※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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139 奴隷城の終わり

 宝玄仙を殺しにいかせた沙那が失敗したのは明らかだ。

 それどころか、沙那は、もう虎力が施した『傀儡(くぐつ)の石』の支配から脱している。

 虎力は、こんなにも呆気なく、自分の術が破られるということは想像していなかった。

 

「虎力、このわたしが、どれくらい怒り心頭にきているか理解できるかい?」

 

 宝玄仙がそう言って、右手を振った。

 すると、虎力の両腕が突然、勝手に虎力の着ている服を脱がせ始めた。

 

「な、なにをしたのだ、宝玄仙?」

 

 虎力は叫んだ。

 その間も、どんどん、虎力の両腕は服を脱ぎ捨てていく。

 両腕だけではない。両脚も虎力の意思とは無関係に動いて、下袴(かこ)を脱いでいる。

 

「気安く名前を呼ぶんじゃないよ、虎力。ちょっとしたわたしの術だよ。お前の手足をわたしの『分身』にしてやっただけさ」

 

 あっという間に虎力は素っ裸になった。

 すると、また両腕と両足が動かなくなる。

 

「ところで、ご主人様、申し訳ありません。抵抗が激しかったので、鹿力は殺してしまいました」

 

 扉に立っていた沙那が言った。

 沙那が部屋に入ってくると、その後ろから羊力がついてきた。

 羊力の眼は虚ろだ。

 これは、最初に沙那が智淵城に侵入してきたときにかけられていた『縛心術』だとわかった。

 虎力の法術で、あの『縛心術』は解いたが、それがかけ直されている。

 

 そして、次の瞬間、虎力は声をあげてしまった。羊力の右手には、鹿力の生首がぶら下がっている。

 また、左手には、赤ん坊の頭ほどの三個の黒い球体を入れた半透明の袋も握られている。

 その左手にあるものがなんであるか、もちろん虎力は知っている。

 

 そして、その球体を包んでいる半透明の袋は、『如意袋』と呼ばれる霊具で、確か、牛魔王(ぎゅうまおう)が遣う霊具のはずだ。

 なぜ、ここにあるかわからないが、あの袋は伸縮自在で、中に入れたもののすべての魔力を吸収する力がある。

 その『如意袋』の中に入れられている球体は、まさに虎力たちの魂そのものだ。

 

「鹿力のことは、まあいいさ。それよりも、朱姫はどうしたんだい、沙那?」

 

「走り回っています……。ここに収容されていた女たちは、突然に虎力たちの支配していた法術が消滅して、動揺しています。朱姫は、なにが起ったかを説明して、とにかく落ち着かせています」

 

「この建物の中のどこかに、七星(ななほし)、紅夏女(こうなつじょ)という女がもいる。ここに連れて来ておくれ。それに、外で働かされていた奴隷の中には、貂蝉(ちょうせん)という名の娘もいる。その貂蝉を紅夏女に引き合わせてやって欲しい」

 

「七星については、すでに朱姫に指示しています。ほかのこともすぐに伝えます。お任せください」

 

 沙那がそう応じている。

 

「ふっ、さっさと殺すがいい、宝玄仙。どうやら、俺たちの秘密も知られてしまったようだな。魂の本体を押さえられた以上覚悟はできている。殺すがいい」

 

 虎力は言った。

 

「そうはいかないよ、虎力。そんなに簡単に死ねると思うんじゃないよ」

 

 宝玄仙は、『縛心術』で操っている羊力から『如意袋』を取りあげた。

 そして、その中に腕を入れた。

 宝玄仙がその腕に道術を込めるのがわかった。

 『如意袋』の中に黒い球体が砕け散り、そして消滅する。

 

「……これで、お前に残る魂は、その肉体に残る欠片の部分だけだね。そうだろう、虎力?」

 

「ああ、そうだ」

 

 虎力は言った。

 身体はまったく動かない。

 もう観念するしかないようだ。

 すると、宝玄仙が不敵に微笑んだ。

 宝玄仙が沙那に手を伸ばす。

 沙那が、宝玄仙になにかを渡した。

 

「これがなにかわかるだろう、虎力?」

 

 虎力は眼を落とした。

 『傀儡の石』だ。虎力が沙那の体内に入れたものだ。

 

「……これをお前の身体に入れてやるよ。そしたら、法力、いや、魔力を少しだけ戻してやる。だから、お前は、ほかの魂の欠片との接続を断つんだよ。わかったかい? 羊力と鹿力のものもお前が切断するんだ。『傀儡の石』を入れられれば、逆らえないんだろう?」

 

