やはり、『移動術』の結界だった。
なんのことはない。
孫空女が白い柱のある公園に戻り、宝玄仙が水を飲んで倒れた
間違いなく『移動術』の『結界罠』だ。
そこに踏み込むと、『移動術』特有のはらわたが捻じれるような感触が沸き起こる。
気がつくと、どこかの洞窟の入り口に立っていた。
洞窟の外は、まったくの切り立った崖になっていて、遥かに下に雲海が見える。
随分と高い場所に飛ばされたようだ。
孫空女は、『如意棒』を出して構えながら、洞窟を進んだ。
狭いという感じはない。
人が数名横になって歩けるくらいの十分な広さだ。
しかも、洞窟の土壁からは白い光が放出されていて、十分に視界がある。
これも、如意仙女の道術なのだろう。
洞窟には脇道などなく、ただの一本道だ。少し進むと、奥が突き当たっていた。
突き当りに、また、強い霊気の塊りがある。
どうやら、そこから、また、どこかに『移動術』で跳躍するようだ。
孫空女は、その霊気の強い場所に向かい、足を進めた。再び、どこかに瞬間移動させられる。
「うわっ」
新たな場所に着くや否や、不意に地面から湧き出したものに、思わず孫空女は叫んで、後ろに跳び退がった。
地面から、人の丈ほどある蛇を思わせるような細長いものが、一斉に出現したのだ。
それこそ、突き当りの魔力の塊りのある場所まで、数百本はあるのではないだろうか。
それがうねうねとうねっている。
孫空女が呆気にとられて眺めていると、それは、孫空女の眼の前で地面に消えていった。
「へっ……。触手かい……。つまりは、ここを通り抜けろということかよ」
孫空女はひとりで呟いた。
試練だの、なんだのとか言っていたか……。
これがそうということだろう。
まあ、蹴散らせば、なんとでもなる。
孫空女は、『如意棒』を頭の上で軽く回す。
前に進み出る。
また、触手が、一斉に吹き出た。
孫空女は、それを『如意棒』で払い飛ばす。
進む――。
触手が襲い掛かってくる。
孫空女の身体に触れるよりも速く、孫空女の『如意棒』が触手の先端を吹き飛ばしている。
いける――。
触手の林のある場所は、せいぜい十間(約百メートル)だ。
孫空女は、触手の攻撃に身体を触れさせることもさせずに、三分の一ほど進み入った。
孫空女は、『如意棒』を前後左右に回転させて、触手を叩き千切っていく。
「ひゃっ」
しかし、半分ほど進んだところで、叩き切った触手の先端から霧のようなものが吹き出した。
それを吸いこんだ途端に、なぜか腰が落ちた。
「ひっ」
身体の力が抜けて、『如意棒』をとめてしまった。
四肢に触手が群がるのに、一瞬しか必要としなかった。
「ちっ」
孫空女は腕にまとわりつく触手を払い、『如意棒』を振る。
数本の触手が飛び、両手が自由になる。
だが、切断した触手の一本が、さらに長さを増し、孫空女の口の中に強引に入ってきた。
そして、さっきの霧を孫空女の口の中で吹き出す。
「はがあっ――。あふっ、はがっ――」
孫空女は咳込んだ。
触手の先から噴き出した霧を直接に吸いこんでしまったのだ。
孫空女は、身体の力が抜けるのを感じた。
それとともに、身体に覚えのある熱さが肉体を席巻する。
媚薬だ――。
咄嗟に思った。
切断した触手の先から噴き出す霧には、媚薬の効果がある。
これは危険だ。どうやら戦い方を間違えた。
しかし、その時には、四重、五重の触手の拘束が孫空女を縛りつけてしまった。
『如意棒』にも触手は巻きつき、呆気なく武器も奪われる。
「ち、畜生――」
孫空女は暴れた。
しかし、それを待っていたかのように、触手が孫空女の口を襲う。
なにかが流れ込む。
霧ではない。
もっと、直接的ななにかが孫空女の喉の奥に流し込まれていく。
もう、完全に拘束された。
口の中の触手が離れる。
だが、触手は、もう孫空女の四肢だけではなく、胴体を含む全身をしっかりと拘束した。
さらに、地面から這い出た触手が孫空女を嘲笑うように、身体の寸前でうねり続ける。
