118 不法滞在の法師たち
「へえ、いつも、男のような格好をしているけど、ちゃんと女の格好をさせると女らしくなるじゃないか、孫空女」
宝玄仙が揶揄する。孫空女は歯噛みした。
東帝国の基準からすると、中規模都市であろう。
だが、諸王国としては大きなものだ。
いずれにしても、久しぶりの城郭に宝玄仙は上機嫌だ。
車遅国に入ってから十日になる。
車遅国は、諸王国と呼ばれる東方帝国の西側の王国群では、珍しく天教教団と繋がりのない国だ。
これまでと違い城郭に入っても安全である可能性が高い。
だから、意識的に街道から遠い国境沿いの山岳地帯から、大きな街道に繋がる地域に移動してきたのだ。
そして、車遅国の大きな地方都市である東閣市にぶつかった。
車遅国に入ってからも、農村に近づくのさえ避けていたので、最初の人里が城郭ということになる。
宝玄仙は、すぐに城郭に入りたがった。
しかし、それを沙那がとめた。
まずは、自分が先に様子を見にいってくると強く主張したのだ。
沙那の主張には、一理も二理もあった。
車遅国という国は、東帝国の人間からすれば、謎の多い国だった。
天教教団を受け入れていないということ以外は、ほとんど内部のことは知られていない。
車遅国から戻ったという人間にも出遭ったことはない。
孫空女自身、旅芸人の一座と一緒に諸王国はかなり巡り歩いたのだが、車遅国には入ったことはない。
考えれば、この車遅国を最後に、東方帝国が「諸王国」と呼んでいる国は終わる。
車遅国の西側は、
魔族ではなく、人間が奴隷をして使役される世界であり、地は荒れて、風は濁り、水は腐っていて、普通の動物さえも生きることのできない荒涼たる大地──。
それが魔域だ。
本当に宝玄仙は、そこに入るつもりなのだろうか。
また、あの金角は、宝玄仙が通天河に辿り着くのに合わせて、迎えの使者を派遣するということを宝玄仙に約束したみたいだ。
おそらく、そこでうまく合流できなければ、さらに旅を続けるしかないのだろうが、通天河沿いに、北か南に進むことになると思うが、それらがどういう土地なのかはわからない。
東帝国の人間にとって、通天河から先は、まったくの未開の土地なのだ。
とにかく、ついにそういう場所までやってきたのだ。
いずれにしても、城郭に入ること自体は反対しなかった沙那だが、まずは、安全を確かめてからというのは沙那が正しい。
宝玄仙は、面倒くさがったが、結局は、沙那のしつこさに折れ、沙那の偵察が終わるまで、山の中に隠れていることを承知した。
だが、それは演技だった。
小うるさい沙那を追い払うと、すぐに城郭に自分も入ると言い始めた。
折角、城郭の近くにいるのに、味気のない保存食など食べたくないというのだ。
しかも、沙那には内緒で先回りし、自分が安全を確認し、慎重すぎて宝玄仙の我が儘を許さない沙那の鼻を明かしてやろうと主張した。
あまりの子供じみた言い方に、孫空女も鼻白んだ。
しかし、結局は同意させられた。
強く拒否すれば機嫌が悪くなりそうだったし、ひとりでも勝手に行きかねない。
それよりは、孫空女が護衛のためについて行った方がましだ。
だが、この仕打ちはなんだろう。
城郭に行くということで有頂天になった宝玄仙は、ちょっとした気まぐれで、孫空女に朱姫の服を着て、ついてくるように命令したのだ。
拒否すれば、朱姫を連れていくと言う。
どうしても、ひとりは、沙那への伝言を伝える者として残さないとならないからだ。
子供か──。
と思ったが、嫌も応もない。
従うしかない。
宝玄仙は、孫空女を脅迫し、孫空女を残すときには、全身に激しい痒みが走る道術をかけて沙那が戻るまで放置すると言うし、そう言われれば、孫空女も同意するしかない。
そんなことくらい、宝玄仙あら平気でやることくらいは、孫空女も十分に承知している。
しかし、実際に身に着けてみれば、朱姫の服は、孫空女にとっては、思ったよりも恥ずかしい姿だった。
朱姫が着ればなんでもない貫頭衣の一枚布の服でも、長身の孫空女が着ると、下袍の丈がかなり短い。