 虎力は総毛立った。

 そんなことをしたら、本当に復活できなくなる。

 どうして、ほかにも魂の欠片が隠してあることがわかったのだろう。

 

「なにを慌てているんだよ、虎力。用心深いお前のことだ。念には念を入れて、この智淵城のほかにも、魂の欠片を隠してあるんだろう。全部、遮断するんだ。わかったね」

 

 『傀儡の石』を持つ宝玄仙の手が、すっと虎力の胸の中に入ってきた。

 虎力は、自分の意思が傀儡の力の中に埋没するのがはっきりとわかった。

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ」

 

 虎力が呻いて、羊力の口の中に精を出した。

 

「どれ、口を開けて見せてみな、羊力」

 

 孫空女が言っている。

 羊力は大きな身体を跪かせたまま、孫空女の言われるままに口を開けている。

 

「ご主人様、もう、かなり色はなくなったよ。量も少ないね」

 

 孫空女が叫んだ。

 

「じゃあ、次の一度で打ち留めだろうね――。虎力、精液が出なくなったら、女たちによる鞭の林が待っているからね。さっさと出し尽くすんだ……。もっとも、その前に、お前には、羊力の一物から精を搾り取ってもらうけどね。口でね。朱姫と沙那によれば、その羊力の精は無尽蔵に多いらしいよ。かなり時間もかかるかもしれないね」

 

 宝玄仙は、営底の真ん中で大勢の女囚に見守られながら、羊力の口による一物への奉仕を受けている虎力に言った。

 羊力が口で虎力の男根を舐めているのは、『縛心術』によるものだ。

 それに虎力が抵抗できないのも、宝玄仙の術によるものだ。

 その虎力と羊力には、お互いの一物を舐め合い精液を出し尽くさせている。

 それをこれまで支配してきた女囚の前でやらせているのだ。

 これで多少なりとも、惨めに虐げられてきた女囚の溜飲も下がるだろう。

 

 お互いに精が出なくなるまで出し尽くさせ、それが終われば、鞭や棒を持った女囚全員の列の間を歩かせる。

 千人もいる女囚の鞭や棒を受け続けて、それで生き残る可能性はないが、もしも、それで死なないようなら、そのまま、地面に掘った穴の中に放り込んで埋めてしまうことになっている。

 いずれにしても、屍体はその穴の中だ。

 その穴も、こいつら自身にやらせて、すでに掘ってある。

 

「駄目だよ、ご主人様。こいつ、もう勃たたないよ」

 

 孫空女が言った。

 

「だったら、お前が擦ってやったらどうだい、孫空女? お前もお世話になった一物だろう」

 

「じょ、冗談じゃないよ。ほら、さっさと、勃てるんだよ、虎力。羊力、睾丸を舐めあげてみな」

 

 孫空女の言葉で、羊力は虎力の睾丸に舌を這いまわす。

 

「どうしても勃たたないようなら、これを尻に突き刺すといい。使い方はわかるんだろう」

 

 宝玄仙は、孫空女に虎力たちが遣っていた『電撃棒』と鈴を渡した。

 

「ああ、わかるよ。鈴を鳴らせば、電撃が走るんだよね――。ほら、虎力、尻を出しな」

 

「や、やめんか、孫空女――」

 

 虎力が呻いた。

 だが、孫空女は、容赦なく『電撃棒』を尻の穴に抉り込ませたようだ。

 

「ほほう、うほおおお」

 

 虎力の口から絶叫が迸った。

 

「うがああああ」

 

 そして、続いて起こった鈴の音で、さらに発狂したような声を虎力はあげた。

 それを見て、周りの女囚たちがはやし立てている。

 

 全員、緊張の色が途切れて、ほっとした表情をしている。

 生き残っていた女囚の正確な人数は、千十五人だった。

 

 とにかく、朱姫が、全員を集めて虜囚の身から解放されたことを伝え、安心させた。

 そして、食料庫を解放し、栄養を取らせた。

 甲種奴隷だった数名を除いて、乙種奴隷のほとんどは、栄養が不足し、かなり弱っている状況だった。

 それでも、虎力たちが法力を失い、道術が遣えるようになったことで、身体の回復術を遣える者が中心となって、身体の回復を図ったようだ。

 

 服はまだ準備ができていないので、ほとんどが、まだ腰に布を巻いただけの姿だ。

 いま、この智淵城にあった布を使って、全員が身にまとえるだけの衣類を準備している。

 それが整い次第、全員の脱出行が始まることになっている。

 大変な逃避行になるかもしれないが、千人いる全員が大小の魔術遣いなのだ。

 なんとかなるとは思う。

 

