身長も幅も人間の倍というところだろう。
二本の大きな角と真っ赤な顔に赤い瞳、そして、赤い髪をした口から牙を生やした狂暴そうな風貌……。
魔族だ。
あれが、
横にはやや背の低い雌妖だ。
同じような姿だが、霊感大王に比べれば遥かに身体が小さい。
「お前ら、わたしの持ち物に触るんじゃないよ」
宝玄仙は怒鳴った。
二匹がこっちを見た。
驚いた表情をしている。
孫空女と七星は地面に磔にされている。
なんらかの魔術だろう。
沙那が飛び出した。
「お父さん――」
「任せなるぞなもし、
霊感大王が大きく手を拡げた。
攻撃魔術だろう。
しかも、この廟内が相手の結界内で強化されている。
霊感大王の視線の先は、突撃している沙那だ。
「ちっ」
宝玄仙は舌打ちした。
沙那の防御を――。
そう思ったが、時間が足りない……。
間に合うのは、宝玄仙の周りの一部だけだ。
「沙那、待ちな――」
魔術が来る――。
だが、霊感大王が刻んだのは、愛魚女と呼んだ娘の周りの結界の強化魔術だ。
孫空女と七星についても、愛魚女たともに二重の結界に包まれた。
しかし、霊感大王自身には、防御壁を刻まなかった。
沙那が、霊感大王に細剣を叩きつける。
霊感大王は抜いた剣でそれを受けようとする。
しかし、沙那がかいくぐる。
沙那の剣が霊感大王の胴に伸びた。
「きゃあああ」
だが、沙那が吹き飛んだ。
魔王の魔術が胴体から炸裂したのだ。
宝玄仙は、霊感大王の攻撃魔術に道術をぶつける。
霊感大王の魔術が中和されて弾けた。
しかし、すべては無効にできない。
やはり、この妖魔の結界の中では、宝玄仙の道術は、完全には威力を発揮できない。
「沙那――」
沙那は魔王の魔術の衝撃で床をごろごろと転がっている。
そこに、霊感大王の第二射目の衝撃波が飛んだのだ。
宝玄仙は、倒れている飛ばされている沙那の周りに、術で作った空気の塊りを作った。
その空気の塊りに、霊感大王の攻撃波動が当たる。
だが、やはり、道術が中途半端だ。
空気の塊りごと沙那が大きな衝撃波で飛ばされる。
「んぐううっ」
沙那の身体が廟の壁に叩きつけられた。
さらに、沙那の身体が壁から跳ね返る。
それでも、空気の塊りのお陰で、かなりの衝撃を軽減できたはずだ。
その沙那に霊感大王が突進している。
大剣が沙那に伸びる。
「『影手』――」
朱姫の術による影が、霊感大王の片足首に張りついたのがわかった。
足首を取られた霊感大王の身体がつんのめって、体勢を崩す。
沙那はすでに起きあがっていた。
ほの沙那の細剣が宙を裂く。
霊感大王の左腕が血しぶきとともに飛んだ。
しかし、その左腕が宙を飛んで、沙那の髪を掴む。
「痛いぞなもし」
「んぎいいっ」
沙那が切断された霊感大王の腕によって、床に引き倒される。
だが、霊感大王自身は、もう沙那に向かっていない。
こっちに身体を向けている。
手を拡げた。
切断された霊感大王の左腕は、すでに新しい腕が生えかけている。
「やるかい、霊感とやら」
宝玄仙は、眼の前に道術の壁を作った。
霊感大王の魔術の風が、宝玄仙の眼の前で消失する。
「お、お前、なんだ? 俺の結界の中で、なんでそれだけ術がかけられるのだもし?」
霊感大王が呆気にとられた表情で叫んだ。
「どうでもいいんだよ、霊感。それより、孫空女と七星を返すんだよ」
宝玄仙は眼の前の道術の防御壁を、今度は攻撃のための塊りに変える。
「朱姫、徹底的に娘を狙いな――」
宝玄仙は叫んだ。
そして、道術の衝撃波を霊感大王ではなく、愛魚女たちを包んでいる結界に発する。
霊感大王の眼の色が変わった。