膝から股間の付け根の半分くらまでしか隠れない。
一応、小さな下着は着させてもらったが、そんな短い下袍で歩くのは、夜の娼婦街で買い手の男を探す女くらいだろう。
その下袍をこの宝玄仙は、さらに裾の布を切って短くしたのだ。
いまや、孫空女が着ているのは、かろうじて股間とお尻を隠すだけの太腿の付け根までしかない破廉恥な服だ。
しかも、身体の小柄な朱姫の服は孫空女には小さく、胸もいまにも弾けそうで扇情的だ。
そんな格好で、孫空女は無理矢理、宝玄仙に連れてこられた。
そして、城郭に着いた。
雑踏の中に入る。
こんな短い丈の服で背の高い孫空女が歩けばそれだけで目立つ。
宝玄仙の美しさも人眼を引くのに十分だし、孫空女自身もそれなりの気量がある。
まるで、すれ違う男のすべての注目を浴びているような気がして、さすがの孫空女も恥ずかしい。
「ね、ねえ、ご主人様、やめようよ、こんなの。恥ずかしいよ」
宝玄仙について歩きながら、孫空女は訴えた。
「なにが、恥ずかしいものかい。見たい男には、お前の脚くらい見せてやればいいじゃないか。減るもんじゃなし。それに、お前の意識過剰だよ。見てやしないよ」
「だ、だって……」
宝玄仙はそう言うが絶対に視線を感じる。
こんなふうに、昼間から下着を見せながら歩く女がいれば、絶対に注目する。
歩いているのは東側の城門から通じる大通りだ。両側には大小の商家が軒を並べている。
孫空女たちは、その大通りを城郭の中央部分に向かって宝玄仙の横を進んでいた。
そして、屋台で食べ物を売っている場所のそばを通った。
若い男がふたり、横掛けの長椅子に座って串付きの肉を食べている。
そのふたりの前を通ったとき、ふたりのうちのひとりが口笛を吹いた。
孫空女はすくみあがった。
だが、すぐに口笛を吹いた男を睨みつける。
ふたりがぎょっとした表情をした。
宝玄仙が横で笑った。
「可哀想に、怖がらせんじゃないよ、孫空女。ただ、口笛を吹かれただけだろう?」
「や、やっぱり、みんな見てるよ。お願いだよ。もうちょっと、普通の服を着させてよ、ご主人様」
孫空女は小さな声で言った。
「でも、お前は、感じているだろう?」
宝玄仙が微笑んだ。
孫空女はどきりとした。
「そ、そんなことあるもんか」
「それもそうだね。別になにをしているわけじゃないものね。ただ、これ以上考えられないくらいに、貫頭衣の丈を短くしてやっただけだ。まあ、わたしらが異邦人だということは、見ればわかるだろうし、この城郭の人間も、お前の服なんて、ちょっとばかり変わっているけど、それが異邦人の衣装だと思うだけさ。それだけのことだから、お前が感じるというのはおかしなことだったよね」
「そ、そうだよ。感じてやしないよ、ご主人様。あ、当たり前じゃないか」
孫空女は言った。
「じゃあ、おいで――」
宝玄仙が、孫空女を不意に路地に連れ込んだ。
「な、なんだよ、ご主人様?」
孫空女は、狭い通りで、宝玄仙から、建物の壁に押し付けられるかたちになった。
「感じていないとは思うけど、確認させてもらうよ」
宝玄仙の手が孫空女が身に着けている貫頭衣の裾の前側に伸びた。
孫空女は、驚いてその手を押さえる。
「なんだい、孫空女。心配しなくても、悪戯はしないよ。ただ、下着の中に触るだけだよ。指で触れて、そこが乾いていれば、それで終わり。許してやるよ。そこら辺でまともな服を着させてあげるよ。だけど、お前の言葉が嘘で、もしも、下着が濡れていたら、そのときはわかっているよね? 奴隷の分際で、わたしに嘘をついたんだ。それなりの罰を受けてもらうよ」
宝玄仙は、意地の悪い微笑みを頬に浮かべた。
孫空女は、困って宝玄仙の手を押さえたままでいた。
「……どうしたんだよ、孫空女。手を離すんだよ」
宝玄仙が、笑みを浮かべながら孫空女を睨んだ。
「……ってるよ、ご主人様」
仕方なく孫空女は認めた。
「聞こえないよ、孫空女」
宝玄仙は、微笑みを浮かべて孫空女を睨んだままだ。
「くそっ――。認めるよ。濡れてる。多分、凄く。なんで、そんなこと聞くんだよ、ご主人様?」