 一方で、孫空女が大きな声で虎力に怒鳴っている。

 どうやら、攻守交代させるようだ。

 

「孫空女、虎力が、羊力の一物を舐めるのをあまり嫌がるようなら言いな。術を遣うから」

 

「大丈夫だよ、ご主人様。引っぱたいてでも、咥えさせるから。『電撃棒』もあるしね」

 

 孫空女が言った。

 五十人ほどいた法兵は、もっと悲惨なことになっている。

 全員まとめて、朱姫の『縛心術』にかけられた彼らは、ひとりひとり、自分を埋めるための穴を掘らされて、いまは顔だけ出して、営庭の隅に埋まっている。

 さっきから悲鳴をあげているが、誰ひとりとして掘り起こそうとする女囚はいないから、おそらく、しばらくはあのまま放置されることになるのだろう。

 あのまま数日放置すれば、その前に死んでしまうと思う。

 連中も、これまで散々なことを虎力たちと一緒になってやってきたのだ。

 その酬いというものだ。

 

「……いつまでも、泣いているんじゃないよ、金楊凛(きんようりん)」

 

 宝玄仙は、さっきから、宝玄仙の足元で土下座をして泣いている金楊凛に言った。

 髪の毛は異様に短い。

 一番奴隷だった金楊凛は、孫空女と対決させられ負けたために乙種奴隷に落とされた。

 一番奴隷として三年間、金楊凛はほかの乙種奴隷にも手酷いことをしてきたらしい。

 それで、乙種奴隷としてやってきたときに、ほかの乙種奴隷により髪の毛を切られたらしい。

 

「許してください……。許してください……」

 

 金楊凛は、頭をあげずにすすり泣いている。

 考えてみれば、この女も犠牲者だ。

 三年もこの智淵城に女囚として監禁され、やりたくもなかった一番奴隷として、ほかの奴隷への責めをさせられ続けた。

 金楊凛が望む、望まざるに限らず、拒否すれば、あの革の首輪で殺されるのだ。

 金楊凛も従うしかなかったはずだ。

 奴隷たちが装着されていた首輪も、全身が自分の手でむしりとり、この智淵城のあちこちに捨てられている。

 

「うっとうしいねえ、金楊凛。もう、お前には恨みもなにもないと言っているじゃないか。それよりも、紅夏女(こうなつじょ)に言うんだよ。お前が故郷に連れていってもらえるかどうかは、紅夏女次第なんだよ。あいつは、この女囚の逃避行を指揮することになっているんだ」

 

 宝玄仙は言った。

 そのとき、宝玄仙は、背中から人が近づく気配を感じた。

 

「大丈夫です。金楊凛殿も、一緒に逃避行に参加してもらいます。いえ、それよりも、わたしや貂蝉に協力して、この千人を率いてください」

 

 紅夏女だ。

 横には貂蝉と沙那もいる。

 沙那以外は、裸身に布一枚を覆っただけの姿だ。

 だが、その表情は明るい。

 

「……ゆ、許して貰えるんですか、紅夏女様」

 

 金楊凛がやっと顔をあげた。

 その顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだ。

 

「もちろんです。これから、車遅国(しゃちこく)を抜ける逃避行は、おそらく大変な苦行になるでしょう。元教団兵の将校のあなたの力が必要です」

 

 そう言って、紅夏女は、金楊凛の手を取った。

 金楊凛の泣き声が大きくなった。

 

「とにかく、烏鶏国(うけいこく)を頼ろうと思います。あの国王陛下もわたしたちのことは覚えているでしょうし、天教教団の庇護を自負する国です。きっと、千人の女囚が、それぞれの故郷に戻ることについて力になってくれると思います。ご主人様の名で、手紙も書かせてもらいました」

 

 沙那が言った。

 

「宝玄仙様、ありがとうございます。もしも、無事に戻ることができたら、宝玄仙様の功績をお伝えするとともに、なんとしても、宝玄仙様の名誉を回復してみせます」

 

 紅夏女は言った。

 

「わたしのことは気にしなくてもいいよ、紅夏女。どちらにしろ、もう、天教には、戻る気はないしね。それに、わたしのことを庇ったりすると、お前の立場も悪くなるかもしれない。むしろ、わたしの悪名を利用すればいい。とにかく、なんとか車遅国を脱出して、まずは、烏鶏国に辿り着くことだけを考えておくれ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「逃避行についての細かいことについては、沙那さんにも助言を受けました。何人かは、『移動術』を遣える者もいますから、なんとかなるのではなると思うのです……。でも、宝玄仙様が、教団の手配を受けるなどわたしには耐えられません。なんとしても……」

 

「わかったよ、紅夏女」

 

