126 娼婦ふたり
宝玄仙と孫空女が捕らわれて十日近くになる。
行方を探る手掛かりはまだない。
沙那は焦っていた。
ここは、
沙那と朱姫は、ここで宿泊を続けていた。
そして、宝玄仙と孫空女が、連れていかれた女囚用の牢城の場所を探ろうとしている。
だが、わからなかった。
知り得たのは、多分馬車で一日程度の距離に牢城はあるということと、
だが、それだけ近い場所にある女異教徒専用の流刑地である牢城の場所を誰も知らないのだ。
宝玄仙と孫空女は、城郭に入った直後に、兵に捕えられた。
それは間違いない。
掴んだ足取りによれば、あのふたりは、城郭に入るとすぐに料理屋に入っている。
黒髪と赤毛の美女二人がやってきて、赤毛の女の具合が悪そうだったのを多くの人間が憶えていた。
赤毛の女が、見たことのない奇妙な異邦の服装をしていたという話もあった。
それは、宝玄仙と孫空女に間違いがない。
異邦の服というのは、孫空女が宝玄仙に強要された破廉恥な服のことで、具合が悪そうだったというのは、いつもの性の悪戯を宝玄仙は孫空女にやっていたのだろう。
しかし、そのふたりが料理屋に入ると同時に、兵が料理屋を取り巻いたらしい。
そして、ふたりを抱えて、城郭軍の軍営に連れていった。
そこまでは、ふたりが浚われたその日のうちに知ることができた。
だから、沙那と朱姫は軍営の近くに張りつき見張っていた。
果たして、軍営から檻車が出ていったのは翌朝のことだった。
檻車を護衛していたのは城郭兵ではなく、“法兵”と呼ばれる兵たちだった。
法兵というのは、車遅国が抱える軍ではなく、この国で唯一認められている法道教という宗教施設が抱えている軍だ。
つまり、法兵は、正確にいえば、兵ではなく、“法道教”の法師なのだ。
天教が帝国軍とは異なる“教団兵”という実力組織を持つのと同じように、この
それが“法兵”と呼ばれていて、宝玄仙と孫空女を捕えたのも、檻車の護送に当たったのも彼らだ。
とにかく、翌朝、軍営から出てきた二台の檻車を沙那たちは追った。
隙を見て襲いかかり、宝玄仙と孫空女を奪還するつもりだったのだ。
だが、しばらく追跡したところで、沙那は、自分たちがつけているのが、捕えられた天教徒は天教徒でも、男の天教徒を載せているのだということを知った。
天教は異教であり、捕えられれば、そのまま囚人になる。
囚人の行き先は、天教徒専用の流刑地だ。
しかし、男と女の流刑地の場所は異なる。
男の流刑地は移動に半月はかかる遠い鉱山だ。
そこで死ぬまで働かされる。
女は、東閣の城郭に近いどこかの場所だ。
それは、知ってはいたが、まさか、宝玄仙と孫空女のほかにも、捕えられた天教徒がいたと思わなかったのだ。
沙那は焦った。
慌てて、朱姫と一緒に引き返して城郭に戻った。
しかし、その時には、すでに女囚を載せた檻車は出発していて、どこかに去った後だった。
それで、手掛かりを失った。
それでも、東閣の城郭から一日の距離にある道教の管理する牢城の場所など、すぐにわかると思ったが、まったくわからない。
誰も知らないのだ。
得られる情報は、その智淵城が城郭から一日程度のすぐ近くにあり、その管理を法兵がしているということだけで、誰もその場所を知らない。
どの方角にあるかということさえ知らない。
沙那は、途方に暮れた。
巧妙に隠されているとしか思えない。
あるいは、法術と呼ばれる彼らの術で隠されているのか……。
そうであれば、闇雲に探っても、智淵城に辿りつく可能性は低い。
それで考えたのは、城郭の兵たちに接触して、彼らから情報を得ることだった。
城郭兵であれば、法兵について、一般人よりも多くのことを知っている可能性は高い。
