にヘビィだ。なにより今契約している彼女も『目的を果たすまでは守るけど、終わったら対価に命を頂く』と言ってきている。まるで死神と契約したかのように思えてきた。
「ちなみにどんなやつ……?」
「あぁそれは――っと一旦おしゃべりはここまで。
「え……?」
突然立ち止まったアルクェイド。彼女が顎をしゃくった先からは、こちらへ一直線に向かってくるシャドウサーヴァント。それも一騎ではなく、三騎だ。一対三という状況は彼女にも厳しいはず、と思ったが。
「まさか逃げる気なの、マスター? でも残念ねぇ。あいにく、あっちは殺る気だし、わたしも殺る気満々なの」
ギラっと瞳を充血させ、臨戦態勢を取る彼女に、立香は覚悟を決める。ロクに状況をつかめていないが、ここで死ぬわけにはいかないのだ。
「わ、わかったっ……! じゃ、じゃあ指示を――」
「あぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」
「――なっ!?」
立香の言葉を聞く前に、アルクェイドは敵に突進していく。その鋭い爪を振るい、エネミーに攻撃を放つ。その一撃をモロに受けたシャドウサーヴァントは、何もできずにそのまま霧散していった。
「つ、強いっ……!」
「アナタは黙って見ていなさい。邪魔にしかならないからっ!」
間合いを取る二騎相手に余裕の表情を浮かべる彼女。その暴れっぷりに今一度思い知る――"バーサーカー"クラスのサーヴァントと共に戦うことの難しさを。カルデアのバーサーカー達と過ごしていてそれを忘れてしまっていた。
立香はあのサーヴァントを手綱を握ることができるのか。今までのように上手くいくのか、不安で仕方がなかった――
――戦闘は圧倒的だった
あのシャドウサーヴァントの技量ではまったく歯が立たない。あっという間にエネミーたちは完全に沈黙、殺し尽くされて霧散していった。
「あはははははは! 全然歯ごたえがないじゃない! この程度でわたしを倒せると思ってるの!?」
狂気の叫びをあげるアルクェイドに、立香はただ怖気づく。カルデアのサーヴァントとは違い、戦うことを楽しむというより"殺す"ことを楽しんでいるような戦い方。それは怨叉に塗れていた虞美人よりも恐ろしく見えた。
「さぁ、行くわよマスター。遅れたら殺すわよ」
「わ、わかってる」
殺意を滾らせた瞳を向けられ、言葉を震わせながら立香は答える。彼女の機嫌を損ねることは、即己の死に直結しているこの状況で逆らうのは悪手だ。
「――ってまだこっちに向かってくる敵がいるわね。ちょうどいいわ、溜りに溜まった鬱憤、晴らさせてもらうから!」
――その後もアルクェイドは敵を軽々と屠りながら、傍若無人に突き進んでいく。屠ったシャドウサーヴァントやエネミーは百を超え、千をも通過する。周囲には躯の山が築かれていく。確かに彼女が相手では、そこいらの敵如きでは相手にならないだろう。しかしサーヴァントの魔力は無限ではなく、有限だ。
屠った敵の数が一桁増えるにつれ、流石のアルクェイドも出力が僅かに落ちていく。いつものようにサーヴァントを交代させたり、数騎で挑むことができないたった一騎での戦いに、彼女の魔力は少しづつ削られていき、やがて――
「はぁっ! はぁっ! はぁっ……! 一体何匹いるのよ。虫ケラ殺すこっちの身にもなりなさいよ……!」
その声色は明らかに苛立っている。確かに自分達は彼女の言う"敵"の元へ近づいていることは間違いない。しかしバーサーカーとなったアルクェイドの魔力消費もあり、彼女は目に見えてパワーダウンしていた。一撃で倒せたエネミーが二撃、数撃となり、倒すのに時間がかかっていく。
「アルクェイド、前に出過ぎてる!」
「五月蠅いわね! わたしに意見するな! 殺すわ――」
今まで幾度となく戦場を駆けた立香は周囲の状況を読み、サーヴァントに有効打となる指示を出せる。しかしアルクェイドは立香の指示を受け付けずに、猛然と突き進んでいく。そして今の立香の指示に反感し、苛立ちを隠さずに吠える。だが、それが彼女に隙を作ってしまった。
