158 人里離れた食堂
毎朝、店の前の掃除をするのが
店の前は、
この湖畔街道は、西梁国を南北に走る大きな街道でもあり旅人は多い。
物資を運ぶ隊商の往来もある。
麗美の店はそういう旅人に食事を提供するだけの店だが、宿町と宿町の真ん中付近に位置するこの店は、周りに商売仇がないので繁盛していた。
店には卓が五個あり、一度に座れるのは二十人ほどだが、それが全部埋まることは滅多にない。
しかし、それで十分に生計は成り立つ。
麗美ともうひとりの人間が食べていくだけのものは得ることができている。
麗美の店──。
近傍の人里に住む人々は、街道沿いにぽつりとあるこの店のことをそう呼んでいた。
この店は、若く美しい女がひとりで切り盛りする店として知られているのだ。
だが、実のところ、それは事実ではなかった。
この店は、本当は麗美の店ではない。
この住居を兼ねた食堂に住むもうひとりの少年のものだ。
麗美は、その少年に奴隷のように使われて表向きの女主人の役割をしているにすぎない。
いや、奴隷のように……ではない。
麗美はその少年の正真正銘の奴隷なのだ──。
しかし、そのことは誰も知らない。
その少年の能力についてもだ。見た目は人間の十二三歳というところだから、表向きはその少年は麗美の弟ということになっていた。
麗美という若い姉と十二歳の少年がふたりだけで暮らしている人里離れた食堂──。
この店はそういうことになっている。
人々は、若い女がひとりでやっているこの店が、どうして盗賊や暴漢に狙われないのか不思議がるだけなのだ。
こんなに人里から離れていては、城郭軍の出動も警備も期待できない。
盗賊に襲われて殺されても気にしないし、取締りのための犯人探しも行われないだろう。
もっとも、それこそがこの食堂がこんなに人里離れた場所にある理由なのだが……。
掃除が終われば、朝の仕込みに入る。
食事に出す料理の材料については、契約をしている業者が定期的に運んできてくれる。
だから、こんな宿町や近傍の部落から大きく離れている店だったが、肉も野菜も魚も米もあり、変化に富んだ食事を提供できる。
店の隅には酒の
「麗美、こっちに来い」
ちょうど掃除が終わったところだったが、店から出てきたその少年に声をかけられた。
店の二階が、麗美とその少年の住居になっていて、その少年は二階から降りて来たのだ。普通はこんなに朝早くは起きては来ないのだが、今朝は眼が覚めたのだろう。
「おはようございます、
麗美は掃除の手を休めて、少年に頭を下げた。
爆斗──。
その男のことを麗美はそう呼んでいたが、それが本名なのかどうかまったくわからない。
二年前に、この少年が遠い故郷で村一番の美貌の女と称されていた麗美を強引に夫から浚ったときに、そう呼べと言われただけだ。
途方もない能力を持った存在──。
それが爆斗だった。
見た目は人間の少年だが、もしかしたら人間ではないのかもしれない。
爆斗の能力は尋常なものではないのだ。
しかし、爆斗のその能力について、人に喋ることも、逃亡することも禁止されていた。
本当の弟でないことを人に語ることについてもだ。
逆らえば、爆斗は麗美だけでなく、遠い故郷にいるはずの麗美の夫や肉親を皆殺しにすると言われている。
この爆斗だったら、簡単にそれをやってのけるだろう。
爆斗の想像を絶する能力をただひとり知っている麗美は、それを確信している。
それに、この少年に捕らえられて、この店の表向きの主人としてすごした二年の月日は、麗美から故郷に戻る希望も、若い美貌の妻が突然に行方不明になったと思い込んでいるはずの夫への想いも消し去った。
いまは、ただ、爆斗の命じるままに、この店の女主人の役を演じるだけしか考えていない。
この店で時折行われる怖ろしいことについても、感情を失った協力者として爆斗の指示のままに行動するだけだ。
「昨夜は、お前を可愛がるのを忘れたせいか、眼が覚めたらこうなっていた……。舐めな」
爆斗はそう言って、
