「とにかく、まずは逃げることを考えようよ、ご主人様。道術の回復は、それからのことにしてさあ……」
孫空女が溜息をつく。
そして、これまでの経緯を語り始めた。
話が続く。ときどき、七星がそれを補足する。楊鈴という下級法師はすすり泣くばかりで、ひと言も口を開かない。
宝玄仙は、ほとんど無言のまま、ふたりの話に耳を傾けた。
それで、わかったのは、この車遅国では、天教は異教であり、犯罪だということだ。
しかも、重犯罪だ。
だから、うっかりと入り込んだ天教教団の神官は、天教狩りと呼ばれている取り締まりによって逮捕されるのだそうだ。
捕えられた天教の神官は、さまざまな労役をする思想矯正用の流刑地に送られ、そこで使役という強制労働に従事しながら、思想矯正をされるらしい。
流刑地は、いくつかあるらしいが、宝玄仙たちが連れていかれる場所は、智淵城と呼ばれる女専用の牢城であり、捕えられた
まあ、孫空女と七星に説明した、羊力という隊長の言葉が正しいとしてだが……。
そして、男は、もっと遠い鉱山が牢城になっていて、そこで労働をすることが多いようだ。
鉱山で働かされる男は、まだ脱走の例はあるようだが、女の牢城から逃げ出した囚人は聞いたことはないらしい。
女の牢城に入れられれば一生釈放されることはない。
そして、大抵は数年も持たずに死ぬ。
そういう場所のようだ。
手足に刻まれた黒い帯のような線が、逃亡しようとすると身体の自由が効かなくなるようになっているらしい。
宝玄仙と孫空女、そして、七星と楊鈴を捕えたのは、何度か名が出てきた
話を聞く限り、法術も道術も同じもののような気がするが、とにかく、この国では天教が禁教になっているので、その天教の言い回しである“道術”という言葉も使わないっぽい。
いずれにしても、宝玄仙は、あの東閣市の料理屋で眠り薬を飲まされて意識を失った。
意識を失っている間に、右の手の甲に魔術を封じる紋章を刻まれてしまったようだ。
道術も法術も、呼び方が違うだけで同じものであると仮定しても、さすがに、直接肌に紋様を刻まれては、宝玄仙の血の中にある『術返し』でも抵抗できない。
手の甲に描かれた紋章は、天教でいえば、“道術紋”であろう。
道術紋を刻まれるということは、宝玄仙の身体自体が、その力の源にもなっている。宝玄仙の高い霊気そのものが、宝玄仙の道術を防ぐために使われているのだ。
だから、術が遣えない。
これは、少しばかり、まずい状況かもしれない。
この紋章を消すためには、宝玄仙並の大きな道術を持つ術遣いが術をかけ直すしかない。
だが、それを見つけることは難しい。
宝玄仙ほどの術遣いはそういるものではない。
ましてや、宝玄仙は天教からは追放されたうえに、手配書をばらまかれて捕縛にかけられている身だ。
なんとか智淵城からの逃亡を成功させても、天教には頼れない。
しかし、力の強い術遣いは、宝玄仙の知る限り、天教に所属していることが多い。
つまり、宝玄仙がこれからやらなければならないことがふたつある。ひとつは、現在の囚われの身からの脱出を成功させること──。
そしてもうひとつは、手の甲の紋章を消して道術を復活させることだ。
逃亡については、手首と足首の帯になっている黒い線が、その行動を防いでいるのなら、自力では難しいのかもしれない。
しかし、幸いにも、沙那と朱姫がいる。
ふたりは、囚われた宝玄仙と孫空女を救出しよう努力してくれているはずだ。
耐えていれば、必ず、その機会はある。
もうひとつの道術の復活は、いまのところ、方法が思いつかない。
脱出を果たしても、紋様は消えることはないだろう。
宝玄仙のように道術の能力の強い術遣いであり、天教に属さず、宝玄仙に協力してくれる者を探すしかないのだろうか――。
「ところで、お前の雇い主だった、天教の神官は、どのくらいの階級なんだい、七星?」
「道士と言っていたね、宝玄仙さん」
道士では、おそらく大した道術の力は持っていない。