愛魚女に向かっている衝撃波の前に、咄嗟に自分の身体を入れた。
宝玄仙の放った衝撃波に吹き飛ばされた霊感大王が、廟の壁に叩きつけられる。
「『影手』、いけえ――」
朱姫の影手がうまいぐあいに結界をすり抜けて愛魚女の首にかかる。
愛魚女の悲鳴があがる。
「娘に、なにするのかもし」
霊感大王の放った突風が朱姫の身体を吹き飛ばす。
愛魚女の首に張りついた影手が消えている。
一方で、やっと沙那が霊感大王の左腕を振り解いた。
沙那が再び霊感大王に走る。
しかし、霊感大王は、愛魚女を守るように娘の前に行き、娘を包んでいる結界の中に入った。
「お前ら、強いなもし」
霊感大王はひと言だけ言った。
廟全体が霊感大王の魔力で満ち始める。
大きな魔術の予感がする。
「いけない――」
宝玄仙はありったけの霊力を、霊感大王の結界に向かって叩きつけた。
だが、次の瞬間、その空間が歪む。
霊力大王たちの姿が消失した。
宝玄仙の道術は、たったいままで、霊感大王と愛魚女、そして、孫空女と七星がいた空間を突き抜けて、その後方の壁に当たって弾ける。
すでに、霊力大王たちの姿はない。
「しまった……。逃げられたよ」
『移動術』だ。
すでに出口が閉鎖されている。
「ご主人様、孫空女と七星が……」
沙那だ。
「わかっている。魔王の術で逃げられた」
宝玄仙は歯噛みした。
「ご主人様、『移動術』の結界を閉鎖されました」
朱姫が不安そうな表情で言った。
「それも、わかっているよ、朱姫」
できれば、ここで孫空女と七星を取り戻したかった。
魔王ともあろうものが、自分の結界の中で逃げの一手を打つとは予想外だった。
甚だまずい状況になった気がする。
これで霊感大王がどこに消えたかわからないようでは、孫空女と七星を取り戻す手立てを失ったことになる。
沙那が宝玄仙のそばに戻って来た。
「ご主人様……」
その表情は不安そうだ。
「別の手段を考えるよ」
宝玄仙は言った。
もっとも、現段階で、それは思いつかない。
「誰――?」
沙那が、突然に細剣を抜いた。
「えっ?」
宝玄仙にはわからなかったが、沙那の反応で、他に人の気配がしているのがわかった。
建物の中で不意にひとつの拍手が鳴り始める。
「霊感大王の結界の中だというのに、あれだけの戦い。大したものです……。さすがは、宝玄仙様だけのことはあります」
拍手の主はこの霊感大王廟と呼ばれるこの建物の入口から起こっていた。
拍手をしているのはひとりの人間男だ。
軍服を着ている。
「誰よ?」
沙那が、声の主に向かって、数歩進み出た。
「そんなに構えないでいただきたい。敵じゃありませんよ。ここでは、
「将校?」
沙那が応じた。
「孫空女殿と七星を捕えて軍営に連れていったのは私です。ついでに、この霊感大王廟に生贄として運ぶ手筈を整えて、
「なんですって?」
「怒らないでくださいよ、沙那殿。最初は、うまく動きまわって、なんとか釈放に持っていくつもりだったのですよ。もっとも、ここの軍では、俺も新参者のひとりでして……。まだそれほどの力は持っていないので、うまくはいかなかったのですがね……。結局。そうこうしているうちに、宝玄仙様があのふたりを生贄として引き渡しことに合意したと知ったものですから、その通りにしたのですよ」
関保と名乗った男は、そう言いながらつかつかとこっちにやってくる。
敵意のようなものは感じられない。
沙那も同じなのだろう。
用心はしているようだが、抜いた細剣を鞘に戻している。
「なんの用事だい、関保とやら?」
宝玄仙は、すぐそばまでやってきた関保に言った。
