失神した宝玉の身体を、沙那と朱姫とともに寝台に移した。
三人で、汗まみれの宝玉の身体を拭きあげる。
「失神させちゃったね」
孫空女は宝玉の裸身を眺めながら苦笑した。
「少し、休ませてあげた方がいいですね」
朱姫も言った。
沙那が、部屋の隅から汚れ布を持ってきて、みんなの愛液と宝玉の尿で汚れた床を拭きはじめた。
孫空女と朱姫も一緒に掃除をする。
「さて、どうする?」
孫空女は言った。
「どうするって?」
沙那は首をかしげている。
「続きだよ、沙那。続き―――。尻比べのさ」
孫空女は言った。
すると沙那がにんまりと笑った。
「そうね。一応、三人で勝ち負けを決めとこうか」
沙那はそう言って、荷から三本の短い紐を持ってきた。
一本にふたつ、もう一本にひとつの結び目を作る。
その結び目の部分を手に握って、孫空女と朱姫に差し出した。
「最初は、結び目のあるものを引いた者同士。次は、結び目のふたつの者とない者。最後は、結び目がひとつの者とない者よ」
沙那は言った。
ふたつの結び目は朱姫が、ひとつの結び目の紐は孫空女が引いた。
「じゃあ、いくわよ。ふたりとも四つん這いになって」
沙那が言った。
「まあ、朱姫との勝負じゃあ、勝ちは決まっているけどね」
孫空女は、朱姫のお尻に尻を向けるように、床に四つん這いになりながら言った。
「そうね、あの状態のご主人様に勝てなかったくらいだものね」
沙那もくすくすと笑った。
「ひ、ひどいですよ。笑うなんて――」
朱姫が不平を洩らす。
「挿すわよ」
沙那がそう言って、孫空女の肛門に張形の先を当てがった。
「ひゃあ――」
孫空女は、肛門に入ってきた張形の刺激に腰を跳ねあげた。
しかし、次の瞬間、さらに大きな刺激が孫空女の肛門を突きあげた。
反対側の張形を肛門で受け入れた朱姫が、声をあげながら腰を浮きあがらせたのだ。
「ひいっ――」
「あっ――んんっ――」
ふたりではしたない声をあげ合う。
「お、お願いだよ、朱姫……。そ、そんなに動いたら……」
「だって……」
朱姫は、もういきそうな声をあげている。
「さあ、ふたりともお尻を密着させてえ」
沙那が言った。
孫空女はじりじりと退がっていく。
肛門に加わる圧迫感が拡大する。
朱姫のお尻と孫空女のお尻が密着した。
「始め――」
沙那の手が叩かれた。
「ああううっ――。お、お尻がああっ……」
叫んだのは朱姫だ。
しかし、孫空女も張形の激しい振動に翻弄されそうだ。
「ひいっ――」
「いくううっ―――」
朱姫が咆哮して果てた。だが、朱姫が達したときの激しい動きで、孫空女の肛門も抉られる。孫空女もそれで達してしまった。
「朱姫の負けね……。さあ、次はわたしとよ」
沙那は言った。
「……は、はあ……はあ……。で、でも、少しだけ、休んで……いいですか……?」
まだ、絶頂の余韻から抜ききれない朱姫が肩で息をしながら言った。
「駄目に決まっているでしょう、朱姫。じゃあ、わたしとよ……」
沙那が容赦なく言っている。
「水ならあげようか、朱姫? 宝玉様が飲んだやつでよければ」
孫空女も言った。
朱姫が、宝玉に飲ませた水は、媚薬入りの水だ。
「も、もう、意地悪ばっかり――」
朱姫が上気した頬を膨らませた。
「いつも、あたしらを苛めるからだよ、朱姫」
孫空女は言った。
「そうよ。ご主人様と一緒になって、いつも朱姫はわたしたちを苛めるものね……。さあ、次よ、朱姫」
沙那と朱姫の勝負もあっという間だった。
もう歯止めがなくなりかけて、挿入するだけで軽くいった朱姫は、振動が始まるとともに、あっという間に達した。
朱姫もぐったりと横になってしまった。
「はい、三人の勝負は、朱姫のひとり負けね。じゃあ、わたしと孫空女よ……。勝った方が優勝ね」
沙那が言った。
「ははは――、やろう、沙那」
孫空女は言った。
なぜか、笑いが込み上げてきた。
女同士で張形を挟んで、お尻で浅ましくいき合う。
少し前では考えられなかった行為だ。
それを嬉々としてやっている。
この四人だけのことなら、なにをやっても恥ずかしくない気がする。
みんなで、身体中で気持ちのよくなることをする。
それが嬉しい。
それが愉しい。
「いくわよ、孫空女」