本当に見た目は、まだ幼さえ残している十二、三歳の少年なのだ。その爆斗に奉仕するというのは、いまだに麗美に戸惑いを感じさせてしまう。
「早くしな──」
爆斗が苛ついた口調で怒鳴った。
麗美は慌てて、地面に屈むと手で爆斗の下袴と下着をおろして、反りかえった爆斗の肉棒を外に出した。
この男根だけは見た目とは違って大人そのものだ。
麗美は馴れた仕草で、自分の髪を横に流して爆斗の怒張の先端に口づけをする。
そして、先端を舌先で小刻みに刺激を始めた。
これが男を悦ばす技らしい。
夫を持つ身の上だったが、半年の夫婦生活ではこんな行為をしたことはなかった。
すべて、この爆斗に仕込まれたのだ。
「日に日にうまくなるな。それに今日はやけに情熱的な気がするぜ。夫のことでも思い出したか……」
爆斗がからかうような物言いで言った。
怒張は麗美の口いっぱいに咥えられている。
麗美は口をすぼめて、口全体と舌を一身に使って懸命に爆斗の怒張に奉仕をしているところだ。
爆斗は、麗美がいまだに故郷や夫を恋しがっていることを知っている。
だから、わざと呷るような言い方で麗美をからかうのだ。
「手が空いているだろう。そのまま自分の股間をいじくりな……」
上から爆斗の声が降ってきた。
こんな朝から店の前で、少年の肉棒を咥えて、自分の股間を愛撫するなど……。
その惨めな姿を想像するだけで涙が出そうだ。
しかし、逆らうことはできない。
麗美は、跪いている下袍を両手でたくしあげると、腰から下着を膝までおろした。
そして、自分の股間に指を押し当てて自分の柔肉を刺激しはじめる。
唾の音をさせて口で少年の怒張に奉仕し、一方で自らの股間を撫ぜ擦る──。
やがて、自分の股間からも淫らな音とともに、淫靡な雌の匂いがしはじめたのがわかった。
同時に爆斗の怒張も興奮の頂点に達する気配を示し始める。
「そんな大人しいやり方でどうするんだ。俺たちふたりだけしかいないんだ。もっと淫乱に自慰をしな。女陰に指を入れろ。そして、もう一方の手で肉芽の皮を剥いて擦れ」
命令に従って、自分の股間に指を入れるとともに、敏感な肉芽を激しく擦る。
あっという間に自分の股間から蜜が溢れて、股間を刺激している指に絡みつく。
麗美の興奮もそれとともに頂点に達しようとしていた。
自然と口で続けている奉仕も熱のこもったものになっていく。
麗美は自分の身体に込みあがった雌の淫情を口の中の爆斗の一物にぶつける。
「んん……んんんんっ」
麗美の中の快感の波は一気に襲いかかって、そして、全身を貫いた。
麗美はいまだ逞しく勃起している爆斗の怒張を咥えたまま、背中を逸らせて大きく気をやってしまった。
「こらっ、先に自分だけ、いくとは何事だ。まだまだ、奴隷の躾が足りないようだな、麗美──」
爆斗が麗美の髪を掴んで、自分の一物から麗美の顔を強引に離した。
「あ、ああ……。ゆ、許して……。許してください……」
麗美は項垂れて言った。
自分の興奮に制御ができなくなってしまったのだ。
奴隷の務めは、主人である爆斗を愉しませること……。
自分が気持ちよくなるなどもってのほか──。
何度もそう言われている。
しかし、麗美は自分の惨めさに興奮して、それができなかったのだ。
麗美にはそれがわかっている。
「なにが駄目だか、言ってみな、麗美」
爆斗は麗美の黒髪を掴んだまま、強引に麗美の顔を爆斗に向けさせた。
麗美は跪いた態勢のまま、顔をあげて蔑んだ表情で麗美を見ている少年の顔に眼をやった。
「……れ、麗美は自慰の気持ちよさに負けて、先にいってしまいました……」
「そうだ。よくわかっているじゃねえか。じゃあ、罰だな──。
「は、はい……」
麗美は悄然とした気持ちで爆斗に背を向けて頭を地面につけ、下袍をたくしあげて尻を爆斗に向けた。
なにをされるかはわかっている。
尻を犯すつもりだ。
尻姦は、惨めすぎる行為として麗美は激しくそれを嫌っていた。
お尻とは排泄をする場所であり、けだもののように性行為をする場所ではない。
いまでもそう思っているが、爆斗は麗美が嫌がれば嫌がるほど、面白がって尻を調教した。
