「ほら、脚が下がったよ。勝手に脚を下げんじゃないよ、沙那」
沙那の白い肌に新しい鞭痕が追加される。
恨めしそうな視線の沙那が、呻き声をあげながら下がりかけた左足を戻して、必死の様子で脚を閉じ合せる。
すでに限界を超えている筋肉が引きつったように震えているのがわかる。
沙那を吊っているのは、脚に嵌めている一本の鎖だが、それは片脚しか吊っていない。
もう片脚は自由にさせている。
両手は背中だ。
その状態で沙那を逆さ吊りにさせ、ちょっとでも拘束していない脚が落ちようものなら、容赦のない鞭打ちを続けているのだ。
とにかく、この女に情けをかけると、七星は殺されるのだ。
徹底的に苛め抜くしかない。
「そうだよ。女っていうものは、そうやって慎み深く、脚を閉じておくものさ。まったく、さっきから隙さえあれば、股ぐらを開こうとしやがって、恥ずかしくないのかい、沙那」
七星は、そう沙那を言葉でなぶりながら、ちらりと部屋の隅で七星と沙那を見守っている虎力を見た。
じっとこっちを見ている。
七星の沙那に対する責めにちょっとでも手加減のようなものを感じたら、すぐに七星を殺すつもりなのだと思う。
虎力が見ている限り、七星は沙那を限界まで責めあげるしかない。
「そらよ、気合を入れな、沙那──」
七星は、沙那の乳房に鞭を入れた。
「んぐううう」
沙那が吠える。
痣はできるが皮膚が裂けないぎりぎりの強さだ。
すでに乳房は鞭痕でいっぱいだ。
乳房だけではない。沙那の全身は新しく鞭を入れる場所がないくらいに傷だらけになっている。
本当だったら、すでに激痛で気を失ってもおかしくないくらいだ。
だが、この女の鍛え抜かれた身体と、逆さ吊りにされて頭が下にあるということで、血が頭に集まるので、意識を失うことができないのだ。
この女に恨みはない。
だが、この沙那という宝玄仙と孫空女の仲間が、鹿力の胸に剣を突き刺すのを見たとき、これこそ逃亡の機会だと考えた。
だから、沙那が次の剣を残った虎力に向けたとき、七星は、咄嗟に虎力の座る椅子の脚に体重をかけた。
虎力たちが七星にかけた術により、虎力たちに逆らうような行為やこの牢城から逃亡するような行為をしようとすると身体が動かなくなることは承知していた。
だが、すでに体重をかけた状態だったら、身体が動かなくなっても、そのまま体重をかけ続けることくらいはできる。
そういう抵抗の方法もあることは、最初から考えていた。
千載一遇の機会だと思ったから、それをやったのだ。
だが、沙那は失敗した。
胸を突き刺したはずの鹿力はいつの間にか、復活して妖魔の姿で長い爪で毒らしきものを沙那の身体に注入した。
虎力など、沙那に首を切断されたのにも関わらず、自分でその首を掴んで元に戻しさえしたのだ。
おそらくこいつらは人間ではない。
妖魔に違いない。
実際、鹿力は、胸を剣に貫かれたことで妖魔の正体を曝け出した。
だが、それはどうでもいい。
連中が妖魔であろうと、妖魔でなかろうと、問題は、この沙那という女が失敗し、それを手助けしようとした七星が窮地に陥っているということだ。
そういう意味では、この沙那が拷問を受けなければならない理由はある。
七星は、そういうふうに自分の感情を整理した。
そう考えなければ、恨みのない女を相手に拷問などできるわけがない。
人を鞭で打ったり、口汚く罵倒したり、侮辱を与えたりするのはぞっとする仕事だ。
だが、それをしなければ殺される。
七星の命は、虎力たちの気まぐれに握られている。
とにかく、七星は死にたくはない。
七星が命じられたのは、沙那をできるだけ苦しめることだ。
ただし、身体はできるだけ損傷させない。
身体の機能を損なわないのであれば、傷をつけるのはいくらでもいいらしい。