すると関保は、さっとその場に片膝をついた。
「……
「倚海龍……?」
名に聞き覚えがあった。
しかし、どこで耳にした名か思い出せない。
もっとも、この男に初めて会うということだけは確かだ。
「ご主人様、倚海龍というのは、金角の部下のひとりですよ」
沙那が叫ぶように言った。
「おう、金角の?」
宝玄仙は思わず声をあげた。
金角には、副将の銀角の下に四人衆と呼ばれている部下がいる。
このうち、宝玄仙が接したことがあるのは、宝玄仙を捕えるという遠征に随行していた巴山虎だけだ。
金角と別れてから久しいが、宝玄仙は金角とは、『主従の誓い』を結んでいる。
倚海龍は金角の部下であるので、金角の主人である宝玄仙は、倚海龍の主人といえないこともない。
「倚海龍? お前、本当に、金角が言っていたあの倚海龍かい? お前、人間じゃないのかい?」
宝玄仙は声をあげた。
「いかにも私は人間族です。金角軍には、いろいろな種が混じっていますが、金角様は、それを説明なさいませんでしたか?」
「そんなことは言っていなかったね。まあいいさ。でも、お前が、金角のところの倚海龍だとすれば、つまりは出迎えということでいいのかい?」
「そのとおりです。金角様のご命令で、ここでお待ちしてました……。ところで、そちらは、沙那殿と朱姫殿ですね? ご挨拶申し上げます。倚海龍です」
ずっと片膝をついたままだった倚海龍がすっと立ちあがった。
沙那と朱姫が、それぞれに挨拶をした。
「だけど、お前からは霊気は感じないね。人間だとしても、本当に、道術を遣えない、ただの人間かい?」
宝玄仙は言った。
すると、倚海龍がにやりと笑った。
突然に倚海龍の身体の中の霊力が感知できるようになった。
霊力を持たないどころじゃない。
かなりの霊力の持ち主だ。
これまで、それを隠していたのだと悟った。
「たったいま、隠していた霊力を解放しました。もちろん、道術は遣えます。金角軍の四人衆のひとりですからね」
「驚いたねえ……。霊力を隠していたのかい……」
宝玄仙は呟くように言った。
そして、それを見抜くことができなかったことにもいささか驚いた。
「失礼ですが、宝玄仙様は、いまは、ご自分の霊力を隠しておられないようですが、隠すこともおできになりますよね? できれば、これからは、なるべくそうした方がよろしいかもしれません。少なくとも、魔域では、ほとんどの魔族は、必要ない限り、普段は魔力を探知できないように遮蔽しています」
「なぜだい?」
「危険だからです。魔力を発散していては、存在を喧伝しながら歩くのと同じです。魔域では、魔力を探知して、倒せると判断したら、その持ち主をこっそりと倒そうとする魔族はそこら中におります。弱肉強食の世界なのですよ。強かろうと弱かろうと、実力を迂闊に晒すのは危険です」
「なるほど」
宝玄仙は頷いた。
「また、魔域で人間というのは、非常に立場の弱い存在です。人間と見れば、見境なく襲ってくる魔族すらおります。霊力を発散していては、簡単に人間なのか、魔族なのかを区別できるので、余計な騒動を誘い込むことになりかねません」
「忠告に従うよ、倚海龍」
宝玄仙は、自分が放出している霊力を遮蔽して、周りの地物に発生している魔力に溶け込ませるようにした。
「……ほう、さすがですね。お見事です。改めて、宝玄仙様が偉大な術遣いだということがわかりました。ここまで、完璧に霊力を遮蔽してしまうのは素晴らしい」
倚海龍が感嘆の声をあげた。
「ところで、わたしたちを待っていたというのは、どういうことなのです、倚海龍殿?
