※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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172 翻弄の調教下着

「さあ、すっきりもしたし、観念して、ご主人様の下着をつけることにしようじゃないか、朱姫」

 

 孫空女が言った。

 

「なにか、嬉しそうに見えるんですけど、孫姉さん」

 

 朱姫が恨めしそうな表情を孫空女に向ける。

 沙那は、そんなふたりの様子に思わず含み笑いをした。

 後ろ手に拘束されていた朱姫に、一度、服を身につけさせ、宿の裏にある厠に連れていって浣腸をして、排便させ、そして、もう一度部屋に戻り、また、服を脱がせた。

 

 いまは、朱姫は全裸だ。

 その眼の前に、宝玄仙が作った霊具だという革製の上下の下着がある。

 朱姫は、それをいまから身につけなければならない。

 朱姫の後手の手錠には、宝玄仙が施した『道術錠』がしてあり、その解錠の条件が、眼の前の宝玄仙の霊具の下着を半日身に着けることだからだ。

 宝玉によれば、『道術錠』で条件付してしまえば、後で宝玄仙が術をかけ直すということはできず、条件が満たされなければ、『魔法錠』は、外れないのだという。

 

 宝玄仙としても、そろそろ、朱姫の手錠を外す時期だとは考えていたとは思う。

 女人国の国都に入るのに、朱姫を後手に拘束したまま入るわけがない。

 だから、宝玉の取り成しにより、勝手に外しても、今回は問題ないはずだ。ただ、外すためには、朱姫が宝玄仙の準備した貞操帯を半日嵌めないとならないというだけだ。

 

 宝玄仙の霊具である限りは、えげつなく責めて立てることが予想されるが、それが終わらなければ、手錠は外れない。

 だったら、宝玄仙ではなく、宝玉が表に出ているときに解錠してしまいたい。

 宝玄仙なら、霊具にのたうち回っていると、面白がってさらに別の術を重ねたりするかもしれないからだ。

 それは朱姫があまりにも可哀そうだ。

 

「嬉しいさ。これから、朱姫が困る姿を眺められるんだろう。でも、同情はしてあげるよ。ほら、さっさと身につけようよ」

 

 孫空女がまずは、胸当てをさっとかざす。

 

「ま、待ってください――。まだ、決心が……」

 

 朱姫が言った。

 

「なにが決心だよ。もう、覚悟、決めなよ。えげつない責めの大好きな朱姫じゃないか」

 

「もう、孫姉さん、まだ言うんですか。謝ったじゃないですか」

 

 朱姫が頬を膨らませた。

 もとはといえば、これは、このところの朱姫の悪戯がひどいという理由で、宝玉が朱姫に日に三度お尻を責めてもらわなければ淫情が収まらなくなるという首輪の霊具を嵌めたことから始まっている。

 宝玉は、さっき、その首輪を外してくれたが、面白がった宝玄仙が、それに重ねて嵌めた後手の手錠はまだ外れていない。

 それを外すための処置がいまからやることなのだ。

 

「そうね、もう、仲良くしましょう。いまは、三人で協力して、できるだけ穏便に朱姫の手錠を外すことにしましょう」

 

 沙那は言った。

 自分でも“穏便”にという言葉に無理があることはわかっている。

 でも、どうしようもないのだ。

 朱姫は、宝玄仙の魔具の洗礼を受けるしかない。

 まあ、朱姫が嫌がるのは無理はないかもしれない。

 宝玄仙の淫具はいつもえげつないが、今回のは見た目だけでそれがわかりやすすぎる。

 胸当てはともかく、股間に履く側の下着には、内側に二本の張形が突き出ているのだ。

 それを前後の孔に受け入れて装着しろということなのだ。

 

「じゃあ、付けるよ」

 孫空女が革の胸当てを朱姫の小さめの乳房に当てた。

 

「うわあっ――。ま、待ってください」

 

 朱姫が後ろに跳び跳ねてそれを避けた。

 お尻を床につけたまま、数歩退がる。

 

「なんだよ、朱姫」

 

 孫空女が声をあげた。

 

