「……お、お前、その手足は『死の呪い』……。なんてこった」
宝玄仙が焦ったような声を出した。
次の瞬間、沙那の股間を責めていた触手が消滅した。宝玄仙が道術を解除したようだ。
淫靡な責めは、とことんまで悪乗りする宝玄仙が、中途で責めをやめたことで、沙那も、どうやらいまはただならぬ事態だということを悟った。
「ほ、宝玄仙……?」
孫空女が苦しそうな声を出した。
その手足は、少なくとも袖の外の部分については、真っ黒になっている。
よくわからないが、これが死の呪いというやつなのだろうか……?
宝玄仙が孫空女の胸に手をどんと押した。
かなり、余裕のない感じだ。
ばちんと金属が弾ける音がして、孫空女の手足に嵌まっていた緊箍具が四個に分かれる。
宝玄仙が引き千切るように、孫空女が身に着けているものを剥がし始めた。
孫空女は、あの山賊たちから奪った衣類を身に着けていたようだったが、宝玄仙がそれらを脱がして完全に素裸にすると、手首と足首の周辺だけでなく、それぞれ付け根の近くまで真っ黒く変色している。
「な、なに、これ?」
淫靡な責めから解放されて、我に返った沙那は、その孫空女の姿にびっくりして声をあげた。
「こりゃあだめだ……。思ったよりも進行している……。間に合わない。沙那、孫空女の手足を付け根から切断するんだ。こいつの手足はもう駄目だ。霊気の死毒が回ってしまっている。捨てるしかない。いまは、一時的にわたしが注いだ霊気が抵抗体になって、それでとまっているけど、すぐに胴体に回る。そうすれば、こいつは瞬時に死んでしまうだろう」
宝玄仙が叫んだ。
「だ、だけど……」
沙那は驚いてしまった。
いきなり、孫空女の手足を切断しろなどと……。
「話は後だ。手足なら、わたしが後でいくらでも復活して繋いでやる。だけど、死毒が胴体に回れば終わりだ……」
宝玄仙が四方に結界を刻みだした。
周囲一帯を宝玄仙の力場の結界で包んでしまうためのようだ。
すぐに、準備が整った。
宝玄仙が孫空女に向かって手をかざす。
孫空女の身体がふわりと浮きあがった。
「さ、沙那……」
孫空女が弱々しく呟いた。
もう虫の息だ。
その眼にはほとんど生の色がない。
沙那の目にも、孫空女が瀕死の状態であることはわかった。
とりあえず、沙那は荷を全部おろした。
「わたしが治療術で止血をしているから、完全に付け根から手足を切り離しておくれ」
宝玄仙が怒鳴った。
よくわからないが、沙那は覚悟を決めた。
宝玄仙を信じるしかない。
「ごめん、孫空女──」
沙那は剣を抜いて、宙に浮いている孫空女めがけて剣を一閃させた。
「んうっ」
孫空女の右手が付け根から落ちる。
確かに、まったく出血はない。
孫空女は、わずかに小さな呻き声をあげただけだ。
続いて、一閃。
今度は左腕が落ちる。
「脚もだよ。急ぐんだ」
宝玄仙が言った。
孫空女の両脚が空中で限界まで開かれた。
宝玄仙の道術だろう。
沙那が剣を振るいやすいようにしたに違いない。
両足を付け根から落とす。
「孫空女を抱いてな」
沙那が剣を収めると、それを待っていたように、宝玄仙が怒鳴った。
胴体と顔だけになった孫空女が落ちてくる。
沙那は慌ててそれを抱きとめた。
手足のなくなった孫空女は、驚くくらいに軽かった。
手足の切断面は、すでに肉が盛りあがって包まれている。
これも宝玄仙の道術なのだろう。
孫空女は、すでに意識がなかった。
周囲でぱちんと音がした。宝玄仙が結界の道術を解除したようだ。
「限界までの霊気を使うよ。ちょっと周囲が揺れる感じがするからね」
宝玄仙が怒鳴り声をあげた。
よくわからないが、とりあえず沙那は地面に座って孫空女を守るように身体で覆う。
いきなり突風のようなものを感じた。それとともに、地面がぐらぐらと揺れ出しもした。
驚愕したが、それはただの錯覚だとわかった。
しかし、沙那には確かに、地面と風が激しく揺れる感覚に襲われている。
これも道術?