」
沙那が訊ねた。
「言葉通りの意味です。私の役割は、あなた方一行が、魔域を横断して金角軍に合流するのを導いてくることです。魔域の横断の旅は、なかなか苦しいものになるかと思いますが、よろしくお願いします」
倚海龍は優雅な仕草で頭を下げた。
「まあ、一緒に?」
「そうです。それが、私の任務です。それで、車遅国の東の果ての元会の城郭軍の将校に身をやつしてお待ちして入りました。魔域に向かうのであれば、車遅国を通過するのはわかっておりましたから、待っていればお会いできると思っておりました」
倚海龍は言った。
「折角だけど断るよ。わたしは、男連れの旅は嫌なんだ」
宝玄仙は言った。
「ご、ご主人様」
沙那がたしなめるような声をあげた。
「なんだい、沙那。嫌なものは嫌なんだよ。金角にもそう言いな。案内は不要。そう言われたってね、倚海龍。わたしらは、わたしらだけで、金角のいる魔域の西側まで行くよ。急ぐ旅じゃないんだ」
宝玄仙はぴしゃりと言った。
金角の勢力地は、この通天河の反対側になる魔域の西側だ。
概ねの場所はわかる。
すると倚海龍は笑い出した。
「道案内もなしに、魔域を横断? 不可能ですよ。魔域には様々な魔王がおります。あなたのような霊力の強い人間は、幾らかの魔王にとっては大好物です」
「別に魔域を横断しなくてもいいさ。魔域に入らずに、その南側の人間族の国々を迂回して進むという手もある……。とにかく、出直してきな。金角には、女の出迎えを寄越せと伝えな。気が強くて美人の雌妖がいいともね」
宝玄仙は笑った。
しかし、金角も気がきかない。
出迎えのことは、話し合いもしてたが、男嫌いの宝玄仙の出迎えに男を寄越すとは……。
まあ、宝玄仙も、そういえば、男は嫌だとは金角には伝えなかった気がするが……。
「ご主人様、いい加減にした方が……」
沙那がまた、たしなめる口調で口を挟んだ。
だが、宝玄仙は無視した。
いずれにせよ、金角のところに向かうのは、魔域を横断するのが最短距離だが、ほかにも方法はある。
通天河を南に沿って進み、ずっと南に出て、海沿いに人間族の国々を進んで、西帝国と呼ばれる場所から北方向に魔域に入るのだ。
そもそも、あの
さすがに、宝玄仙も、道案内なしに魔域の横断は不可能ということはわかっている。
沙那には説明してなかったが、天教には西帝国経由の魔域入りの巡礼の記録があり、最悪、金角の出迎えがないときは、その経路も視野に入れていた。
「だったら、別に、四六時中一緒ということでなくても結構ですよ。しかし、差し当たっては、私の力が必要ですよ。魔域に入るためには、通天河を越えねばなりません。私は、『海亀の
「河を渡してくれる船頭を探すさ。幸いにも、路銀も手に入ったしね」
宝玄仙は言った。
「生贄として孫空女殿と七星殿を陳清に売り払った代金ですね。あなたも可哀そうなことをされますなあ……。いずれにしても、いくら、金を払っても、向こう岸まで渡してくれる船頭なんていませんよ、宝玄仙様」
「なんでだい?」
「危険だからです。事実、数年以来、通天河の中心から向こうに進もうとした船は、ことごとく、通天河の急流か、河に巣食う水魔獣に壊されてしまっています。いくら積んでも、向こう岸に渡してくれる船は見つけられないでしょうね」
「わかったよ。じゃあ、向こう岸に着くまでは、お前に頼むさ、倚海龍。だけど、そこから先は不要だよ」
宝玄仙は言った。
「まあ、それは、向こう岸に到着したら、改めて相談しましょう、宝玄仙様」
倚海龍が笑いながら言った。
「ねえ、倚海龍殿。金角様や銀角は元気ですか? あたしたちを受け入れられるようになったのでしょうか?」
朱姫が横から口を挟んだ。
するとにこやかに話していた倚海龍の表情が初めて曇った。
「それについては、些か、困った状況にあるということを白状しなければなりませんね」
倚海龍は言った。
「どういうことだい、倚海龍? まだ、天教の撒いた嫌がらせの影響が続いているのかい?」
宝玄仙は言った。
