やっと、馬の後ろを走ってついていく責め苦から解放された宝玄仙は、鎖を外された途端に、その場に倒れ込んでしまった。
延々と馬に引きづられるように、股縄で走らされて、息も絶え絶えに苦しい。
何度も引きずられて、足にはたくさんの擦り傷がある。
また、全身は水でも浴びたように、汗びっしょりだ。
「傷は治療してよいぞ、宝玄。ただし、それ以外は道術は遣うな」
馬を護衛に預けた皇太子が宝玄仙のところにやって来た。
屋敷の裏側にあたる広場だ。
宝玄仙は、そこ地面に倒れ、その宝玄仙の前に皇太子のでっぷりとした巨漢が立っている。
宝玄仙は、全身の傷の治療を道術でした。
道術は禁止されているだけなので、許可さえあれば、いつでも遣える。
あっという間に、脚が元の真っ白い綺麗な肌になる。
ほかにも、転んだときに打ちつけた肩や二の腕の痛みも消滅する。
「走りながら、何度達した?」
皇太子が笑いながら訊ねる。
「さ、三回か、四回……」
「器用なやつだ」
皇太子が大笑いする。
宝玄仙はぐっと歯噛みした。
「さて、それよりも、なにか私に申すことはないか? それとも、
皇太子がにやにやしながら言った。
こいつの言わんとすることはわかっている。
漢離仙には、皇太子の前で言わなければならない口上を教えられていた。
それに、こいつに抱かれるのは、すでに一度や二度じゃないので、どんなことを言えば、悦ぶかを知っている。
とにかく、こいつは、娼婦のような女ではなく、人妻や貴人、宝玄仙のような、本来であれば、皇太子の身分でも抱けないような女を嗜虐的に抱くのが好きなのだ。
根っからの変態だ。
それで、このところのお気に入りが宝玄仙というわけだ。
「お、お尻を犯してください……」
宝玄仙の声は泣き声に近かったと思う。
とにかく、あまりの恥辱と、走り回らされた肉体的な疲労が宝玄仙をすっかりと追い詰めていた。
「聞こえんなあ、宝玄。それに、もっといやらしい言葉で俺を悦ばせんか」
皇太子がわざとらしい苛つきな口調で声をあげる。
仕方なく、宝玄仙は横になっていた身体を起きあがらせて、その場に正座をした。
「うっ」
座ると縄瘤が食い込み、宝玄仙に惨めな声をあげさせる。
宝玄仙は必死に口をつぐんだ。
「どうした?」
「な、なんでも……ない。お、お願いします……。ど、どうか、この宝玄仙を徹底的にいじめて……ください……。できるだけ恥ずかしいことを……」
宝玄仙は顔をあげて、皇太子の顔を見ながら口上を告げる。
それが命令されていることなのだ。
「……この宝玄仙のお尻を、うんと酷いことを……してください。ど、どんなことでも……」
「よかろう」
皇太子が宝玄仙の前に屈みこみ、乳房を服の上から揉みくだしながら、股間に喰い込んでい股縄をぐいぐいと動かしてきた。
「いやっ、はあっ、ひいいっ」
宝玄仙は正座の身体をのけ反らせて喉を搾った。
それでなくても、すでに何度も気をやっている。
しかも、縄瘤に乗られた油剤は、これだけ女の極みをしても、効果が衰えることなく、走るのをやめたことで、本格的な痒みを宝玄仙にもたらしていたのだ。
「ああっ、いいいいっ」
身体の芯からずきずきと痺れが貫く。
「だが、しばらくのあいだ、もう少し遊ぶとしよう。四つん這いで来い。“命令”だ」
だが、すぐに皇太子は愛撫の手をやめた。
そして、宝玄仙の腕の部分の縄だけをほどき、まだ首輪についている鎖を短めに持って、鎖を持って歩き出す。
逆らうことはできないので、宝玄仙はついていく。
家人や護衛たちは、追い払われてはいるが、この屋敷裏の広場の隅で遠巻きにしているだけで、いなくなっていはいない。
宝玄仙は、そんな場所で下半身を剥き出しにして股縄をされた惨めな姿を晒され続けた。
そのあいだも、股間の縄瘤と油剤が宝玄仙を追い詰める。