沙那が自分のお尻に張形を当てがった。
孫空女も張形の先端を探して、お尻を向ける。
張形が持ちあがる。
横になっていた朱姫が審判役をする気になったようだ。
「朱姫……。大丈夫なの?」
沙那の声。
「はい」
朱姫が微笑んだ。
なんだかまだ身体がだるそうだが、張形をふたりのお尻の入口に当たるように支えている。
孫空女は四つん這いの身体を後ろに向かって動かす。
「はあっ……」
たちまちに快感が込みあげる。蕩けるような心地よさが肛門を中心とした下半身全体を包む。
沙那の汗ばんでいるお尻が孫空女の尻たぶに当たる。
「始め……」
朱姫が言った。
張形が震えはじめる。
激しい振動で肉を軋ませるような痛みが肛門の中に拡がる。それが快楽に変化する。
「ああん……ああ……あひいっ――」
「だ、だめえっ――。そ、孫女――。わたし……い、いくよっ――」
沙那が叫んで腰を震わせる。
孫空女も身悶えた。
沙那と孫空女は、ふたりして淫らな声をあげる。
いつの間にか自分のお尻を突き出して震えてしまっている。
息詰まるような……熱くて、痺れる快楽――。
なにかがやってきて、あっという間に通り過ぎていった。
孫空女は、身体を限界まで反りあげて絶頂していた。
「一回目は、沙那姉さんの勝ちですね……」
朱姫がくすくすと笑った。
「一回目?」
沙那だ。
孫空女も違和感を覚えた。
なにかおかしい……。
お尻で咥えている張形の振動が止まらないというだけじゃない。
抜けない――。
「しゅ、朱姫、あんた……。な、なにかやったわね――」
沙那が叫んだ。
その間も張形が激しく動き続けている。
いや、さらに振動が強くなる気がする。
「あっ……ああっ……ああ――。しゅ、朱姫、お、お前……」
孫空女も声をあげた。
腰の痙攣が止まらなくなる。
「ふ、ふ、ふ、孫姉さん……。さっき、宝玉様との勝負の後、あたしのお尻を叩きましたよね。忘れていませんよ……。仕返しです。あたしが、道術を解かない限り、このままです」
朱姫が言った。
「そ、そんなあ――。ねえ、もう、抜いて……。朱姫――。やああああぁぁ、ああっ――」
沙那が絶叫した。
どうやら、達してしまったようだ。
孫空女もまた追い詰められている。
肛門の中で張形が暴れ回る。
沙那とふたりで、一生懸命に張形を抜こうと引っ張り合う。それが新たな刺激になって、孫空女の直腸を突き抜ける。
「はううっ――
」
孫空女は、全身を襲った快感に震えた。
強烈な絶頂だ。
腰の力が抜ける。
「ふわっ……」
孫空女は膝立ちが保てなくなり、その場に崩れ落ちた。
「きゃあ――」
お尻で繋がっている沙那が、それに引っぱられて倒れ落ちる。
それでも張形は抜けない。そして、その衝撃で尻の奥を激しく突かれたのか、また、沙那が果てたような声を出した。
「これで、二対二ですね。さあ、もっと続けましょう。決勝戦ですからね。おふたりのどちらかが、完全に果てるまで続けてください」
「そ、そんなあ――」
「あたしが、道術を遣えることをおふたりとも、忘れていたでしょう?」
朱姫は愉しそうだ。
調子に乗ったときの朱姫は、宝玄仙以上に危険だ。
そして、いま、朱姫は完全に調子に乗っている。
「あああっ……。お、おかしいわ――。も、もう、おかしいのよ、しゅ、朱姫……。ゆ、許して――」
「そ、そうだよ。お、おかしくなるっ――。もう、終わりだよ、朱姫――」
ふたりで床に倒れたままのたうち回る。
しかし、この半妖の娘は、まだ道術を解こうとしない。
それどころか、こちらがうまく動けないことをいいことに、自分の両手を孫空女や沙那の膣や肉芽にも這わせてきた。
あっという間に、孫空女は仰け反って達した。
沙那もそれに合わせるかのように達する。
「ひいっ――。もう、だめぇ――。朱姫――、ゆ、許して。もう、許して」
沙那の叫び声が部屋に響く。
「はい、二対三ですよう―――」
朱姫はあっけらかんと言う。
「朱姫、あとで酷いからねえ――。い、いくうっ――」
孫空女も限界を超えてしまい、また、身をよじって吠えながら絶頂する。
「三対三。さらに張形を激しくしてあげますね、沙那姉さん、孫姉さん」
朱姫の声――。