その出来、不出来により、七星が殺されるか、もう少し生きられるかが決まる。
七星は、沙那の両腕を背中で組ませて縛りあげると、沙那を逆さ吊りにした。
逆さ吊りにすれば、失神しにくくなる。
そして、片脚だけを吊って脚を拡げるのではなく、拡げるなと命令した。女の羞恥と筋肉の耐力を天秤にかけた責めだ。
その沙那の身体を鞭打ちする。沙那は体力を削がれ続ける。
いずれ、沙那は足をあげられなくなるはずだ。
だが、もう一刻(約一時間)もこんなことを続けているが、まだ、沙那の脚はかろうじて、まだ閉じられ続けている。この女の筋力には驚くほどだ。
しかし、また、肢が下がってきた。
「ほら、沙那、脚が下がったよ。脚があがらなくなったら、その股ぐらに火のついた蝋燭を突っ込んでやるよ。それが嫌なら、頑張って股を閉じるんだよ」
沙那は呻き声をあげながら脚を戻した。
その力を削ぐように、脚が拡がる方向に鞭で内腿を引っぱたく。
ついに、沙那は、苦痛の悲鳴をあげて脚をぱっくりと開いてしまった。
「ほら、みっともない股ぐらを曝け出すなって言っただろう」
七星は、腕を振りあげて沙那の股の中心に鞭を叩きつけた。
「ひぎゃああああぁぁ――」
沙那は、この世のものとは思えないような絶叫をした。
そして、小便が噴水のように飛び出した。
「汚いねえ、沙那。だけど、いいのかい? 股ぐらに突き刺した蝋燭は、あんたの小便で消させようと思ったんだよ。出しちまったら、どうやって消すんだよ」
自分の小便を浴びながら、沙那の瞳が七星を睨みつけている。
その眼には、ぞっとするほどの憎しみが籠っている。
七星は、思わずすくみあがった。
「こ、こっちを見るんじゃないよ、沙那――」
七星は、沙那の表情が怖ろしくなり、思わず、全力で鞭を振った。
沙那の身体が踊った。
それでも、沙那は七星を睨むのをやめない。
「見るなって言ってんだろう」
小便を床にまき散らし終えた沙那は、七星をまだ睨んでいる。
七星は、滅茶苦茶に鞭を振るった。
沙那の裸身に新しい鞭の痕が次々に刻み続けられる。
「見んな──。見るなってんだろう──」
なんという恐ろしい眼で見る女だ──。
逆に怖くなってしまい、それが七星の鞭打ちを誤らせてしまい、鞭が逸れて沙那の顔に掠った。
沙那の頬から血が噴き出る。
「あっ」
七星は思わず手をとめた。
顔だけは避けていたつもりだったが、鞭先が沙那の頬に触れてしまったのだ。
沙那の頬が切れて、沙那の頭の下に溜まった汗と小便の水溜りに真っ赤な血が混じる。
「ゆ、許さ……ないよ……、お、お前……」
沙那の口がそう言った。
「許せなきゃあ、どうするのさ?」
七星は、沙那の開ききった股の付け根に鞭を思い切り振るった。
「あががあああああ――」
沙那は宙吊りになった身体を限界まで仰け反らせた。
「股を閉じな、沙那……。何度も言わせんじゃないよ──」
七星は沙那に近づいた。
沙那の股間は、丁度七星の顔の辺りにある。
「股ぐらを閉じるな、沙那。閉じないと何度も何度も股を打つよ」
七星は言った。
沙那には、もう脚を閉じる力は残っていないことはわかっている。
七星は、無防備な沙那の股間を鞭の柄で抉った。
「んぎいいいい」
沙那は呻きながら、懸命に垂れ下がっている脚を懸命に戻そうとしている。
だが、すでに限界を超えている沙那は、やはり脚をほとんどあげることができない。
そして、股をいじくると、明らかに沙那の身体から力が抜けるのがわかった。
「どうしようもなく、堪えようのない淫情な身体だねえ。ちょっと乱暴に弄くっただけでぐしょぐしょになったじゃないか。お前は、本当に淫乱だよ。これだけ、鞭打たれた直後なのに感じるのかい――。ほれっ、ほれっ……」