「!?――ぐぅぅっっ!?」
自身に迫っていた敵の攻撃に対する反応が遅れ、攻撃の直撃を受けてしまい、地に叩き伏せられるアルクェイド。モロに攻撃を受けた、アルクェイドは蓄積された疲労もあってか、立ち上がろうにも力が入らない。
「クっ……! こんなっ……! わたしがこんなっ……!」
自分は曲がりにも真祖の姫の影。それがこの程度の雑魚の群れに推されるなど、信じれなかったのだ。本物ならまだ立ってられるだろう。それともこんな体たらくを見せてしまうのも所詮は紛い物だからか。それともサーヴァントとなったからか。
「アルクェイド! 一旦引こう!」
アルクェイドに肩を貸し、立香は急ぎ林の中に逃げ込む。幸い先ほどの一撃は、死ぬ間際の最後っ屁。次の群れが来るまではタイムラグがある、その間に身を隠して回復に専念しなくては。
◇
「ふぅ……ここなら一息つける」
森の中に打ち捨てられた廃教会の中に身を隠す。幸いカルデアのサーヴァントから渡された結界を貼る札を貰っていたのが幸いした。これを使えばここら一体から自分達の気配は察知されない、大体一日くらいは持つだろう。
「……」
衣服についた汚れを払うこともせず、アルクェイドは教会の古臭いベッドにその身体を横たえる。その痛ましい姿に、立香は唇を噛む。もっと自分がマスターとしての役割を果たせていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。本来特異点を修正するはずだったAチームの誰よりも劣る身では――。
「……忌々しいわね、サーヴァントって。元の身体ならもっと殺れたのに」
「アルクェイド?」
「……なんでこんなことになったのかしら?」
何度も思い返す。なぜ自分は生み出されたのか? なぜこうして存在しているのか? あの"元凶"を殺して消滅したと思ったら、こんなわけのわからない身体になっていて、いきなり攻撃されてこのザマだ。自分の無様さに嗤いが込み上げてくる。
「そういえばアルクェイドは自分のこと"紛い物"って言ってたよね。あれって……どんな意味なの?」
「文字通り、読んで字のごとく、よ。真祖の姫アルクェイド・ブリュンスタッドの吸血衝動が形となって具現化したの存在、それがわたしなのよ――」
「――というわけ。理解できたかしら?」
「うん、まぁ……大体は」
彼女がぽつりと話す世界のあらまし、"生前"の話を立香は黙って聞いていた。その話ならば、あれほど強い殺人衝動も納得できる。
「確かに君はその、本物……の偽物かも知れない」
「知れないではなく、そうなのよ」
「それでも、
立香は"本物"のアルクェイドのことは知らない。知っているのは"目の前にいる"アルクェイドのことだけだ。本物だろうが、偽物だろうが、"立香にとってのアルクェイド"は"この女性"なのだから。
「……なに? 口説いてるつもり?」
「え、い、いや、そんなつもりじゃ……」
一瞬目を見開くアルクェイド、しかしすぐさま表情は戻り、立香の言葉を茶化す。そんなクサいセリフを言っていただろうか? そんな気はなかったが、彼女がそういうならそうなのだろう。
「物好きな人間ね。わたしのような吸血鬼を口説くなんて――」
「でも、理由はどうあれ助けてもらったし」
「……」
実際、彼女がいなければ自分は死んでいた。彼女はいわば命の恩人だ。そしてその危険な状況……吊り橋効果もあり、立香はアルクェイドに惹かれつつあった。自身を助けたあの瞬間の、月夜に立つ彼女の姿に一目惚れしていたのしれない。
「……それより、これからどうする気なのかしら? このまま缶詰め?」
「いや、少なくとも一日くらいは敵はこの中に入ってこないはずだから、このまま身体を休ませて――」
自分に回復魔術はない以上、アルクェイドの傷を癒す方法はない。あとは時間めいいっぱい休んでもらうしか方法はない。はずなのだが――
「そんなことしなくても、短時間で回復する方法があるでしょ?
