13 人族の奇妙な習性
「へえ、なかなかの家じゃないかい、
宝玄仙が感嘆の声をあげた。
沙那も同じ感想を抱いた。
五行山の盗賊団で捕らわれていた小角という雌妖を偶然にも助け、その小角に連れられてやって来た山小屋だ。
だが、連れて来られたのは、山小屋というよりは、
また、ひと繋がりの大きな室内の奥は衝立で仕切られていて、その向こうは寝室のようである。
とにかく、中は清潔にされており、野蛮さのようなものは微塵もない。
場所は五行山の山を西側に下った麓だ。
人間族の麓の村とは、そんなには離れてなかった。
むしろ、亜族の棲み処がこんなところにあるのかと、驚きたくなるような近さである。
しかし、小角によれば、この小屋周辺には人避けの結界を刻んでいて、偶然近づいても、巧みにどこかに追い払われてしまう魔術がかけられているのだという。
だから、安全なのだそうだ。
ただ、小角の口振りには、人間の集団を野蛮で残酷なものだという決めつけが込められているようであり、それが沙那には違和感があった。
確かに、人間は亜族という名の頭に角のある亜人種を嫌う。
特に、この帝国ではそうだ。
亜族というものは、見つけ次第に殺すべきものだとずっと教えられてもきた。
さもなくば、逆に亜族は人間族を襲うのだ。
沙那はそう信じてきた。
だが、実際に接してみると、まったく普通だ。
むしろ、小角の方が人間族の狂暴さを怯えている様子だ。
そのくせ、正直そうで義理堅く、助けてくれた礼として、宝玄仙に言われた性奉仕に応じるのだという。
沙那は亜族とは狂暴なものという固定概念が間違っていたという思いに襲われかけている。
もっとも、幼少の頃から亜族とは粗野で暴力的な存在だと教えられてきたので、その思いからまだ抜けられないものの、頭に角があり、魔術に堪能なのを除けば、小角は人間の少女そのものに思えた。
だが、小角は見た目が人間族の少女に見えるだけで、年齢はそれなりのようだ。
それは話し方や仕草などに表れている。
おそらく、かなりの年齢なのではないかと思う。
一方で孫空女には、亜族に対する嫌悪感のようものは皆無のようだ。
宝玄仙もそうだが、孫空女もまた、亜族に接した経験が多いようであり、沙那のように構える態度はない。
だから、沙那は自分の警戒心が不当なもののように思えて、自分の亜族に対する猜疑心が醜いものに感じ始めていた。
ここまでは、四人で歩いてきた。
道のりでは、小角は角を巧みに隠すような髪形にして、さらに頭巾を被って、亜族である証拠である角が外に見えないように気を配っていた。
小角は、魔術で瞬間移動をして、ここに来ようとしたが、他者の術で跳躍することを宝玄仙が嫌ったのだ。
魔術にしろ、道術にしろ、一瞬にしてどこかに跳躍する術を『移動術』というらしい。
『移動術』というのは、基本的には、術者が移動先にあらかじめ移動術のための印を刻んでおく必要があるらしく、まだ行ったことのとのない場所に移動することはできないようだ。
つまり、移動術とは、術者の刻んだ印と印を術で繋ぐという作業であり、だから、宝玄仙もこの旅を術で進むわけにはいかない。
また、印というものは、他人のものを使うことも難しく、しかも短期間で消滅してしまう。
道術や魔術にも、案外制約があるようだ。
「さて、では約束の性奉仕だが、まだ陽が高い。とりあえず、食事にするか。そこに座ってくれ。庭の野菜と塩漬けの肉もある。一刻(※)もあれば、食べられるようにする」
性奉仕というのは、小角を助けた見返りに、宝玄仙が小角に要求した謝礼だ。
もっとも、宝玄仙としては冗談だったと思うが、この義理堅い雌妖は、宝玄仙の言葉を真に受けて、本当に性奉仕をするのだと言って、ここまで沙那たち三人を連れてきた。
沙那としては、さっさと逃げてくれればよかったのにと、嘆息したくなる。
小角が示したのは、天井から吊られている鍋のかかっている囲炉裏だ。鍋は空だが、小角が両手をかざすと、囲炉裏の灰から火がおこり、鍋に水が満たされた。
何気無くやっているが、なにもないところから水や火を発生させるのは、簡単な術ではないはずだ。
これだけで、小角が相当の高等亜族だということがわかる。
「いや、飯なんていいよ。すぐに始めるさ。じゃあ、お前たち、すぐに素っ裸になりな。小角が性奉仕してくれるとはいっても、少しはならしておかないとね」
宝玄仙が機嫌よく言った。
だが、その内容には驚いた。
小角の言うとおり、まだ陽は高い。
こんな日中から開始するとなると、夜までもたない。
