※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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第5章【女人(じょじん)国(百合愛の国)篇】
162 女人(にょにん)国前夜


「この先は女人(にょにん)国というのかい? だが、おかしなことじゃないかい。女だけの国でどうやって、子供が産まれるんだい?」

 

 宝玄仙が食事の手を休めて言った。

 女人国に渡る大きな湖のほとりにある宿町の宿屋だ。

 

 七星は、宝玄仙という女主人と、期限付きの供として同行しているのだが、いつものように、みんなで卓を囲んで宿屋で食事をしていた。

 卓を囲んでいるのは、七星と宝玄仙のほかには、沙那、孫空女、朱姫といういつもの女たちだ。

 この宿町の先には渡し船があり、その向こうは女人国という女だけしか住んでいない不思議な国がある。

 それを知っていた七星は、とりあえず、自分の知っていることをみんなに教えたのだ。

 

「さあ、知らないね。あたいも入ったことはないからね。とにかく不思議な国さ。本当に女しか住んでいないらしいよ。それに、誰も彼も、それなりに美女しかいないようだよ。しかも、男がいないせいか、性に解放的でもあるみたいさ……。“女人国のもてなし”という言葉もあるくらいだからね」

 

「女人国のもてなし? それはどういう意味なんだい、七星?」

 

 宝玄仙が面白がるように言った。

 

「つまりは、客人に身体を提供してもてなすことさ。いずれにしても、女人国の女といえば、淫らで性に開放的な美女。まあ、定住の地を探しているようだけど、その女人国こそ、あんたらにぴったりの土地だと思うけどね」

 

 七星は笑った。

 “淫らで性に解放的な美女”──。

 確かに、宝玄仙たち四人にぴったりだ。

 七星は我ながらそう思った。

 

「まあ、考えておくさ。ただ、最終的にどこに落ち着くにしろ、一度は魔域には入りたいね。そこに向かうと約束した者もいるしね」

 

 宝玄仙だ。

 

「この前もそんなことを言っていたね。だけど、魔域といえば、魔族が闊歩する魔境だというよ。そんなところにいってなにするんだい。やめた方がいいんじゃないかい。まあ、あの独角兕(どっかくじ)を屈伏させたあんただからね。どこに行っても大丈夫な気はするけど」

 

 七星は笑った。

 だが、ふと、さっきから沙那と孫空女がずっと押し黙ったまま、赤い顔でもじもじしていることに気がついた。

 ふたりはほとんど食事も進んでいない。

 なぜか片手で股間を隠すように置いたままだ。

 

 そういえば、この食堂にやってくるとき、二階から階段を降りるふたりは、懸命に下袴(かこ)の股を隠すような仕草をしていたような気もする。

 今夜は、七星は朱姫と相部屋であり、三人とは別だったので、一度荷を置くために別れた沙那と孫空女が、部屋の中で宝玄仙になにをされたかは知らない。

 

 それはともかく、ここは、西梁(せいりょう)と呼ばれる通天河沿いの国も終わりの宿町だ。

 行く手を阻むように、南側には湖、西側には厳しい山岳が拡がっていて、ここから南に行くには、湖の向こう側に渡してくれる船を使うしかない。

 宿町は、湖の出入り口に面していて、多くの旅人で宿は溢れている。

 

 この宿町に面する湖の南側は、特殊な場所であり、北からやってきた旅人は、この宿町で、湖を渡り比較的平坦で楽な街道を進むか、西に向かい山岳道に進むかを選ぶことになる。

 そして、ほとんどが山岳道を選ぶ。

 

 それは、この湖の南側に拡がるのは、「女人(にょにん)国」と呼ばれる国で、男子禁制の土地だからかだ。

 いかなる理由があろうとも、男が侵入することは禁止されていて、その掟を破った場合は死刑だ。

 

 実際、女しか住んでいないという女人国に入ろうとする不埒な男は多いらしく、その生首が見せしめとして、こちら側の波止場に並べられている。

 そのため、男が含まれる一行は、湖を渡るのを諦め、西に方向を転じて、険しい山岳道を使って、女人国を大きく迂回して、さらに南の沿岸国に出ることになる。

 危険度も時間も圧倒的に増える旅になるが、多くの旅人はそれを強いられる。

 女だけの一行など、そうあるわけでもない。

 