「そ、そうだ――。お、おふたりも……おふたりも服を脱いでください」

 

 朱姫が叫ぶように言った。

 

「あたしらが?」

 

「なんで?」

 

 孫空女とともに沙那も声をあげる。

 

「あ、あたしのことを同情してくれるなら、おふたりも裸になってください。あたしだけ、恥ずかしい姿を晒すなんて、嫌すぎます。あたしは、いまから、ご主人様の淫具を半日も付けるんですよ。何度もはしたなく達するかもしれません。それをおふたりに、じっと見られるだけなんて、耐えられません」

 

 朱姫は、沙那と孫空女を交互に見ながら言った。

 

「じゃあ、どうするんだい。朱姫が淫具で責められている間、横でふたりで愛し合えとでも言うのかい?」

 

 孫空女が呆れた表情をした。

 

「できれば……」

 

「冗談じゃない。なんで、あたしらが……。そんなに嫌なら、ずっと後手で拘束されていればいいじゃないか。ご主人様がいつか外してくれるよ。淫具で苦しむ間、ご主人様が朱姫をそのまま放っておくとは思わないけどね」

 

「で、でも孫姉さん。もしかしたら、そのときは、あたしだけじゃなくて、孫姉さんも巻き込まれるかもしれませんよ。ご主人様は、そういうお方です――」

 

「いい加減にしなよ、朱姫」

 

「いいじゃないですか。それくらいしてくれても。おふたりが裸になってくれれば、あたしは諦めがつくんです」

 

「だったら、勝手にしな。あたしは知らないよ」

 

 孫空女が怒ったように、腰に嵌める淫具を寝台に放り投げる。

 

「わああっ――。だ、だったら、愛し合ってくれとまでは言いません。せめて、あたしと同じ姿になってください」

 

 朱姫は、孫空女と沙那にすがるような視線を向ける。

 沙那は嘆息した。

 

「わかったわ。わたしたちも服を脱ぎましょう、孫空女」

 

 沙那はそう言うと立ち上がり、身に着けているものを脱ぎ始めた。

「沙那――」

 

 孫空女が呆れたというような表情を向ける。

 

「朱姫の言っていることは訳がわからないけど、あなたもなんとなく気持ちはわかるんでしょう、孫空女?」

 

 沙那はどんどん服を脱いでいく。

 胸当ても股間の下着も脱いで素っ裸になる。

 

「わかったよ、脱ぐよ」

 

 孫空女も渋々という感じで服を脱ぐ。

 

「さあ、これでいいね、朱姫。じゃあ、胸の方からいくよ」

 

「は、はい」

 

 全裸になった孫空女がそう言うと、今度は朱姫は抵抗しなかった。

 孫空女が朱姫の胸に革の下着を当てると、背中側で留め具を締める。

 すると、留め具が沙那と孫空女が見ている前で消滅した。

 留め具がなくなったということは、再び出現するまで、これが外せないということだ。

 宝玄仙のことだ。道術や刃物で強引に脱ぐことはできなくしているだろう。

 

「ひゃあ」

 

 朱姫が小さな悲鳴をあげた。

 

「ど、どうしたのさ、朱姫?」

 

 孫空女が心配そうな声をあげた。

 

「な、なんでもありません。胸当ての形が、あ、あたしの身体にぴったりになるように大きさが変わったんです」

 

「それだけ? 動くとか、なにかが滲み出るとかは?」

 

 孫空女だ。

 

「い、いまのところは、なにも……。ただ……」

 

「ただ、なにさ、朱姫?」

 

「とても肌触りが気持ちいいです……。そ、そのう……。まるで、ご主人様の手みたい……。それと……」

 

 朱姫は、赤い顔をしてもじもじし始めた。

 

「それと?」

 

 沙那も訊ねた。

 

「それと、乳首が摘ままれるように、胸当ての内部の形が変わりました。へ、変な感じです……。む、胸全体が包まれるような……」

 

 朱姫が身体をくねらせる。

 

「装着した人間に合わせて、形が変わるみたいね……。つまり、ご主人様は、ただ、朱姫に装着させるためだけに、これを作ったんじゃないんだわ」

 