宝玄仙のことだから、一度始めると、しつこいくらいに長い責めになる。
「い、いえ、わたしはお腹が空きました。できれば食べてからの方が……」
「そうだね。それに夕べは徹夜だったし、ひと休みしてからにしようよ」
沙那に次いで、孫空女も言った。
もっとも、孫空女の物言いは、沙那のように計算ではないと思う。
夕べは、孫空女の手下だった盗賊たちを始末するために、一晩中動いていた。
それから、また歩いて来たので、確かにちょっと疲れてる。
「ひぎゃあああ」
「はがああはあっ」
そのとき、当然に股間に電撃が迸り、沙那はその場にひっくり返った。
孫空女も一緒にのたうったので、同じように股間に電撃を道術で流されたのだろう。
「こいつら……。なかなか演技がうまいじゃないかい。そうやって、罰を受けようと一生懸命なのはわかったよ。小細工をしなくても、ちゃんと痛めつけてやるから、心配せずに服を脱ぎな、糸屑ひとつ残すんじゃないよ。それとも、もう少し過激な罰がいいのかい?」
宝玄仙が笑った。
無論、宝玄仙特有の意地の悪いからかいだ。
早く命令に従わないと、もっと酷い目に合わせると言っているのだ。
「そ、孫空女……」
「う、うん……」
沙那と孫空女は、慌てて服を脱ぎ始めた。
こうなったら、諦めるしかない。
拒否しようとしとも、必ず服従させられるし、無駄な抵抗は宝玄仙を喜ばす材料にしかならない。
「演技だと?」
すると、小角が声に不審の響きを込めて言った。
どうやら、この雌妖は、宝玄仙の皮肉を言葉通りに受け取ってしまったようだ。
「そうさ。実のところ、こいつらは、本当は虐められるのが大好きなのさ。そして、抵抗する演技をすると、さらに気持ちよくなるんだよ。それが人間族の女の習性でね」
宝玄仙が大笑いした。
「か、勝手なことばかり言わないでください、ご主人様」
「そうだよ。そんなわけないよ」
すでに最後の股布をほどきかけていた沙那と孫空女は、ほぼ同時に抗議の声をあげた。
「んぎいいいっ」
「あぐううっ」
だが、またもや電撃が股間を襲う。
しかも、今度は電撃だけでなく、肉芽と乳首の根元の女淫輪の振動も一緒だ。
「あ、あはああっ」
沙那は、激痛に次いで起こった快感の疼きに股間を押さえて悶えてしまった。
「あ、ああっ、さ、沙那──」
横で孫空女が甲高い悲鳴をあげた。
宝玄仙の悪戯で、沙那と孫空女は「快感の共鳴」というものを結びつけられたままだ。
沙那か孫空女のどちらかに快感が沸き起こると、なにもされていないもう一方にも同じ快感が起きるという仕掛けなのだが、沙那が女淫輪で急激に快楽を上昇させたことで、孫空女にも同じ快感が発生したというわけだ。
「おおっ、本当に気持ちよくなったのだな。いまのは、紛れもなく悶え声──。確かに、確かに……」
小角が驚いた声をあげた。
どうやら、小角には、宝玄仙が電撃を施したのはわかっても、淫具を動かしたのはわからなかったようだ。
「そうだろう、小角。人間族の女の習性は難しいのさ。だから、嫌だと口で言っても、責めをやめては駄目さ。そんなことをすれば、こいつらは怒りまくるよ」
宝玄仙は大笑いしている。
どこまでも、冗談を押し通すつもりのようだ。このなにも知らなさそうな雌妖をからかうのが愉しくなってきたらしい。
そして、やっと淫具の振動がとまった。
ぐったりとしている沙那と孫空女から、宝玄仙が股布を引き剥がした。
「立って、足を開け。腕は腰のくびれの後ろで水平だ」
宝玄仙が怒鳴った。
言われたとおりにする。
荷から縄束を取り出した宝玄仙が、沙那と孫空女の両手を背中で後手縛りにした。
乳房の上下にも縄をかけられる。
これは、ただの縄ではない。
『魔縄』だ。
霊気の込められた縄であり、一度縛られると、術者が解かない限り、ほどけることも、刃物でも切れることもないらしい。
「なるほど、蜜が垂れておるのう……。虐待で感じるというのは本当なのか……」
小角が沙那たちの股を覗き込みながら言った。
恥ずかしいし、口惜しいが、姿勢を無断で崩すと、喜んで宝玄仙がいたぶってくるに決まっているので、仕方なく、小角がしげしげとふたりの股間を眺めるに任せた。
孫空女も横で恥ずかしそうにしている。
だが、なんだかむず痒いような不思議な疼きがふつふつと沸き起こってきた気がした。
沙那はそれがなんだかわからず、知らず腰をもじつかせた。
「ほう、孫空女……。お前、どうやら、露出狂の癖もあるようだねえ。こうやって、恥ずかしい裸身を晒ささせられると感じてくるのかい」
見守っていた宝玄仙が、いきなり爆笑した。
露出癖?