 もちろん、七星たちは、宝玄仙以下五人女だけの旅なので、好き好んで苦労の多い山岳道を選ぶ理由もなく、明日の昼には、三日に一度と決まっている渡し船で女人国に入ることが決まっている。

 

 それまでは、この宿で時間を潰すことになる。

 幸運なのは、この宿に到着した次の日に、湖を渡す船便があることだ。

 三日に一度の船が出発した後だったら、この宿町で三日も時間を潰すことになったはずだ。

 あの宝玄仙に三日もなにもしない時間を与えたら、どんな淫靡な悪戯を思いつくのかしれない。

 それでなくても、このところ、やけに自分にばかり集中して遊ばれているのだ。

 

 だが、宿に選んだ旅館が、五人一度に泊れるような広い部屋がなく、ふた組に分かれることになったとき、宝玄仙は自分と同じ部屋に入る二人に、沙那と孫空女を指名したのだ。

 ひと晩だけでも、あの宝玄仙の激しい夜の相手から解放されることに七星は喜んだが、その代わり、朱姫には、七星を調教しろという嫌な言葉も残した。

 まあ、明日の朝には、うまく朱姫と話を合わせる必要はあるだろうが、今夜は久しぶりに静かに休めるというものだ。

 

「ふふふ……お前たち、ちょっと下袴の股を覗かせてやりな」

 

 宝玄仙がくすくすと笑いながら言った。

 七星は確信した。

 これは、またこの変態女主人が得意の道術でふたりの女戦士に性的な悪戯をしているのに違いない。

 それにしても……と思う。

 この宝玄仙の嗜虐好きは、七星の理解や限度を遥かに超えている。

 特に沙那や孫空女に対する仕打ちには容赦はない。

 よくも我慢しているものだと思う──。

 

「も、もう、堪忍してくれませんか……。こ、こんなの酷すぎます……」

 

「そ、そうだよ……。ご主人様……。部屋の中なら、なんでもするからさあ……」

 

 沙那と孫空女が真っ赤な顔で顔を俯かせたまま言った。

 

「……なにを喋っているんだい。わたしの命令が聞こえなかったのかい。わたしは、七星に下袴の股間を見せろと言ったんだよ。逆らえば、また男の射精を味わうかい、ほらっ」

 

 宝玄仙が手を振った。

 なにかの術を掛けたのだとは思うが、それがなにかはわからない。

 だが、沙那と孫空女は同時に全身を震わせ始めた。

 

「や、やめて、見せます──。見せますから……」

 

「な、七星、み、見てよ。み、見て、すぐに……。ご、ご主人様、命令に従っているよ、ううっ」

 

 ふたりが歯を食い縛るようにしている。

 七星たちが座っている卓は食堂になっているこの宿屋の一階の端だが、周りには大勢の客がいる。

 このふたりが必死になって、淫靡な声を耐えているという感じだ。

 

「えっ?」

 

 そのとき、両隣の沙那と孫空女の下袴の股間を覗いて、声をあげてしまった。

 そこには女にはあり得ない勃起した男性器を思わせる膨らみがしっかりとあったのだ。

 しかも、その膨らみの頂点が何度も精を放ったかのように大きな丸い染みを作っている。

 七星が驚いているのを見て、宝玄仙が声をあげて笑った。

 

「わかったかい、七星──。今日はこいつらに特別に男の性器を生やしてやったのさ。しかも、繰り返し射精がとまらなくなるような術をかけてね。それで、勃起した性器を持て余して、恥ずかしがっているということさ」

 

「はあ……」

 

 七星は呆気にとられてしまった。

 なんという馬鹿げた……。

 

「お前たち、早く食事をしな──。いろいろと趣向が待っているんだ。最初は、勃起した性器に金属棒を挿しての弱電撃責めだ。そして、超敏感になるように快感を増幅させて連続射精の擦り合い。根元を縛っての焦らし責め──。とにかく、たくさん考えているんだ。早く食って上にあがるよ」