沙那は度胆を抜かれた。
宝玄仙は歯を食い縛って、沙那が切り落とした孫空女の四肢を一心に睨んでいる。その全身からは夥しい汗も噴き出していた。
沙那は、宝玄仙がこれほどまでに真剣な表情をしているのを見たことはない。
やがて、真っ黒く変色していた手足が、表面からしゅるしゅると音を立てて溶け始めた。
そして、しばらくしていから、爆発するように、一気に四散して消失した。
「ふうっ、これで、とりあえず、大丈夫だ」
宝玄仙が大きく息を吐いて、尻もちをつくように腰を落とした。
「だ、大丈夫ですか、ご主人様?」
沙那は驚いて声をかけた。
「ぷはっ」
そのとき、大きな息が孫空女から洩れた。まるで詰まっていた息がやっと通ったかのような息だった。
孫空女の胸が大きく上下している。
「さ、沙那……?」
孫空女の目が開いた。
意識を戻したようだ。
「ふっ、目を覚ましたかい、孫空女? 手足を失くした気分はどうだい? 面白そうだから、残りの一生をそうやって暮らすのはどうだい? 大きな鞄に入れて運んでいってやるよ。淫具で責め立てながらね……。どうせ手足はないんだから、性交のことしか考えられない生活をさせてやるよ。それでいいじゃないかい」
宝玄仙が寄ってきて、孫空女に笑いかけた。
「馬鹿なことを言わないでください、ご主人様。孫空女の手足は戻るんですよね」
沙那は声をあげた。
「そんなことを言われても、死毒に覆われた手足は消滅させてしまったからねえ……。だけど、こいつは、わたしの玩具として暮らすんだから、その姿で別にいいんじゃないのかい? しっかりと胸はあるし、股もある。尻の穴だって残っている。ちゃんと調教できるさ。考えてみれば、性奴隷には手足なんて邪魔なくらいさ」
宝玄仙は大きな声で笑った。
さすがに沙那も、この状況で下品な冗談を続ける宝玄仙にむっとした。
しかし、一方で、いつもの宝玄仙に戻ったということは、孫空女が危ないという状況は終わったということではないかとも思い直した。
さっきの宝玄仙には鬼気迫るものがあったし、考えてみれば、それだけ危機一髪の状況だったということでもあるのだろう。
「とりあえず、連れてきな、沙那。その姿の孫空女を犯してやる。考えてみれば、
「も、もう、ありません。容器は空になったので捨ててきました」
本当のことだ。
あのいまいましい痒み剤は、容器が空になったのを幸いに置いてきた。
宝玄仙のことだから、あんなものはすぐに作れるのだろうが、沙那を苦しめた痒み剤を捨ててやったのだと思えば、少しは気も晴れた。
「なんだい。じゃあ、また作らないとならないね」
なにがおかしいのか宝玄仙は、けらけらと笑った。
だが、孫空女の手足を切断してしまった沙那としては、気が気でない。本当に孫空女の四肢は復活するのだろうか?