つまり、裸を見られて興奮する変態……?
孫空女が?
沙那はびっくりした。
「ば、馬鹿なこと言わないでよ、ご、ご主人様──。そ、そんなことあるわけないよ」
孫空女が顔を真っ赤にして大声を出した。
「だって、実際そうじゃないかい。小角が股ぐらを覗くだけなのに、どんどん蜜が垂れるのはどういうわけだい──? おおっと、勝手に股を閉じるんじゃない」
ぴしゃりと肉が叩かれる音がした。
宝玄仙が孫空女の尻を叩いたのだ。
痛さは共鳴しないので、沙那にそれが伝わることはないが、ぐっと子宮を抉るような切ない刺激が沙那に起こった。
これも、孫空女から伝わる快感の共鳴?
孫空女には、もしかして、虐められて悦ぶ被虐癖がある?
そんな風に見えないが、でもこの疼きの伝達は……。
沙那は思わず、孫空女を見てしまった。
「ほら、被虐女、反応するんじゃないよ。共鳴で伝わる沙那が戸惑っているじゃないかい」
宝玄仙が、笑いながら、もう一度孫空女の尻を叩いた。
またもや、さっきのおかしな刺激が股間に起こる。
「んっ」
沙那は思わず腰を捻った。
「あっ、さ、沙那……。ち、違うんだよ……。た、多分、そ、そんなことは……。だ、だって……」
孫空が狼狽えた声をあげた。
「ふうん……。これはなかなか人間族の習性というのは難しいのう……。口と身体は別なのか……。奉仕というから、ただお前たちの性愛の相手をすればいいのかと思っておったが、そんな簡単ではないようじゃのう」
小角が唸った。
沙那も、もういちいち否定する気にもなれない。
好きにしてくれの心境だ。
「じゃあ、小角、始めるかい。まずは綱渡りでもさせて遊ぼうじゃないかい。この綱をこの家の端から端まで繋げておくれよ。腰の上の高さに調整してね」
「縄を? それが性愛か?」
小角はきょとんとしている。
「そうだよ。さっきも言ったろう。とことん侮辱的なことをさせるんだよ。人間族の女はそれが嬉しいのさ。とにかく、それを跨がせて歩かせるんだ。大きな縄瘤を作るのを忘れるんじゃないよ。面白いことになるから、見物してな」
宝玄仙が魔縄をひとつにして長い縄にすると、それを小角に渡した。
どうやら、沙那と孫空女に縄瘤のついた縄を食い込ませて歩かせるつもりらしい。
沙那はげんなりとした。
一方で宝玄仙は早くも自ら巫女服の装束を脱ぎ始めた。
やる気満々のようだ。
どうやら、長い一日になりそうだ。
沙那は嘆息した。
「そういうことなら、それよりも、いいものがある」
小角が言った。
次の瞬間、沙那はぎょっとした。
家の中が一変して、家の端から端まで貫く溝が出現したのだ。溝の幅は沙那の肩幅の倍はあり、しかも、溝の底から無数の触手が糸を引く粘着性の物質を表面に出しながら、うねうねと動いている。
「ひ、ひいっ、こ、こんなの嫌です」
「う、うわあ、や、やだよ、ご主人様。な、縄を跨ぐよ。触手なんて勘弁して」
沙那はおぞましさにぞっとした。
孫空女も顔をひきつらせている。
だが、宝玄仙はひとり高笑いだ。
「こりゃあいい。じゃあ、溝渡りをさせようじゃないかい。だけど、ただ歩いてもつまらんからねえ。立ち止まったり、触手の刺激に負けて達したら、その都度、尻に排便を誘発する液体を注入しようじゃないか。それはできるかい、小角?」
「それは容易いが、しかし、そんなことをしてよいのか、宝玄仙? 人間族は排便姿を見られるのが恥ずかしくはないのか?」
小角は驚いている。
「な、なん言ってんのよ。恥ずかしいに決まってるじゃない」
「そうだよ、ご主人様。悪趣味だよ」
沙那と孫空女は喚いた。
「いい演技だねえ……。じゃあたっぷりと虐めてやるよ。小角、こいつらを悦ばせるには、できるだけ恥ずかしいことをさせるのがいいんだ。あるいは、屈辱を与えるとかね」