 

 宝玄仙が口に食事を運びながら笑う。

 

「も、もう食欲はありません……」

 

「あ、あたしも……」

 

 沙那と孫空女が相次いで言う。

 七星は呆気にとられるとともに、ほっとした。

 宝玄仙におかしな術をかけられたのが自分でなくてよかったという心からの安堵だ。

 

「そうかい……。だったら、部屋にあがるかい。じゃあ、朱姫、お前はお前で、しっかりと七星を調教しておきな。こいつをいつでもどこでも発情してしまう淫乱奴隷にするんだ。お前に調教係を任せるからね」

 

 宝玄仙が冗談めかしくいった。

 

「わかりました」

 

 朱姫が元気に応じた。

 

「なに勝手なことを言ってんだい──」

 

 さすがに七星も怒鳴った。

 しかし、宝玄仙はもう立ちあがっている。

 沙那と孫空女も立った。

 ふたりは片手で下袴の膨らみを隠すようにして、前屈みになっている。

 七星は、沙那と孫空女の姿に、屠殺場に連行される家畜を連想した。

 

「じゃあ、あたしらも行きましょうよ、七星姉さん」

 

 朱姫も立ちあがった。

 

「そうだね」

 

 七星も席を立った。

 いずれにしても、今夜は宝玄仙とは離れて休める。

 七星は心からの歓びを感じた。

 ふたりで、階段をあがる。

 食堂の上の二階が宿泊をする部屋になっているのだ。

 

「いやあ、沙那と孫空女には悪いが、今夜はぐっすりと眠れそうだねえ」

 

 七星は、朱姫と部屋に入る前に軽口を言った。

 

「そうですか?」

 

 朱姫が妙に明るい返事をした。

 それにしても、またしても、宝玄仙の淫靡な悪ふざけによって、宝玄仙と同室のふたりは、さっそく夕食前に、宝玄仙の道術で股間に男根を生やされ、しかも勃起させられて辱しめられていた。

 まあ、気の毒なこった……。

 

「七星姉さん……」

 

 七星に続いて部屋に入ってきた朱姫によって、部屋の戸がばたりと閉じられた。

 

「わかっているよ、朱姫。明日の朝には、うまく話を合わせようよ。あの宝玄仙さんがうるさいからね。どうせ、どんな調教をやったかと訊くに違いないさ。そのとき、なんにもしなかったとばれちゃあ、大変だからね。まあ、心配ないよ。あたいに任せときな。あたいが説明するから、朱姫は頷くだけでいいよ」

 

 七星は、ひとつしかない椅子の背に外した装具や武器をかけながら言った。

 小さな部屋で二台の寝台とその真ん中に椅子が一個あるだけだ。

 いつの間にか部屋には宝玄仙の結界がかかっていて、外部から遮断されているようだ。

 

 いつもながら、大変な術遣いだと思う。

 霊感大王のときも、独角兕のときも、本当に宝玄仙の道術は凄かった。

 あれで、おかしな嗜虐趣味がなければ、尊敬に値する術遣いなのだろうが……。

 そのとき、なにか得体のしれない圧迫感が首にかかった。

 

「な、なに?」

 

 軽く首が絞められている。

 思わず、七星は、自分の首に触れた。

 なにもない。

 しかし、本当に首が絞まっている。

 そんなに強い力ではないが、徐々に苦しさが加わっていく。

 

「朱姫――」

 

 七星は、朱姫に向かって振り返った。

 これは、朱姫の『影手』に違いない。

 

「や、やめるんだよ。一体全体、なんの真似だい、これは?」

 

 七星は叫んだ。

 その間も首の圧迫感は大きくなる。

 

「黙りなさい、奴隷のくせに」

 

 朱姫が言った。

 

「ど、奴隷って……。お前、ちょ、ちょっと調子に乗るなよ――」

 

「奴隷よ、お前は……。七星姉さん……、いえ、七星……。やっぱり、青にするわ。いまから、お前は、ただの“青”。いいわね、青」

 