「許して……。も、もう許して――」
「もう、嫌だあ――」
しかし、肛門に挿さっている張形の振動がいっそう激しくなる。
朱姫の指もまた、肉芽や膣に無遠慮に這い回る。
手で避けようとするのだが、もう、力が入らない。
続けざまに、三度、四度といかされる。
いきすぎて身体がおかしくなっている。
張形で肛門を沙那と繋がれたまま、朱姫は、孫空女と沙那に与える愛撫をいつまでもやめなかった。
最初は、哀願と恫喝をふたりで繰り返したが、朱姫のしつこさに、そのうちに満足に口がきけなくなった。
朱姫のいき地獄の責めは、おそらく、一刻(約一時間)は続いただろう。
ついには、もう、全身がおこりにかかったように震えがとまらなくなった。
絶頂と絶頂の間隔は短くなり、朱姫になんでもない場所を触られるだけでいってしまいそうになる。
沙那とふたりで、交互に絶叫して、身体を痙攣して果てる。
もう、なにも考えられない。頭の中は空っぽだ。
快楽の大波が孫空女を飲みこんでいくのに任せる。
やがて、口から泡のようなものが吹き出た。
沙那の切れ切れの呻き声が聞こえる。
その声に孫空女の呻き声も重なる。
「だ、大丈夫ですか……。あ、あたし、調子に乗ったかなあ……?」
朱姫の我に返ったような言葉が聞こえた気がした。
孫空女の意識は遠くなり……。
そして、消えた。
*
意識が戻った。
宝玉が眼の前にいる。
心の中の意識の部屋だ。
「どうしたんだい、宝玉? あの三人と遊びたいんじゃなかったのかい?」
宝玄仙は言った。
ここは宝玄仙の心の中の無意識の中だ。
宝玄仙と宝玉のほかには、ひと筋の光が存在しているだけだ。
その光が宝玉を照らしている。
逆に、宝玄仙は闇の中にいた。
「遊んでいるわ、宝玄仙。でもね……わたし、どうやら、失神させられたみたい」
宝玉はくすくすと笑った。
その幸せそうな表情を見ていると、なにか苛々してきた。
「そんな顔しないでよ、宝玄仙。嫉妬しないで。あの娘たちは、あなたのことも好きだと言っていたわ」
宝玉は言った。
「嫉妬? 嫉妬ってなんだよ」
「だって、いま、苛々したでしょう、宝玄仙?」
宝玄仙は、鼻を鳴らした。
宝玉も宝玄仙も、所詮は自分自身なのだ。
隠し事はできない。
それがいまいましい。
だが、嫉妬とはどういうことだろう。
なんで、宝玉に嫉妬しなければならないのか。
「だいたい、失神したっていうのはどういうことなんだい? 尻比べをやっていたんだろう? 勝負はどうなったのさ。まさか、負けたんじゃないだろうねえ。負けた人間は、『女淫輪』を明日一日付けることになってんだよ」
「失神させられたのよ。負けたに決まってんじゃない」
宝玉は、また、くすくすと笑った。
「な、なにを笑ってんだよ、宝玉。冗談じゃないわよ。わたしは、女淫輪なんて、つけないからね」
「そんなことを言わないでよ、宝玄仙。わたし、あの娘たちに約束しちゃったのよ。罰を受けるって。それで、あなたには、装着されていることを気がつかないように自己暗示をかけるって。そういうわけだから、明日一日、『女淫輪』をつけてあげて――。お願いよ」
宝玉は笑った。
「ふ、ふざけるんじゃないよ」
宝玄仙は怒鳴った。
「だって、約束したもの。それに、いま、わたしたちの身体は、『女淫輪』をつけているわ」
「お前がどんな約束しようと、知ったことか――。わたしが、気がついたときに、股間に『女淫輪』なんて嵌っていたら、わたしは、あの三人をとっちめてやるよ。責任をもって、外しておくんだよ。連中にそう言っておきな、宝玉」
「やっぱりね……。そう言うと思ったわ……」
「当たり前だろう、宝玉」
「じゃあ、もう少し、あの娘たちと遊んでこようかしら」
宝玉はまた笑った。
本当に愉しそうだ。
そんな宝玉を眺めていると、次第にこっちまで愉快な気持ちになる。
そう言えば、宝玄仙はあんな風に笑ったことなどないような気がする。
ぼんやりと眺めていると、宝玉が不意に視線を向けた。
「そう言えば、宝玄仙……」
宝玉が言った。
「なんだい?」
「『女淫輪』って知ってるかしら、あなた?」
「『女淫輪』?」
耳にしたことのない言葉だと思った。
いったい何のことだろう?