宝玄仙が笑った。
全く沙那たちに、取り合う様子はない。
一方で、どんどんと装束を脱ぎ捨てていく宝玄仙の衣類を小角が甲斐甲斐しく集めていく。
そして、「わしにできるかなあ……。難しいのう……」とぶつぶつ口にしていた。
「じゃあ、宝玄仙、始めるので、これをしてくれ。亜族用の術を封じる首輪じゃが、人間族の道師にも効果があることは確認済みだ」
小角が、いつの間にか手にしていた金属の首輪を、最後の一枚を外した宝玄仙の首にがちゃりと嵌めた。
宝玄仙がぎょっとした顔になった。
沙那も驚いた。
「じゃあ、すまんが、できるかぎりの性奉仕をするので、そのふたりと同じ格好になってくれ、宝玄仙」
その小角の言葉が終わると同時に、宝玄仙に向かって四方から触手が飛んできて、宝玄仙の両手を掴むと、強引に両手を背中側にねじ曲げる。
「わっ、な、なんだい。なんのつもりだい、小角?」
宝玄仙が怒鳴った。
しかし、小角がさっきの魔縄を宝玄仙にかけ始めた。
「しかも、これは霊気を封じる首輪……。お、お前、なにやってんだよ。嗜虐するのはこいつらだけだ。わたしはいいんだよ──」
宝玄仙が焦った声をあげた。
沙那は驚いたが、なぜ小角が宝玄仙にそんなことを始めたのかわかった。
さっきから宝玄仙は、虐められて悦ぶのが人間族の女の習性だと、ずっと繰り返している。
宝玄仙は、沙那と孫空女のことだけを言及しているつもりだと思うが、小角は宝玄仙にもまた、同じようにしなければならないと思ったのだろう。
宝玄仙も人間族の女だ。
だから、宝玄仙の術を封じて身体を拘束したというわけだ。
「そ、そうなのか?」
小角が手を止めた。
しかし、沙那はすかさず横から口を開く。
「まあ、ご主人様も演技が上手ですねえ……。小角、特に、ご主人様には手加減をしちゃだめよ。責めが生ぬるいと、ご主人様は後でお怒りになるわ。とにかく、なにを喚いても、それはもっと苛めてくれという合図だから」
沙那は言ってやった。
「そうだね。それから、ご主人様は特にお尻が弱いからね。うんと可愛がって……いや、虐めてやったらいいよ。ご主人様はとても悦ぶから」
孫空女も皮肉っぽい口調で言った。
さっき、露出癖とからかわれたことを少し根に持っている気配だ。
「お、お前らふざけるんじゃないよ。あ、後でどうなるか、わかってんのかい──。こらっ、小角──。これを外すんだよ──。ちっ、本当に霊気が封じられてる……。魔縄が外れない……」
宝玄仙が焦った様子で怒鳴った。
しかし、沙那は無視した。
先のことなど知らない。
それよりも、たまには責められる側に回るのも、宝玄仙にはいい薬だ。
「じゃあ、三人揃って溝を跨ぐがいい。ぼやぼやすると、電撃を帯びている触手をけしかけるぞ」
小角が強い口調で言った。
すると、左右からびりびりと音を立てて尖端を光らせている触手がさっと伸びてきた。
「うわっ」
「ひっ」
「な、なんだい?」
沙那たちは追いたてられるように、股を拡げて溝を跨がらされた。
「さて、とまったり、達したりすると排便液の注入だったな。さっさと進め。とにかく、一生懸命に性奉仕するぞ。お前たちへの心からのお礼だ」
すると、股の下から触手が一斉に延びて、沙那たちの股間を苛み始めた。
沙那たち三人は、揃って甘い声をあげた。
*
「ううっ、あううっ」
沙那は部屋にできている溝を跨いで、おずおずと歩きだした。
だが、すぐに腰が砕けるようになって足を動かせなくなってしまった。