いまでは女陰よりも感じてしまう性感帯として開発されてしまったかもしれない。
だからこそ、麗美は尻を犯されるのを嫌悪していた。
尻を犯されれば、麗美は自分を失ってしまう。
快楽に溺れ、淫情をむさぼる雌に成り下がる。
それが嫌なのだ。
なにかが肛門に当たった。
違和感があった……。
その感触は予想していたものとはまるで違った。
「ひ、ひいっ──。そ、そんな──」
麗美は肛門を抉る異様な感触に悲鳴をあげた。
てっきり、肛門を爆斗の一物が貫くと思っていたのだ。
しかし、肛門を抉り入ってくるものは肉棒などではない。
もっと堅いものだ。
すぐに麗美は爆斗が麗美の肛門に挿しているのがさっきまで麗美が掃除をするのに使っていたほうきの柄だとわかった。
ほうきの柄が容赦なく麗美の肛門に突き挿さっていく。
しかし、調教されている麗美の肛門はそれをなんなく受け入れていく。
それに、おそらく咄嗟になにかの潤滑油を柄に塗ったのだろう。
油のようなものの助けもあり、麗美は深々と肛門にほうきの柄を挿入させられた。
「罰だと言っただろう──。俺の一物で犯してやったらお前が悦ぶだけじゃないか。それを入れたまま、もう一度こっちを向け。奉仕を再開しろ」
爆斗が哄笑しながら言った。
麗美は自分の眼に涙が滲むのがわかった。
だが、仕方なく再び口で奉仕をするために爆斗に振り向く。
「あはあっ」
姿勢を変えて身体を振り向かせようとしたら、肛門に挿さっているほうきが地面を擦って大きな刺激がやってきた。
思わず麗美は、身体を震わせて嬌声をあげた。
「いちいち、よがるんじゃねえよ。さっさとしゃぶれ」
爆斗が声をあげた。
髪を掴んで強引に一物を咥えさせられる。
その動きで、再び肛門のほうきががくんと刺激を加えてくる。
麗美は思わず顔を仰け反らせた。
「早くするんだよ、淫乱な雌豚め」
爆斗が肉棒を麗美の喉奥に押し込んだ。
「んんっ……」
麗美はこぼれ出た泣き声とともに口で爆斗の怒張をしごき出した。
「両手は股間だ。さっきみたいに擦り続けろ」
爆斗が怒鳴った。
麗美は言われるまま再び両手を自分の股間に持っていく。
しかし、さっきとは違い肛門には深々とほうきの柄が挿さっている。
その状態で女陰に指を入れて強く擦ると、肛門の柄まで刺激されて、自分の指を動かすだけで腰全体から脳天まで届くような衝撃に襲われる。
それで切羽詰ったようになり、とてもじゃないが口で奉仕など続けられない状態になってしまう。
「今度、先にいったら、もっと酷い罰があると思えよ」
しかし、爆斗が残酷な声を麗美に降り注ぐ。麗美は叫びたくなるような快感の増幅に耐えて、その甘美感のすべてを爆斗への気持ちに切り替えて、その怒張をしゃぶっていく。
肉棒を捩じるように舌を這わせて、水を吸うように先端から少しずつ滲み出る爆斗の精をすする。
麗美はすっかりと汗まみれになった身体全体で爆斗の怒張を上下させて刺激を続けた。
身体を上下させると肛門のほうきが麗美に泣きたくなるような淫情を加える。
しかも、麗美の両手は麗美の股間を激しく愛撫もしている。
その自慰が少しでも鈍くなれば容赦なく爆斗が怒鳴るのだ。
身体に溜まった熱い淫情が再び頭の頂点に達しようとしている。
麗美は先にいってはいけないという爆斗の言葉だけを脳に刻んで、絶頂を耐えていた。
「また、いきそうなのか……。しょうがねえ女だな。わかったよ……。いっていい」
しばらくしてから爆斗がそう言ってくれた。
麗美はほっとして身体を解放させた。大きな絶頂の波が再び麗美を襲った。同時に麗美の口の中にある怒張が熱い精の迸りを麗美の口の中に放った。
「あはあああぁぁぁ──」
爆斗が麗美の口から男根を離すと同時に、麗美は全身を反りかえらせて大きな声をあげた。
一度目よりも二度目の快感が大きい。
いつもそうだった……。
そして、連続する三度目の絶頂はもっと激しい──。
二年に及ぶこの少年のような姿のこの男の調教で麗美は、すっかりと淫乱な身体に作りかえられていた。
意地の悪い言葉をかけられ、惨めな姿を晒すたびに麗美は心の底からの快感を味わっていた。