「……知らないねえ」
宝玄仙は言った。
「なにを知らないの、宝玄仙?」
「さあ……」
よくわからない。
なにを話していたのだろう……。
「じゃあ、もう一度、いってくるわ。それで終わり――。そうしたら、あなたに身体を返すわ」
「いいよ。ゆっくりしてくればいいさ」
「ねえ、明日は、あの娘たちに優しくしてあげて。あの娘たちは、とってもいい娘よ」
「いい娘だということは知っているよ。でも、優しくすることと、それは違うのよ。わたしには、わたしのやり方があるのさ、宝玉」
「でも、一日くらい、優しくする日があってもいいでしょう?」
宝玉がじっと宝玄仙を見た。
その顔を見ていると、なぜか、確かにそういう日があってもいいような気がした。
「まあ、わかったわよ。明日は、三人に優しくするよ」
宝玄仙は言った。
「逆らわないのよ」
「逆らうって?」
宝玉はなにを言っているのだろう。
「いいから。明日の一日は、あの娘たちの言うことに従ってあげてよ」
「まあ、一日ならね」
よくわからないが、宝玄仙はそう答えた。
自分でも理解できない感情が沸き起こり、明日一日、供の言うことに従うのが当然という気持ちになったのだ。
「ありがとう、宝玄仙」
宝玉が言った。
そして、宝玉を包む光が大きくなった。
宝玄仙は、また無意識の中に飲みこまれた。
*
眼を開けると、寝台に横になっていた。裸身に敷布が一枚かけられている。
まだ、身体がだるい。
さんざんにいきまくったのだ。
それも当然かと宝玉は思った。
ふと見ると、沙那と孫空女が寝台の下に片膝で座っている。
どうやら、あいだに挟まれているのは、朱姫のようだ。
「なにをしているの……?」
宝玉は声をかけた。
沙那と孫空女がじっとこっちを見た。
その視線は、真剣そのものだ。
ふたりの緊張感が伝わってくる。
「宝玉様……ですよね?」
沙那が言った。
そういうことかと思った。
さっきの異様なまなざしは、いま、宝玄仙の身体を支配しているのが、宝玄仙の意識なのか、宝玉の意識なのか測っていたのだ。
「大丈夫よ……。今夜は、宝玄仙は出てこないわ……」
宝玉は言った。
ふたりがほっとした顔をした。
「ところで、なにをしているの? 朱姫は、どうして縛られているの?」
宝玉は言った。
沙那と孫空女に挟まれた朱姫は、背中に腕を回されて縛られている。背
中で組んだ朱姫の両腕を縛った縄は、胸の上下にも食い込んで、朱姫の小さ目の胸の膨らみが強調されている。
朱姫は、そんな姿で仰向けに寝かされて、動けないように全裸の沙那と孫空女のふたりにしっかりと脚で押さえられている。
「ちょっとしたことがあってね……」
孫空女が言った。
「懲らしめです」
沙那は不敵な笑みを宝玉に向けた。
「懲らしめ?」
「こいつは、調子に乗るという悪い癖があってね。少しは仕返しをしとかないと、あたしらの鉄の結束が乱れるからね」
孫空女は言った。
口調の強さの割りには緊迫感はない。
表情も穏やかだ。
宝玉は寝台から降りて、三人のいるところに歩いた。
まだ、脚に力が入りにくい。宝玉は、朱姫の足元に床にお尻をぺたりとつけて座った。
仰向けになっている朱姫の眼は、なにかおかしい。
呼吸がとても静かで、ほとんど意識がないように見える。
「孫空女、ここよ。ここが血の流れを戻す
沙那がそう言いながら、朱姫の首の一点を指で強く押した。
「う、うう……」
半分閉じかけていた朱姫の眼が見開いた。
「どう、朱姫……眼が覚めた? 気持ちよかったでしょう?」
朱姫の眼が定まっていない。
まだ、完全には意識が戻っていないように見える。