宝玄仙の右手の紋様を打ち消す力は持っていないだろう。
「……そうかい。それで、そいつは、どうなったんだい、七星?」
とりあえず訊ねた。
「さあね。あたいら女は、男たちからは離されたんだ。どうなったか知らないよ、宝玄仙さん」
七星は言った。
楊鈴の泣き声が大きくなった。
「もう、いつまでも鬱陶しいねえ、楊鈴。いい加減に泣くのはやめなよ。そりゃあ、あんな兵たちに破瓜を散らされたのは気の毒だけど、女というものは、いつかは、股に男の精を受けるんだよ。諦めなよ」
七星が怒鳴った。
楊鈴はますます声をあげて泣く。
七星は、鼻を鳴らして楊鈴の反対を向いた。
この七星は天教徒として捕えられたものの、実は天教教団とはなんの関係もなかったということも、さっきの説明で教えてもらった。
この車遅国で天教の布教活動をしようとしていた天教の神官は、東帝国からやってきた若い法師で、布教活動を目的として、密入国によりこの国に入ったらしい。
名も聞いたが、知らない名で天教本部とも関わりはないようだ。
宝玄仙を追ってきたというわけでもなさそうだ。
本当に純粋に布教が目的で、この国に入ったのだ。
帝国から連れてきた護衛もいたが、ここまで来る間に居なくなってしまったらしい。
それで、旅の途中で見つけた七星という女を傭兵として雇った。
七星は、孫空女の言っていたとおり、用心棒が本業だが、それで食えなくなれば身体を売ることもあるようだ。
なかなかにしたたかで頼もしい。
売れるものなら、腕っぷしも女の身体でも同じだというのも、さっぱりしていて気持ちがいいくらいだ。
宝玄仙は、金銭を代償として身体を売る女を否定するつもりはない。
七星もそれなりの気量良しだ。
生きるための金を稼ぐのに、用心棒よりも手っ取り早いには違いない。
とにかく、七星を雇った男の法師は車遅国に入り、布教活動をやったものの、通報を受けて駆けつけた東閣の城郭軍に全員が捕えられた。
そして、その時に、七星も一緒に捕えられた。
天教徒ではなかったが、わずかながら七星も、霊具が使える程度には道術が遣え、身に多くの霊具を装着していた。
すべて取り上げられたようだが、それで、天教の術遣いと判断されたのだろう。
七星の右手にもしっかりと魔術封じの紋章が刻まれている。
ひと言も喋らない楊鈴というのは、捕えられた天教の若い法師の侍女役のようだ。
女法師を着ていたので、弁解のしようもない。
彼女も捕えられた。
このふたりと孫空女は、捕縛されて連れていかれた東閣の軍営の牢で一緒になったらしい。
七星と楊鈴が軍営に捕えられたのは二日前で、孫空女が同じ牢に放り込まれて知り合いになったそうだ。
そのとき、宝玄仙は別の場所で眠らされていて、孫空女とは、一緒ではなかったようだ。
この三人の服がぼろぼろなのは、その軍営の牢で、昨夜、兵たちに犯されたらしい。
一番抵抗したのは、孫空女だったようだ。
鎖で拘束されながらも、孫空女が自分を襲う兵の骨をへし折るような暴れ方をした。
顔の怪我もそのときのものみたいだ。
だが、羊力という法術遣いに、手首と足首に変な法術をかけられて、抵抗できなくなったらしい。
法術で身体を拘束されて結局は犯された。
それに比べれば、七星などは最初から無駄な抵抗と諦めて、兵たちを受け入れたらしい。
「……その羊力というのは、どんな男だい?」
宝玄仙は訊ねた。
「この国では有名な道教の法師のようだよ、ご主人様。とにかく、法術遣いだ。本来は、これからあたしらが行く、智淵城の番人のひとりらしいよ」
孫空女が応じた。
「兵の話によれば、七星と楊鈴を迎えに来たんだ。それで、あたしらが偶然にも城郭で食事しているのを見つけて、ついでに捕えられたみたいだ」
「ついでねえ……」
宝玄仙は自嘲的に嘆息した。
あんなに反対した沙那に逆らって、勝手に城郭に入った。
そして、この
沙那は怒っているだろう。
そのとき、檻車が止まった。