「……し、死毒……。あの黒かった手足は死毒というやつなのかい……?」
孫空女が荒い息をしながら言った。
自分の手足が腐ったように真っ黒く変色していたという記憶はあるようだ。
「わたしに感謝するんだね、孫空女。わたしがお前を道術で快楽責めをしている最中だったから、その霊気が御影の悪意のある霊気を跳ね返していたんだ。だから、手足以外にはなかなか死毒が浸透されずにすんだんだよ。わたしが、沙那の身体を使って共鳴術を仕掛けていなければ、本来なら、あっという間にお前は死んでいただろう」
「死んでた……?」
孫空女はまだぼんやりとしていた。
だが、すぐにはっとした顔をした。
やっと、手足がなくなっていることに気がついたようだ。
「手足を斬ったのは沙那だからね。恨むなら、こいつを恨みな。そして、助けたのはわたしだ。わたしのことは恩に着るがいいさ」
宝玄仙が笑った。
「ご、ご主人様、いい加減なことばかり言わないで、助けてあげてください。孫空女の手足は本当に復活できるんですよねえ?」
沙那は言った。
宝玄仙は、手足を切断する前に、そんなことを口走っていた。
だから、できるのだろうと思う。
「まあね。だけど、切断した手足の再生は、さすがのわたしでも大施術だ。お前にも協力してもらわないとならないよ、沙那」
宝玄仙の顔から笑みが消えて、再び真顔になった。
沙那は、どんなことでもすると返事をした。
すると、宝玄仙がにやりと笑った。
「そんなに緊張するようなことじゃないさ。お前と孫空女で、しばらく愉しい思いをしてくれていればいいのさ……。ともかく、ここじゃあ、なんだから、どこかに山小屋とか、隠れられる場所はないかい、孫空女?」
「……すぐそばに洞窟がある……。あたしの作った隠れ処だよ……。食べ物とか灯かりとか……。必要なものは揃ってる……。だ、だけど、よくここがわかったねえ……。ここまでやって来るのも大変だったじゃないのかい?」
孫空女が思い出したように言った。
時間が経つにつれて、口調もしっかりとしてきたと思う。
意識もだんだんと明晰になってくるようだ。
「一度わたしに捕まれば、逃げるなんて言うのは無理なんだよ。覚えておきな、孫空女──。じゃあ、その洞窟に連れていくんだ」
宝玄仙は立ちあがった。
沙那は一度孫空女をおろしてから、荷を背負い直して、もう一度胴体だけの孫空女を抱えあげた。
*
「なかなかの棲み処じゃないかい、孫空女」
洞窟の中に入ると、宝玄仙が感心したように言った。
孫空女を抱いている沙那も同じ感想を抱いた。
孫空女が案内した洞窟は、入り口が巧みに隠されていたが、中に入ると意外にも広くて、しかも、物が揃っていて、保存のきく食べ物や青銅の水桶、燭台をはじめとして生活に必要なものが揃っていた。その量も、ひとり分ということはなく、少なくとも十数人はしばらくは隠れていられそうなものが揃っている。
奥に進めば、さらに場所もあるようであり、おそらく、孫空女は、もしものときには、何人かの仲間を連れて隠れることができるように、ここを準備していたのだと思った。
洞窟には乾いた毛布が何枚もあった。
沙那は荷を下ろすと、洞窟の地面に毛布を重ね敷きをして、その上に手足のない孫空女を横たえた。
「じゃあ、ご主人様、お願いします。孫空女の手足を……」
「わかっているよ。ただ、これは難しい施術だということを知っておくれ。わたしとしても、かなりの体力のいる術なんだ。手伝ってもらうよ、沙那」
「わかってます。なんでも言ってください」
沙那は言った。
「じゃあ、とりあえず、お前も素っ裸になるんだ。そして、わたしの施術のあいだ、孫空女を犯し続けるんだ……。多分、ひと晩はかかるよ。そのあいだ、ずっとやり合ってもらわないとならない思うから、覚悟して責めるんだよ」
宝玄仙はあっさりと言った。
驚いたが、かっとなった。
この状況にも関わらず、またしても、沙那に孫空女を責めさせるという淫らな行為をさせようとしていることに腹がたったのだ。
「ご主人様、真面目にやってください」
沙那は声をあげた。
「わたしは真面目だよ──。いちいち、説明しないとならないのかい。面倒くさいねえ……」
宝玄仙が頭を掻く。
そして、話を続ける。
「いいかい、沙那──。孫空女の手足を復活させるには、大量の霊気が必要だ。わたしは、それを朝までかかって集めては供給し、供給しては集めるということをずっとしないとならないんだ……」
「はあ……」
沙那は生返事をする。
「だけど、理由は知らないが、霊気というのは、突き詰めれば、人間が性交のときに生まれる淫気とほとんど同質なのさ。むしろ、霊気の極めて純度の高いものが“淫気”だということもできるかもしれない。とにかく、お前らが乳繰り合って、淫気を産みだしてくれれば、それだけ、わたしのやることも楽になる──。わかったかい。いいからやりな」
宝玄仙が苛ついたようにまくしたてた。
その表情には、いつものふざけたような感じはないので、もしかしたら、本当なのかもしれないが、それにしても、沙那と孫空女が淫らに愛し合うことが、道術に必要な霊気を確保することになるということなど、俄かには信じられるものじゃない。
ただ、面白がって騙しているだけじゃないのだろうか……?