「ふざけんじゃないよ。宝玄仙さんのいうことなんて、適当にあしらっておけばいいんだよ。まさか、本当にお前があたいを調教するとか言っているんじゃないだろうね? 承知しないよ」

 

「青、服を脱いで、跪きなさい。それが、奴隷の作法よ」

 

 七星は本当に腹が立った。

 朱姫に飛びかかる。

 だが、足が取られてその場にひっくり返った。

 ふと見ると、両足首にふたつずつの黒い手がある。

 これも『影手』だ。

 朱姫の影手が、七星の両足首を掴んでひっくり返したのだ。

 

「奴隷のくせに、奴隷の振る舞いができないような女は死になさい。あたしは、二度も言いたくないわ。さっき、あたしがなにをしろと言ったのか、思い出しなさい、青」

 

「なっ――」

 

 七星は身体を起こしたが、立ちあがることは朱姫の『影手』が邪魔をしている。

 朱姫が命じた通りの跪いた態勢になっていた。

 

「ふざけんじゃ……」

 

 七星は朱姫を怒鳴りあげようとしたが、朱姫の表情を見て、途中で言葉を失う。

 目が座っている。

 さらに、うっすらとした笑いが浮かんでいる。

 

 そう言えば、孫空女や沙那が、朱姫は、調子に乗るときにどこまでも調子に乗り、ある意味では宝玄仙よりも危険だと言っていたことを思い出した。

 そして、朱姫の笑みの底に浮かぶ嗜虐に酔った宝玄仙の姿を見た気がした。

 そのまま、じっと朱姫を見ていると、ぐいと喉に力が加わる。

 

「しゅ、朱……姫……」

 

 抗議しようとしたが声が出ない。

 これまでと一転して、強い力が加わっている。本当に死ぬ……。

 

「奴隷になれない奴隷は死ぬのよ」

 

 朱姫が冷たく言う。

 七星は、自分の服に手をかけた。

 朱姫の顔が満足気に歪んだ気がした。

 

 しかし、我に返った。

 なんで、こんな娘の脅迫に屈しなければならないのか。

 七星は、服を脱ごうとしていた手をとめた。

 すかさず跪いた格好から身体を倒して朱姫の足を掴む。

 

「きゃあっ」

 

 引き倒した朱姫に乗り、一発頬を張り飛ばしてやろうと腕を振り上げた。

 

「七星様を舐めんじゃないよ」

 

 だが、身体の下になっている朱姫が七星を一瞬見た。

 その顔がにやりと微笑む。

 

「がはっ」

 

 首が絞まる。

 しかも容赦がない。

 本気で殺すつもりか?

 

 いや、そのつもりがないとしても、死ぬ――。

 身体の下の朱姫が七星の身体を突き飛ばした。

 

 七星ははね飛ばされて、ひっくり返ったまま、首を押さえて懸命に空気を探す。

 しかし、その空気が喉に入ってこない。

 苦しい――。

 本当に死ぬ……。

 

「死になさい、青」

 

 朱姫の顔が七星を見下ろしている。

 その顔には、残酷な笑みが浮かんでいる。

 

「しゅ、朱……姫……」

 

 それ以上、喋ることができない。

 喉からおかしな音が漏れだす。

 

「死になさい」

 

 また、朱姫が言った。

 朱姫の姿がぼんやりとなり……。

 そして、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

「ほら、青、起きるのよ」

 

 尻に激痛を感じて、跳ねあがった。

 七星は、床にうつぶせになっていたが、朱姫は、七星の装具が背凭れにかかっている部屋の隅の椅子に腰掛けている。

 

「あ、あたいは……?」

 

 七星は呆然と朱姫を見あげた。

 どうやら一瞬、気を失ったようだ。

 それくらい朱姫の『影手』による喉の締め付けは強かったのだ。

 いまは、もう苦しくはないが首にかかった手の感触もまだ残っている。

 この娘……なにを考えているのか……。

 調子に乗るのも限度がある。

 するとまた尻に痛みが走る。

 

「ひゃあ――」

 