 宝玄仙は苦笑した。

 

「それで、ご主人様、路銀のことですが……」

 

 沙那が言い難そうに言った。

 

「わかっているよ。ありったけ渡したいのだろう。渡しな。わたしらは無一文になっても、まあ、なんとかなるしね。こいつらは、千人もいるんだ。路銀もなしじゃあ、露頭に迷うだけだ。こと智淵城から剥ぎ取ったものも全部こいつらに渡すといい。わたしらの分は、お前らが旅でなんとかしな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ありがとうございます。ご恩は一生……」

 

 沙那と紅夏女がそれぞれに頭をさげた。

 

「いいんだよ。それよりも、沙那、また、その分、供として励んでもらうよ。いいね」

 

「は、励むんですか……。は、はい」

 

 沙那は言った。

 聡い沙那は「励む」という言葉の裏の宝玄仙の真意を理解したはずだ。

 だから、あんな気が進まないような表情をしているのだ。

 紅夏女と貂蝉は、そんな沙那の態度がよく理解できずに不思議そうな表情をしている。

 

「ご主人様、七星さんが、気がついたから連れて来ました」

 

 朱姫だ。

 隣には、前屈みの腰をくねらせながらややがに股気味にやってくる七星の姿があった。

 沙那から拷問を受けた七星は、死んだようになっていたのを宝玄仙が『治療術』で回復させ、横にさせていた。

 やっと起きあがれるようになり、その七星を朱姫が連れて来たのだ。

 七星もまた、布を一枚はおっただけの姿だ。

 沙那の姿を見て、引きつった表情をした。

 

「あ、あの七星さん、も、申し訳ありませんでした。わ、わたし、あなたになんてことを……」

 

 沙那の謝罪に七星は首を横に振った。

 

「そ、それはいいんだ、沙那。あ、あたいも鞭で打ったしね。お互いに恨みっこなしにしてくれるとありがたいね」

 

「それはもちろんだけど、でも……」

 

「いいの、いいの……。それよりも、宝玄仙さん」

 

 七星は、上気した顔をこちらに向けた。

 

「なんだい、七星?」

 

 宝玄仙は含み笑いをしながら返事をした。

 

「まずは、『治療術』をしてくれたのは、ありがとう」

 

 七星は言った。

 

「どういたしまして。かなり衰弱もしていたからね。元気になってなによりだよ、七星」

 

「だったら……」

 

 七星の顔が少しだけ険しいものになった。

 

「……なんで、ここだけ治してくれないんだよ」

 

 七星は言った。

 

「なんだって?」

 

 宝玄仙はわざととぼけた。

 

「だから、なぜ、一箇所だけ治してくれないのさ?」

 

 七星は大きな声をあげた。

 

「一箇所ってなんだい?」

 

「と、とぼけるんじゃないよ。お実の皮だよ。沙那に焼け針で焼き剥がされたお実の皮だよう。確かにきれいに傷跡も消えているけど、皮もきれいになくなっているじゃないか。こ、これじゃあ、敏感すぎて歩けないよ」

 

「そりゃあ、いいね。あの七星さんが、肉芽の皮がなくなっただけで、満足に歩くこともできなくなったのかい。愉快じゃないか」

 

 宝玄仙は、七星の淫情した顔が可笑しくて大笑いした。

 

「わ、笑うなよ。お願いだよ。ここも治してよう」

 

 七星は泣き声をあげた。

 

「お前、わたしの最初の質問を覚えているかい?」

 

「最初の質問?」

 

 七星は覚えていないようだ。

 

「お前を買うのに幾らかと訊いたろう?」

 

「そう言えば……」

 

「とにかく、三箇月分ほど値段を付けな。皮を戻す治療代は、それと交換だ。三箇月ほど一緒においで、七星。どうせ、行くあてもないんだろう?」

 

「あ、あたいを買うってこと? 三箇月も?」

 

 七星は言った。

 沙那も驚いた表情をしている。

 

「もしも……もしものことだけど、断ったらどうなるの?」

 

 やがて、七星は言った。

 

「その皮はそのままだろうねえ。そうやって、がに股で歩いたらいいだろう? そうだ、ついでに、肉芽の部分に短い毛をつけてやるよ。動くたびに、敏感な部分がくすぐられて刺激を受けるようにね。どうだい、性格も変わるかもしれないよ」

 

「わかったよ。ついていくよ。だから、治してよう」

 

 七星は言った。

 

「なに、なに? こいつも旅に加わるの?」

 

 孫空女がやってきた。

 

「三箇月だけだけどね。そういうことになりそうさ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「へへん、どうしたのさ、七星? 腰を引いちゃってさあ?」