深い絶頂をしながら、麗美は微かにもう戻らない二年前の自分に思いを馳せてもいた。
愛し合って夫婦になった夫は、いま頃どうしているだろうか。
もう、麗美のことなど諦めて、別の女と夫婦になっているのだろうか。
それとも、まだ自分を探してくれているのだろうか。
いずれにしても、あの夫は性には淡泊な方だったのだろう。
この爆斗は毎日にように麗美を抱き、麗美は日に何度も何度も繰り返し性の悦びに浸らせられるが、あの夫との性行為は、週に数回あるかないかだった。
それに一度の性交で夫が精を出せば終わりであり、女の快感など麗美は知りもしなかった。
そういうものだと思っていたし、不満はなかった。
だが、こうやって果てしない絶頂に総身を振るわせられると、戻せない二年前の時間に自分が戻りたいのかどうか疑問が湧く。
女の快楽というものを教え込まされた自分が、愛し合っているとはいえ、あの夫と満足な性を交換できるとは思えない。
だからこそ、こんな自分にしてしまった爆斗への恨みの気持ちが湧き起こる。
「ほらっ、また、罰を受けたいのか──」
爆斗の怒声が飛んだ。
眼の前に精を出したばかりの爆斗の一物がある。
慌てて麗美はそれを口で咥えた。
今度は、垂れている精を舐めとり、男根から残りの精を口で吸い取るのだ。
麗美の口の中で放たれた爆斗の精はすでに飲み込んでいる。
麗美は、さらに爆斗の肉棒から残りの精を吸い取った。
しかし、その麗美の奉仕で再び爆斗の男根は逞しさを取り戻した。
この爆斗は性欲が強く、一度精を出したくらいでは満足しない。
それも麗美は知りきっている。
もう一度くらいは、精を出させないとならないだろう。
口でするのか、それとも今度は麗美の下半身を使うのかは爆斗の決めることだ。
今朝はどうするのだろう……。
そんなことを思っていると、おかしな違和感が肛門に襲いかかってきた。
柄を咥えている肛門に内襞に小さな虫のようなものが這っている感覚……。
やがて、それが痒みだとわかったとき、麗美の心は騒然とした。
爆斗がほうきの柄に塗った油は、ただの潤滑油ではなかったのだ。
女の性感帯に激しい痒みを与える掻痒剤───。
それだったに違いない……。
二度の絶頂の虚脱感に浸ることも許されず、新たな性の苦しみが麗美に襲いかかる。
「か、痒い──」
麗美は声をあげていた。
一度気にしてしまうと、肛門の痒みは耐えがたいものとして麗美に襲いかかる。
麗美は無意識のうちに両手を今度は自分の肛門に向けようとしていた。
「おっと、そうはいかんな……」
しかし、爆斗が素早く麗美の両手を掴むと、両手首を前縛りに縛ってしまった。
これで麗美は自分の手を痒みが襲いかかっている肛門に向けられない。
しかも、爆斗は麗美の肛門に挿さっていたほうきをさっと抜いてしまった。
麗美の肛門には激しい痒みだけが残る。
痒みを癒す手段を失ってしまった麗美は、はしたなくお尻を振りながら泣き叫んだ。
「そ、そんな、痒い……痒いです──。お、お願いです。い、意地悪しないで、爆斗様」
「どうして欲しいんだ、麗美──。やって欲しいことを言ってみな」
爆斗が口元に蔑みの笑みを浮かべて言った。
しかし、そんなことは気にならなかった。
それよりも、どんな薬を使ったのかわからないが、この痒みは激し過ぎる。
だんだんと狂いそうなほどに痒みが増していく。もう、少しも待つことができない。
「犯してください──。後生です。麗美の尻を犯してください。この通りです」
麗美は恥も外聞も忘れて、眼の前の少年に土下座をした。
「やっと今日も奴隷らしい顔つきになったな、麗美……。奴隷はそうでなければな。俺のいうことには絶対服従だ。それを忘れるなよ……。いい娘だ」
急に優しげな口調に変わると爆斗は、麗美の背後に回って麗美の腰を持った。
下袍が捲られる。
爆斗の怒張の先端が肛門に当たる。
「おほおおぉぉぉ──」
ゆっくりと爆斗の怒張が麗美の肛門に入ってくると、麗美は大きな痙攣をして三度目の絶頂にひた走った。