……とはいえ、沙那としても、これ以上、宝玄仙に質問したところで、道術や霊気のことなど、わかりようもないし、宝玄仙を怒らせれば、また機嫌を悪くしてしまうかもしれない。
曲がりなりにも、いまは孫空女を助けようとしている気配ではあるし、大人しく従うことにした。
とにかく、服を脱ぐ。
すると、毛布の上で待っている態勢だった孫空女が口を開いた。
「あ、あんた……あたしを助けようとしているのかい……? い、いや、助けてくれたのかい? 魔毒というのは、あの黒女にかけられた道術なんだろう……? それに蝕まれたあたしを……あんたは助けた……。なんでだい?」
孫空女が当惑したように言った。
話しかけている相手は宝玄仙だ。
沙那は、孫空女がなにかを訊ねようとしていることに気がついた。
孫空女の意識がすでにはっきりしているのはわかっている。
だが、ここまでやってくるあいだ、孫空女は沙那に抱かれながら、困惑した表情でずっと押し黙っていた。
なにかを考え続けている感じだった。
「お前への罰は、後からだよ。とにかく、死なれては、罰も与えられないしね。それにしても、わたしがあのとき、言っただろう──。御影は、心の底からの性悪道士なんだ。影法師とはいえ、自分を殺した相手をただで許すわけないだろう。だから、行くなと言ったのに……」
宝玄仙が笑った。
「答えになっていないよ。なんで、あたしを助けてくれたんだよ」
孫空女が声をあげた。
「なんだい……。助けてやったのが気に入らないような言い草だねえ……。まあいい。それにしても、これは厄介だよ。いずれにしても、これで終わりじゃないからね。魔毒は一度かけられれば、術者が解除するか、死ぬかしない限り、ずっと死の呪いとして、いつまでも、お前を追い続けるよ……」
「えっ?」
孫空女が驚いている。
沙那もだ。
「まあ、わたしといれば、問題ないさ。わたしの霊気は、あんな小物と比べものにはならないくらい強いからね。お前の身体が、わたしの霊気を吸い込み続ける限り、御影の魔毒は無効だ。その代わり、お前はわたしから離れられないということさ」
宝玄仙が笑った。
だが、宝玄仙から離れれば、孫空女に魔毒が広まって死ぬなど、沙那には信じられない。宝玄仙が適当なことを喋っているだけの可能性もある。
ただ、考えても仕方のないことを、これ以上考えることもやめにした。
完全な素裸になった沙那は、孫空女の寝ている横に膝をついて座った。
「……孫空女、ご主人様を信じましょう……。ご主人様は、道術だけは、すごいお人よ。きっとあなたの手足を復活してくれるわ」
沙那は孫空女にささやいた。
「“だけ”とはひどいね……。まあいい。じゃあ、いくよ。施術は数刻も続く長いものだからね。気合を入れて、性交を続けるんだよ。ただ、続けるだけじゃない。お互いに感じまくって、できるだけたくさんの淫気を長く放出し合うんだ」
宝玄仙が苦笑しながら言った。
次の瞬間、沙那はむず痒い感覚を股間に覚えた。
そして、女の局部のすぐ上の部分に出現したものに驚愕して絶叫した。
「ひいいっ、いやああっ──。ご、ご主人様、悪趣味です──。や、やめて──。な、なくして──。消してください」
沙那の股間に出現したのは、太い男性器だった。
勃起こそしていなかったが、突如として自分の股間に生えた醜悪な男根に、沙那は動転してしまった。