「なにをしたの、沙那?」
「朱姫の頭に向かう血を制限していました。それで、朱姫は、失神寸前になったのです」
沙那は言った。
「そんなことができるの、沙那?」
「できます……。さあ、朱姫、もう一度、夢の世界に行こうね」
沙那が朱姫の首に指を向ける。
「か、勘忍……して……、さ、沙那姉さん……」
しかし、沙那の指は、また、朱姫の首に食い込む。
朱姫の呼吸が小さくなる。
眼がまた虚ろさを取り戻す。
「覚えた、孫空女?」
沙那が顔をあげて、孫空女に言った。
「だいたいね。あたしがやってみてもいいかい、沙那」
「いいわ、孫空女。やってみて。朱姫をよく観察して、失神の寸前で血を戻すといいわ。気を失ってしまうと、面倒だし、いまのように意識を半分失った状態で彷徨っているのは、気持ちがいいんだけど、だんだんと身体が追い詰められるわ」
沙那は言った。
孫空女はじっと朱姫を眺めている。
やがて、宝玉の眼にも、朱姫がもうすぐ意識を失う瞬間がやってきたのがわかった。
孫空女の指が、朱姫の首に一点を押す。
朱姫が盛大に呼吸を始めた。
「はあ……はあ……はあ……あ、謝ります……。も、もう、許して……」
「謝らなくてもいいよ、朱姫。調子に乗るのは、朱姫の愉しいところさ。ねえ、沙那?」
孫空女は言った。
「そうね。だけど、わたしたちだって、時々は調子に乗ってもいいわよね。だから、いまは、調子に乗っているのよ……」
沙那は言った。
「……それって、苦しいの? 朱姫は、かなり呼吸が荒くなっているけど……」
宝玉は言った。
「苦しくはないはずです。頭に血がいかないので、無意識で血を求めるので、息が荒くなっているだけです。でも、正常に流れるように経絡を解放していないので、いつまでたっても不十分な量しか朱姫の頭には血が流れません」
沙那がまた、指で朱姫の首に押した。
たちまちに朱姫の呼吸が静かになる。
「経絡とはなにかしら?」
あまり聞いたことがない言葉だ。
道術を遣えないはずの沙那が、不思議な力で朱姫の身体を操っている。
「経絡というのは、絡脈ともいって、つまりは、身体の中の気血榮衛の通り道のことです。主要な経脈は十二の正経と八の奇経ですが、さらに小さな孫絡を数えると、その数は八百にもなります。それを正確に突いて、身体を流れる気を操作すれば、呼吸でも血でも、五臓六腑でも自在に操作できます」
「道術とは違うのね、沙那?」
「違います。経絡の位置を知り、ちょっとしたこつを掴めば、誰にでもできることです」
「誰にでもというのは、どうかな?」
孫空女が苦笑した。
そして、今度は孫空女が朱姫の首を突いた。
朱姫の荒い呼吸が戻り、苦しそうな表情になった。
「五臓六腑というと、心臓を止めることもできるの、沙那?」
宝玉がそう言うと、沙那は顔をあげて、意味ありげな笑みを宝玉に見せた。
そして、朱姫の右脇の一点を親指で叩くように押した。
朱姫の身体が硬直した。
朱姫の顔がこわばり、眼がこれ以上ないというくらい見開かれる。
もう一度、沙那の親指が朱姫の脇を叩いた。
「がはっ――はがっ――ごほっ――」
朱姫の口から激しく咳が出始める。
激しい咳にも関わらず、顔は真っ蒼だ。
しかし、すぐに、赤みを取り戻してはいく。
「宝玉様……。いま、朱姫の心臓は、ほんの少し止まった状態でした。あの状態をもう数瞬続けるだけで、朱姫は死んでいたはずです」
「怖いわねえ……」
宝玉はそう言うしかなかった。
「さあ、朱姫、どうして欲しい。気を失いたい? それとも、頭に血を戻して欲しい? どっちなの?」
「も……う、許して……、さ、沙那姉さん」