*
「少し早いですが、ここで食事にしましょうか」
沙那は言った。
「そうだね」
宝玄仙が同意して、昼食をこの街道沿いの食堂でとることになった。
ひとつ前の宿町からはかなり離れている。先の宿町に着くにはまだ半日ほど歩かなければならないはずだ。
こんなに人里から離れた場所にある食堂など珍しいが、ここを逃すともう手頃な店はないだろう。
昼食を店でとるにはこの食堂に立ち寄るのがよさそうだ。
通天河に沿って北梁国から南に下り、西梁国という土地を南北に走る山街道だ。
「どうしたんだい、七星。いつものような元気がないじゃないか」
店の入口で孫空女が七星にからかいの視線を向けた。
七星が火のついたような視線を向ける。
「う、うるさいよ……。な、なんで、あたいが……こ、こんな仕打ちを……」
七星の声は怒りと悔しさでやや震えているようだ。
「へん、なんでじゃないよ。それがこのご主人様の供になるということだよ。お前も覚悟のうえで承知したんだろう。観念しなよ」
「なにが承知だよ……。いつもいつも……。そもそも、あ、あたいは、智淵城から助け出してくれたお礼代わりに、宝玄仙さんが望めば、夜の営みに参加してもいいと思って供を承知しただけさ……。な、なんで、いつも、こ、こんなことばかり……」
「知ったことかい──。ほら、しゃきっと歩きな」
孫空女が七星の腰を下袴越しに掴むと大きく左右に揺さぶった。
「んひいいっ」
七星は悲鳴をあげて、その場にしゃがみ込んでしまった。
その姿に、孫空女だけでなく、宝玄仙や朱姫も笑っている。
七星は本当に悔しそうな表情を浮かべて、少し足元をふらつかせながら立ちあがった。
しかし、それ以上はなにも言わずにほかの者に続いて食堂に入っていった。
沙那は嘆息した。
七星はいま、具足のない傭兵風の身なりで上衣と下袴を身に着けている。
しかし、行き交う人間は、この青い髪の男勝りの美女がその下には、まったくの下着を着ていないとは思わないだろう。
しかも、そればかりか七星の女陰には、たっぷりの催淫剤を塗った張形を埋め込まれ、それを宝玄仙の道術によって抜くことができないようにされている。
だから、いつもはお喋りの七星の口調は少ないし、堂々とした歩き方は影を潜め、歩くこともままならないような状態になっているのだ。
「まあ、今日一日は耐えな、七星。明日になったら、孫空女だ。そのときにたっぷりと仕返ししな」
「そ、そんな……。明日はあたしなの?」
孫空女が不満そうな声をあげた。
「へっ、だったら、それを愉しみにするよ。覚えてな、孫空女」
七星が汗ばんで紅潮した顔を孫空女に向けた。
「ところで、いま、操作盤を持っているのは誰だい?」
店に入りながら宝玄仙が言った。
操作盤というのは、七星が女陰に挿入されている張形の淫具を遠隔操作するための板だ。
その板を使うことで、離れている七星の中の張形を振動させたりすることができるのだ。
午前中歩きながら、ずっとその操作盤で宝玄仙と孫空女と朱姫が交替で七星をいたぶっていた。
七星は抵抗したくても、宝玄仙の道術にはかなわないので、文句は言うが、その淫靡な悪戯を一身に受け続けている。
七星はよく我慢しているなあと思いながら、沙那もそれを黙って見守っていたが、人目を気にしない容赦ない宝玄仙の責めにも呆れてもいた。
それにすっかりと染まってしまっている沙那を含めた三人の供にも……。
沙那は全員の最後に、その街道沿いの食堂に入った。
店の中は五個の卓があったが、そのいずれにも客はいなかった。
すぐに若い女がやってきたが、この食堂はその女ひとりで切り盛りをしている店らしい。
すでに宝玄仙たち四人は、店の真ん中の卓に腰を降ろしている。
沙那は、店の女主人に断わり、背負っていた荷を店の隅に置かせてもらった。
店にはその若くて美しい女主人がひとりだけだ。
ほかに働いている者はいない。厨房にも人がいる気配がない。
「ご注文は?」
沙那が卓に着くと同時に、その女主人がやってきた。
「若いね。お前がひとりでやっている店かい?」