「なに言ってんだよ、沙那。お前らは、内丹印で共鳴していると言っただろう。同じ女の身体同士だったら、快楽の共鳴のために、お互いの快感の増幅が沸き起こって、すぐに果ててしまうよ。ただ、どっちかに男根があれば、共鳴は解除される……。だいたい、さっきからつべこべと文句が多すぎるよ、沙那──。いいから、わたしが朝までやれと命じたら、さっさとやればいいんだ──。そうだ。命令しよう……。そうすれば、諦めてやるしかないからね」
「ま、待って、宝玄仙さん……」
すると、孫空女がそれをとめた。
そして、胴体だけの身体を器用にひっくり返してうつ伏せになると、沙那の身体ににじり寄って来た。
「……沙那、気に入らないかもしれないけど、あたしをその身体で犯してくれないかい……。この人がとんでもない変態女だということはわかっているけど、どうやら、さっきから言っていることは、本当のことのようだよ。あたしは、この人を信じる……。信じると決めたら、それ以上は疑わない。それがあたしのやり方だ。多分、あんたとあたしが愛し合うというのは、必要なんだよ……。あたしの勘がそう言っている。この人の言うことは正しいとね……。それとも、沙那はどうしても嫌かい……?」
孫空女が言った。
沙那は当惑した。
「い、嫌じゃないけど……」
沙那としてもそう言った。
今朝、この孫空女は、沙那を慰めるために、自ら進んで沙那を愛してくれた。
あのときのありがたさを忘れてはいない……。
「だったら、いいじゃないかい……。それに……それに、こういうのも悪くないよ……。正直にいえば、あたしは、沙那に犯されるのは嫌じゃないんだ……。ちょっと、どぎまぎしてるよ」
手足のない孫空女が沙那の股間に男根に口を伸ばして、ぱくりと咥えてきた。
「おう、やる気になったかい、孫空女──。沙那も、手足のない孫空女に負けんじゃないよ。まさかとは思うけど、孫空女よりも先に果てたりしたら、調教を最初からやり直すからね」
積極的な行動に出た孫空女の態度に、宝玄仙が嬉しそうに声をあげた。
だが、沙那はそれどころじゃない。
孫空女から刺激を受けている男根のおかしな感覚に当惑していた。
そして、むくむと先端を上にあげながら、大きくなっていく男根に驚いて、またしても悲鳴をあげてしまった。
*
「だ、だめえっ」
沙那は叫んだ。
しかし、そのときには、孫空女の口の中に、なにかの塊のようなものを放出してしまっていた。
突然に襲い掛かり、あっという間に股間を走り抜けていった得体の知れない感覚に、沙那はまったく対応できなかった。
「さっそく達したかい、沙那? だけど、安心しな。本物の男の身体なら、一度果てれば、しばらく復活するのに時間がかかるけど、本体は女だからね。いけばいくほど、むしろ、身体が熱くなるはずだ。遠慮なく、十回でも二十回でも達するといいよ」
宝玄仙が大きな笑い声をあげたのが聞こえた。
その宝玄仙は、洞窟の地面に胡坐をかいて、沙那と孫空女が愛し合うのを見守る態勢だ。
沙那は、荒い息をしながら、ふと宝玄仙を見た。
宝玄仙は笑ってはいたが、まるで頭から水でも浴びたかのように、びっしょりの汗だ。
沙那は、宝玄仙がかなりの力を遣い続けながら道術を施しているということを悟った。
「本当だ……。沙那の股がすぐに大きくなった……」
孫空女が自分の口の周りについていた白い分泌物を舐め取りながら笑った。その男の精のようなものが、沙那が放出したものなのだろうか……?