到着したのだろうか。
檻車の外が慌ただしい。
見ると、孫空女も、七星も、楊鈴も不安そうな顔をしている。
そして、檻車が止まってからかなりの時間が経った。
突然、檻車の扉が、外から叩かれて大きな音がした。
すると、いきなり、手と足が一番近い床に張りついて動かなくなった。
床に胡坐をかいていた宝玄仙は、胡坐に組んだ両膝の外側の床に手首が張り付いた。
七星は膝を抱えた姿勢のまま、やはり手が床に張りついている。
孫空女と楊鈴は、壁にもたれていたので、両手は壁だ。
扉が開いた。
「……へ、へ、へ、食事の時間だぜ、お前ら……」
両手に木製の平たい椀を持った兵がふたり入ってきた。
にやついている。気味が悪い。
そして、手足が床や壁に張りついている四人の前にその椀を置いていく。
宝玄仙の前にも、皿が置かれた。
その中身を見て、宝玄仙は、思わず込みあげた吐気を耐えた。
椀の中は半分くらい水が入っていて、その中になにかの穀物の屑と野菜屑が浸かっている。
吐気を催したのは、その皿の中にこれ見よがしに浮いている白濁液だ。
これは男の精液だ。
皿の中の水と食べ物に精液がかけられている。
しかも、大量にだ。ひとりやふたりではない。
すくなくとも十人は宝玄仙の皿に精液をぶっかけている。
見ると、ほかの三人も、自分の皿を見て顔を蒼くしている。
彼女たちにも、精液浸けの食べ物が配られたのだろう。
「おう、貴族法師も目を覚ましたか」
兵の後ろから檻車の中に入ってきた巨漢が、そう言いながら宝玄仙を見た。
宝玄仙は、この身体の大きな男に見覚えがあった。
東閣の料理屋で捕えられたときに店員に化けて料理を運んできた男だ。
そう言えば、意識を失う直前に、この男によって宝玄仙の手になにかを刻まれた記憶が蘇る。
「あんたが羊力かい?」
宝玄仙は言った。
すると、羊力の手が宝玄仙の髪を掴んで、顔をあげさせられた。
宝玄仙は、髪の毛を引っ張られる痛みに、顔を歪めた。
「おう、俺が羊力だ、貴族法師――。いまのところ、お前は特別待遇だ。多分、智淵城の
羊力の髪を持つ手に力が入る。
痛い――。
この羊力といかいう男は、容赦なく髪を上に向かって引っ張る。
だが、手が床にくっついているので宝玄仙の身体は、一定以上はあがらない。
それにしても、なんという力だろう。
髪の毛が千切れそうだ。
「か、厠だって……?」
「おう、厠だ。厠掃除じゃねえぞ──。厠女でもねえ。厠だ──。これから行く智淵城には、いろいろな苦役と作業があるが、その中で最低の懲罰が厠だ。お前たちの厠は、裏庭に十個ほど小さな穴を掘って、そこに交替でするだけなんだが、厠の懲罰を受けた囚人は、その穴に放り込まれるんだ。三日程な」
羊力がげらげらと笑った。
「いい加減に、ご主人様から手を離せよ、羊力──」
そのとき、孫空女が横から怒鳴った。
「静かにしてろ──」
別の男が孫空女の腹を思い切り蹴りあげた。
動くことのできない孫空女が呻き声をあげて、身体を折り曲げた。
「孫空女──」
宝玄仙も声をあげた。
「いいから、あっちは放っておけ──。それよりも、厠の刑の話だ。罰の三日が終われば、自力で出てきていいんだが、そんな力は残っていないし、誰も出さないから、大抵はそのままだ。厠の穴の中で糞で溺れ死ぬ──。それが厠だ」
羊力が笑いながら手を離した。
宝玄仙は、首を下に向けて歯噛みした。
「ようし、お前ら――」
羊力が檻車の真ん中で声をあげた。
「……これから、食事をしてもらうぞ。毎回、移送の女囚どもには、恒例にしているご馳走だ。俺が指を鳴らしたら、手が床や壁から離れる。そしたら、目の前の餌を食え。ひとつ残らずな」
「ふ、ふざけるな、羊力。こんなものが食べれるかよ」
怒鳴ったのは孫空女だ。
蹴られた腹が痛いのか、まだ息が荒い。
だが羊力は面白そうに笑みを浮かべているだけだ。