朱姫は苦しそうだ。
呼吸は不規則で、縄に挟まれた乳房が大きく上下に揺れている。
「そんなことを沙那は、訊いていないだろう、朱姫? 沙那は、気を失いたいか、それとも、まともに戻して欲しいかと訊いているんだよ」
孫空女は言って、首の横を押した。
朱姫の表情が静かになる。
すでに朱姫の身体は汗びっしょりだ。
そして、朱姫の両眼からぼろぼろと涙がこぼれはじめた。
次に、孫空女が血を解放したときには、朱姫は、激しく泣きはじめた。
呼吸も荒い。
「泣かないのよ、朱姫。じゃあ、もう勘弁してあげる」
沙那が、ぐいと首の経絡を押す。
次第に朱姫の泣き声が小さくなる。
息も静かになり、やがて、完全に朱姫の身体は力を失った。
「気を失ったの?」
朱姫が失神したのは明らかだ。
意識のない朱姫は恍惚の表情を浮かべているように見えた。
「はい、宝玉様。朱姫は気持ちがよかったと思いますよ。気を失うかどうかのぎりぎりのところをずっと彷徨わされたのです。その状態でずっといると、気を失いたくて仕方がなくなります。朱姫は恍惚の状態から気を失ったのですから」
沙那は言った。
「残酷に苛めていたんじゃないのね」
「残酷に苛めていましたよ。でも気持ちがよかったはずです。わたしも孫空女も、朱姫が大好きですから……。だから、気持ちのいい方法で、残酷に苛めました」
沙那は言った。
孫空女も、朱姫の拘束を解きながら、横で笑って頷いている。
「そう……気持ちがいいのね……」
宝玉は呟いた。
そして、決心した。
「わたしにもやって……」
「ええっ―――?」
沙那がびっくりした顔をして声をあげた。そして、宝玉の顔をまじまじと見つめる。
「して欲しいわ。わたしも、朱姫のように責めて……。そして、最後に失神させて」
「ほ、宝玉様がそうして欲しいのであれば……」
沙那は、呆気にとられたような表情をしている。
「そうして欲しいわ」
「わかりました」
「それと、あなたたちに、お願いがあるの……」
宝玉は続けた。
「なんでしょうか?」
「口を塞いで。言葉が喋れないように……。そして、気を失ったら、また、覚醒させて――。そして、また責めて――。猿ぐつわもして、手も縛るの。さっきの『道術封じの布』で抵抗できなくして……。そして、わたしを、もっと、残酷に苛めてよ……」
おかしなことを言うものだと思ったかもしれないが、とりあえず、沙那は深く頷いてくれた。
「じゃあ、手を背中に回して、宝玉様」
孫空女が言った。
沙那と孫空女は、朱姫を拘束していた縄で宝玉の身体を縛りはじめた。
手首が背中側で括られて、縄尻が肩にかかり胸の前を交差して、二の腕を拘束し、さらに背中で結わえられる。それで上半身が固まって動かなくなる。
沙那と孫空女に両側から支えられて、また、寝台に載せられる。
「口を開けてください、宝玉様……。これがいいんですよね……」
沙那は妖艶に笑うと、宝玉に口を開かせて『道術封じの布』を口に巻いて頭の後ろで結んだ。
宝玉は、口を大きく開いて、もう、閉じることができない。
沙那が、宝玉の口の中に舌を入れて、布越しに舐めはじめた。
歯を一本一本舐めあげられ、歯茎を舌で愛撫される。口中のありとあらゆる場所をしゃぶられる。
「宝玉様、わたしたち三人は、食事の度に、こうやって、ご主人様の口の中を掃除させられるんですよ。そりゃあ、最初は驚いたし、嫌だったけど、いまは、なんでもありません。食べ物のかすや歯の汚れもなんでも舐めあげて、ご奉仕します。ご主人様……宝玉様の口の中もわたしたちのものなんです……。ご存知でしたか?」
知っている……。