 沙那は、嘆息しながら言った。

 

「それって、どういうこと? 後手に手錠を嵌めた朱姫にこれを身につけさせるために、手錠の解錠の条件付として、ご主人様は、このおかしな下着を作ったんじゃないの、沙那?」

 

「それはそうよ、孫空女。だけど、それで終わるわけじゃないってことよ、いまの感じだと、これを身に着けると、その人間の身体に合わせて胸当ての形や大きさが変わるみたいよ。つまり、朱姫以外の女が身に着けたとしても、多分、同じように、ぴったりと密着するような感じになると思うわ」

 

 沙那は、朱姫の胸当ての側面に手を触れた。

 完全に肌にくっついていて、指を差し入れる余裕もない。

 装着した直後は、朱姫には大きすぎて少し余裕もあった。

 いまは、完全に朱姫の身体の大きさに合っている。

 

「それって……、つまり」

 

 孫空女が唾を飲んだ。

 

「つまりは、わたしや孫空女が身に着けることもできるということよ。朱姫で終わるわけがないわ。多分、わたしたちのどちらかにもにこれを着ろと言い出すわ。そして、これを装着したまま、歩かせるとか……」

 

 沙那は、もうひとつの下に履く側の下着を見た。

 内側に二本の張形――。

 これを履いて、外を歩かされる……。

 考えただけで総毛立つ。

 しかし、あの宝玄仙だったら、させかねない。

 いや、きっとさせる。間違いない――。

 

「やだよ――。こんなの履くの」

 

 孫空女が悲鳴をあげた。

 

「でも、絶対、その気だと思うわ。と、とにかく、なにか対抗策を……。そ、そうだ。せめて、どんなことが起きるのか知るだけでも……。ねえ、朱姫、本当に、いまのところ、その胸当ては、なんにも動かない?」

 

「はい、沙那姉さん。動きません。ぴったりとくっついているだけです」

 

「そう……」

 

 沙那は不審なものを感じた。

 宝玄仙の淫具にしては大人し過ぎる。

 なにも仕掛けがないということはないだろう。

 

「……と、とにかく、朱姫、下も履いてよ」

 

 孫空女がもうひとつの下着を取りあげた。

 

「は、はい」

 

 朱姫が立ちあがって、脚を少し開く。

 

 孫空女が持った革の下着に、朱姫の脚を片方ずつ、くぐらせる。

 

「上げるよ」

 

 孫空女が、すっと下着を腰に向かって持ちあげる。

 

「まずは、後ろからかな。朱姫、ちょっと、前屈みになってよ」

 

 朱姫が孫空女に言われるまま、少し、身体を前に倒して、お尻を後ろに出す。

 下着の内側に装着されている張形の先が朱姫の肛門に触れた。

 

「ひゃん――、ああっ」

 

 朱姫の身体が震えた。

 孫空女が朱姫のお尻に張形のひとつをあてがった瞬間に、ほんの少し張形がぶるりと動いたのだ。

 沙那は、朱姫のお尻の入口に張形が振れたとき、心なしか張形の太さが細くなった気がした。

 そして、微妙に形も変化した。

 もしかしたら、あれは朱姫の肛門の内部のかたちに合わせて変化したのではないだろうか。

 そんな気がする。

 

「あうっ……ひいっ――ひゃん――、は、入ってきます。わああっ――。な、中に……」

 

 朱姫が甘い声をあげた。

 

「痛いの、朱姫?」

 

 朱姫が悲鳴のような声をあげたので、思わず沙那は言った。

 宝玄仙の作る張形は、いつも潤滑油のようなものを必要としない。

 必要な滑らかさを得るために、勝手に表面になにかが滲み出るのだ。

 だから、今回もなにも塗らずに、孫空女はお尻に入れようとしたのだ。

 

「ち、違います――。い、痛くないです……。で、でも――」

 

 朱姫の身体が仰け反って震えた。

 崩れそうになった朱姫の腰を孫空女が両手で支えた。

 しばらく静止したまま朱姫は、なにかに耐えるように歯を食い縛っていたが、やがて、顔をあげた。

 