皇太子は、宝玄仙が口惜しそうな表情や素振りをするのが愉しいのが、ときどきとまってては愛撫をし、宝玄仙に嬌声をあげさせ、また歩くということを繰り返した。
さらに、一度腰を振って、自家発電で自慰で絶頂もさせられたし、片脚をあげて小便もさせられた。
いくらなんでも、絶対にするものかと思うが、“命令”という言葉を使われれば逆らえない。
宝玄仙は醜態をさらし続けた。
しばらくして、更なる疲労を重ねさせられて、宝玄仙が満足に四つん這い歩きさえできなくなってくると、皇太子が宝玄仙の背後に回って、股縄を外した。
「ああっ」
縄瘤が外れる刺激で、甘い声をあげてしまった宝玄仙の双臀を皇太子が手のひらで叩いた。
「んひいっ」
「よがっていないで、なにか言うことはないのか──」
怒鳴りあげてきた。
宝玄仙はなにもかも諦めたような気持ちになり、口を開く。
「どうか……し、してください……。宝玄仙の……お尻に……」
「そんなものじゃあ、やれんな。もっと積極的におねだりをしてみろ」
皇太子が笑った。
ならば、やるなと言いたいのを我慢する。
「……こ、皇太子殿下……。ほ、宝玄仙の、お尻を串刺しに……うんと深く……。気持ちよくして……」
身の毛もよだつように嫌いな相手に、尻を犯してくれと言うのは、耐えられないほどの屈辱だ。
しかし、逆らうことに意味はないし、漢離仙に言いつけられでもしたら、あいつは本当に明日の朝に精をくれないだろう。
そうすれば、あのいき狂いの地獄だ。
あれだけは嫌だ。
「よかろう。尻の穴を拡げろ」
「はい……」
宝玄仙は地面に身体を倒して、高尻の姿勢になると、両手をお尻にやって肛門が大きく拡がるように左右に引っ張った。
惨めだった。
本当に惨めだ。
ふと気がつくと、目の前の景色が涙で潤んでいるのがわかった。
宝玄仙は必死に泣くのを我慢した。
「前戯はせん。尻の力を緩めよ」
皇太子の一物は身体同様に巨根だ。
それを尻で受け入れるのは容易ではない。
漢離仙の尻穴調教がなければ、絶対に受け入れられなかったに違いない。
だが、調教済みの宝玄仙の肛門は、そんな皇太子の巨根を受け入れて、さらに絶息するような快感を生み出してしまう。
そんな身体にされたのだ。
皇太子の一物がゆっくりと宝玄仙の尻の中に吸い込まれていくのがわかる。
「ああっ、あああっ」
宝玄仙は震えた声をあげた。
それをからかうように、一度抜くような仕草をした。
「ああっ、やめええっ」
宝玄仙はびくびくと腰を震わせて悶えてしまった。
「気持ちよさそうだな、宝玄仙」
皇太子が腰を宝玄仙の尻に押しつけてくる。
肛門が大きく拡がるのがわかる。
宝玄仙はお尻を左右に引っ張っている手にさらに力を入れる。
なんで、こんなことを……。
お尻が裂けそうだ……。
しかし、押し広げられる苦痛よりも、肛門を犯されて沸き起こる快感の方が遥かに大きい。
「あああ、ああああっ、うううっ、うはあああ」
やがて、ぐっと奥まで皇太子の性器が食い込んだのがわかった。
亀頭の先で腹を内側から圧迫されて、まるで本当に串刺しにされているような錯覚に陥る。
皇太子が今度はゆっくりと抜き始める。
「ああっ、死ぬうううっ、ひ、ひいいいっ」
宝玄仙は大きな声でよがった。
半狂乱だった。
もうわけもわからずに、全身の肉という肉が焼き尽される。
「ああ、ああっ、あああっ」
亀頭が抜けかかるというところで、再び奥に貫かれる。
そのときには、宝玄仙はのたうつような快感に襲われていた。
泣きわめき、雌さながらに吠える。
皇太子が宝玄仙の黒髪を掴んでぐいと上にあげさせる。
「なに?」
気がつくと、大きな犬が目の前にいた。