なにしろ、跨いでいる溝が肩幅よりもずっと広いのだが、大股を拡げている股間に向かって、溝から生えている無数の触手が糸を引く粘性物を擦りつけながら、陰核と秘肉と菊座を縦横無尽に下から刺激するのだ。
そんなことをされながら、歩けるわけがない。
しかし、跨ぐのをやめれば、左右から電撃の触手が襲ってくる。
だから、下から責められるのがわかっていても、溝を跨いで触手に股間を晒すしかない。
抵抗したくても、両手は縄で背中で括られている。
沙那は無防備に触手に股間を責めさせるしかなかった。
「だ、だめ、だめっ、だめよ」
だが、沙那の身体は、一度感じ始めてしまうと、宝玄仙に装着されている
「だ、だめええっ」
沙那は早くも軽い絶頂をしてしまった。
「んふううっ、さ、沙那、は、速いよ──」
すぐ後ろを沙那と同じように大股を開いて進んでいる孫空女のあられもない声がした。
快楽の共鳴を結ばれている沙那と孫空女は、どちらか感じれば、相手の受けた快感がもうひとりにも伝わってしまう仕組みだ。
沙那が達すれば、孫空女も達するのだ。
背後で孫空女が、沙那と同じように歩みをやめたのがわかった。
体勢を崩した孫空女の裸身が、沙那の背中に倒れ込んできて、孫空女の乳房がぎゅっと沙那に押しつけられた。
「ご、ごめん、孫空女……。で、でも……」
沙那は泣きそうになった。
この一箇月の宝玄仙による調教で、すっかりと敏感になった沙那の身体は、一度火がつくと自分でもどうしようもないのだ。
沙那は、もうそれを嫌というほど知り抜いている。
しかも、こうしているあいだにも、沙那の股間を触手が苛み続けるし、それだけでなく、孫空女にも加わっている刺激が、共鳴により送り込まれてくる。
こんなの我慢できない……。
沙那はまったく身体に力が入らず、悶え狂った。
「さっそく、とまったねえ。じゃあ、排便液を送り込んでやるよ。とりあえず、宝玄仙、お前に三人分を抽入してやるね」
すると、三番目を進んでいる宝玄仙が怒りだした。
「な、なにっ……。ふ、ふざけるんじゃないよ。な、なんで、わたしに三人分なんだよ──。そもそも、とまったのは沙那じゃないか。沙那に三人分しな……。う、ううっ……」
そのとき、宝玄仙の苦しそうな叫び声がした。
そういえば、足をとめた場合は排便を促す液剤──すなわち、浣腸液を注ぐと言っていたので、さっそく、宝玄仙がやられたのだろうか……。
もっとも、それを言い出したのは宝玄仙だ。
しかし、小角という雌族は、「人間女の性愛は、ひたすら屈辱的な快感を与えることだ」とうそぶいた宝玄仙の言葉を真に受け、当の宝玄仙についても、その言葉の通りに嗜虐しようとし、宝玄仙の霊気を一時的に凍結して無力化して、沙那たちと一緒に、この触手の溝を宝玄仙にも跨がせたのだ。
宝玄仙としては、小角と一緒に、沙那と孫空女をいたぶるつもりだったようだが、それが「恩返し」だと信じてしまった小角は、もう宝玄仙がなにを言っても、宝玄仙に対する責めもやめる気配がない。
なにしろ、宝玄仙が小角に、人間女はもっと責めて欲しいと思っても、口ではやめてくれと言うと説明したために、それを信じ込んでしまったらしいのだ。
馬鹿げた話だが、正直そうな雌族をからかった宝玄仙の自業自得だろう。
この触手妖魔に身体を弄ばれるのは恥辱だが、いつも沙那たちを嗜虐して犯す宝玄仙も一緒に責められているのだと思うと、それだけで溜飲もさがる。
「そうしようと思ったのだが、お前たちが密着しているので、空いている尻が宝玄仙しかなかったのだ。まあ、その分、お前は屈辱が大きいはずだ。それがいいんだろう」
小角が言った。
「じょ、冗談じゃないよ。そんなわけがないだろう、この雌族──。さっさと、わたしに装着している霊気封じを外すんだよ。さもないと、あとで泣きべそかくまで、逆さ吊りするよ」