恥ずかしいと思っただけで、確かに孫空女の股間は濡れていた。
なぜそうなるのかわからない。
そんな自分の身体の反応が口惜しい。
五行山で女頭領をしているときは下着姿でいたって、恥ずかしいと思うことなどなかったはずだ。
だけど、宝玄仙に朱姫の服を着るように強制されて、その後、貫頭衣の裾を刃物で切られたときには、なぜか股間にぞくぞくする感じを受けた。
「……濡れてるんだね、孫空女?」
「そうだよ。だから……」
「手を離すんだよ」
宝玄仙が言った。
次の瞬間、両手が勝手に背中に回って動かなくなった。
手首につけている『
孫空女は、手首と足首に赤い腕輪と足輪をつけている。普通に見れば、ひと揃いの飾りのように思えるが、これは霊具だ。
宝玄仙の道術ひとつで、自在に接続したり、離したりできる。
宝玄仙は、孫空女の腕輪を背中側で接続させたのだ。
「や、やだよ。こんなところで……。こ、これ外してよ」
孫空女は、背中側の腕を揺すった。
「邪魔なんだよ。その腕がね」
宝玄仙が、指で孫空女の股間をぐいと押した。
突き抜けるような快感に孫空女は、腰が抜けそうになる。
「い、嫌だよ……」
「なにが嫌なんだい。こんなにびしょびしょにしてしまって、どうするんだい」
宝玄仙が言葉なぶりを愉しんでいるだけだというのは知っている。
しかし、その言葉なぶりで孫空女の全身には疼くきようなものが走るのだ。
「孫空女、わたしの顔を見るんだよ」
宝玄仙が言った。
孫空女は顔をあげる。
宝玄仙が頬に笑みを浮かべている。
「ああっ……」
宝玄仙の指が孫空女の下着の中に入って来た。
孫空女は膝を割りかけて、歯を食いしばって耐えた。
「……淫乱な雌の顔になったじゃないか、孫空女。こんな場所で股をいじくられるのが、気持ちがいいのかい?」
宝玄仙の指は孫空女の柔肉の中を深く抉っている。
びっしょりと濡れている孫空女のそこは、なんの抵抗もなく、宝玄仙の指を受け入れる。
宝玄仙の指が孫空女の肉襞をかき回し、こすり、そして、上下に動き……。
孫空女は、全身の震えがとまらなくなった。
「気持ちがいいかと訊いているんだよ、孫空女?」
「き、気持ち……いい」
思わず口にした。
「……ふふふ。だったら、もっと、気持ちよくしてやるよ、孫空女。城郭の真ん中でたっぷりと愉しませてやるからね」
宝玄仙が指を孫空女の股の割れ目から指を出した。
しかし、股間から手を離す直前に、孫空女に肉芽をぐいと押した。
「ひ、ひゃあああ――」
なにかの道術を大量に注がれたのはわかった。
とにかく、そこから送り込まれた弾け飛ぶような快感に、孫空女は声をあげて達した。
「でかい声出すんじゃないよ、孫空女。ここが大通りからちょっと外れただけの路地だということを忘れているんじゃないだろうね」
宝玄仙が言った。
孫空女は慌てて口をつぐんだ。
でも、股間から拡がって暴れ回る疼きはとまらない。
疼きが快楽の暴流になる。
再び、突き抜ける。
「くふううっ」
孫空女は、背中に手を回したまま、その場にしゃがんだ。
そして、二度目の絶頂をしてしまった。
「な、なにしたの、ご主人様? と、止まらないよう……」
「快感のつぼを反応させたんだけど、これじゃあ、動けないね。少し弱めるか……」
宝玄仙がそう呟くと、孫空女の中の快感が弱まった。
だが、消えたわけではない。
静かになっただけだ。
それはそれで、とろ火にゆっくりと焼けるような感覚であり、すごく苦しい。
「立つんだよ、孫空女。食事に行くよ」
「わ、わかったけど……。へ、変な術、も、もうやめてよ」
孫空女は、あまりのもどかしさに身体をくねらせた。
おかしな術をかけられている。
股間から拡がった妖しい刺激が全身に拡がってきた。
まるで、身体の中をたくさんの虫が這いまわっているようだ。
その虫が、孫空女の全身の性感帯を刺激し、身体を熱く疼かせる。
突然、宝玄仙の二本の指が孫空女の鼻の穴に入れられた。
そのまま、持ち上げられる。
「ひ、ひぎいい――」
孫空女は、慌てて立ちあがった。