まあいい……。
こうなったら、毒を食えば皿までの気持ちだ。
これが孫空女を救うためなら、沙那も馬鹿になったつもりで、孫空女との愛の行為をするだけだ。
沙那も覚悟を決めた。
孫空女に案内をされた山の洞窟だ。
魔毒に犯された孫空女を救うために、宝玄仙の指示で沙那は、魔毒に侵されて黒く変色した孫空女の手足を切断したが、いまは失った孫空女の手足を復活させるための施術をやっている最中だ。
宝玄仙曰く、手足を復活するための霊気を確保するためには、沙那と孫空女が淫らに愛し合って、“淫気”というものを可能な限り放出するのが必要だということであり、いま、沙那は、宝玄仙の道術で股間に男根を生やさせられて、手足のない孫空女と性愛を開始したところだ。
だが、吹っ切れたように積極的になった孫空女に、男根を口で刺激され、呆気なく沙那は達してしまった。
「……じゃあ、沙那の番だよ。あたしにも淫らなことをしてよ。あたしも気持ちよくなりたいさ」
孫空女が白い歯を見せた。
その屈託のなさそうな笑顔に、沙那は苦笑しそうになった。
なんて、可愛らしい顔をするものだろう。
この孫空女には、沙那のようにうじうじと悩んだり、恨んだり、絶望にひしがれるということがないような気がする。
笑うのも、怒るのも、そして、愛し合うことも、その場、その場で一生懸命だ。
孫空女と一緒にいると、いじいじとしている自分の性格が嫌になり、そして、馬鹿馬鹿しいものに感じる。
沙那も覚悟を決めた。
孫空女と愛し合う……。
そして、とことん、いい気持ちにさせてやろう。
沙那は脚のない孫空女の股間に指を這わせた。
「あ、ああっ、いいよ、沙那。き、気持ちいい……」
孫空女はすぐに反応した。
眼を閉じて、胴体だけの裸身を悶えさせ始める。
沙那はどきまぎした。
孫空女が沙那の愛撫で気持ちよさそうによがっているのに接していると、沙那の心臓が苦しいくらいに高鳴ってきたのだ。
孫空女の乱れ方は、ちょっと激しすぎるのではないかと思うほどだったが、それは演技というわけでもなさそうだ。
沙那の指が触っている孫空女の股間からは、沙那が驚くくらいに大量の愛液が溢れ出てくる。
それは、孫空女が激しい興奮状態にあるということに間違いなかった。
「ああ、さ、沙那の指……。き、気持ちいい……。ねえ、ねえ、もっとしてよ、沙那。もっとだよ」
「こ、こう?」
沙那は当惑しながら、もどかし気に胴体を揺さぶる孫空女への愛撫を激しくした。
すると、孫空女は額に汗を流しながら、顔を左右に振って甘い声をあげる。
「孫空女、手足のない状態で責められるのが快感なんだろう。もしかしたら、手足を復活させない方がいいんじゃないのかい?」
宝玄仙が身を乗り出してきて、にやにやと微笑んだ。
沙那は、宝玄仙に顔を向けた。
「そんなことを言わないでください。孫空女をお願いします」
沙那は声をあげた。
宝玄仙はやれやれという表情で肩を竦めた。
「はいはい……。だったら、もっとねっとりとやりな。そんなものじゃあ、淫気はまだまだだよ……。そうだねえ……。じゃあ、指はそのままで、口と口でも愛し合いな」
宝玄仙が言った。
ただ、その口調にはあまり余裕のようなものはない。軽口も言葉だけで、宝玄仙は確かに全力で孫空女の手足を復活する道術をかけてくれている。
それが沙那にもわかった。
「そ、孫空女、口づけしよう……」