宝玄仙が怒鳴った。
まずい……。
どうやら、本気で怒っているようだ。
沙那はぞっとなった。
「もしかして、本気で怒っておるのか? だ、だが、そうせよと申したのは、お前であろう……。どうすれば、満足するのだ……?」
すると小角も、宝玄仙の態度の不自然さに気がついたようだ。
小角の口調は、完全に当惑したものになっている。
沙那たちを責めていた触手が、すっと消滅した。
とりあえず、触手から解放されてほっとしたが、同時に沙那は嘆息した。
ちょっとは期待したが、これで終わりか……。
一方で宝玄仙は、怒りのあまり喚きたてている。
「……責めが生ぬるいんだよ……。ご主人様の口を塞ぎな、小角……。まずは、あんな喚き声を出せなくなるまで体力を削ぎ落すんだよ。構わないから十回くらい連続で絶頂させな……。そうすれば、大人しくなるから……」
そのとき、孫空女がぼそりと言った。
宝玄仙は、自分で喚き立てている最中だったから、孫空女の声が聞こえなかったと思うが、孫空女に後ろから身体を密着させられている状態だった沙那には、はっきりと孫空女の声が聞こえた。
そして、小角もまた、孫空女の声が聞こえたようだ。
「おう、やっぱり、そうだったのか──」
小角が一瞬にして、明るい表情になった。
沙那はびっくりして、思わず顔を後ろに向けて、孫空女の顔を見た。
孫空女が悪戯をしている子供のような顔で、ぱちりと片目を沙那に向けてつぶった。
だが、沙那は自分の顔が強張っているのがわかった。
孫空女は、宝玄仙のしつこさと怖さを知らないのだ……。
あんなことを小角にささやいて、けしかけたことがばれたら、宝玄仙が沙那たちにどんな罰を与えようとするかわかったものじゃない。
さすがに、いまのは、やりすぎじゃないだろうか……。
子供のように無邪気な宝玄仙だが、怒るときの怒りは激しいし、容赦もない。
そのさじ加減は微妙でなかなか難しいが、一箇月にして、やっと沙那にもわかってきたところだ。さっきまでだったら、宝玄仙は小角に対しても、沙那たちに対しても、そんなに怒りを激しくはしなかっただろう。
だが、これ以上苛めると、本当に宝玄仙の頭の線が切れる気がする……。
「うわっ」
「ひいっ」
「な、なんだい、小角」
しかし、沙那の思考はそこまでだ。
今度は下からだけでなく、四方八方から触手が一斉に襲いかかって来たのだ。
そして、口の中に細い触手の束が入り込んできた。
孫空女が宝玄仙に対してけしかけた内容が、沙那と孫空女に対しても行われたのだ。
余りに素直すぎる小角は、孫空女の言葉を頼りに、本当に責めに拍車をかけることにしたのだと思う。
つまりは、連続絶頂十回だ──。
しかし、そんなに続けて絶頂したりしたら、身体がばらばらになってしまう……。
沙那は悲鳴をあげかけた。
だが、その声は口に中に入っている触手のために、外には出ない。
今度はさっきとは比べものにならない数の触手が全身を襲う。
股間は当然として、肉芽や肛門など、糸のように細い触手が圧倒的な数で股間を襲ってきた。
乳房も……。
さらに内腿──。
拘束されている脇──。
横腹や背中──。
首──。
とにかく、ありとあらゆる場所を触手の胴体が擦りだす。
触手には、太いものもあれば、細いものもある。
それが巧みに責める場所を交換しながら、次々に異なる刺激を沙那の身体に襲わせる。
「んんんん」
「んあああ」
「んふうっ、んふうっ」
沙那だけでなく、後ろの孫空女と宝玄仙も悶えまくっている。
またもや、あっという間に達してしまった沙那は、がくりと身体を崩しかけた。
そして、当然、孫空女も同時に絶頂した。