だから、娼婦の格好をして、夜な夜な軍営の近くに行き、城郭兵と見れば、片っ端から声をかけて、この身体を抱かないかと誘った。
宝玄仙と孫空女の行方を見つけるためなら、どんな汚れたことでもやるつもりだった。
情交の場なら、男は口が軽くなる。
ほんの些細な情報でもいい。
沙那は、藁にもすがる思いだった。
連れ込む場所は、宿泊している安宿だ。
男を連れ込んで商売することは問題はない。
もともと、そういうことをする客も多いようだ。
余分な宿泊代を払えば、宿主に文句はなかった。
問題は朱姫だった。
「仕事」をしているあいだ、どこかに出ていろと沙那は言った。
沙那は、汚れ仕事を朱姫にさせるつもりはなかった。
自分ひとりでやるつもりだったのだ。
だが、朱姫は、自分もやると言った。
沙那は承諾した。
女がひと晩で相手をできる男の数は限られる。
朱姫も参加すれば、それだけ情報を得る機会は増える。
その夜から軍営の近くで、男の客を探す沙那と朱姫の姿があった。
自分でいうのもなんだが、自分がそれなりの容姿であるという自覚はある。
朱姫も美少女だ。
ふたりで、夜道に立てば、客を見つけるのに手間はかからなかった。
この夜も二人目の客の相手が終わった。
「いい身体だったぜ、お前。どうだ、俺の妾にならないか? こうやって、男を漁るよりはいい生活をさせてやるぜ」
男がすでに身支度を終えている。
沙那が要求した料金も寝台の横の台に置いてある。
沙那がちらりと見ると、沙那の要求した額より多い。
上乗せしてくれたのだろう。
「……ごめんなさい。わたし、そういう面倒なこと嫌いなの。ひとりの男に縛られたくないわ」
沙那は裸身を寝台に横たえたまま言った。
「まあいい。夜な夜な、軍営の近くに立っているのは知っている。噂になっているしな。美女がふたり、男を漁っているってな」
噂になっているのは、まずいかもしれない。
沙那は思った。
思わぬところから、疑いをもたれるかわからない。
明日からは場所を変えるべきだろうか。
「旅の女なの。路銀がなくなっちゃって……」
沙那は言った。
「女はいいよな。食い詰めても売るものがある。特に、お前みたいないい女だったら、いくらでも、客はいるだろう?」
「いい思いもできるしね。見送らなくてごめんなさい……。あなたが上手だったから……その……、まだ、立てないの……」
そう言うと男はにんまりとした。
それは本当だった。
自分はやっぱり娼婦には向いていないだろうと思う。
男に翻弄されるのだ。
ひとりひとりにこんなに感じていては、娼婦など務まらないだろう。
まだ、腰に力が入らない。
気だるさが全身を包んでいる。
「ああ、本気で俺の相手をしてくれているのはわかった。娼婦は何度も抱いたが、お前みたいな娼婦は初めてさ」
「買ってくれてありがとう」
早く帰れ。
そう思った。
それで疲れて寝入ったふりをした。
やっと、その男は部屋を出ていった。
沙那は寝台から降りた。
服を整え始める。
まだ、夜は深い。
もうひとりくらいはいけるだろう。
しかし、朱姫が、部屋に飛び込んできた。
「沙那姉さん、見つけましたよ──」
朱姫は言った。
興奮している。
朱姫は、裸身に敷布を巻いただけの格好だ。
「見つけた?」
「法兵たちのことを知っている兵です。法兵との連絡係だと言っています。ご主人様たちじゃありませんが、その前日に、別の天教の神官も捕えています。あたしたちが最初に追いかけた檻車は、そのときに捕えた神官だったみたいです。軍営に連れてこられたご主人様と孫姉さんのこともよく知っていました」
「そいつは、いま、どうしているの、朱姫?」
沙那も自分の声が上ずるのがわかった。
この十日ほどの男漁りでやっと見つけた手掛かりだ。
「一緒に来てください、沙那姉さん」