なんだ、こいつら……。
拘束を果たしたことで、触手は不用意に襲うことを避けたようだ。
一度に無秩序に襲われることを覚悟した孫空女は、ほっとしたものの、逆に考えれば、こいつらがしっかりとした意思を持って襲うということかもしれない。
孫空女は次第に怖くなった。
「うわっ」
四肢を拘束する触手が四方に開く。
孫空女は、手足を伸ばして、空中で磔になった。
孫空女の周りを踊っていたほかの触手が、孫空女の胸と股間を撫ぜあげる。
「ひいっ」
服の上からの刺激にも関わらず、孫空女の力は、それだけで抜かれてしまう。
身体に入れられた霧や粘性の液体のせいだと思った。
しかも、視界がぼんやりとする。
「じょ、冗談じゃないよ」
孫空女は力を振り絞った。
このままでは、いいようになぶられてしまう。
しかし、孫空女が触手を振り払おうと、力を入れたのを見測ったように、触手がまた、股間を撫ぜる。
「ひゃん」
孫空女は、身体を仰け反らせた。
そして、次の瞬間、歯噛みした。
こんな触手に遊ばれるなんて悔しい。
触手が、胸と股間に張りついた。
なにか、熱いものが襲ってきた。
触手が離れたときには、乳房と下半身の部分の布がなくなり、そこにひんやりとした外気が振れた。
ぎょっとした。
さっき、布越しに触られただけで、あんな欲情を感じたのだ。
敏感な部分を直接触られたらどうなるのか……。
その孫空女の顔の前に十本ほどの触手が先端を向けた。
「な、なんだよ……」
孫空女は、嫌な予感がして顔を背けようとした。
だが、それよりも早く、十本どほの触手が、孫空女の顔に真っ白い霧を一斉に振りかける。
「あがっ、がっ、あがっ、げほっ……」
孫空女は咳込んで吸ってしまった霧を吐き出そうとした。
でも、すでに大部分を吸入してしまった。
熱い――。
全身が熱い。
これまでとは比べものにならない淫情が孫空女の全身を襲う。
触手が孫空女の勃起した左右の乳首を繰り返し弾きはじめる。孫空女は、声をあげて身体を仰け反らせた。
それでも執拗な触手の責めは終わらない。
乳首を弾きながら、今度は、前に突き出した格好の孫空女の無防備な股間を前後から別の触手が襲う。
孫空女がはっと気がついたときには、乳房と股間に合わせて十数本の触手が襲い掛かっていた。
「いやああっ」
孫空女は心の底から叫んだ。
股間の前後の穴に触手が入り込もうとしている。
それも、すぐには入って来ず、孫空女が嫌がって暴れるのを愉しむかのようにそれぞれの入口の部分で入れ替わり立ち代わり、触手が入口を突く。
孫空女は、せめて声をあげまいと懸命に歯を食い縛った。
だが、粘性の液を出しながらぐちょぐちょと肛門の周りを細い触手に撫ぜられて、それまでで一番大きな嬌声をあげてしまった。
すると、洞窟に不意に大きな笑い声が響いた。
孫空女はぎょっとした。
「だ、誰だ?」
孫空女は叫んだ。
しかし、身体に巻きついた触手に、身体を前に倒すように曲げられて、お尻を突き出す格好にさせられた。
その尻に触手が群がる。
「ひゃあああっ――。そ、そこは、だめえっ――」
孫空女は、お尻を五、六本の触手に一斉に舐めあげられて、悲鳴をあげた。
さらに笑い声が響いた。
「ちょっとは、骨があるのかと思ったら、こんなものかい。それにしても、身体のあちこちを触ったけど、尻を触った時が、一番反応がよかったじゃないか。身体のどこよりも、尻が弱い変態女だとは驚いたね。お前の名はなんだい?」
触手の動きは止まったが、触手は孫空女の肛門にぴたりと張りついたままだ。
孫空女は、身動きできない身体を懸命に動かして、声の出所を探ろうとした。
しかし、声は、洞窟の壁そのものから発するような気がする。
「ひゃん――」
孫空女は悲鳴をあげた。
肛門の触手がくちゅくちゅと動いたのだ。
「名を訊いているんだよ、変態女?」
「そ、孫空女だよ」
孫空女は喚いた。
「じゃあ、孫空女、お前の変態ぶりに免じて、尻十回で勘忍してやるよ」
「し、尻十回?」