沙那は身体を傾けて、孫空女の顔に自分の顔を近づけた。
「う、うん」
孫空女が小さく頷いた。
こうやって孫空女と一緒に淫らになりきることが、孫空女を助けることになるのだと信じることにした。
孫空女の言葉ではないが、信じると決めたら、徹頭徹尾信じるのだ──。
沙那は、そう自分に言い聞かせて、孫空女の口に自分の口を重ねていった。
そして、舌と舌を絡め合った。
「ああっ」
「はあっ」
同時に甘い声が出た。
孫空女の舌と唾液に触れると、なぜか沙那も異様な興奮を感じた。
それをもっと得たくなって、さらに濃厚な口づけを重ねる。
すると、沙那の興奮が伝わったのか、孫空女がもっと淫らに反応をしてくる。
気がつくと、沙那と孫空女は、顔と顔を擦りつけるように、強くお互いの口を擦り合わせていた。
まるで淫婦になったかのような錯乱が襲う。
孫空女の甘い体臭と豊かな股間の樹液に引き摺られるようになってきた沙那は、孫空女の震える股間に熱っぽくて、ねちっこい愛撫を繰り返した。
そして、お互いに唾液と唾液を交換してすすり合う。
宝玄仙が驚きとともに揶揄する言葉を口にした気がしたが、もうなにを言っているか、わからないものになっていた。
いまは、孫空女と沙那だけが愛し合う二人だけの愛の行為だ。
孫空女は沙那の腕の中で、右に左にと顔を捩じりながら、淫らに喘ぎ続けた。
「ね、ねえ、来て、沙那……、さ、さっきから、ごつごつと股に当たって……。気になっちゃって」
孫空女がくすくすと笑った。
沙那は自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
さっきから当たっていると孫空女が言及しているのは、沙那の股間に生えている男根のことだろう。すっかりと大きくなって固くなったその勃起した男根は、その存在を誇示するように、沙那の股にそそり勃っている。
正直にいえば、痛いくらいに腫れあがっているそれを、どうしていいか、よくわからないでいたのだ。
「孫空女がおねりだよ。早くしてやりな」
宝玄仙がからかうような言葉をかけた。
「は、はい」
沙那はまるで、その言葉に操られるように、孫空女に覆いかぶさった。
だが、いざ、孫空女の股間に挿入しようと思うと、どこをどうしていいかよくわからない。こんな風に男の視点で女の股など眺めたことなかったので、沙那はちょっとした混乱状態になってしまった。
「さ、沙那……。や、やだっ……。そ、そんなに……じ、焦らすような……」
よくわからずに、あちこちを遠慮がちに突いていると、孫空女が悶えるようなよがった。
「じ、焦らしてなんかない」
沙那は焦ってしまった。
すると、大笑いが聞こえた。
顔をあげると、宝玄仙だった。
哄笑をしながら、むんずと沙那の怒張の幹を掴んだ。
「あ、あん、ご主人様」
その刺激に今度は沙那が甘い声をあげてしまった。
「呆れた娘だねえ。女のくせに、どこが女の穴かもわからないのかい。まるで童貞と生娘の性行為じゃないかい……。ここだよ」
宝玄仙がぐいと孫空女の股間に、沙那の股間を導いておしつける。
ぴったりと合致した怒張を勢いのまま押し入らせると、孫空女は「あっ」と声をあげて、真っ赤に火照った頬をいやらしく左右に振った。
「沙那、男になったつもりで、前後に腰を動かすんだ。孫空女には手足はないんだからね。お前が主導するんだよ」
宝玄仙が笑いながら怒鳴った。
沙那は、わけもわからずに腰を前後に揺さぶる。