「孫空女、面白いものを見せてやるよ」
孫空女の鼻の穴から指を離した宝玄仙が懐から白い玉を出した。
それを手のひらに載せて孫空女に見せる。
「なにそれ?」
孫空女は言った。
宝玄仙がその玉を握って、指で擦った。
その瞬間、孫空女はまた腰が抜けた。
また、しゃがむ。
肛門にざわりと撫ぜられるような刺激が加わったのだ。
宝玄仙が、孫空女の鼻に指をぐいと刺した。
「た、立つ。立つよ。そ、そんなことしないでよ……」
孫空女は、慌てて立った。
宝玄仙がその様子を見て笑って、孫空女の鼻から指を抜く。
「これは『刺激玉』だよ。お前の尻孔の感覚に繋がっている。この玉を刺激されると、同じ感覚が、お前の尻に伝わるんだ。こうやって……」
宝玄仙が玉を舌でぺろりと撫ぜた。
肛門を舐められる刺激に、孫空女は、またはしたない声をあげた。
「じゃあ、行くよ。その前に、服を直しな」
宝玄仙は言った。
ふと見ると、短い貫頭衣の裾が、腰までまくれ上がって股間が丸出しだ。
「うわっ」
金属音がして、後ろ手の拘束が外れた。
孫空女は、慌てて服を直す。
「じゃあ、通りに出たところにあった料理屋でいいね」
宝玄仙は歩き始めた。
孫空女はそれを追う。
お尻にざわざわとした快感が送り続けられる。
宝玄仙が、『刺激玉』を触り続けているのだ。
知らず孫空女は、腰をくねらせていた。
大通りに出た。
破廉恥な服装ということでは同じだが、さっきとは比べものにならない羞恥が孫空女を襲う。
たったいま、二度続けていったばかりだ。
そのときの淫液が股間にぐっしょりと残っているだけではなく、孫空女の剝き出しの内腿に垂れ落ちている。
しかも、全身を疼かせる魔術による快感の弱い刺激と、時折加えられる肛門への強い刺激――。
様子のおかしい孫空女に集まる通りすがりの人間の多くの視線――。
頭がくらくらして、ぼうっとなる。
孫空女は、気を失いそうになった。
「……ここでも、一度気をやろうか」
宝玄仙が耳元でささやいた。
ここで……?
宝玄仙は、なにを言っているのだろう。
さっきの路地じゃない。
ここは人の多い城郭の真ん中だ。
そして、不意になにかがやってきた。
「ほおっ――」
孫空女は思わず吠えて、その場に跪いた。
宝玄仙の道術が身体で爆発したのだ。
孫空女は、大通りの真ん中で、股間を押さえて叫びながら絶頂していた。
宝玄仙の笑い声が遠くなる。
孫空女は我に返った。
もう、快楽の暴流は収まっている。
だが、宝玄仙は、孫空女を大通りの真ん中に置き捨てて、料理屋に入ろうとしている。
孫空女は、奇異の目で見る大勢の人間の視線を感じながら、宝玄仙の後を追った。
「ひ、酷いよ、ご主人様」
宝玄仙に追いつくと、孫空女は激しく息をしながら抗議した。
宝玄仙は、もう空いている席に座っている。
孫空女もその前に座る。
女の店員がすぐにやってきた。
宝玄仙が野菜と肉の汁を二人分注文した。
「人混みの中で絶頂するなんて、滅多に経験のできない体験だろう、孫空女?」
「あ、あんなのやだよう。お、お願いだから、もう勘忍してよ」
孫空女はささやいた。
店の中は、卓の半分くらいが埋まっていた。
ふたりが座っているのは、店の奥の隅の卓だ。
「旅の恥はかき捨てだよ。いくらでも恥はかいても大丈夫よ。もう、この城郭に戻ることもないだろうからね」
「大丈夫じゃないよ」
「それよりも、お前、ちょっとは座り方を考えな。下着がもろ見えになっているんじゃないかい?」
驚いて孫空女は視線を下に落とした。
短すぎる貫頭衣の裾は、座ることで引きあげられて、淫液でびしょびしょの下着を露出させていた。
「うわっ」
懸命に裾を伸ばそうとするが、どうしても股間を隠せない。
仕方なく、孫空女は両足を固く閉じ合せ、左手を露出している下着の上に置いた。
そんな孫空女を宝玄仙は愉しそうに眺めている。
本当にこの巫女は変態だ。
その変態に、いつの間にか支配されている自分が悔しく、そして哀れだ。
「お待ちどう」
店員が料理を運んできた。
孫空女は身をすくめた。さっきの女の店員じゃなく、身体の大きな筋肉質の男だったからだ。