宝玄仙が受けている奉仕は、宝玉も受けている。
宝玉が表に出ているときは、無意識の中にいる宝玄仙は、外のことを知覚できないが、宝玄仙が表に出ているときも宝玉は外のことを宝玄仙の意識と一緒になって認識もできるし、宝玄仙が感じていることを一緒に感じることができる。
しかし、自ら表に出て受けることと、宝玄仙を通じて感じることは大違いだ。
口の中を愛撫されると、まるで口が性器になったかのような錯覚に陥る。
股間が激しく感じるのだ。
「宝玉様、お股のお汁が溢れてきたよ。沙那の舌が気持ちいいんだね?」
孫空女がそう言って、宝玉の脚に新しい縄を繋ぎ、大きく開脚させて、さらに肩の方向に引きあげて拘束する。
宝玉の両脚は、両膝を胸の横に引き絞られて、陰部が剝き出しになった。
お尻も少し浮いて、まるで挿入されるのを待ち望んでいるような格好だ。
その孫空女が右の内腿を、宝玉の口への奉仕を終えた沙那が左の内腿に口づけをした。
宝玉の全身に震えが走る。
しばらくの間、両側から迫るふたりが、宝玉の股を舌で舐め回した。
別に敏感な部分を直接に刺激されているわけではないが、執拗に内腿の舐められていると、股間の中心がどうしようもなく疼いて仕方がなくなる。
やがて、沙那が股間から離れた。
態勢を変えた孫空女の顔が、宝玉が曝け出している股間に被さる。
孫空女の息を股間が感じる。
孫空女の舌が股間の付け根をざらりと舐めた。
「やああああ」
宝玉は悲鳴をあげた。
「いきますよ、宝玉様……。これが、半分意識を失わされた世界です」
沙那の指がとんと宝玉の首の一点を突いた。
「あ……」
宝玉は、大きく開いた口から思わず声を洩らした。
すっと頭から血が下がっていく。
それとともに、意識が遠のく。
だけど、意識を失うところまではいかない。
頭が朦朧とする。
その朦朧とした状態でいつまでも留まる。
また、とんと指の感触――。
血が戻っていく。
意識もはっきりとしてくる。
しかし、完全に覚醒する前に、また血を止められる。
再び意識が遠のく……。
そして、戻される……。
これが、朱姫が味わっていた世界なのだ。
「……沙那姉さん、孫姉さん」
朱姫の声だ。
どうやら、意識を取り戻したらしい。
「気がついた、朱姫? よかったら、宝玉様の股間への奉仕を代わってよ。お前の方がうまいからさあ」
孫空女がさっきの朱姫への責めなどなかったかのようにあっけらかんと言った。
「はい」
朱姫もまた、くったくのない声で返事をすると、孫空女に代わって、宝玉の股間に被さり、舌を遣い始める。
「はあ……はが……が……」
その巧みな舌遣いにあっという間に宝玉は翻弄される。
そして、朱姫の舌は孫空女が刺激をしていた場所よりも、もっと際どい位置をなぞる。
宝玉は身体を仰け反らせかけた。
だが、沙那の指がとんと首を突く。
それで身体の動きを止められる。
全身の力が弛緩するのだ。
それでいて、朱姫の舌が責める股間の部分だけがこれ以上ないというくらい敏感になっている。
「ひゃ……ひゃあ……はが……」
孫空女が今度は宝玉の胸を舐めはじめた。
胸と股間、そして、沙那の経絡責め――。
宝玉は何度も悶絶し、そして、意識を飛ばされそうになり、何度も覚醒させられた。
孫空女も朱姫も、宝玉が完全に絶頂するほどには刺激を与えない。
ぎりぎりのところを彷徨わせられる。
どのくらい続いただろうか。
果てしない三人の責めに、宝玉は完全に狂乱した。
「そろそろ、楽にしてあげよう――」
沙那が言うと、孫空女と朱姫の責めも核心を突いたものに変化した。
宝玉は、獣のような咆哮とともに、再び意識を失った。