沙那は朱姫と一緒に隣の部屋に向かった。
最初に泊っていたときには、ふたりでひと部屋使っていたが、ふたりで客を取ることが決まると、もうひと部屋借りた。
それに、部屋代くらい簡単に支払えるくらいの儲けもあったのだ。
部屋に入った。
全裸の男が虚ろな表情で寝台に腰掛けている。
股間には、まだ怒張したままの男根がそそり立っている。
行為の途中で、朱姫の『縛心術』にかけられたのだとわかった。
「……いいね、お前。いまから、この人が、いろいろと質問するわ。お前は、そのすべてに正直に答えるのよ。隠し事はしない。わかった?」
朱姫が男の耳元でささやくように言った。
「……わかった」
「なにをするの。繰り返してごらん」
「……この女の質問に答える。正直に……。隠し事はしない……」
「そうよ……。正直に言うの。もう一度、繰り返しなさい」
「……この女の質問に答える。正直に……。隠し事はしない……」
朱姫がこっちを見て頷いた。
沙那は、男の前に椅子を運んできて座った。
「あなたの名は?」
沙那は訊ねた。
「
「じゃあ、黄蓋さん。あなたは、この近くにある法道教の施設の場所を知っている? 異教徒が送り込まれる智淵城と呼ばれる女囚の牢城よ」
「知らない……」
「じゃあ、知っている者を知っている?」
「それも知らない。誰も知らない。知っているのは、法師だけ……。法師以外は近づけない……」
「なぜ、そうなの?」
「連中は隠している。誰にも、その場所を教えない……」
「あなたたち、城郭の兵にも教えないの? 将校は?」
「将校も知らないと思う……。情報が漏れることを連中は恐れている……」
「なぜ?」
「情報が漏れれば、囚人に逃げられる」
「どうして? 囚人を収容する牢城だったら、城壁で逃げられないようにしているのでしょう?」
「違う。噂によると、囚人は法術で逃げられないようにしてある。城壁はない。見張りもいない。囚人自身が、その意思をなくされている。だから、外から入るのは難しくない。侵入者は困る……」
「でも、どこかにあるのでしょう? 偶然にも誰かが見つけたら……」
「それはない。偶然には入れない……。
どうやら、勝手に近づけないように、結界かなにかで護られているようだ。
城郭軍でさえ、知らないというのは本当なのだ。
「あなたたちは、どうして、智淵城の場所を探そうとしたの?」
「連中には腹が立つ。俺たちに異教徒を捕えさせておいて、自分たちだけいい思いをして……。それで、自分たちのことはなにひとつ教えない……。せめて、隠していることを知ることで鼻を明かせてやろうと……」
いろいろと確執はあるようだ。
「いい思いって?」
「連中は女囚を抱く。俺たちには手を出させない。自分たちが抱くあいだ、俺たちは追い出される……。引き渡すまで監禁している間に手を出すことも許さない……。あれは法道教のものだという……」
「それであなたたちにも、正確な智淵城の場所を教えないのね。随分と用心深いものね」
「そうだ。連中は用心深い。俺たちも信用していない。利用はするが、連中が信用するのは、法師同士だけだ」
黄蓋は言った。
「宝玄仙という名に記憶はある? 孫空女には?」
ふたりとも凌辱されたのだろうか。
いまは、どういう目に遭っているのか。
心配だ……。
「両方とも知っている。俺たちが捕えた女囚と一緒に連れていかれた……」
「……連中は、彼女たちを抱いた?」
「孫空女はな……。宝玄仙は、眠らせていたようだ……」
「どうして、ご主人……。いえ、宝玄仙は、眠らされていたの?」
「宝玄仙が大きな道術の力を持っていることが羊力はわかったらしい……」
羊力というのはさっきの出た名だ。
そいつは誰だろうと疑問を抱いたが、それよりも、その先を説明するように促した。