沙那の股間はほんのちょっとの愛撫で、みるみるうちに淫液で溢れてきた。
その淫乱さは、逆に気の毒なほどだ。
「あっ、ああ、あああっ……」
沙那の呻き声に嬌声が混じりはじめる。
七星は、部屋の隅の虎力をちらりと見る。
相変わらずの七星を試すような視線だ。
この沙那を死んだ方がましと思うような目に遭わせなければならない。
それができないと虎力が判断したときに七星は死ぬ。
「お、お前を許さないよ……、七星」
沙那は呻くようにもう一度言った。
その瞳が七星を離さない。
なぜだかわからないが、圧倒される。
七星は、沙那の股間をいたぶる手をとめてしまった。
「な、なんだよ……。し、仕方ないじゃないか……」
思わずそう呟いた。
それではっとした。
弱気になったことを虎力に悟られはしなかったか……。
「もうよい、七星。終わりだ」
虎力が立ちあがった。
七星はすくみあがった。
殺される――。
そう思った。
「も、もう一度、機会を与えてください。き、きっと期待に応じられる仕事をやってみせます」
こんなところで死ぬわけがない。
死ぬわけがないのだ。
「いや、お前はいい仕事をした。もう少し、時間をかけてもよかったが、あまり時間をかけていられない事情もある」
「事情……?」
七星は呟いた。
そして、頭の中では、虎力に殺されないで済む方法――。
それを懸命に巡らせていた。
首に装着されている革の首輪……。
虎力の瞬きひとつで、それは七星の首を絞めはじめるはずだ。
それはいつか。一瞬後かもしれない。
七星は自分の脚が小刻みに震えているのを悟った。
「こ、虎力様……。そうだ。この沙那の膣に火のついた蝋燭を挿します。そ、それで鞭打つんです。蝋燭の滴が、こいつの敏感な場所に飛び散ります。きっと、泣き叫ぶと思います」
七星は一生懸命に自分の考えた責めを説明した。
気に入ってもらうためにはそれしかない。
嗜虐者として役に立たないと烙印を押されたとき、虎力は七星を処分するに違いない。
そう思った。
「七星、沙那を降ろして、縄を解け」
だが、虎力はそう言った。
七星は、自分の顔から血の気が引くのを感じた。
しかし、諦めて沙那を降ろす。
すぐに縄と鎖を解き始めた。
縄を解かれながら、沙那はぐったりとしていた。
もう、ほとんど体力が残っていないのだ。
「沙那、お前には、これからひとつの仕事をしてもらう。心配いらん。体力はすぐに仙薬で回復させる。だが、鞭の痕はそのままだ。その方が、おそらく都合がいいだろう」
沙那はなにも答えなかった。
口を開く力が残っていないのかもしれない。
虎力が言う仕事とは、おそらく、宝玄仙を沙那に殺しにいかせることだろう。
沙那を捕えたとき、沙那の身体の中に得体の知れない黒い球体を入れながら、虎力は、鹿力や羊力とそう話していた。
だが、いまの七星には、自分のことで精一杯だ。
逃亡に成功した宝玄仙のことを心配する気にはなれない。
「……だが、その前に、ひとつやりたいことがあるはすだ。お前を拷問した七星に仕返しをしたいだろう? 思う存分痛めつけるがいい。殺したければ殺しても構わん。お前の憎悪を七星にぶつけるのだ。それで、お前の心には、黒い感情が刻みつけられる」
虎力は言った。
七星は、思わず沙那の拘束を解く手をとめてしまった。
「……そう、殺してもいいのね?」
沙那が言った。
沙那の瞳は、はっきりと七星を捉えている。
七星は恐怖した。
「ああ、殺しても構わん。拷問していた側が、次の瞬間に拷問にされる側になる。これ程の愉快な見ものもない」
虎力の視線も、しっかりと七星に向けられていた。
まるで、これから屠殺する動物を見るような眼だ。
女囚になんの感情も抱かず、気まぐれで殺したり、生かしたりしてきた智淵城の支配者が、初めて意味のある存在として七星を見た。