 叩かれている。

 別に服を剥かれているというわけでもないが、下袴の下の尻に手のひらで打擲されたような痛みが走る。

 どうやら、これも朱姫の『影手』によるもののようだ。

 

「朱姫、いい加減にしないと怒るよ。いや、もう、怒っている。ものには限度がある。わかっているんだろうね」

 

 七星は痛みに顔をしかめながら怒鳴った。

 朱姫の手がすっと動いた。

 喉に力が加わる。

 

「ま、待って」

 

 七星は慌てて叫んだ。

 

「青、あたしは、二度も言わないと言ったはずだよ。最初にあたしが言った命令を思い出すのよ」

 

 ゆっくりとまた喉が絞まる。

 さすがに七星に恐怖が走る。

 七星は、自分の着ている服に手をかけた。

 上衣を取り去り、胸当てを外す。

 汗をかいた乳首にひんやりとした風が当たる。

 七星は、一瞬躊躇したものの、ちらりと朱姫を眺め、いまの朱姫になにを言っても無駄だと観念して、下袴を脱ぐために立ちあがった。

 

「いたっ」

 

 また、尻が『影手』に叩かれる。

 

「な、なにすんだよ、朱姫。言われた通りに、ふ、服を脱いでるじゃないか」

 

「なにが言われた通りよ。奴隷のくせに勝手に立ちあがるんじゃないよ、青。あたしは、跪けと言ったはずよ」

 

 朱姫がそう言い終わるとともに、尻が跳躍される。

 七星は、歯噛みをして跪いた。

 下袴を両膝までおろし、跪いたまま片膝ずつ抜く。

 脱いだ下袴を上衣の上に載せる。

 次に股間を覆っている下着に手をかけて一気に脱ぐ。

 同じように、片膝ずつ抜いて、さっき脱いだ胸当てとともに、衣類の下に隠す。

 

「ぬ、脱いだよ、朱姫。もう、いいじゃないか。おかしな茶番はやめて、もう寝ようよ」

 

 七星は言った。

 尻で大きな音がした。

 

「ひぎっ」

 

 七星は、前に身体を倒してしまい、手で身体を支える。

 

「何度も同じことを言わせないのよ、青。今夜のお前は、あたしの奴隷。それをわきまえなさい」

 

「わ、わかったよ……」

 

 渋々応じる。

 まだ、尻がひりひりする。

 七星は、膝立ちの姿勢に戻る。

 

「あたしの眼を見るのよ、青」

 

 言われるまま、寝台の横の燭台の光に浮かんでいる朱姫の顔を見る。

 七星の身体になにかが入ってきた。

 

 はっとした。

 それが、朱姫の『縛心術』だと悟ったのは一瞬後だ。

 朱姫の『縛心術』は、抵抗の気持ちを失ったときにかかり易くなる。

 『影手』で喉を絞めたり、尻を叩いたりしたのは、朱姫に対する観念の気持ちを抱かせるためだったかもしれない。

 事実、今夜という時間だけは、朱姫の逆らうことをやめる気持ちになっていた。

そんな想いに達したとほぼ同時に、朱姫は『縛心術』を仕掛けてきた。

 いずれにしても、これでもう朱姫に逆らえない。

 操られるという別の恐怖が七星を襲う。

 

「人形のようにじっとしているのよ、青」

 

 全身の力が消失する。

 朱姫が立ちあがり、全裸で跪いたまま硬直している七星の前にしゃがんだ。

 手に縄を持っている。

 

「な、なにすんだよ、朱姫?」

 

 七星は、朱姫の持つ縄に視線を向けて訊ねた。

 顔は動かない。

 だが、視線だけは自由にできる。

 朱姫の持つ縄は、たくさんの結び瘤がつけられていた。

 

「淫乱な奴隷に相応しい恰好をさせるだけよ、青」

 

 朱姫はそう言うと、七星の細い腰に縄をひと巻きする。

 そして、臀部から縄尻を伸ばし、股間に縄をくぐらせて前側に持ってきた。

 

「や、やめなよ、朱姫」

 