いつの間に連れて来られたのか、すでに真ん前にいる。犬は大きく、人間の大人くらいはあるんじゃないだろうか。家人のような男たちが三人がかりで押さえている。
それでわかったが、巨体の犬はかなりの興奮状態だ。
これは薬物かなにかで、強制的に発情させられているのだとわかった。
宝玄仙は目を見張った。
「“命令”だ。決して逆らうな。俺の次は、この犬だ。お前のために探して調教をさせた犬だ。しかも、尻穴を犯せるように、この犬は調教されておるのだ。犬同士、仲良くするがいい」
皇太子は笑うと、律動を少し早くして、宝玄仙のお尻の中に精を放った。
宝玄仙は、浅ましくもその律動で気をやってしまった。
「交代だ」
皇太子が宝玄仙から離れる。
犬が後ろに連れて来られたのがわかる。
「いやああああ、それだけは、いやあああ、やめてえええ」
宝玄仙は絶頂したばかりの脱力した身体を暴れさせようとした。
だが、“命令”がそれを拒んでいる。
犬が宝玄仙の身体にのしかかる。
そして、さっきまで皇太子の怒張が入っていた場所に、勃起した犬の性器が入り込んでいた。
「いやあああっ」
宝玄仙は文字通りに泣き叫んだ。
*
「いやあああっ」
宝玄仙は泣き叫んだ。
そして、はっとした。
背中からのし掛かられていた大きな犬の感触は消滅している。
そして、いまのは夢だったのだということを悟った……。
宝玄仙は、意識を回復させた。
「あれっ?」
いや、そう思ったのは錯覚だ。
宝玄仙は、まだ闇の中にいる。
いま、自分は、沙那たち供に護られながら、
だが、ここには舟の揺れも、あの供たちの気配もなにもない。
ただの闇があるだけだ。
「久しぶりね、宝玄仙」
闇の中に宝玄仙自身が出現した。
そこだけ、別の光を浴びたように明るい。
「お前は……、
どうやら、ここが宝玄仙の意識体の中だということがわかった。
つまりは、宝玄仙たちが「意識の部屋」と呼んでいる場所だ。
ここは宝玄仙自身の心の中の世界だ。
そして、眼の前にいるのは、宝玄仙のもうひとつの人格の「宝玉」だ。
ふたりとも同じ宝玄仙では、こうやって話す時に不便なので、宝玉がそう自分に名付けたのだ。
宝玉というのは、宝玄仙が生まれたときに親がつけた名であり、宝玄仙というのが、出家したときに師匠にあたる師匠から授かった戒名である。
宝玄仙という戒名を得ることで、宝玉という名は必要でなくなった。
それを宝玉が使っているというわけだ。
「どうだったかしら、昔の自分は?」
宝玉が言った。
「数日前から、やたらに帝都時代の夢を見るのはお前がやっているんだね、宝玉?」
「そうよ。だって、あなたばかり狡いじゃないの。わたしは、信じていた者たちに裏切られて汚辱にまみれた記憶だけを受け持ち、あなたは、あんなに素敵な供の方々に囲まれた幸せな旅を続けるなんて。あなたも、わたしの受け持った悪夢を少しは受け持つべきだわ」
「幸せだって? なにが幸せなものかい。馬鹿じゃないか、宝玉。今夜だって、宿を襲撃されて、ほとんど着の身着のまま逃げているんだよ」
宝玄仙はせせら笑った。
「沙那や孫空女や朱姫に護られてね。いい供たちね……。本当に命懸けでお前みたいな女を護ってくれてる……。それについて、あなたは幸せを感じている。嘘をついても無駄よ。あなたはわたしでもあるんだから。お前の気持ちはわたしにはわかるのよ」
「ふん、そうだとしても、あいつらは、仕方なくそれをしているんだよ。この宝玄仙という存在がなくなれば、あいつらはちょっとばかり困った立場になるからね」
宝玄仙はうそぶいた。
「でも、そうは思っていないでしょう、宝玄仙? あなたは、あの娘たちの愛情を感じているわ……。いえ、あなたが愛情を抱いている」
宝玉は言った。
「なにが愛情だい。そういうものじゃないよ。例えば、孫空女は、わたしから離れたり、わたしが死んだりすれば、死ぬ身体だよ。