孫空女は嫌な予感がした。
そして、身体を暴れさせる。
しかし、全身を拘束された身体はぴくりとも動かない。
すぐに、尻に張りついた触手がうねうねと動き、孫空女の尻孔の中に入ってくる。
「や、やめておくれよお……」
孫空女は腰を振って、それを阻もうとする。
だが、それが無駄な抵抗というのもわかってきた。
孫空女がどんなにお尻に力を入れて、それを阻もうとしても、どんどん奥に異物がやってくる。
「お尻で抵抗しようとしているのかい。可愛いじゃないか」
声が洞窟に響く。
くそうっ――。
孫空女は、今度こそと思って、身体にまとわりついている触手を振り解こうと思って力を振るう。
「ひんっ、んああっ」
しかし、お尻に入り込んだ触手が、それを嘲笑うかのように振動しはじめる。
ずんという快感に、孫空女は身体を震えさせる。
「力を抜きな、孫空女。変態に免じて、命だけは奪わないでやるよ」
振動が強くなる。
ただ、震えるだけじゃないのだ。
左右に動いたり、前後に動いたりする。
「くっ、あああっ、んあああ」
耐えようと思うのだが、その度に、孫空女は翻弄されて、声をあげてしまう。
「ほら、身体中が震えてきたじゃないか。もう、いきそうなんだね、孫空女?」
「そ、そんなこと……」
孫空女は歯を食い縛った。
こうなったら、せめて、声をあげないだけでも……。
しかし、尻に入り込んだ触手の形が中で微妙に変化した。なにか、球体を思わせるような感触になり、それが、振動したまま、それが回転しはじめる。
「あはああっ――」
孫空女の抵抗など一瞬で崩壊した。
孫空女は、強烈な快感に果てた。
「一回目だね。あと、九回だ」
笑い声が響く。
一度、触手が尻の外に出ようとする。
「んはあああっ」
それが、すぽんと小さな音とともに引き抜かれたとき、孫空女は、二回目の気をやってしまった。
哄笑がさらに大きくなる。
「抜くだけで軽くいったのかい。余程、淫乱に躾けられているねえ。それこそ、何千人もの侵入者をこうやって、いたぶってやったけど、お前は普通の反応じゃないようだ。誰かに、調教でもされたかい?」
「う、うるさい――」
孫空女は叫んだ。
何千人もの侵入者と声は言った。
つまり、これまでも
そのたびに、この触手の林に阻止されたに違いない。
孫空女は空中でまた触手に身体を回転させられて、今度は、お尻を極端に降ろした格好にさせられる。
両手と両足は、揃って上にあげられる。
さらに、触手が伸びて、左右の尻たぶを限界まで、押し開いた
「三回目、いくよ。この姿勢なら、入っていこうとするものが見えるだろう、孫空女」
孫空女は、言われるまま、視線を下に落とす。
五、六本の触手が太さを失ったかと思うと、絡みついて紐の束が捩じったようなかたちになる。ところどころが絞られて、太くなったり、細くなったりしている。
「な、なんだよ……。もう、許してよう……」
孫空女は、洞窟の壁に向かって言った。
「なにも考えるんじゃないよ、孫空女。あと八回、一生懸命によがり狂いな。わたしは、お前のような強い女が、泣きべそをかいて、いきまくるの姿を見るのが好きなんだよ。興醒めするような退屈な反応だったら、殺して喰っちまうんだけど、お前は随分と可愛いよ。だから、こうやって、快楽責めにしてやっているんだ」
「あ、あんた、
孫空女は言った。喰らうという言葉で、魔族ではないかと思ったのだ。
「女人国の人間たちは、神と呼んでいるようだね。随分と長く生きたので、魔族だったか、人間だったのか忘れたよ」
如意仙女は言った。
孫空女は、ふと、肛門に刺激を感じて、視線を下に戻す。
さっきの触手の束が入り込もうとしている。
「ひゃあああ――」
また、入ってきた。
孫空女は吠えた。
「あはああっ、だめえええっ」
吠えながら、気をやっていた。
それでも、入ってくる。さっきの絶頂の余韻は続いていた。
もう、孫空女には、抵抗する力も余裕もない。
ただ、快感を受け入れるだけだ。