「おう、食いたくなければ食わなくてもいい。だが、食わなければ、その首にしている首輪が絞まる。皿が空になれば首輪は元に戻る。ここで死にたくなければ、全部食うんだ。いくぞ――」
「な、なに――?」
また、孫空女だ。だ
が、思い直したのか、それ以上は文句をいうのは自重した。
黙って、精液だらけの食べ物を見ている。
宝玄仙も見た。
また吐気をもよおした。
ふと見あげると、七星も真っ蒼だ。
楊鈴は、相変わらずすすり泣くだけで、まるで、生気を失ったようだ。
「そうだ。ちょっと待て。おい、もう一度、ここに皿を集めろ」
羊力がそう言うと、目の前にあった皿が檻車の真ん中に立っている羊力の足元に集められた。
羊力は、下袴を降ろすと一物を出した。
そして、集められた皿に目がけて、小便を始めた。
宝玄仙は、それを呆気にとられて見ていた。
眼の前で、自分たちの食事だと言われた皿に羊力の小便がかけられている。
羊力の排尿が終わると、再び、皿が配られた。
猛烈な臭気が宝玄仙を襲う。
「始め――」
羊力が笑いながら指を鳴らした。
すると、手が自由になった。
すると首輪が首に張りつくように密着してきた。
本当に絞まっている。
宝玄仙は皿を取った。
覚悟を決める──。
ちょっと多少臭いだけだ。
毒を飲むわけじゃない。
こんなことくらいなんでもない。
そのとき、すっと意識が遠くなった。
宝玉──?
すぐに、宝玉が表に出ようとしているということを悟った。
慌てて、宝玄仙は、意識でそれを押しとどめた。
こんなことを宝玉にはさせられないし、これは宝玄仙の犯した失敗がもたらした結果だ。
それを宝玉には押しつけられない。
あいつには、もう十分に尽くしてもらった。
おそらく、逃亡の機会を得るまでには、しばらくかかる。
智淵城とやらでは、目の前の恥辱以上のことが待っているだろう。
それは、宝玄仙が受ける──。
そもそも、逃亡の機会というのは、千載一遇の一瞬のみかもしれない。
宝玉ではそれに対応できない。
だから、これから先の意識体は、宝玄仙であるべきなのだ。
すると、宝玉の気配がすっと心から消える。
わかってくれたみたいだ。
「畜生──」
宝玄仙は眼をつぶって小便と精液の混じった水を飲む。
そして、尿と一緒に食べ物を口に入れて咀嚼していく。
気持ち悪い。
吐気がする。
しかし、その吐気ごと飲みこむ。
喉にぐいという絞まりを感じた。
首輪が縮んでいるのだ。
口に入れる速度をあげる。
精液だろうが、小便であろうか、臭かろうが、気にしなければどうということはない。
ふと見ると、孫空女も七星も、もの凄い勢いで食べている。
「うぐうっ――」
さらに首が絞まり、宝玄仙は思わず声を出した。
これ以上、絞まると食べ物が喉を通らなくなる。
指で掻き込んだ。皿は空になった。
だが、首輪は緩くならない。
また、絞まる。
「全部だぞ、お前ら――。皿についているものは、すべて舐めきるんだ。合格しないと首は緩まらない。とにかく、皿を舐め続けろ」
羊力たちが大笑いしている。
そういうことかと思った。
皿の端や周りについている精液を舌で舐めきる。
やっと、首輪が緩くなった。
宝玄仙は精根尽きたような気がして、皿を床に置いた。
孫空女と七星もほぼ同時に、ほっとした顔をして皿を置いた。
「あっ、
不意に、七星が絶叫した。
宝玄仙は顔をあげた。
楊鈴が苦しんでいる。
その顔は真っ白だ。
苦しそうに、手が空中で踊っている。
首輪に触ろうともがいているのだ。
だが、おかしな術で、宝玄仙と同じように首輪には触れないでいるらしい。
ふと見ると、楊鈴の皿はなくなっていない。
口にしなかったのだ。
もはや、食べるような状態ではない。
首輪が喉に食い込んでいて、白目を剥きかけている。
「羊力、やめるんだよ――。ほ、本当に死ぬよ」
宝玄仙は叫んだ。
「ぼうっとしていたのが悪いのさ。お前らは、一生懸命食ったのにな」
羊力は平然としている。
一番近いのは、向かい側にいる孫空女だ。