「と、とりあえず、大丈夫です。急に……、急に入って来たので、びっくりしちゃっただけです」

 

 朱姫が短い息つぎをしながら言った。

 

「当てがったら、勝手に、ひとりでに入っちゃたんだよ、朱姫」

 

「わ、わかっています、孫姉さん。あ、あたしが感じすぎるから、声が出ちゃったんです。そ、そんなに勢いは強くありませんでした」

 

「じゃあ、前のも当てがうよ、朱姫」

 

 孫空女が内腿に当たってとまっている下着の内側に装着されているもう一方の張形を朱姫の女陰に当てた。

 すっと張形が動き出す。

 

「だ、だめえっ――」

 

 朱姫が叫んで、その場に腰を落とした。

 沙那は、孫空女が朱姫の女陰に張形を当てた瞬間、すっと張形がひとりでに朱姫の女陰に吸い込まれるのを見た。

 それとともに、なにかの魔術が動く気配があり、朱姫の股間には、革の下着がぴったりと張りついた。

 

「やっ、いやあっ……」

 

 朱姫が身体を仰け反らせて震えている。

 

「ど、どうしたの――、朱姫?」

 

 孫空女が朱姫の身体を支えながら叫んだ。

 

「お、お豆が……お豆がめくられて、包まれてるんです――」

 

 朱姫が泣きそうな声で言った。

 

「大丈夫?」

 

 沙那も朱姫に近づいて、孫空女とともに、朱姫を座らせると、身体を挟むように横にしゃがみ込んだ。

 

「ああっ……。と、とまりました」

 

 朱姫がほっとした表情をしながら、大きく息を吐いた。

 

「とまった? いやらしく動いたりしていないの?」

 

 沙那は思わず言った。

 そんなはずはない。

 脱げないのは確かのようだが、ただ張形を股間で咥えるだけでいいというような簡単な淫具を宝玄仙が作るわけがない。

 

「変だね、ご主人様にしては……」

 

 孫空女も言った。

 

「本当に、いまのところ、なにもないのね、朱姫?」

 

 沙那はもう一度朱姫に訊ねた。

 

「は、はい。中が密着して気持ちいいのと……、か、感じる部分を摘まむように包まれるのが変な感じですけど、と、とにかく、これなら、じっとしていれば大丈夫です」

 

 朱姫は全身を高揚させて、腰を淫らに動かしているが、確かに、いまのところ、余裕もあるような感じだ。

 

「なにか、変だよねえ」

 

 孫空女の言葉に、朱姫とともに三人で顔を見合わせて頷く。

 そのとき、なにかが起こったような気配がした。

 沙那の中に理由のない不安感が沸き起こる。

 

「ご、ご主人様――?」

 

 突然、朱姫が叫んで眼を見開いた。

 沙那は、仰天している朱姫が見ている方向に視線を向けた。

 

「ご主人様――」

 

 沙那も叫んだ。

 そこには、宝玄仙が立っていた。

 いや、よく見れば透き通っている。

 しかも、上半身だけだ。

 煙のようなものが集まって、宝玄仙の上半身をかたどっているのだ。

 

「ご主人様、どうして、ここに――?」

 

 孫空女がびっくりしている。

 

「わたしが、ここに現れたということは、わたしの結界の中で、朱姫がわたしの淫具を身に着けて、しかも、沙那か孫空女がそばにいるということだね。もしかしたら、ふたりともいるのかね……」

 

 その煙の宝玄仙が言った。

 

「ご主人様、これはどういうことなの?」

 

 孫空女が叫んだ。

 しかし、煙の宝玄仙はそれには応じない。

 

「孫空女、これは、ご主人様が道術で作り出している像よ。あらかじめ術を刻んでおいて、朱姫が履いている霊具を身に着けらたら、刻んでおいた術が働いて、この像が出現するようになっていたのよ」

 