だが、その沙那の身体を新しい触手が伸びて、雁字搦めに捕まえてしまう。
これで沙那は、無数の触手に全身を掴まれて、まったく動けなくなってしまった。
すぐに次の絶頂が襲ってきた。
これが沙那自身の絶頂なのか、孫空女のものなのかはわからない。
ただ、お互いに相手の絶頂感を受け取るということは、昇天するのも倍ということだ。
実際には、二倍以上の快感を受け取らないとならないので、倍では終わらないはずだ。
沙那はがくがくと痙攣のように全身を震わせた。
だが、絶頂しているあいだにも、次の絶頂が襲っている。
女陰で……。
陰核で……。
お尻で……。
胸で……。
とにかく、全身のあらゆる場所を同時に触手に責められて、沙那はわけがわからなくなった。
ほとんど沙那と孫空女は密着していたのだが、お互いに争うように、共鳴によって完全一致した絶頂を繰り返した。
あまりにも短い時間で達し続けたために、沙那も孫空女も呼吸困難になり、いつしか、ほとんど失神状態になってしまった。
だが、突然に床に放り出された。
頭が真っ白でそれがどういう状態なのかわからなかったが、おそらく、孫空女が小角にささやいた「十回」の絶頂が終わったからだと気がついた。
正直で素直な小角は、どこまでも言葉通りに「責め」を実行しているようだ。
とにかく、触手は一時的かもしれないが、沙那と孫空女を解放してくれた。
しかし、沙那はもう指一本動かせないほどの疲労困憊状態だ。
横の孫空女も同じのようだ。
仰向けにひっくり返されている孫空女の開いた股からは、孫空女自身の淫液がいまだにどくどくと流れていて、顔も半分白目を剥きかけている。
「んぐうう、んぐうう」
一方で宝玄仙はいまだに無数の触手に全身を苛まれている。
まだ、「十回」が終わっていないのだろう。
口と股間と肛門だけでなく、尿道や耳、鼻の穴にまで触手を突っ込まれている宝玄仙が、快感に襲われて全身を弓なりにして震わせた。
「んぐうう、ふううう」
宝玄仙が涙を流しながら、懸命になにかを叫んでいる。
なにか悲痛な訴えをしているようだ。
「ほら、存分にするがいい、宝玄仙。どうだ、恥ずかしいか? 屈辱か?」
部屋の隅で、この部屋に発生している触手群を操っている気配の小角が言った。
次の瞬間、宝玄仙の全身を捕らえている触手のうち、菊座を責めているものだけが、一斉に宝玄仙を解放した。
「んんんあああ」
次の瞬間、宝玄仙のお尻から水分混じりの固形物の大便がぼたぼたと噴き出し、そして、宝玄仙は排泄をした。
だが、宝玄仙は明らかに排便をしながら、激しい快楽で絶頂していた。
しかも、排便は長く続き、宝玄仙は絶頂が終わっても、またもや次の絶頂の兆しを示し始めている。
そのあまりに壮絶な光景に、沙那も言葉を失った。
孫空女も唖然としている。
宝玄仙が尻から放出した汚物については、床に落ちる前に消滅してなくなった。
だから、匂いさえも、沙那には感じなかった。
そして、宝玄仙への責めは続く。
排便絶頂という、女としておよそ考えられる最悪の屈辱が終わっても宝玄仙は許されず、宝玄仙の汚れたお尻も触手が舐め尽くすように、また群がって擦りまくっている。
お尻を触手に突っ込まれると、宝玄仙は派手すぎる反応をして、何度も繰り返し絶頂していった。
やがて、その宝玄仙も沙那たち同様に突然に床に放り出された。
「では、わしも直接に加わって、お前たちに恩返しするぞ。今度は女の穴と口に、女の身体を欲情させる媚薬を注入する。さあ、愉しもうではないか」
触手を身体から生やした小角が愉快そうに、服を脱ぎながら近づいてきた。
※ 本作品では、1刻=1時間。1時間は60分、1分は60秒