「えっ――?」
アルクェイドの言葉に目を丸くする立香は腕を引かれ、一瞬にしてベッドに押し倒される。
「知ってるわよ。ヤれば魔力が回復するってこと」
「い、いやそれは……」
聞いたことはある。が、実際その機会に恵まれなかったということも大きい。そこまでのピンチに陥ったことはないし、その場合はカルデアとのパスが繋がっている状態だった。今回のようにカルデアとの繋がりを断たれ、これほどまでのピンチは初めてだ。
「死にたくないでしょう? なら生き残れる可能性を少しでも上げる為に、覚悟を決めなさい。据え膳食わぬは男の恥って言うんでしょ?」
「ぐっ……!」
確かにここで彼女と性交すれば回復も短時間で済むだけでなく、全開に近いところまで回復させられるかもしれない。しかし……
「オレ経験ないんだけど……」
「あら奇遇ね、わたしもよ。でも知識はあるわ。初めての相手が怖い吸血鬼様だって諦めなさい」
「そっちこそ、オレみたいな男が初めてだって諦めてよ」
「言うじゃない」
ニタリと笑い、アルクェイドは顔を落とし立香の唇を奪う。その後、その部屋から布擦れの音が響いた――
◇
「はぁっ! ふぁっ! んんっ!」
「あぁっ……! アルクっ……アルクェイドっ……!」
ギシッギシッとベッドが軋む音と、肉が打つ音が響く。古臭い寝室で、立香はアルクェイドと身体を交えていた。騎乗位でゴム毬のように弾む彼女の乳房を眺めながら、彼女がもたらす快感をただ享受する存在へと成り果てる。
「んぐっ! ふぅっ! どうかしらっ? 真祖の御姫様とSEXしてる気分はっ!?」
「ぐっ、あぁっ! き、気持ちっ、良すぎるよっ……!」
「アナタこそ、見た目に寄らず、大層ご立派なモノを持ってるじゃないっ……!」
アルクェイドの膣がもたらす快感は、童貞であった立香にとっては未知の世界だった。しっとりと、それでねっとりとして自身の生殖器をきつく締め上げて扱く魔法の蜜壺。下腹部から全体へと流れ込んでくる甘美な快感に、思考が性欲一色に染まっていく。
一方のアルクェイドも経験はない……もっとも本物はあったかもしれないが。破瓜の血は一瞬で愛液の波に押し流され、ただこの男の男根を好き勝手に貪る。立香の男性器は規格外とっていいほどの大きさだ。黒人に勝るとも劣らないサイズの長大な肉棒がもたらす快楽に、脳内思考回路がスパークしてしまいそうになる。腹部なんて腰の動きに合わせてボコッボコッと浮き出る始末だ。
「あっ! んうっ! んくっ! あぁっ……! 相性っ、いいってっことなのかしら!?」
「うぅ……! かもっ……!」
肉棒がアルクェイドの膣穴を抜き差しする度に多大な快楽が身体に流れてくる。先端から根元まで隅々まで締め付けてくる媚肉。そのヒダの一つ一つがもたらす快楽はなんとも気持ちが良い。火照った彼女の顔も、揺れ動く乳房も打ち付けられる尻肉の感覚も、すべてが立香の興奮を押し上げていく。
ぱんっぱんっと彼女が腰を打ち付ける度に、肉竿を膣ヒダが扱き上げ、至極の快楽を立香にもたらす。自分の手でするのとは次元が違う気持良さに、立香は目の前の彼女のことしか考えられなくなる。
「ふっ、ふぅ、ふぅんっ……! はぁっ! んちゅっ、ちゅうぅっ……!」
アルクェイドが上半身を倒し、立香に覆いかぶさると、彼の唇を奪った。唇をこじ割り、歯を開けさせ、中にある彼の舌に自分のソレを絡ませる。舌を吸い上げ、ザラついた舌腹を擦り合わせ、唾液を送り、吸い上げていく。口内の粘膜すべてが彼女の舌によって蹂躙されていくその様は、まるで捕食のようだ。
顔に当たるアルクェイドの熱い吐息、眼前にある目を閉じて快楽を貪る美女の顔。こんな美女が自身と今身体を重ねている。なんとも彼女が愛おしい。彼女を優しく抱きしめ、より口づけを深くした。
「っ! ……んちゅっ、べろっ、れろぉ、ぶちゅるっ、じゅろろろっ……!」
音を発てるように吸い上げられる舌。吸い付きから解放されると、舌先で自身のベロを突かれる。"アナタもやりなさい"と催促されているのだろうか。ならばと立香も自身から舌を動かし、アルクェイドの舌に絡ませていく。肉が打ちつけられる音に混り、濃厚な接吻音が響き渡る。
舌と舌とのSEXに酔いしれる二人は、より激しくより深く口づけを貪り合う。アルクェイドもキスがお気に召したのか、膣内の締め付けが急激に強くなっていた。ギチギチと締め付け、子種を欲しているのが伝わってくる。
「んふぅ、んちゅぅ、ちゅぶるっ、ちゅぶろっ、ずろろぉぉっ……!」
アルクェイドも感じているらしく、腕を立香の首に回して顔を抱き寄せて、より奥まで舌をねじ込んでいく。目は蕩け、熱に浮かされた顔を見せる彼女は、戦闘の時のような恐怖感は感じない。美しく、なんとも欲情を誘う女性そのものだ。
二人の口周りは唾液でベトベト。それでも狂ったかのように舌を絡ませ合う。
(ぐっ……イキそうっ……!)