 沙那は言った。

 宝玄仙の像は、まっすぐに朱姫を向いている。

 つまり、朱姫の身に着けた淫具の方向に向かって喋るように設定されていたのだ。

 あらかじめ刻んでおいた像であることについては、こちらからの呼び掛けには反応しないことからわかる。

 

「これは、もしも、お前たちが、勝手にわたしの霊具を無許可で外そうとしたときに、現れるようにしていた像だよ。わたしは、ここにはいない。おそらく、いまは、宝玉がわたしの身体を支配しているのだろうね」

 

 宝玄仙の像がくくっと笑った。

 沙那は、ほかのふたりとともにそれを呆気にとられて見ていた。

 

「そこに、宝玉がいるなら、これをとめるのは不可能だと言っておくよ。もしも、宝玉がそこにはいず、別の場所にいるなら、朱姫と、朱姫のそばにいる者に言うけど、お前たちのいる空間は閉鎖されたよ。これから、半日間、誰も入れないし、お前たちも出られない――。終わるまでね……」

 

「……な、なにを言っているのさ、ご主人様は……?」

 

 孫空女が不安な表情をこちらに向けた。

 

「よ、よくわからないけど、わたしたち三人が、結界に閉じ込められたということらしいわ。それと、宝玉様に助けを求めても無駄ということのようね……」

 

 沙那は、宝玄仙の像が言ったことを要約した。

 

「なにが始まるんでしょうか?」

 

 朱姫が不安そうな声で言った。

 

「さ、さあ……」

 

 沙那はそっと朱姫の肩に腕を回した。

 朱姫が沙那に身体を寄せる。

 肌と肌を通じて、朱姫の不安が伝わっていくる。

 

「……さて、そこにいる沙那か孫空女、あるいは、そのふたりとも――。この像が消滅すると同時に、お前たちが身に着けている『共鳴封じの指輪』は、一時的に力を失うよ。つまり、朱姫の身に着けている淫具が与えるものが、そのまま、お前たちの身体に伝わってくるということだ。朱姫と一緒に、朱姫が装着したわたしの淫具を味わいな……」

 

 宝玄仙が喋った。

 

「共鳴?」

 

 孫空女が叫んだ。

 共鳴というのは、三人がまったく同じ宝玄仙の内丹印を身体に刻んでいるために起こる現象であり、三人の誰かが受けた官能が、まったく同時にほかのふたりにも伝わるというものだ。

 普段は、三人がそれぞれに嵌めている『共鳴封じの指輪』でそれは遮断されているが、それが無効化されるということは、三人の官能の共鳴が始まるということだ。

 

「……でも、それだけじゃ、面白くないからね。ちょっとした仕掛けもしておいたよ。いま、朱姫のそばにいる者が、ひとりだけなら、普通の二倍の官能がお前たちを襲う。三人だったら、三倍だ。七星と宝玉もいるなら、四倍、五倍になる。いったい、何人いるのかねえ、この部屋に……」

 

 宝玄仙の像が再び笑った。

 本当に嗜虐のこととなると、手を抜かないし、周到だ。

 宝玄仙は、自分がいないときに、朱姫の手錠を外すために、朱姫が嵌めた淫具が遣われることを想定して、いろいろな術を事前に刻んでおいたようだ。

 

「……どうやら、わたしたちは、ご主人様の罠に嵌ったということね」

 

 沙那はそれだけを言った。

 

「罠って……?」

 

 朱姫だ。

 

「せめて、三倍で終わることに感謝しましょう。五倍じゃなくてよかったじゃない……。さあ、集まりましょう」

 

 沙那はそう言って、孫空女と朱姫を呼び寄せた。

 三人で丸くなり、お互いを抱き合う。

 

「始まるのかい……?」

 

 孫空女も不安そうだ。

 

「じゃあ、頑張りな――」

 

 宝玄仙の像が消滅した。

 

「あっ……」

「ああ――」

「いやああっ」

 

 沙那は、孫空女や朱姫と同時に声をあげた。

 股間と胸に急に圧迫感が加わったのだ。

 おそらく、朱姫が淫具の下着に包まれ、張形を前後の孔に挿している感触が伝わったのだ。

 つまり、共鳴が作動したということだ。

 