孫空女が首の鎖を伸ばして、楊鈴に飛びついた。
だが、その鎖が縮まって、壁に戻された。
楊鈴の首ががくりと折れて、身体が倒れる。
「よ、羊力……いや、羊力様、やめてください――。気を失ったよ。気絶したんだ。もう許してやってよ──。お願いします──」
七星が発狂したような大声を上げた。
「残念ながら、首輪が絞まるのを止める唯一の方法は、皿が空になることだ」
「だ、だって、気を失っているよ。どうやって、食べるんだよ――」
七星が叫んだ。
「そんなことは知らんな」
羊力はにやついたままだ。
そうしている間にも、楊鈴の首輪は絞まり続けている。
いまは、完全に首の肉の中に埋もれている。
気を失っている楊鈴の顔は紫になっている。
「羊力――」
宝玄仙は叫んだ。
あと数瞬で死ぬ。
羊力が動いた。
床を叩く。
楊鈴の首輪の鎖が首輪から外れた。
羊力が、楊鈴の身体を抱いた。
もう、動いていない。
次の瞬間、羊力は、楊鈴の首を持つと、背中方向に一気に曲げた。
おかしな音がして、楊鈴は完全に脱力した。
「お、お前、な、なんということを……」
宝玄仙は、羊力を睨んだ。
羊力は、死骸となった楊鈴の身体を床に投げた。
首輪が外されている。
「……お前たち、屍体を捨てろ」
羊力がふたりの兵に言った。
兵が楊鈴の身体を両側から掴み、数回振って勢いをつけてから、開け放たれている檻車の扉から投げ捨てる。
地面に投げ落ちたような音がした。
「……あと数刻で智淵城に着く。そうすれば、お前たちの命など、虫けらと同じだということがわかるだろうよ。さて、そろそろ、相手をしてもらうか。宝玄仙は、虎力の兄貴に残しておいて、ひとりずつ味わうということで、ふたり連れて来たんだが、ひとり足りなくなったな……。じゃあ、七星か孫空女に、前後挿しを受けてもらうか」
羊力は言った。
「前後挿し?」
七星だ。
「そうだ。肛門と膣で同時に受けるんだ。女の身体は、受け入れる場所がたくさんあるからな。口も使って三本挿しというのもある。やるか、七星? それとも、孫空女が受けるか?」
羊力は馬鹿笑いした。
七星と孫空女は蒼ざめている。
「……いいよ。お前の相手は、わたしがする。脚も自由にしておくれ」
宝玄仙は静かに言った。
「お前は、虎力の兄貴に差し出す特別待遇だ」
「わかりゃしないよ、羊力」
「……それもそうか」
羊力は、床を一度脚で踏んだ。
脚が自由になった。
宝玄仙は、立ちあがり、法衣の紐を解きはじめた。
宝玄仙の袴が下に落ちる。
そして、下着も脱いだ。
羊力が宝玄仙に覆いかぶさった。
宝玄仙は床に身体を横たえた。
ふと見ると、七星と孫空女もそれぞれ、兵に身体を許す態勢になっている。
おざなりの愛撫の後、すぐに羊力の怒張が宝玄仙の中に入ってきた。
愛液が十分でない分、ちょっときつい。
宝玄仙は膣の力を抜いて、羊力の巨根を受け入れていく。
律動が始まる。
だんだんと愛液も出て来て、滑りもよくなる。
多少は楽になる。
抱かれているあいだ、女は誰も声を出さなかった。
ただ、男たちの呻き声と、床の軋む音だけがしていた。
長い時間ではなかった。
時間はかけられないことになっていたのだろう。
男たちは、あっという間に精を放つと、身体から離れていった。
「じゃあ、あと数刻、大人しくしていろ」
羊力はそう言って檻車の外に出た。ふたりの兵が続く。
檻車が閉じられた。再び中は薄暗くなる。
どんと檻車が揺れた。
また、動き出したのだ。
「ねえ……」
少し経ってから七星が口を開いた。
「なんだい、七星?」
宝玄仙が応じた。
「あたいらは生き抜こうね……」
「ああ、七星……。孫空女もいいね」
宝玄仙は、視線を宝玄仙に向けた。
「なにが、ご主人様?」
「生き抜くんだよ。長い時間じゃないはずだ。それまで死なないようにしようよ」
「わかったよ。ご主人様もね」
孫空女は言った。
そして、檻車に沈黙が訪れた。
しばらくは、三人の誰も口を開かなかった。