上下を責められ、立香の下腹部から射精感が込み上げてくる。それも今までの射精感とは遥かに違う、強烈な射精感。今までのが一なら、この射精感は百に相当するかのような、そんな感覚。湧き上がる射精感に、立香は両手をアルクェイドの臀部へと伸ばし、豊かな尻肉をぎゅうっと掴んだ。
「んぐっ……! んむっ、じゅるっ、ぢゅるぞぉっ」
手跡が残るほど強く掴み、アルクェイドが腰を上げるのに合わせて、自身の腰に強く引き落とす。より強くなる打ち込み。それは彼女にも強い快楽を与えているようで、白く美しい肢体が痙攣を見せ始めていた。膣内もブルブルと震え出し、より激しさを増す口づけが、アルクェイドの絶頂が間近であることを立香に知らしめる。愛液が大量に漏れ、激しさを増した突き込みに合わせ、周囲に弾け撒かれていく。
バチバチと脳内で火花が散り、陰嚢がきゅっと縮み、急激に射精感が込み上げる。限界を悟った立香は、アルクェイドが腰を上げ、亀頭まで抜き出した瞬間に、一際強く自身の下腹部に叩き落とした。
(出るっ……!)
ぶびゅるるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!!!!! どびゅるるるるっっっっ!!!! ぶびゅびゅびゅびゅびゅびゅぅぅぅっっっ!!!
「んぐぐぅぅぅっっっ!!!!!」
子宮内が瞬く間に、立香の極濃黄濁精液に侵略されていく。彼女も立香と同じタイミングで絶頂に上り詰めたらしく、深く口付けた唇の隙間から、アルクェイドのくぐもった絶頂嬌声が漏れ、膣壁が更に締り、肉棒が軋む。軋むのはなにも立香の肉棒だけではない、強く肉棒を打ち込まれたことで、アルクェイドの子宮口も軋み音を立てて、その形を歪ませていた。
二つの肉体が激しい痙攣を見せ、強烈な性的絶頂を全身で味わう。
「んふぅ……ふぅ……んちゅっ……」
やがて絶頂が引き、余韻を味わうように口づけ合い、身体を揺すり合わせる。汗に塗れた肉体は滑りを帯び、肉体を擦り合わせるだけでも心地よい微弱な快楽を生じさせていく。
「ぷはぁ……」
アルクェイドの唇がようやく離れる。濃密なキスをしていた唇間には唾液のブリッジが作られ、なんとも淫靡な光景を思わせた。アルクェイドは立香の胸板に手を置き、上体を起こす。射精が止まったにも関わらず、膣内の男根は未だに硬さを保ち、まだ満足には程遠いと暗に彼女に訴えていた。立香の絶倫性を知ったアルクェイドは、口角を釣り上げて笑う。
「アナタ、まだイケるわよね?」
きゅっと締まる膣壁に、立香はピクっと身体を跳ねさせる。ぼんやりと見上げるのは、強く火照った身体からむわっと牝のフェロモンを漂わせる極上の女。その彼女の姿は、まさに男から精という血と奪う吸血鬼そのものだった――
◇
「アルクェイド!」
「ええ! 悪くなかったわよアナタ。最期の一瞬だもの、せいぜい派手に散りなさい!