宝玄仙が声をかけた。
「そうです。忙しいときには弟が手伝ってくれもしますが、基本的にはわたしがひとりでやっています。今日は豚の肉が入っていますけど、それでいかがですか? 塩漬けした魚もありますが……」
「豚の肉をください。五人前。それと水も」
沙那が応じた。
「かしこまりました」
女主人が頷いた。
しかし、彼女が厨房に戻ろうとしたのを宝玄仙が呼びとめた。
「本当にお前と弟のふたり暮らしかい? 物騒だろう?」
「いざとなれば、まだ十二ですが、弟も頼りになりますから……」
「あんたの名は?」
「
そのとき、初めて沙那はなぜ、必要もないのに宝玄仙が麗美に話しかけているかがわかった。
七星の身体が小刻みに震えている。
どうやら、宝玄仙と麗美という若い女主人の会話の陰で、七星は股間の張形を動かされているようだ。
操作盤を持っているのは朱姫だと言っていたから、そんな悪戯をしているのは朱姫だろう。
宝玄仙もそれに気がついているから、故意に麗美を留めて話しかけ続けているのだ。
沙那はまた深く嘆息した。
「弟はどこにいるんだい?」
「二階です。そこがわたしたちの住居になっているんです」
麗美は答えた。
なんとなく陰のある表情を麗美がしたような気がした。
沙那はなぜかそれが気になった。
「うっ……、ああっ……」
ついに七星が声を洩らした。
よく見ると股間の上に置いた両方の拳が固く握りしめられ、卓の下の脚が震えている。
余程に激しい振動を与えられているに違いない。
こういうときは、朱姫は、宝玄仙以上に容赦がない。
宝玄仙はあれでも、限度をわきまえた嗜虐をしている。
しかし、朱姫の嗜虐には本当に際限がないのだ。
やるときは徹底的にいたぶるし、妥協などない。
他人の眼などお構いなしだ。
「そろそろ、注文に応じてもらっていいですか、麗美さん」
沙那は麗美に言った。
「あらっ……。これは失礼しました。すぐに調理にかかります」
麗美が頭を下げて離れていった。
ほんの少し朱姫が不満そうな表情を沙那に向けた。
その朱姫を沙那は逆に睨んだ。
「いい加減にしなさい、朱姫」
「いいじゃないですか、沙那姉さん」
朱姫が頬を膨らませている。
「だ、だめえ……」
その時、七星が身体を小さくしてかなり激しく身体を震わせた。
達したのだ……。
両手を股間に当てて悔しそうにしている七星が、本当に気の毒だと沙那は思った。
だが、宝玄仙が喜々として朱姫から操作盤を取りあげたとき、もう七星に助け舟を出すのを諦めた。
これ以上あからさまに七星を助けようとすると、今度は沙那が宝玄仙の悪戯の対象になってしまう。
それからも宝玄仙と朱姫は、代わる代わる操作盤で七星をいたぶっていた。
沙那も誘われたが、それだけはご免だった。
いくら自分がやられても、仲間をこんな風に外で虐げる気にはならない。
やがて、厨房からいい匂いが漂い始めた。
しばらくすると豚肉を野菜と一緒に煮込んだものが大皿に載せられて運ばれてきた。
胡麻を使った油を使っているようだ。
箸と取り皿、さらに水なども運ばれてくる。
「待って──」
それぞれに箸を伸ばそうとしたのを急に真面目な顔になった朱姫が慌てて止めた。
「どうしたんだい、朱姫?」
宝玄仙が怪訝な表情を朱姫に向けた。
「ちょっとこっちに来てもらえますか、麗美さん」
朱姫が店の隅に下がっていた麗美を呼んだ。
麗美はすぐにやってきたが、麗美の顔は蒼ざめていて、落ち着きなく震えているように沙那には思えた。
「ど、どうしたの、朱姫?」
沙那は朱姫に訊ねた。
「あたしに任せてください、沙那姉さん……。さあ、麗美さん、こっちに来て、この料理を食べてもらえますか?」
朱姫が言った。
「ど、どうして、そんな……。な、なにか気にいらないことでもありましたか……?」
「いいから食べるんですよ。この部分でいいです……。さあ──」
朱姫が肉片を箸で摘まんで麗美に突きつけた。
麗美の顔がますます蒼くなり、顔にどっと汗が流れ出した。
毒?
麗美の異常な様子で、沙那は初めて朱姫がなにに気がついたかがわかった。