 

 孫空女が、七星の腰をぽんと叩いた。

 

「ひやっ、ああっ」

 

 その刺激で七星は、敏感になっている部分を布に擦ったらしく、短い嬌声をあげた。

 七星は険しい顔で孫空女を睨んだ。

 

「じゃあ、治してやるよ、七星。ここじゃあ、なんだから、部屋に戻ろうじゃないか。孫空女、お前も来るんだ――。沙那、後を頼むよ」

 

 宝玄仙は言った。

 七星は知らないだろうが、七星があそこまで敏感なのは、皮がないだけのせいじゃない。

 道術で感度を上げているのだ。

 宝玄仙は内心ほくそ笑んだ。

 

「えっ? 後を頼むって……。もしかしたら、あの虎力と羊力のことですか?」

 

 沙那はびっくりしている。

 虎力は、孫空女に強要されるまま、羊力の男根を舐めさせられている。

 

「そうだよ。精液が出なくなるまで絞り出せるんだ。勃起しなくなったら、尻に電撃を喰らわせて勃たせる。そして、女囚の作った鞭と棒の林を通り抜けさせる。すべて終われば、生きていようが死んでいようが、穴に入れて埋める。簡単だろう? 『魂の欠片』も戻してやったんだ。お前も霊具も遣えるようになっただろうし」

 

 宝玄仙は言った。

 沙那がそういう嗜虐が苦手だということはわかっている。

 

「で、でも……」

 

「朱姫もいるだろう? 朱姫に任せておけば大丈夫だよ」

 

「そんな……。ちょ、ちょっと待ってください。そう言えば、ご主人様、朱姫がどうしても、切断したご主人様の身体の一部が見つからないと言っています。ほかの部分はあったらしいですが、紋章のついた右手だけが……」

 

「そうだ……。そうなんです、ご主人様……」

 

 朱姫がさらに言い募ろうとしたのを宝玄仙は、手を振って止めた。

 

「ああ、いい、いい。右手首のひとつくらい。もう生えたしね。孫空女に剃られた下の毛は生えないけどね」

 

 すると孫空女が顔に恐怖の色を浮かべた。

 

「あ、あのときの……? ね、ねえ、あれは、『治療術』で戻るんでしょう……?」

 

 孫空女だ。

 

「いいや。あれは、あのままでいい……」

 

 宝玄仙は微笑んだ。

 

「……これからは、無毛の陰部を見るたびに、こんな連中の虜になった反省と孫空女への恨みを想いながら、お前で憂さを晴らすことにするよ、孫空女」

 

 宝玄仙がそう言ったので、文字通り孫空女は飛びあがった。

 

「そ、そんなあ、お願いだよ。いちいち、憂さを晴らされたら堪らないよう。一度にしてよ。一度は覚悟するから」

 

「じゃあ、おいで。その一度だ、孫空女」

 

 宝玄仙は言った。

 

「へっ、憂さを晴らしてもらいな、孫空女」

 

 七星が孫空女をからかった。

 すると孫空女が、なにも言わずに、七星が腰に覆っていた布を股間を擦るようにわざと引っ張った。

 

「いやあああ」

 

 七星が悲鳴をあげて、その場にしゃがみ込んだ。

 宝玄仙は、なにか愉しくなり声をあげて笑った。

 

 

 

 

(第22話『奴隷城からの脱出』及び『智淵城篇』終わり)






 *


【西遊記:46回及び47回冒頭まで、虎力・鹿力・羊力大仙⓷】


 孫悟空の邪魔で復活の術に失敗した虎力大仙は、死んでしまいます。
 追い詰められた鹿力大仙は、今度は自分が挑戦すると名乗り出ます。
 腹を切って死なないところを見せるというのです。
 鹿力大仙が腹を切ると、孫悟空は鳥を出現させて、贓物を持っていかせます。鹿力大仙もそのまま死んでしまいます。

 最後は羊力大仙です。
 羊力は煮えたぎる油の中でも、自分は死なないと言って、油を煮え立たせてその中に入ります。
 孫悟空は、またしても術を邪魔して、羊力を油で煮殺してしまいます。

 煮え切って死んでしまった羊力の骨を見ると、驚いたことに人間の骨ではなく、羚羊(れいよう)の骨でした。
 また、虎力も虎の化け物、鹿力もまた、鹿の化け物だったことがわかります。
 いままで自分が心酔していたのが、人間ではなかったことに国王は驚いてしまい、今度は仏教を大切にすることを誓って、奴隷にしていた僧侶の解放を約束します。

 玄奘一行は、旅を再開します。
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