「……術を封じる紋章を右手に刻んだ。一日以上置けば、術封じが安定する。宝玄仙の力を失わせるためだ。それで、丸一日眠らせた……」
黄蓋は続けた。
宝玄仙は道術を遣えなくされているのだ。
沙那は思った。
「ほかに、女囚はどんな術をかけられるの? 逃走防止の術とはなに?」
「逃げるという行動をしようとすると手足が動かなくなる。それだけじゃない。
また、知らない名が出た。
今度は、虎力……。
「羊力と虎力というのが、智淵城を支配する者の名なの、黄蓋さん?」
「虎力、
「その虎力は、どんな男?」
「知らない。東閣にはやってこない。東閣に来るのは羊力……」
「じゃあ、羊力はどんな男?」
「羊力は、身体が大きい。そして、女好き……」
女好き……。
それは使える情報だろうか。
「その羊力だけが、東閣に来るの?」
「そうだ」
「虎力は、智淵城から出てこない。そういうことね?」
「ああ」
「鹿力は?」
「鹿力は、背が高い男だと聞いたことがある。鹿力の担当は、東閣以外の城郭から異教徒の女囚を引き取ることだ。国都にもいく。だが、圧倒的に、異教徒はこの東閣で捕えられる」
東閣は、車遅国のもっとも東側の城郭だ。
東から入った者は、必ずこの東閣の城郭にぶつかる。
沙那たちもそうだった。
だから、ここで捕えられる異教徒が多いのだろう。
「あなたたちは、別の天教徒を捕えたと言っていたわね?」
沙那は質問を変えた。
「天教の神官たち……。男が三人。女がふたり……。女のひとりは女用心棒」
「つまり、女は、巫女と女用心棒のふたりね? その名は?」
「巫女は
「彼女たちはどうなったの?」
「法兵たちが犯した。孫空女も。そして、羊力が連れていった。四人一緒に……」
「彼女たちは、どうして捕えられたの?」
「通報を受けた。城郭の外で布教活動をしていた……」
「その情報を受けたの誰?」
「俺たちだ。異教徒の情報をもたらした者には、多額の賞金が与えられる。異教徒が入り込めば、すぐに情報は伝わる……」
「そして、城郭軍が出動して捕えた――。そうなのね?」
「そうだ」
「そして、どうするの? 異教徒を捕まえたと智淵城に連絡するの?」
連絡方法があれば、それを手繰って場所を探すという方法があるだろう。
「そんな方法はない。向こうから来るのを待つしかない」
「どうしてないの? じゃあ、異教徒を捕えて、あとはいつ来るかわからない、その羊力を待つだけ?」
黄蓋の口が閉じられた。
「強く口封じの暗示がかかっています。重要な情報にぶつかったのだと思います、沙那姉さん」
朱姫が横から言った。
そして、もう一度『縛心術』をかけ直す。何度も繰り返し、暗示を送り込み直し、また、沙那に頷いた。
「羊力は、いつ城郭にやって来るの?」
「羊力は、必ず、十日に一度はやって来る」
「十日に一度?」
「そうだ。そのとき、法兵は軍営に泊る。その手配をするのが俺の役目だ」
「十日に一度なにしにくるの? そんなに異教徒というのは多いの?」
「いや、異教徒は滅多に来ない。連中の目的は、調達だ……」
「調達?」
「智淵城で必要な食料。品物。法具の材料……。様々なものだ。智淵城でも作っていはいるが、それでは足りない。それを補充に来る」
近づいた。沙那の直感が、やっと智淵城を手繰る材料に行き着いたと示している。
「連中は、その代金を支払うの?」
「そんなもの……。連中は、要求するだけだ。必要な人数分の補給品を連中は、俺に要求する。俺は、それを商家から買い付けて揃える。支払いは城郭軍だ。それだけだ……」
「どのくらいの量? どのくらいの人数分?」
黄蓋は、細かい数字を並べた。