 破廉恥ないましめに七星は、思わず抗議した。

 硬直した総身から汗が吹き出す。

 

「いい子だったら、もう少し、濡らしてからやってあげたんだけどね、青。乾いた女陰に縄を食い込まされるのは痛いよ。でも、生意気な奴隷にはどれくらいちょうどいいよね」

 

 七星の女陰に強く縄が食い込む。

 しかも、お尻の孔と女陰、そして、敏感な女芯にも縄瘤が当たっている。

 

「あ、あくうっ……」

 

 朱姫の作った縄瘤が嵌る痛みと屈辱に、七星は自分の唇が震えるのがわかった。

 深く食い込んだ縄をさらに力を入れて食い込ませて、朱姫は縄を前側の腰縄に繋ぐ。

 

「ただの縄じゃないのよ、青。これは、『魔縄』よ。食い込んだ縄は絶対に緩むことはないわ。いまは、痛いだけと思うけど、すぐに疼いて堪らないようになるから、それまで我慢するのよ」

 

「……い、痛いよ。ねえ、もう、いいだろう、朱姫。宝玄仙さんに虐げられている者同士で、こんなことやめようよ。あたいらは仲良くすべきだよ」

 

 ただじっとしているだけで痛みが走る。

 七星は、朱姫に視線を向ける。

 

「もう、動いていいわ。でも、背中で左手首を右手で握りなさい」

 

 朱姫が言った。

 七星の両腕は勝手に腰の後ろに回って、命令された通りに右手で左手首を握る。

 動くとそれだけで、股間の食い込みが激しくなる。

 

「ほ、ほどいてよ。痛いんだよ」

 

 顔をしかめる七星に、朱姫は残酷な笑みを浮かべた。

 この娘、完全に嗜虐に酔っている……。

 

 もう、なにを言っても、なにを哀願しても、逆効果という気がしてきた。

 『縛心術』までかけられた以上、もう、屈服するしかない。

 とにかく、明日、沙那がやってくるまで……。

 宝玄仙や孫空女は、この状態を面白がって興に乗る可能性もあるが、沙那なら……。

 とにかく、今晩は、やり過ごすしかないか……。

 

「舌を出しなさい、青」

 

 躊躇いは一瞬だけだ。

 七星は口を開けて、思い切り舌を出した。

 その舌に朱姫の舌が伸びる。

 

「あうっ」

 

 柔肉の割れ目に食い込んでいる縄の玉が、強く揺すられたのだ。

 痛みのほかに、敏感な肉芽や肉襞に小さな疼きも走る。

 朱姫が股間に食い込む縄に手をかけて動かしている。

 動かしながら七星の舌を吸っている。

 七星の舌をまさぐった朱姫の舌が口の中に入ってくる。

 口の中を朱姫の舌が愛撫する。

 

 いつもながら、本当にこの半妖の娘は舌遣いがうまい。

 痺れるような感覚が口から全身に拡がる。

 その一方で、股間の痛みは容赦なく七星を襲い続けている。

 痛みから逃れたい――。

 七星は、口から拡がる快感に没頭して、痛みを忘れようとした。

 全身にただれるような脱力感が浸透していく。

 

「あ……ああ……」

 

 思わず小さ嬌声をあげてしまった。

 それとともに、息をする速度があがる。

 

「もっと口を開けなさい、青」

 

 『縛心術』なのか、そうでないのかわからない。

 どっちにしても、逆らうことのできない朱姫の言葉が、七星の口を大きく開けさせた。

 口の中のすべてを朱姫の舌で襲われる。

 朱姫の舌がやっと離れたときには、縄の食い込んだ股間にしっとりと湿り気が加わったのを感じていた。

 

「股が疼いてきたの、青……?」

 

 朱姫が嗜虐の悦びの浮かんだ顔を七星に向けた。

 

「う、疼くよ……。朱姫の口づけは上手だから……」

 

 七星は応じた。

 まるで、自分の声ではないような甘い響きだ。

 いったい、自分はどうしたのか……。

 

「痛いのがいい? それとも優しいのがいい? 答えなさい、青」

 