「孫空女は、もっと単純よ。それもあなたは感じているでしょう。彼女は、そんな打算では行動はしないわ。孫空女が、命懸けで人を護るのは、そうしたいと思った時だけよ。彼女は、打算や計算を動機に行動したりしない」
宝玉は言った。
「まあ、孫空女については、そうだろうね……」
「そもそも、孫空女にかけられかかった死の呪いは、解けてるでしょう。御影本人が死んだんだから」
「まあ、そうだね」
宝玄仙もそれは認めるしかないと思った。
そういえば、そうだ。
改めて考えれば、孫空女には、もう宝玄仙から離れない理由はない。なんで逃げないんだろう。
「しかし、まあ、ほかの者はそれぞれに理由がある。朱姫は、真名をわたしに支配されている。沙那は、わたしについてこなければ居場所はない。故郷の会陽に戻っても、盗みを犯して追放された女だ。そんな場所に戻れるわけがない」
「それこそ、馬鹿馬鹿しい。朱姫が真名に支配されているですって? 自分でも否定していることをよくも自分自身に主張できるわねえ。半妖の朱姫が妖魔の掟に支配されるなんて、朱姫が信じ込んでいるだけで、半分以上も人間であるあの娘には、結局はそんなものは通じないわ」
「ふん」
宝玄仙は品なく鼻を鳴らした。
「沙那に至っては、『服従の首輪』で支配していた時期ならともかく、いま、沙那があなたに従っているのは完全な彼女の意思よ。その気になれば、あの聡明な沙那だったら、どこにだって居場所を作れるわ。あなたみたいな、変態女の相手じゃなくてもね」
「そ、そんなことを言うために、わたしの頭の中に再び現れたのかい、宝玉? お前の役目は終わった。さっとわたしの無意識に戻れ」
「なにが無意識よ、宝玄仙。あなたこそ、わたしの無意識の中で休んだらどうなの?」
「なんだって?」
宝玄仙は驚いた。
「なぜ、わたしがあなたの無意識の中で眠り、あなたが表に出ているのか、と訊いているのよ、宝玄仙。考えてみれば、逆でもいいんじゃないの?」
「逆?」
「わたしが、沙那や孫空女や朱姫と旅をするわ。彼女たちと過ごしたいのよ。だって、本当に素敵な方たちなんですもの。あなたは休んでいたらいいわ」
「ふ、ふざけるな、宝玉。あいつらは、わたしが見つけた供だよ」
「わたしは、あなたでもあるのよ。彼女たちは、わたしの供でもあるわ」
「い、い、か、ら、眠れ、宝玉」
宝玄仙は言った。
「あなたが初めて見つけた、心の底から信頼できる人間というのをわたしも味わってみたいのよ。人間不信に陥っていたあなたを救ってくれた彼女たちをね」
宝玉は平然と言い返した。
宝玄仙は苛々してきた。
宝玉というのは、宝玄仙が作り出した別人格なのだ。
闘勝仙の罠に落ちて、その言いなりになるしかなかった宝玄仙の恥獄を引き受け、彼らとの屈辱的な契約術にも応じた宝玄仙を護るために作った別人格だ。
その別人格を完全に独立させることで、宝玄仙は闘勝仙との契約術による支配の束縛から独立し、二年をかけて自分の指にしていた無装飾の指輪を使って『服従の首輪』という霊具を作りあげた。
それを闘勝仙に嵌め、闘勝仙に自らを殺させたのだ。
「なにが、わたしの人間不信を救った、だよ。冗談じゃないよ。あいつらは、わたしの旅の慰み者として見つけた玩具だよ」
「隠しても駄目よ、宝玄仙。帝都で闘勝仙の罠に落ちたとき、あなたは信じていた者のすべてに裏切られ、あるいは見捨てられた。調教したと思っていた
「うるさいよ」
思い出したくもない過去だ。
どうして、こいつは、そんなことをわざわざ掘り起こして苛つかせるのか……。
「……そんなあなたは、供をなにかで縛らなければ信用できなかった。だから、供たちを支配しようとして、霊具を彼女たちに装着した。だけど、いつしか、彼女たちは、そういうものとは無関係にあなたに尽くし始めた。正直に言えば、あなたはそんな彼女たちにも、自分の心の変化にも戸惑っている……」