「いや――ああっ……」

 

 誰の声かわからないが、ほぼ同時に三人が声をあげた。

 沙那は朱姫と孫空女を抱いている腕に力を入れた。

 胸が急に揉みしだかれる感覚が襲ってきたのだ。

 しかも、乳首がくねくねと転がされる。胸を刺激されているだけとは思えない強烈な衝撃だ。

 

「な、なにこれ――。ひ、ひいっ――」

 

 孫空女が腕を離して、自分の胸を隠すような仕草をした。

 もちろん、そんなことは無駄なことだ。

 

「ああっ、あ、あたし、こんなの……た、耐えられません――」

 

 朱姫がもう泣きべそをかきかける。

 沙那も叫んでいた。

 想像のしたことのない、もの凄い快感が胸を襲う。

 これが、三倍の刺激ということだ。脳を焼かれるような衝撃――。

 こんな気持ちのいい胸の愛撫は初めてだ。胸だけで頭が真っ白くなる。

 

「い、いく――」

 

 孫空女が叫んだ。

 

「あ、あたしも――」

「ああっ――ひゃあぁぁぁぁ――」

 

 朱姫と沙那も同時に声をあげていた。

 三人で胸だけで昇天してしまっていた。

 

「だめえっ……おかしくなる――」

 

 沙那は叫んだ。

 横で孫空女も朱姫もよがり狂っている。

 まるで宝玄仙のあの手に揉まれているような下着の責めにたちまちに二度目の絶頂に追い込まれる。

 

「あはああっ」

「んふっうう」

「いやあああっ」

 

 そして、あっという間に二度目の絶頂をした。

 しかし、それでも下着はとまらない。

 快感が凄すぎる。

 達したと思ったら、すぐに次の波が待っている。

 

「いぐうう」

「あ、あたしもおお」

「んはああっ」

 

 わけもわからず、三度目の気をやった。

 

「と、とまった……?」

 

 朱姫が激しく息を吐きながら呟いた。

 三度目の絶頂した直後に、やっと胸の刺激がとまったのだ。

 

「また、出た……」

 

 孫空女が嘆くような声をあげた。

 宝玄仙の像が、また出現したのだ。

 

「さて、この像は、お前たちが三回目に達したときに、現れるものだよ。下着の洗礼を味わった段階で、これから起きることを教えるためさ。三回目の絶頂をするまでに、どこまで味わったかね。最初は一箇所ずつしか責めず、胸、肉芽、女陰、肛門の順で作動するけど、三回目くらいだったら、おそらく二番目の肉芽の段階かい? まだまだ、序の口だよ……」

 

 宝玄仙の口がそう言う。

 

「に、二番目って……。まだ、胸だけ。それもちょっとだけ……」

 

 朱姫が恐怖に染まった表情で言った。

 確かに、胸だけであの衝撃だ。

 さらに敏感な股間を責められたらどうなってしまうのか……。

 

「な、なんか、怖いよ、沙那、朱姫」

 

 孫空女が手を伸ばした。

 その手を沙那はしっかりと握る。

 そして、朱姫の後手の手にも腕を伸ばして、その手を握った。

 

「こ、こうなったら、腹をくくるしかないわね。三人で頑張りましょう……」

 

 三人で手をぎゅっと握り合う。

 

「……じゃあ、再開するよ。最初の二刻(約二時間)は、一箇所ずつしか責めない。次の二刻(約二時間)は二箇所ずつだ。どれとどれの二箇所かは、お前たちが昇天するたびに変化する。そこまでいったら、休憩をさせてやる。一刻(約一時間)はお休みだ……」

 

「四刻……」

 

 孫空女がぼつりと言った。

 沙那も息を飲んだ。

 宝玄仙の容赦のない淫具に責められっぱなしで四刻なのだ。

 

「……もちろん、完全にとまるわけじゃないよ。振動が小刻みになるだけだ。休憩の後は、お前たちの好きなお尻の時間だ。たっぷりと三刻(約三時間)、お尻だけを責める。お尻だけにありとあらゆる刺激を与えてあげるよ。愉しみにしといで」

 

「な、なんですか、それ? 全然、半日じゃないじゃないですか――」

 

 朱姫が悲鳴をあげた。

 沙那もそう思った。

 最初に四刻、休憩という名の微振動の責めが一刻と、お尻で三刻……。すでに八刻だ。

 いや、文字通り、半日ということ?