肛門の中で触手が跳ね回り、回転し、振動する。
奥に奥に入り込む触手が与える刺激のまま、孫空女は連続で気をやり続けた。
「愉快な身体だよ、孫空女。本当に反応がいいねえ。お前のいき顔は絶品だよ」
もうなにも考えられない。
肛門を抜き挿しする触手で、孫空女は何度も吠え、果て、痙攣して達した。
とにかく、何度も何度も、尻をなぶられて、孫空女は絶頂し続けた。
それこそ、嫌になるくらいの連続絶頂だった。
声も枯れるかと思うくらいに叫び続け、頭が真っ白になり、なんにも考えられなくなった。
気が狂うかと思った。
すると、突然、地面に投げだされた。
もう、腰も砕けて動きはしない。
地面に投げだされた格好のまま、孫空女は、ただ、息を求めて呼吸をするだけだった。
しかし、その孫空女にしゅるしゅると音を立てて、触手がまた絡みついた。
「な、なにさ……?」
触手に仰向けにされ空中にあげられる。
今度は、細い紐状にかたちを変えた触手が孫空女の全身に近づく。
その数は、数十本はある。
それがゆっくりと孫空女の身体に迫る。
さらに別の触手が、孫空女の衣服を器用に解き、孫空女の身体を剝き出しにしていく。
「お、終わったんじゃないのかよ……?」
孫空女は思わず言った。
あまりのその声の弱々しさに、自分の声ではないと思った。
すると、また、さっきの哄笑が響き渡る。
孫空女の尻をいたぶる間、すっと、その笑い声は続いていたのだ。
尻で何度いかされたのか、途中からわからなくなったが、きっと十回、いかされてしまったと思う。
もう、終わりのはずだ。
「尻で十回は終わったね。だけど、それで解放してやると約束はしていないよ。まず、最初に尻で十回と言っただけさ。お前の身体の他の部分もいたぶってやらないと失礼と思うしね。今度は、尻以外の場所をなぶってやるよ。愉しみだろう?」
孫空女は悲鳴をあげた。
その孫空女に、さっきの細い触手の紐が襲いかかる。
孫空女の全身に触手が密着した。
全身が同時に愛撫される。もうなにもわからない。
「うひゃあぁああ」
あっという間に絶頂してしまう。
それでも許されず、すぐに、二度目……。
それから先は、ひたすら叫ぶだけだった。
最高の快楽を味わいながら、孫空女は、最大の恐怖も味わい続けていた。
*
どのくらいの時間がすぎたのか。
はっとした。
いつの間にか、触手の拘束が解けている。
虚ろな視界にぼんやりと洞窟の天井が見えた。
どうやら、仰向けになっているようだ。
どさりと横で音がした。
『如意棒』だ。
孫空女の如意棒が、孫空女の身体の横に投げ出されている。
「もう帰っていいよ、孫空女。それとも、もっと、遊んでいたければ、相手をしてやってもいいけどね。このところ、侵入者も少なくなって、わたしは退屈していたんだよ」
洞窟に声が響く。
左右からしゅるしゅると音がした。
触手がまた、孫空女の周りに出現した。
孫空女は、恐怖して身体を起こす。
しかし、立ちあがることができない。
『如意棒』をひっつかみ、這うように進む。
触手が追い立てるようにやってくる。
孫空女は、倒れ込みそうな身体を懸命に、動かし続けた。
もう少しで、出口の結界――。
そう思ったとき、孫空女の一方の足首を触手が掴んだ。
孫空女は心の底から悲鳴をあげた。
「待つんだよ、孫空女。許してやるんだ。一度、詫びを入れてもらおうか。そこで、お前に、この如意仙女の祠を犯した謝罪をしてもらおうかね。それが気に入らなければ、また、尻で十回のところから、やり直しだよ」
これ以上、なぶられたら、間違いなく狂ってしまう。
孫空女は、慌てて、身体を反転させて、その場に土下座した。
「お、お許しください、如意仙女様」
宝玄仙に身体を斬り刻まれたときだって、こんな風に謝罪はしなかった。
頭を地面に擦りつけながら、悔しさに涙が出るのを孫空女は感じていた。
「行きな、孫空女」
声がした。足首の触手が解ける。
孫空女は、最後の力を振り絞って、結界に身を投げた。