 朱姫が股間の縄を擦りながら言った。

 その指先が微かに七星の敏感な場所を刺激し続ける。

 

「や、優しく……」

 

 逃げられない……。

 そして、逆らえない。

 このことが七星を酔うような感覚にしているのだとわかった。

 そして、七星の身体をいつもの何倍にも敏感にしていることも……。

 朱姫の手がゆっくりと股間の縄瘤を動かす。

 

「うふうっ」

 

 たちまちに拡がる愉悦に七星の口から声が漏れる。

 動けなくされて愛撫される。

 それがこれほどまでに快感を呼ぶということを改めて知る。

 身体中の皮膚感覚が研ぎ澄まされ、それがゆっくりと動く縄瘤の下の女陰に集中する。

 

「はあ……ああ……あはあっ……」

 

 だんだんと縄瘤の動きが速くなる。

 もう、痛みよりも、気持ちよさが勝っている。

 朱姫の手は女芯を押し潰している縄瘤にかかっている。

 それが右に、左に、そして、上下にゆすぶられる。

 縄瘤は、その動きにより、女芯や菊門に食い込む縄瘤にも連動して刺激を拡大する。

 朱姫の手が速くなる。

:それに応じて、七星の声も息も激しくなる。

 

「もう、気をやりそうなんでしょう、青?」

 

「あっ、ああ……、あああっ」

 

 熱くなる。

 股間が熱い。

 いや、熱いのは股間だけじゃない。

 全身が熱い。

 汗が吹き出すのがわかる。

 もう、声を耐えることはできない。

 

「ああっ、い、いくっ――、朱姫……。もう、いくっ」

 

 七星は、手を後ろにやったまま身体を仰け反らせた。

 

「いっていいわ、青。でも、いったら、お尻の調教をするからね……」

 

 朱姫が耳元でささやいた。

 その言葉に、達しそうだった身体が冷たさを取り戻す。

 

「なっ」

 

 達しかけた身体に浴びせられた言葉に、総身が震える。

 冗談じゃない。

 宝玄仙の三人の供が、揃って尻で欲情するのは知っているが、七星は、そんな変態ではないのだ。

 

「お、お前、なに考えて――」

 

 だが、朱姫が加える股間の律動が速くなる。

 すでに、翻弄されている身体は、朱姫の責めに抵抗できない。

 強く、弱く、そして、乱暴でいてどこまでも優しさの感じる縄瘤の動きに、七星は限界に追い詰められる。

 

「いってもいいのよ、青。だけど、いったら、お尻を調教されたいというお前の気持ちだととるわ。いいわね」

 

「あうっ……。だ、駄目……。もう……いく……い、いってしまう」

 

 身体の震えがとまらなくなった。

 

「いったらお尻の調教よ。いやなら、我慢しなさい。でも、いかなかったら、今夜はこれで許してあげる」

 

 朱姫が笑った。

 いきたくない……。

 でも、いきたい――。

 気持ちいい。

 この快感を爆発させたい。

 しかし、朱姫にお尻をいたぶられるなどという屈辱は絶対に嫌だ。

 

「ふぐうっ」

 

 全身に歓喜が走る。

 その瞬間は唐突に訪れた。

 身体の中で爆発した快感に、七星は全身を激しく動かしていた。

 

「あひいいいぃぃぃ……いっ……あああぁぁぁ……ふああぁぁ――」

 

 股間から愛液が迸るのもわかった。

 七星は達してしまったのだ。

 それを悟った。

 

「お尻を調教されたいのね、青――。ほら、お尻を調教してくださいと言いなさい」

 

 朱姫の視線が、絶頂の余韻に浸る七星の眼に注がれた。

 『縛心術』だというのはわかる。

 七星の口は、七星の意思とは無関係に声を出し始める。

 

「お、お尻……の……調教をして……」

 

 そう言っていた。嫌だ。そんなことはされたくない。

 

「わかったわ、青。お尻の調教をしてあげるわ」

 

 朱姫が魔縄に触れる。

 『魔縄』が道術により解けてぱらりと床に落ちた。

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