 普通、半日というと昼間の半分の四刻くらいを差すが、宝玄仙は一日の半分の十二刻で考えてるのか?

 

「……それと、お尻を責めている間は、ほかの場所がお休みで退屈しないように、いくたびに敏感な場所に媚薬が滲み出て痒さが増すようになるからね。痒み死にしたくなけりゃあ、できるだけ、いくのを我慢するんだよ……」

 

「そんなあ……」

 

 孫空女が顔を蒼ながら呟いた。

 

「それからまた、一刻(約一時間)は休憩だ。まあ、休憩になるかどうかはわからないけどね。その頃には、痒みで死にそうになっているだろうから、一刻(約一時間)も放っておかれればおかしくなるだろうけど……」

 

 もう誰も口を開かない。

 ただただ、宝玄仙の像が語るえげつない予告に耳を傾ける。

 

「そして、最後の三刻(約三時間)は、お待ちかねの全部の場所の同時責めだ――。じゃあ、始めるけど、どうか、発狂しないでおくれよ。いくら、わたしの『治療術』があっても、頭の線が切れたのを治すのは面倒だからね」

 

 宝玄仙の像が笑った。

 これ以上ないと思うくらい冷酷な笑いだと沙那は思った。

 

「……さて、その前に、最後の仕上げだよ」

 

 宝玄仙の像が言った。

 

「うわっ」

 

 孫空女が叫んだ。

 沙那は孫空女に目をやった。

 孫空女の両腕に嵌まっている『拘束環』が作動し、孫空女の両方の手を後手に拘束したのだ。

 

「な、なんだよ、これ」

 

 孫空女が泣くような顔になった。

 これも、あらかじめ準備されていた宝玄仙の術なのだろう。

 宝玄仙の像が一度消えて、再び出現した。

 

「……この像は、孫空女の『拘束環』が作動して、さらに、もうひとり、共鳴する者がいるときに出現する像だ。この像を見ているということは、ここには三人いるね。最初から後手に手錠をされている朱姫。たったいま、『拘束環』により後手に拘束された孫空女。そして、まだ、身体の自由を残している沙那――。そうだね?」

 

 いったいどれだけ周到に準備したのだろう。

 もしかしたら、ほかの場合も想定して、もっとたくさんの像を準備がされているのだろうか。

 それが、状況に合わせて出現するように術で設定されているのだ。

 嗜虐に対するなんという熱心さだ。

 

「ここに、沙那が残っているなら、沙那にひとつの選択をさせてやる。選べるのは、沙那だけだ。これから、そこにいるわたしの像が沙那にある『縛心術』をかける。お前の右手がお前の左手首を背中で掴んで離れなくなる『縛心術』だ。それを流すただし、沙那には、それを受け入れるかどうかの選択をさせてやる」

 

「えっ?」

 

 沙那は思わず声をあげた。

 だが、宝玄仙の像は、構わずに語り続ける。

 

「……受け入れるのであれば、背中で左手首を握りな。すると、責めの間、お前の手は背中から離れなくなる。だけど、受け入れれば、すべての責めの時間を半分にしてやる。全部で六刻(約六時間)で解放だよ――。ただし――」

 

 宝玄仙の像がまるで沙那を凝視したような気がした。

 もちろん、気のせいだ。

 宝玄仙の像は一定の方向を向いて、一方的に喋っているだけだ。

 

「……受け入れない場合は、沙那だけは、この責めから解放してやるけど、他の者への責めは倍の時間にする。沙那が受け入れないとしても、それは、いつも皆のために頑張っている沙那にご褒美だ。そのときには、沙那だけは共鳴封じも戻してやる……。その代わりに、朱姫と孫空女への責めの時間が、二十四刻(約二十四時間)、つまり、丸一日になる」