もともと、金角が妹の銀角とともに、宝玄仙を捕えるために東域まで遠征してきたのは、鎮元仙士という天教の神官が、宝玄仙を捕えることができた妖魔に懸賞品となる魔具を渡すと喧伝したからだ。
つまり、宝玄仙は、魔域に棲む魔族の争奪戦の獲物となりかけていたのだ。
しかし、それも肝心の鎮元仙士が魔域に渡ることができなくなってからは、状況も変化しているはずだ。
鎮元仙士は、いまでも石化したまま放置されているに違いない。
「いえ、天教の陰謀については、もう、ほとんど収まりました。肝心の懸賞をくれる天教の使者がいないんじゃあ、もう話に乗る魔王はいません。しかし、別の問題も発生しているのですよ、宝玄仙様」
「別の問題とはなんだい?」
「
「紅孩児がどうしたんだい?」
意外な言葉を聞いて宝玄仙は驚いた。
紅孩児というのは、車遅国に入る前に、宝玄仙を喰らおうとして、返り討ちにしてやった小妖のことだろう。
それがどうかしたのだろうか。
「紅孩児は、
「もちろん、知っているよ。わたしを殺そうとした紅孩児のことだね。そう言えば、死ぬ前に、確かに、自分は牛魔王の息子だと喚きながら死んだね。それがどうかしたのかい?」
「もちろんです。牛魔王は、息子を殺されたことについて、怒り心頭にきています。そして、金角様は、あなたの庇護者であることを表明しています。我々にとって、それが非常に都合の悪い状況であることは察してもらえると思いますが?」
「残念だけど、察しないね。なぜ、牛魔王の不良息子を殺したことが、金角軍にとって悪い状況ということになるんだい?」
「それは自明の理でしょう。牛魔王は、息子の仇を討つためにあなたを殺したがっています。それを阻止しようとする金角様は、牛魔王の敵になりかけているんです」
「だったら、潰せばいいだろう」
「潰せるわけがないでしょう。牛魔王軍は、魔域でも最大の勢力のひとつです。まともに戦えば、さすがの金角軍もひとたまりもありません」
「それで、どうしろというんだい?」
宝玄仙は言った。
「金角様は、真っ直ぐに魔域を横断するのではなく、とりあえず、南域に迂回して、人間族の帝国から金角軍の勢力地域に入ることを望んでおります。真っ直ぐに進んでくると、金角軍と合流する前に、牛魔王の勢力地を通り抜けることになりますから」
「なるほどね」
宝玄仙は言った。
つまりは、宝玄仙が金角の出迎えがないときに思い浮かべていた経路に近いようだ。
だったら、なおさら道案内は不要だ。
「ご主人様、それよりも、いまは、孫空女と七星のことです。その後のことは後日話し合いましょう……。ねえ、倚海龍殿、
沙那が口を挟んだ。
「それについては心配いりません。私は、魔域からやってきて、城郭軍の将校に身をやつしている身ですから。同じ魔域を棲み処とする者として、霊感大王とは、常に意思を通じておりました。霊感大王の棲み処は通天河の底です。そこに洞府を作って
「そこに行く方法はあるかい、倚海龍?」
宝玄仙は言った。
「私の『海亀の繭』に入って進めば、時間はかかりますが行けます。しかし、あなた方を連れていくについては、条件があります」
倚海龍は言った。
「条件?」
「霊感大王とできるだけ平和的に問題を解決したいのです。争わないと約束してくれませんか? さっきも言いましたが、友達なんです」
「冗談じゃないよ、倚海龍。そいつは、孫空女と七星を連れていったんだよ。それに、毎年、生贄を受け取っちゃあ、人間を喰らっていたんだろうが? あいつは、何人の人間を殺してんだよ」
宝玄仙は吐き捨てるように言った。
「霊感大王は、それにより、東域の人間を害しようとする魔族たちを抑えているのですよ。たったの一年に二人という代償だけでね。それに、孫空女殿と七星殿の身柄については、私が受け合います。間に入って穏便に話を進めますから」
「まあ、あいつらが無事ならそれでいいさ」
宝玄仙は言った。
こっちとしても、ふたりを無傷で取り戻せるなら文句はない。
「じゃあ、さっそく、
「水龜の館?」
「霊感大王の棲み処ですよ」
倚海龍は言った。