「ああっ」
沙那はまたもややって来た得体の知れない感覚に身体を仰け反らせた。まるで、激しい尿意が襲われたようなおかしな感覚だった。
それでいて、尿意とは違うものであり、ぎゅっと股間が熱いものに突きあげられるような鋭い痺れでもあった。
沙那はひたすらに狼狽した。
「尻の穴に力を入れな、沙那。そうすれば、呆気なく精を出さなくて済むよ」
宝玄仙が愉しそうに声をかけてきた。
とにかく、沙那はお尻をぐっとすぼめるようにする。
すると、今度は律動を受けている孫空女が、一段高い声をあげて、身体を激しく振り、もどかし気に乳房をぶるぶると動かす。
「も、もう一回、舌を吸って、沙那」
孫空女が切羽詰まった声をあげた。
沙那は慌てて、身体を孫空女に向かって倒して、唇を合わせる。
沙那と孫空女は、腰を密着させ、唇を吸い、さらに乳房と乳房を重ね合って、お互いに艶めかしく裸体と裸体をうねり合わせた。
やがて、孫空女はがくがくと身体を震わせて気をやった。
沙那は孫空女に股間に生やされた男根を挿入したまま、はっとしてしまった。
孫空女の四肢の切断面のに、ぼんやりと白いものが浮かびあがっていたのだ。
それは、まるで失われた四肢の続きがぼんやりと出現したような感じだった。
「その調子だよ、沙那。もっと尻を動かして、愉しみ合いな。お前らが達すれば達するほど、淫気が濃くなって、それで必要な霊気が膨れあがるんだから。今度は、声をかけ合って一緒に達しな。そうすれば、淫気は二倍にも、三倍にもなる」
宝玄仙が大きな声で言った。
沙那は言われるままに、孫空女に対する反復運動を繰り返した。
孫空女のよがり声は、さらに甲高いものになり、沙那は自分がそれを耳にしていると、どんどん自分が激しく欲情していくことがわかった。
「こらっ、孫空女、黙ってよがってないで、沙那を助けてやりな。沙那だって、必死なんだよ。甘えてんじゃないよ。一緒にいけと言っただろう」
宝玄仙が叱るような声を出した。
孫空女が潤んだ視線をねっとりと沙那に向けてくる。
「き、気持ちいいよ、沙那……。あ、あたし、す、すごく、気持ちいい……。さ、沙那は……?」
「わ、わたしも……」
沙那は切羽詰まった感情が込みあがって、もう自制ができなくなった。
理由なく、ぼろぼろと涙が出てくる。
沙那は孫空女と連結している身体をがくがくと震わせた。
「ああ、いくっ、沙那──。いくよっ、いぐううっ」
孫空女も大きな声をあげて身体を震わせた。
沙那の身体にも、身体の芯まで溶かすような快美感が急速に込みあがった。
「ま、待って、沙那──。こ、今度は一緒に……」
孫空女が昂ぶった声を張りあげた。
沙那はその声に導かれるように、もう一度、接吻をした。
お互いの舌を吸い合いながら、ふたりで腰を動かして、ついに沙那と孫空女は、まったく同時に絶頂を一致させた。
沙那の股間からびゅっびゅっと何かが流れる……。
一方で、孫空女の股間がぎゅっと絞り合わされ、男根の先に孫空女の膣から飛び出した淫液がどっと被さるのを感じた。
「いいよ、お前たち──。もう一度だ。淫気がどっと溢れた。その調子で頼むよ──」
宝玄仙が嬉しそうに叫んだ。
見ると、孫空女の四肢の切断面に浮かんでいた白いものがはっきりと腕と肢のかたちになっている気がした。
沙那は全身を覆う気だるさに耐え、孫空女との愛を交わす行為をもう一度開始した。