 

 宝玄仙の像が一旦、言葉を切った。

 沈黙が流れる。

 朱姫も孫空女も口を開かない。

 ただ、横目でちらりちらりと沙那に視線をやるのがわかる。

 

「……さあ、どうする、沙那? お前も責め苦に参加して、半分の六刻(約六時間)で終わらせるか、お前だけは免れて、その代わり、残りのふたりに倍の二十四刻(約二十四時間)責め苦を受けさせるかだ。わたしは、どっちでも構わない。どちらも、面白そうだからね――。朱姫と孫空女は口を出すんじゃないよ。いつも、沙那には世話になってんだろう? 沙那の選択に文句を言うんじゃないよ――」

 

 宝玄仙の像が口を閉じた。

 

「沙那……」

「沙那姉さん――」

 

 孫空女と朱姫のふたりが不安そうに沙那を見た。

 沙那はふたりに微笑みかけた。

 

「だ、大丈夫よ。あんたたちを見捨てたりしないから……」

 

 沙那は、自分の腕を背中に回した。

 『縛心術』が身体に入ってきたのがわかった。

 すると、またまた宝玄仙の像が一度消えて、すぐに出現し直す。

 

「……おやおや、沙那は助けてやろうと思ったんだけどね。なら、約束だから半分の六刻(約六時間)だ……。さあ、これで、お喋りの時間は終わりだ。始めるよ。どこで中断されているか知らないけど、最初は、一箇所ずつの責めだ――。そうそう、大事なことを説明するのを忘れていたよ。わたしの結界の中にいる限り、お前たちの誰も気を失うことはできないからね」

 

 像が消えた。

 

「きゃあ、また、胸が……」

「ひんっ」

「ああ――あっ、あっ――」

 

 再び胸が揉まれ始める。

 乳房全体に細かい振動を受けながら、全体を揉まれ続ける。

 乳首だけは、まったく別の動きで、しかも、左右別々の刺激で吸い付いたり、転がしたり、揉んだりする。

 たちまちに、三人同時にまたいってしまった。

 

「も、もう、駄目だよ――。こんなに、感じすぎちゃあ、変になるよ」

 

 達したばかりの孫空女が叫んだ。

 それは、沙那も同じ気持ちだ。

 一回一回の絶頂が凄すぎる。

 しかも、まだ、胸だけだ。

 本格的な責めはこれからなのだ。

 

「ど、どうしたら、いんですか――? ああっ、また……」

 

 朱姫が泣き声をあげた。

 そして、それは、すぐに嬌声に変化する。

 そのまま、さらに二度胸でいったところで、やっと胸の収縮が停止した。

 

「いよいよ……」

 

 朱姫と孫空女のどちらの呟きだったのだろう。

 それが合図であるかのように肉芽が振動をしはじめる。

 しかも、激しい。

 乳房の場合は、ゆっくりと込みあげるような官能だった。

 今度のは、衝撃的で強烈だ。あっという間に絶頂が訪れる。

 

「あうっ――」

「いくううぅぅう――」

「ひぎぃ――」

 

 三人同時に達した。

 絶叫が迸る。

 まるで、断末魔のような声だ。

 

 共鳴している限り、三人の絶頂は、時期も深さも一緒だ。

 この凄まじい快感の恐怖が孫空女と朱姫にも襲っているに違いない。

 しかし、許されない。

 すぐ次の波が襲う。

 

 もう、沙那には、ほかのふたりの声も姿も認識できなくなっていた。

 怒涛のような官能の大波にもがくだけだ。

 

「だめっ――。いぐうっ――」

 

 全身を震わせて絶頂を告げる声をあげた。

 さっき、いってから、ほんの少ししか経っていないだろう。

 

 そして、また、次の波――。

 

 助けて――助けて――。

 官能の深さが凄すぎるのだ。

 限界を超える絶頂が一回ごとに訪れる。

 

 沙那は、懸命に叫んでいた。

 その悲鳴の中で、沙那は腰を跳ねあげて、全身を痙攣させながら、何度目かわからない絶頂を迎えていた。

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