卓の前に皿が置かれる。
野菜と羊の肉を煮込んだ汁が湯気を立てている。
「食べな」
宝玄仙は、そう言いながらさっきの『刺激玉』を自分の皿の中に放り込んだ。
「あっ、それ――」
孫空女は、思わず声をあげた。
お尻の刺激に繋がっていると言われたやつだ。
それを熱い汁に入れたのだ。
「大丈夫さ。この『刺激玉』は、熱さや痛みは伝えない。伝えるのは、官能の刺激だけさ。こんな風にね……」
宝玄仙が、自分の皿の中の『刺激玉』をさじですくうふりをしながら、ころころと転がした。
「ひっ」
孫空女は、肛門の入口をさじで抉られる感覚に、悲鳴をあげそうになり、懸命に歯を食いしばった。
「食べるんだよ、孫空女。でなきゃ、ここでも気をやらせるよ」
宝玄仙が汁を口に入れながら言う。
その顔は愉悦で一杯だ。孫空女に、これだけの辱めを与えることで、この女法師の嗜虐心は満足しているのだ。
だが、この女法師は、どこまでも残酷で気まぐれだ。
いくらでも、この変態性が暴発する。
それを少しでも避けるためには、言われたことに従うしかない。
孫空女は、汁を口に中に入れた。
味なんてしない。
「んぶっ」
孫空女が食べ物を口に入れたのを見透かして、宝玄仙がまた『刺激玉』を動かした。孫空女の尻に強烈な愉悦が拡がる。
もう、泣きそうだ。
そのとき、突然にどんという音がした。
ふと、顔をあげると、宝玄仙が、卓の上に突っ伏している。
突然、眠ってしまったようだ。
びっくりした。
「な、なに、ご主人様?」
孫空女は、立ちあがろうとした。
だが、身体に力が入らない。孫空女の手からさじが落ちた。
孫空女は、そのまま床に倒れ落ちた。
そう言えば、短い丈の貫頭衣を着ていたのだった……。
孫空女は、手で直そうと思ったが、その手を動かすことができない。
「ふたりとも術遣いのようだ。手に術封じの刻印を刻むか」
さっきの身体の大きな男の店員が身体の前に立っている。
いつの間にか大勢の兵がいる。
汁の中に一服盛られたのだと思った。
間違いない。
孫空女の意識もだんだんと薄くなる……。
「や、やめ……ろ……」
身体の大きな男が宝玄仙の右手になにかを押し付けている。
宝玄仙の身体が動いた。
まだ、完全に意識を失ってはいなかったのだ。
宝玄仙が抵抗しようと身体を動かしたのだとわかった。
しかし、宝玄仙の身体は、脱力したまま床に落ちて、孫空女のそばに転がった。
孫空女の視界に、宝玄仙の右手の甲に刻まれた刺青が映る。
確か、術封じの刻印とか言っていた。
そんなものを刻まれたらまずいはずだ。
孫空女は、耳に手を伸ばした。
かろうじて、『
だが、手が伸び、その『如意棒』を取りあげられる。
「この武器は封印して、こいつらと一緒に智淵城に送る手配をしろ」
さっきの男が言った。
どうやら、この男が指揮官で、店員に化けて、料理に薬を盛ったのだ。
だが、なぜだ……。
男は、孫空女の手の甲にも、宝玄仙と同じ刻印をした。
「……こいつの服装からして、天教の法師だろう。ふたりとも智淵城に送って矯正処置だ。連れていけ」
男が兵に命じた。
宝玄仙の身体が数名の兵により持ちあげられる。
孫空女も同じだ。
「……それにしても、いい女たちですね、
孫空女を抱えている兵のひとりが言った。
「……そうだな。その黒髪の女法師は身なりから判断して、位の高い法師のようだから、智淵城で
羊力と呼ばれた隊長が言った。
身体が浮きあがる。
兵たちに抱えられて、店の外に出たようだ。
どこかに運ばれようとしている。
「そうこなくっちゃ。ねえ、隊長、こいつの股見てくださいよ。淫靡な匂いがぷんぷんしますよ。俺たちが見つける前に、どこかで乳くり合っていたんじゃないですかねえ」
兵が卑猥な笑いをしながら、孫空女の股を指で突いた。
気持ち悪いだんよ――。
孫空女は叫ぼうとしたが、声はもう出ない。
別の兵が孫空女の股間を突く。
そして、別の兵も――。
だが、孫空女の意識は遠くなった。
もうなにも感じない……。
目の前がすっと真っ暗になった。