そう七星は感じた。
*
「七星、どんなに気持ちよくても、お前のお実を勃起させないことね。勃起させたが最後、地獄が待っていると思っていいわ。それが嫌なら死にもの狂いで耐えることね」
沙那は言った。
七星は、沙那の眼の前にある台に虎力の法術に磔にされて横たわっている。
その恐怖に染まる表情は、実に小気味がいい。
沙那の身体に無数の鞭痕をつけた女だ。
この女に復讐してやると心に誓ったが、その機会はあっという間に訪れた。
七星のやり方が気に喰わなかったのか、虎力は拷問をしていた七星と、それを受けていた沙那の立場を入れ替えたのだ。
いまや一糸まとわぬ姿で、抵抗する手段を失った七星が沙那の眼の前にいる。
それにしても、すべての記憶が薄ぼんやりとしてよく覚えていない。
はっきりと知覚しているのは、この眼の前の女に拷問されていたことだ。
その理由は知らない。
気がつくと、沙那は七星というこの女に、片足だけで宙吊りにされて、鞭打たれ続けていていた。
そして、拘束されていない方の脚をあげ続けろと言われて、一刻(約一時間)以上も、狂ったように鞭打たれた。
どうしてそんな目に遭わされることになったのかわからなかった。
沙那は七星の鞭打ちに耐え続けた。
この女が鞭打ちというような行為に馴れていなかったのも幸いした。
手加減していたのかもしれない。
あるいは、躊躇いのようなものだろうか。
七星は、沙那に鞭を遣いながらも、沙那を傷つけることを躊躇っていた。
一度、沙那の顔に鞭先が振れたときなど、まるで自分が鞭打たれでもしたかのように怖がっていた。
責めておきながら、相手を責めきるのを怖がるとは変な女だ。
その七星が鼻息とともに呻いた。
その鼻息には、甘い響きが混じっている。
七星の口には、大きな球体の飴が入れられている。
その飴は強力な媚薬だった。
それを口に沙那に入れられた七星は、それが口から出せないように、その上から革の紐で猿ぐつわをさせた。
七星は、その媚薬の飴を舐め続けるしかない。
その飴がどんなに強力な媚薬であるかは、あっという間に全身を上気させて、七星が大量の汗をかき始めたことでわかる。
そして、七星は自分の身体に沸き起こる快感に、微かにしか動けない身体をくねらせ続けている。
ほんの少しもじっとしていられないのだろう。
だが、沸き起こる情感に耐えることができなくなり、陰核を膨張させたら拷問を開始すると告げている。
なにをさせるかわかっていないだろうが、七星は、懸命に快楽を振り払おうとしているはずだ。
「ほら、勃ってきたわよ、七星。いいの? 我慢しないと拷問が始まるのよ」
沙那は、そう言いながら七星の肉芽を指の先で撫ぜた。
七星が、塞がれた口でくぐもった悲鳴あげた。
それとともに、ただでさえびしょびしょだった七星の股間に、大量の淫液が追加された。
余程強力な媚薬なのだろう。もう、七星の股間の下は、びっしょりと液溜まりを作っている。
肉芽はこれ以上ないというくらいに充血して膨らんでいる。
もう十分だ。
沙那は、その肉芽の根元を糸で絞りあげた。
その刺激だけで、七星は猿ぐつわの中で呻き声をあげて身体を仰け反らせ、膣から愛液の塊りを噴き出した。
「あらあら、我慢していたものが極まったのね、七星。だけど、これで、お前は、これから始まることから逃げられないわよ」
沙那はそう言いながら、根元を縛られて充血している肉芽の先を指で弾いた。
七星がまた、身体を跳ねあげさせた。
沙那が縛った七星の肉芽は、血の循環が停止してしまわない程度には弱く、そして、肉芽に集まった血が戻ってはいかないくらいには強いという微妙な力加減で根元を縛られている。
これで、七星は、勃起した肉芽を小さくすることができないはずだ。