その数字から、沙那は、智淵城にいる女囚の数が約千人で、それを管理している兵の数は三十人から五十人程度だと悟った。
たったそれだけの人数で管理をしているのだ。
それくらいなら、一度入り込んでしまえば、宝玄仙と孫空女を救い出すのは難しいことではない。
あとは、どうやって入り込むかだ。
「次に羊力が調達品を取りに来るのはいつ?」
また、黄蓋が黙り込んだ。
「黄蓋、あたしがお前に命じたことは……? もう一度、繰り返すのよ」
朱姫がまた横から囁く。
「この女の質問に答える……正直に……隠さない……」
「そうよ、黄蓋。隠さないのよ……。さあ、沙那姉さん―――」
朱姫が沙那に視線を送る。
「いつ、羊力は来るの?」
「おそらく、数日以内には……」
「数日以内ね」
「そう。明日か……、明後日か……。多分、三日以内には……。そして、ひと晩、泊まる」
「ひと晩泊るのね?」
沙那は言った。
「そうだ」
黄蓋は言った。
沙那はしばらく考えていた。指で眉間に手を置く。考えろ、考えるんだ。沙那は自分に命じた。
「……十日に一度の羊力とその隊の訪問―――。そのために必要なものを揃えるのがあなたの役目ね?」
やがて沙那は言った。
「そうだ」
「次のときに、引き渡す女囚はいる?」
「いない」
黄蓋は首を横に振った。
「夜は、羊力はどうするの? 女好きって、言っていたわよね。そいつは、智淵城では、毎晩女囚を抱くのでしょう? こっちでは我慢するの?」
「そんなことするものか。羊力は、女なしで寝ることはない」
「だけど、話からすれば、随分と用心深いようね、その法兵たちは――。彼らは、女を買いに行くの?」
「行かない。連中は用心深い。とても――。女を買いに外には出ない。それは禁止されている」
「じゃあ、どうするの、羊力は? ほかの法兵はともかく、羊力は女なしでは耐えられないのでしょう?」
「俺が世話をする。手頃で安全な娼婦を見つけて、軍営に連れていく」
「それも仕事なの? 女を世話するのが?」
「仕方ない。仕事なのだ」
「次のときの羊力の夜用の女は見つけている?」
「まだだ……。そんなもの適当に呼ぶだけだ」
「どうして? 女の身元調査もあなたの仕事でしょう?」
「そうだ。だが、そんなこと真面目にやっていられるか。その女に支払う金も城郭軍が支払うのだ。馬鹿馬鹿しい」
沙那は、朱姫に耳打ちした。
朱姫は、沙那と場所を代わって、黄蓋の前の椅子に座った。
「……黄蓋、よく聞きなさい。明日の朝か、明後日か、三日後……。とにかく、羊力がやって来た日に、お前は軍営の外を見る……。するとふたりの女が軍営の外に立っているわ。お前は、それを見て、なぜかその女たちを、羊力にあてがう女に使いたくなるわ。とてもいい女たちだし、安心できる女よ。お前は、その女を初めて見るけど、なぜかそう思うのよ。そして、羊力の部屋に連れていく」
「……わかった」
「その女はあたしたちよ。さあ、繰り返すのよ……」
朱姫が言った。
「……羊力が来る日、お前たちが軍営の前にいる。俺は、お前たちを羊力にあてがう女に使おうと思う。お前たちは、いい女だし、信用もできる……」
「そうよ。だけど、お前は、あたしたちを見るのは、そのときが初めてよ。この部屋を出れば、今夜のことは、すべてを忘れてしまうわ」
「すべてを忘れる……」
それから、朱姫は繰り返し、黄蓋に同じことを擦りこんだ。
そして、さらに知っている情報をすべて聞き出し、それが終わったら黄蓋に服を着させて、宿の外に出した。
「やっと見つけましたね、沙那姉さん」
朱姫は言った。
「もう一度、その羊力に抱かれるわ。それで終わりよ、朱姫」
「あたしは、構いません、沙那姉さん。何度でも、何人とでも抱かれます。ご主人様と孫姉さんを助けるためなら……」
朱姫はしっかりと言った。