「もう、やめなと言ってるだろう、宝玉――」
宝玄仙は怒鳴った。
「彼女たちの服従を得るには、霊具なんてもういらないでしょう?」
「うるさいって言ってるじゃないか、いつまでも、いつまでも」
「いまでは、彼女たちは、無条件でお前に尽くしてくれるわよ」
「だったら、どうなんだよ? それは、わたしの調教によるものさ、宝玉」
「調教なんかで、本当に人を支配できるの、宝玄仙? 調教で人を支配できるなら、あなたはすでに、闘勝仙の奴隷そのものになっていたわ」
「さっきから、本当にうっとうしいねえ。いい加減に消えておくれ、宝玉」
「そうはいかないわよ。わたしがいなくなれば、あなたは、あの帝都の記憶も、闘勝仙との契約術も全部引き受けなければならないのよ。闘勝仙は死んだけど、契約術は生きている。だから、わたしという存在を必要としているでしょう、宝玄仙?」
闇に浮かんだ宝玉の存在が少し強くなった気がした。
宝玄仙の心に反応するのか、宝玉の言葉に、宝玉仙が納得され始めると次第に宝玉は強くなる気がする。
闘勝仙が死んだ直後、宝玉は、自分を支配していた存在を失い、途方に暮れるだけの弱い存在だった。
あの姿が、闘勝仙たちの慰み者になっていた時代の宝玄仙の姿だったのだろう。
その期間の宝玄仙が受けた調教の記憶は、あまり存在しない。
すべてぼんやりとして、もやの中の出来事のように判然としない。
宝玉が受け入れた記憶だからだ。
宝玄仙側に存在するのは、闘勝仙の罠に嵌った直後の三日間の最初の調教、そして、その後、屋敷に四人組がやってきた直後の記憶、そして、宝玄仙が彼らの殺害を決意した最後の調教の場面だ。
それ以外のすべての二年間の恥辱の記憶は、宝玉が受け持っている。
調教の屈辱と飼い慣らされた奴隷の心とともに……。
「わたしは、もう、お前を必要としていない……」
宝玄仙は、はっきりと言った。
「嘘ばっかり……。わたしがいなくなれば、あの忌まわしい記憶はあたなが受け入れることになるのよ。だったら、あの恥辱の記憶をまた分けてあげましょうか? 終わったこととはいえ、あなたの心は耐えられるかしら?」
「もういい。やめろ、宝玉」
「……屋敷の四人組に道具を使って身体をなぶられ続けた記憶はどう? 少し受け取ってよ。浣腸をされて、おしめをしたまま、大便をさせられた記憶はどう? そのまま法要をさせられたわ……。それとも、さっきの皇太子との思い出だったら、浣腸じゃなく、“命令”で自然排便を庭でしたというのもあるわ……。よく覚えてないでしょう? わたしがいなくなれば、昨日のことのように、明確な記憶にできるわ。それからねえ……」
「やめろって、言ってるだろう、宝玉――」
宝玄仙は絶叫した。
やっと、宝玉が黙り込んだ。
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を最初に破ったのは、宝玉だった。
「時々でいいのよ。わたしと存在を代わって……。わたしの要求はそれだけよ。すべてをあなたに変わろうとは思っていない……。わたしはまだ弱い。わたしの望みは、あの供たちとわたしも、触れたいということだけ……。あなたが心を通わせはじめている、あの女性たちと、わたしも心を通わせたい……」
「ちっ……」
宝玄仙は舌打ちした。
「……大人しく眠っていればいいじゃないか、宝玉。なんだって、いまさら……。それに、あいつらは、わたしの“性奴隷”どもだよ。お前の性癖を満足してくれやしないよ」
「いいの、宝玉仙? だったら、わたしにも考えがあるわよ……」
宝玉が不敵に微笑んだ。
そして、闇の中に消えた。