「始まっているな」
部屋に入ってくる声がした。虎力の声だ。
沙那の頭は、途端に薄ぼんやりとする。
だが、頭の中の誰かが、虎力に対する敵愾心を燃やしている。
しかし、次の瞬間、それは断ち消えた。
虎力、鹿力、羊力の三人は、沙那が命令を守らなければならない存在だ。
それは絶対であり、否定してはならないのだ。
「いいえ、そろそろ始めようと思ったところです、虎力様」
「どうするのだ、沙那?」
虎力は七星の股を覗き込みながら言った。
虎力の視線には、みっともなく淫液でぐしょぐしょにした股間と根元を縛られて勃起した七星の陰核が映っているはずだ。
そして、台に仰向けに磔になっている七星からは見えないが、足元に置いてある火鉢の隅で熱せられて朱くなっているたくさんの針の存在も……。
「この七星に復讐をしてやります」
沙那は言った。
そのとき、なにかおかしいと、沙那の中の誰かが主張した。
確かに、この女に全身を鞭打たれはした。
だが、それにも理由があった気がするのだ……。
しかし、すぐに、この女に対する異常な憎悪が込みあがった。
それが、沙那の思考を中断した。
沙那は、真っ赤に焼けた針を取りあげた。
先端は石炭に熱せられて真っ赤になっているが、手に持つ側はその熱が伝わってこない特殊な材質のものだ。
「七星、この焼けた針が見える?」
沙那は、七星に見えるようにその針をかざした。
まだ、なにをされるかは理解していないはずだが、その七星の表情に恐怖そのものが張りつく。
その脅える顔が小気味いい。
「……この針で、いまから、お前が糸で根元を縛られた部分の皮を焼き切るわ。この針でひと掻き、ひと掻きね。そうやって、まず皮を除去する。それが終わったら、肉芽そのものに焼けた針を何度も何度も突き刺してあげる。最後には、女陰に金属の杭を突き刺すわ。もちろん、針と同じように真っ赤に焼いてからね」
七星が叫びはじめた。
その顔は必死の形相だ。
だが、どんなに暴れ回ろうとも、法術によって固定されたその身体が拘束から抜け出せるわけではない。
せいぜい、首が左右に動く程度だ。
沙那は、真っ赤な針を七星の肉芽の皮に突き刺し、そして、引っ掻いた。
「んがああああ、んあああああ、んんんんん」
七星は、限界まで眼を見開き、そのまま悶絶した。
「たったひと掻きだけで、気を失ってしまいました、虎力様」
沙那は苦笑して、横の虎力を顧みた。
七星の肉芽は、焼けた針によって作られたひと筋のひっかき傷ができている。
包皮を完全に除去するには、まだまだ長い作業が必要だ。
その後は、女陰を焼き杭で壊すという作業も残っている。
「法術で失神できないようにする」
虎力が言った。
「そんな面倒いりません。水でもかけてやります」
「いや、それほどの時間はかけられんのだ。お前には、宝玄仙のところに戻って貰わねば困る」
「宝玄仙を殺すことですね」
「そうだ」
宝玄仙を殺す……。
なぜ、殺さねばならないのだろう。
さっきから考えているのだが、それで沙那の思考は停止してしまう。
宝玄仙を殺しにいけと命じられている。
それで理由としては十分なはずなのに、なぜか思考と身体がとまってしまうのだ。
「……もう少し、強い暗示が必要のようだな」
虎力が呟いた。
その直後、なにかが頭に入ってきた。
強い道術、あるいは、法力が沙那の中に注がれている。
薄ぼんやりとしていた思考が、霧が晴れるようにはっきりとしていく。
「沙那、お前は、宝玄仙が憎いだろう?」
やがて、虎力が言った。
そうだ。宝玄仙が憎い。
故郷の愛陽で、騙して『服従の首輪』を嵌めて、無実の罪を自供させたあの女……。
霊具で逆らえないようにして、さんざんに沙那の身体を弄び、淫らな行為を強要したあの女……。