「ヌおおぉぉぉぉっっっ!!!」
あの後も性行為を重ね、完全復活を果たしたアルクェイドは尖兵らをことごとく薙ぎ払い、彼女を呼び出した元凶である妖術師に宝具を叩き込んだ。複数の鎖を飛ばして動きを封じた敵を、鋭い爪で引き裂く。圧倒的な力で相手をねじ伏せ、抵抗する間も与えない一方的な蹂躙であった。魔力はほぼほぼ使い切ってはしまったが。
「痛覚はまだ生きてる? 脊髄はまだ存命? 脳漿はこぼれてない? 息耐えるまでの空白を、絶望で走り抜けなさい」
「ぐふっ……まさか飼い犬に手を噛まれるとは。無念……ではありますが、いいデータが取れました。ンフフフ……ではまた、機会があれば……」
そう言うと、キャスター・リンボは砂となって消えていった。激しい戦闘が止み、静寂が訪れる。
「どうやら式神だったみたいね。まんまとしてやられたわ」
「でもこれでここから抜け出せる……!」
恐らく自分をここに呼び出したのも彼だったのだろう。こんな極小の特異点を作って、こんな手段で奇襲を仕掛けてくるとは、立香も思いもしなかった。多分カルデアからの干渉も出来るはずだ。
「ここでお別れね」
「ありがとうアルクェイド。……無理させてゴメン。令呪三つも使っちゃって」
「いいのよ、そんなことは」
特異点の消滅は彼女との別れも意味する。短い間ではあったが、彼女には随分と助けられた。名残惜しさはあるが、これもまた定。機会があればカルデアに召喚されるかも知れない。
「悪くなかったわ、あなたとの時間」
「そう言ってくれると嬉しいな……」
「ええ、最高だったわ。だからせめてものお礼として――」
「――
「え――?」
立香が気が付いたときには、アルクェイドは自分のすぐ目の前。彼女が振りかぶった血の付いた爪が、自身に振り下ろされるのをスローモーション再生を見ているかのように眺めていた。
ガキィンっ!
「先輩っ!」
「っ!? マシュっ!」
しかしその爪が振り下ろされることはなく、自分のよく知る盾に塞がれる。自分を守るように眼前に立つ彼女に、立香は驚きと喜びを隠せず、堪らず彼女の名を叫んだ。
『ようやく通信が繋がったよ! 間一髪だったね!」
「ダ・ヴィンチちゃん!」
通信機能も回復したのか、空間に浮かび上がった液晶にダ・ヴィンチの姿が浮かび上がる。マシュが駆け付けてくれたということは、カルデアとの通信が回復したのだろう。安堵したいところではあるが、それよりも――
「……どうしてなの? アルクェイド」
「どうしたもこうしたもないわ。言ったわよね? "吸血衝動が元"になってるって。その中には殺人衝動も含まれてるの」
「つまり、わたしは
「ぐっ!」
爪による連撃をマシュは防ぐ。もう魔力が尽きる寸前であるアルクェイドは立香の目から見ても、明らかにパワーダウンしている。はっきり言って今の状態ではマシュに敵わない。それでも、それでもだ。僅かだが特異点消滅に時間はある。自身の消滅にも時間がある。なら、取るべき行動は一つだった。
「気が付かなかったの? あなたとわたしと出会ったココが、とっくに地獄だったのよ!」
アルクェイドは後方に飛び、距離を取る。彼女から向けられている視線には確かに殺意がを感じる。だが、その中には確かに信頼の念もあることを、立香は感じていた。
「じゃあ勝負ってこと? アルクェイドがオレを殺せるか、それとも防がれるか」
「そうよ。……吸血鬼の力、思い知っていただけて? 油断したらすぐに殺してあげるわ!」
彼女は自身を殺しに来ている。それだというのに、立香はどこか楽しさを覚えていた。でも……悪いけどここで死ぬわけにはいかない。
「いいよ。アルクェイドがマシュを倒せたら、の話だけどね」
「先輩! 指示をお願いします! 只今より敵サーヴァントの迎撃行動に移ります!」
まだやるべきことは沢山ある。まだ死ねない。すべてが終わるまでは。
「へぇ……、いいわよ。遊んであげる。精々防いで見せなさいな」
殺気を露わにして攻撃を放つアルクェイド。彼女もわかっているはずだ。カルデアにいるサーヴァントはマシュだけじゃない。数騎でかかれば、彼女は容易く倒されるだろう。それでも、彼女は自分を殺さざるを得ない。
(まだ死ねない。――けど、もしすべてが終わったら――)
(君に殺されるのもいいかな)
こんな状況で、そんなことを考えてる自分は、もうあの時彼女に