身体に道術紋を刻み、気まぐれで沙那の身体を玩具にし、無垢の沙那の身体を淫らな女の身体にしてしまったあの女……。
憎い……。
憎い……。
憎い──。
「そうです。わたしは、あの女が憎い……。殺したい。息の根をとめてやりたい……。だけど、わたしにはできない……。あいつの道術は凄い」
「だが、お前なら油断するだろう。お前の剣で宝玄仙の心臓を突き刺すのだ」
宝玄仙の心臓を突き刺す。
確かにあいつは、なんの武芸の心得もない。
最初の一撃だ。
それならできる。
あの女は油断が多い。
護られていないあの女は弱い。
「できると思います。躊躇せずに細剣でひと突き……。それさえできれば……」
「お前ならできる、沙那。躊躇せずに、宝玄仙を刺し殺せ」
虎力が言った。
宝玄仙を刺し殺す……。
沙那の心にそれが刻まれる。
「憎い宝玄仙を殺すのだ。心臓を刺して、殺せ、いいな、沙那」
「わかりました。宝玄仙を殺します。いえ、殺しにいかせてください。ただ……」
沙那は、目の前でまだ気を失っている七星を見た。
この女も憎い。沙那をさんざん鞭打った女だ。
それ相応の酬いを与えてやらねば……。
「この女に罰を与えてからにします。それが終われば、すぐに宝玄仙のところに行きます」
「それはわかった。だが、それが終われば、宝玄仙を殺しに行くとして、宝玄仙の居場所がわかるのか?」
虎力が言った。
「おそらく……。ここに来る前に、朱姫と一緒に、あらかじめ見つけておいた場所があります。
「宝玄仙を殺し終われば、お前はここに戻ってきてもらいたい。だが、俺たち三人の誰かと一緒でなければ、この
「それは無理です。宝玄仙の道術を侮らない事です。それに朱姫もいます。魔族のあなた方が近寄れば感知されてしまいます。おそらく、警戒していることは間違いありませんから。魔族と一緒にわたしがやってきたら、疑いを持たれるかもしれません」
「……魔族か……。お前は俺が魔族と思うのだな? そういえば、鹿力が本当の姿をうっかりとお前に晒してしまったのだな」
虎力が苦笑している。
なぜだろう。この三人の法術師は、魔族が化けている姿だ。
それを沙那は悟っているが、それは彼らにとって知られたくない事実だったのだろうか。
「ならば、お前に法具を渡す。それがあれば、智淵城の周りに刻んでいる結界を越えて入って来れるだろう」
七星が呻き声をあげた。
そろそろ、気がついたようだ。
「では、続きを始めます。七星の肉芽の包皮を焼き取ります。そこまではやらせてください。女陰を壊すのは、後の愉しみということにします」
「それでいい。終わったら声をかけてくれ。隣の部屋で孫空女を責めている」
「なにをしているのです?」
沙那は訊ねた。
孫空女は、ずっと旅を供にしてきた仲間のはずだが、なぜかなんの感慨も浮かばなかった。虎力に対する質問もなに気なくしただけだ。
「あいつには、もう少し素直になってもらわねば困るからな。調教をしているところだ」
「孫空女は快楽責めが弱点です。痛みや辱めには耐えますが、淫らな身体をしていますから、歯止めがなくなるまで絶頂させ続けてやればいいと思います。それで、あの女の心は折れます」
「忠告に従うことにする」
虎力が笑った。
沙那は、虎力から七星に意識を戻した。
眼を開いた七星は、やっと自分の置かれた状態を思い出したようだ。
媚薬の飴に塞がれた口の中でなにかを懸命に叫んでいる。
「さあ、続きよ、七星」
沙那が焼き針をとって七星に見えるように示した。
「んんっ、んんんっ……」
七星の顔が歪み、その瞳からぼろぼろと涙をこぼし始めた。
顔は必死に左右に向けられる。
沙那は、その脅えきった表情に満足しながら、真っ赤に焼けた針を七星の勃起した肉芽に近づけた。